異世界で転生者が現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

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ミラが音響魔術を使うとこうなる

 

 初めてこの世界でドラゴンを見た時、僕はそのドラゴンを恐ろしいと思っていた。僕が住んでいたあの世界には、もちろんドラゴンなんて存在しない。

 

 でも、作戦を立てた後はもう急降下して襲いかかってくるドラゴンを恐ろしいとは思わなかった。僕はミラと2人でバイクで逃げながら、襲い掛かってきたドラゴンを作戦通りに返り討ちにする事が出来たんだ。

 

 僕の隣にいるのは、あの時一緒にドラゴンと戦ったハーフエルフの少女のミラだ。僕は今から、彼女と共に子の闘技場で魔物の群れと戦う事になるんだ。

 

 もう作戦は考えてある。昨日の夜に戦車に乗っていた時に感じていた緊張は全く感じなくなっている。

 

 目の前で開いた巨大な石の扉の向こう側から姿を現したのは、無数の狼やゴブリンたちだった。僕たちを睨みつけて襲い掛かってくるゴブリンたちの後ろに見えるのは、ゴーレムや奇妙な模様の外殻を纏ったアラクネの群れだ。他にも、真っ赤な羽根を持つハーピーもいるらしい。

 

(いくよ!)

 

「うん!」

 

 ミラが鉤爪をカバーの中から展開しながら、もう片方の手に持ったスタームルガーMk-Ⅲの銃口を襲い掛かってくる狼たちに向け、トリガーを引いた。

 

 彼女にドットサイトで照準を付けられた狼が、スタームルガーMk-Ⅲから放たれた弾丸で顔面を貫かれ、そのまま鮮血をまき散らしながら闘技場の地面を転がり始める。僕も2丁の南部大型自動拳銃で狙いを定めると、接近してくる狼たちに向かってトリガーを引いた。

 

 モリガンに傭兵見習いとして入ってから、僕はカレンさんや兄さんに射撃の訓練をしてもらっていた。兄さんたちが依頼を受けていて屋敷にいない時は、端末が用意してくれる弾丸が全部なくなるまでずっと地下の射撃訓練場で射撃訓練を続けていたんだ。

 

 転生者には攻撃力と防御力とスピードの3つのステータスが与えられる。でも、スタミナや射撃の技術は訓練をしなければ身に着ける事が出来ない。だから、レベルが高い転生者でも体力が無い者や、射撃が下手な者も存在するらしい。

 

 僕は兄さんよりも非力だ。だから、この異世界で生き残るためには訓練して技術を身に付けなければならない。

 

 僕が放った2発の8mm弾の片方が、狼の首元に突き刺さった。まるで首元を蹴り上げられたかのように被弾した狼が吹っ飛ばされ、血を流しながら後の狼と激突すると、ミラが最初に撃ち殺した狼と同じように闘技場の地面を転がる。

 

 もう片方の弾丸は、狼の右目を貫いていた。眼球の破片の混じった血を吹き上げて、その狼も崩れ落ちる。

 

 何とか射撃訓練でレベル1をクリアしたおかげで、射撃の技術は上がっていた。でも、まだ僕が倒した魔物はたった2匹。僕の隣で戦っているミラは、右手の鉤爪で狼たちを次々に八つ裂きにしながら、狼の群れの後について来るゴブリンをスタームルガーMk-Ⅲで狙撃している。

 

「う、うわぁっ!」

 

 そして、狼たちが僕にも接近してきた。

 

 僕は何歩か後ろに下がりながら両手のハンドガンのトリガーを何度も引く。南部大型自動拳銃から放たれる弾丸は狼たちを次々に貫いて死体を増やしていったけど、接近してくる狼の数が多すぎる。

 

 それに、南部大型自動拳銃のマガジンに入っている弾丸は8発だけ。僕に迫ってくる狼は、僕の持っている2丁の南部大型自動拳銃のマガジンの弾丸よりも明らかに多い。殲滅するには何回か再装填(リロード)しなければならなかった。

 

「!」

 

 僕に向かって飛び掛かってきた狼の口の中にマガジンの中の最後の弾丸をお見舞いした僕は、すぐに両手の南部大型自動拳銃をホルスターに戻すと、背中に背負っていたSaritch308PDWを銃剣を展開しながら取り出し、7.62mm弾のフルオート射撃を目の前の狼たちに叩き込んだ。

 

 8mm弾よりも威力のある7.62mm弾が狼たちの頭や胴体を簡単に貫き、闘技場の地面が真っ赤になっていく。

 

(シン、耳を塞いで!)

 

「えっ?」

 

 フルオート射撃で接近してくる狼の群れを血祭りにあげていると、鉤爪で戦っていたミラが僕に向かって叫んだのが聞こえた。ちらりと彼女の方を見てみると、彼女はサウンド・クローの鉤爪を全て射出し、その鉤爪をゴーレムやアラクネに突き刺している。

 

 おそらく、彼女はあの時森の中でドラゴンを倒したあの攻撃を使うつもりなんだろう。耳を塞いでいた筈なのに、耳元でエレキギターの滅茶苦茶な演奏を聞かされたような騒音を発する、ミラの音響魔術だ。ドラゴンをその一撃で倒してしまう強力な攻撃を、この魔物の群れにお見舞いしようとしているんだ!

 

 僕は目の前の狼の口の中にナイフ形銃剣を突き刺すと、噛みつこうとしていた狼の鼻先を思い切り蹴飛ばし、狼たちから逃げ回りながら両耳を塞いだ。

 

 ミラは僕が両耳を塞いだのを確認してから頷くと、魔物の群れを睨みつける。

 

(いくよ。―――響破(きょうは)ッ!!)

 

「わぁっ!!」

 

 その時、またあのエレキギターの無茶苦茶な演奏を耳元で聞かされたような騒音が、闘技場の中に響き渡った。観客席までこの音は届いていないのか、観客たちは相変わらず魔物たちと戦う僕たちを見下ろしながら歓声を上げている。

 

 一緒に闘技場で戦っている僕まで飲み込んだ彼女の強烈な音響魔術の一撃は、ミラが鉤爪を突き刺した魔物の体を森の中で彼女が倒したドラゴンと同じように破壊していた。ゴーレムやアラクネの外殻に亀裂が入り、その亀裂から鮮血が吹き上がっている。しかもその騒音が襲いかかったのは鉤爪を突き刺された魔物たちではなく、僕を追い回していた狼たちや、僕たちの頭の上を飛んでいたハーピーも餌食になったようだった。唸り声を上げながら僕を追っていた狼たちはいきなり白目になると、目と鼻と口から血を流しながら次々に倒れ始める。頭上を飛んでいたハーピーたちも、同じように頭から血を流しながら次々に地面に墜落してくる。

 

 彼女の音響魔術の一撃で、扉の向こう側から現れた魔物の6割が一気に死体に変わっていた。

 

「す、すごいな・・・・・・!」

 

(シン、まだ魔物が残ってるよ!)

 

「よし・・・・・・!」

 

 無数の狼の死体の向こうに、生き残ったゴブリンやアラクネの姿が見える。

 

 彼女の音響魔術の攻撃から生き残っている魔物は4割だ。

 

 僕はSaritch308PDWを背中に背負い、腰のホルスターから南部大型自動拳銃を2丁取り出すと、空になったマガジンを取り外して新しいマガジンを取り付け、端末で生産したこの南部大型自動拳銃専用の必殺技を使うことにした。

 

 大和魂で集中力を強化し、8mm弾による連続射撃を行うスーパーナンブタイムだ。

 

「・・・・・・スーパーナンブタイムッ!!」

 

 2丁のハンドガンを構えて魔物たちを睨みつけると、僕の目の前で呻き声を上げながら襲い掛かろうとしていた魔物たちの動きが、いきなり遅くなり始めたのが見えた。

 

 僕が装備した必殺技のスーパーナンブタイムが発動したんだ。

 

 動きが遅くなったのは魔物だけではなく、観客席に座る観客たちや、僕と一緒に戦っているミラもだった。蜘蛛のような足を振り上げるアラクネや素早く動きながら鉤爪で攻撃しているミラの動きが遅くなる。

 

 この必殺技を発動していられるのは、マガジンの中の弾丸を全て撃ち尽くすか10秒経過するまでだ。だから、急いで敵を攻撃しなければ無駄になってしまう。

 

 僕は動きが遅くなった魔物たちの群れに狙いをつけると、容赦せずに次々にトリガーを引き、8mm弾を放った。あんなに動きが遅い魔物を狙うのは、レベル1の射撃訓練で表示される的を撃ち抜くよりも簡単だろう。

 

 ゴブリンは別に頭を狙わなくても、8mm弾が胴体に被弾すれば一撃で倒せるだろう。でも、アラクネは正確に頭を狙わなければならない。以前に兄さんが森の中でアラクネの群れと戦った時、AN-94の5.45mm弾をあの頭以外を覆っている外殻で弾いてしまったらしいからね。

 

 僕が狙ったのは、ゴブリンとアラクネとハーピーたちだ。ゴーレムもまだ生き残っているようだったけど、ゴーレムの頭に8mm弾を撃ったとしても弾かれてしまうだろう。だから、ゴーレムはミラに任せよう。僕は8mm弾で倒せる魔物を狙うべきだ。

 

 動きが遅くなった魔物たちに、僕が次々に放った8mm弾の群れが襲いかかっていく。両手の南部大型自動拳銃の弾丸を同時に撃ち尽くし、空になったマガジンを取り外した瞬間、発動してたスーパーナンブタイムが解除され、僕が放った弾丸が狙った通りの魔物に次々に突き刺さったのが見えた。

 

 きっと観客からは、僕が2丁拳銃で凄まじい早撃ちをやったように見えただろう。南部大型自動拳銃が放った16発の8mm弾に貫かれて絶命する魔物たちを見つめながら再装填(リロード)を終えた僕は、メガネをかけ直すと、腰に下げていたスモークグレネードを取り出し、安全ピンを引き抜きながら叫んだ。

 

「ミラ、攻めるよッ!!」

 

(了解!)

 

 ミラが一旦魔物の群れから離れ、僕の隣まで凄まじいジャンプ力でジャンプして戻って来る。僕はちらりと隣に立つ彼女を見て彼女が無傷なのを確認してから、ミラを追ってくる魔物たちに向かってスモークグレネードを投げつけた。

 

 真っ白な煙がグレネードから放出され、たちまち唸り声を上げていた魔物たちを包み込んでしまう。

 

「ミラ」

 

(任せて)

 

 ミラは鉤爪をカバーの中に収納すると、背中からSaritch308PDWを取り出し、銃口を煙の中に向けながら目を瞑り始めた。

 

(見つけた!)

 

 セミオート射撃に切り替え、彼女は7.62mm弾を煙の中へと向かって撃ち込んだ。すると煙の中から弾丸に貫かれたアラクネの断末魔が聞こえてきた。

 

 僕が投げたスモークグレネードのせいで敵の姿が全く見えないのに、彼女は煙の中の魔物に弾丸を命中させたんだ。

 

 それは、彼女の音響魔術のおかげだった。ミラは喉を潰されて二度と声を出す事が出来ないんだけど、昔に廃れてしまった音響魔術を使って擬似的に喋る事が出来る。彼女は喉を潰される前の声や、ドラゴンを簡単に倒したあの騒音も出す事が出来るんだ。

 

 しかも、彼女は音響魔術で超音波を出すことも可能らしい。

 

 彼女が煙の中の魔物をセミオート射撃で正確に撃ち抜いたのは、その超音波をソナーのように使って魔物の居場所を探知したからなんだ。

 

 僕のスーパーナンブタイムとミラの音響魔術の一撃で、もう魔物たちを9割も倒している。僕はニヤリと笑いながらメガネをかけ直すと、魔物たちの断末魔が聞こえる煙の中にSaritch308PDWの銃口を向け、フルオート射撃を叩き込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だ、旦那! なんだ今の信也の攻撃はッ!?」

 

 売店で買ってきたアイスココアを飲みながら観戦している俺に、後ろでオレンジジュースを飲んでいたギュンターが言った。

 

 信也はまだ地下の射撃訓練場でレベル1の射撃訓練をクリアしたばかりだ。だからギュンターは、信也にあんな早撃ちが出来るわけがないと思っているんだろう。

 

 確かに信也の射撃技術は未熟だ。でも、あいつの使っている南部大型自動拳銃はサイズの小さい8mm弾を使用するから反動が小さい。その上、あの南部大型自動拳銃や南部小型自動拳銃には、スーパーナンブタイムという専用の必殺技がある。

 

 自分以外の動きが遅くなった中で、マガジンの中の弾丸を撃ち尽くすか10秒経過するまで攻撃できるという強力な必殺技だ。あいつが使ったのは間違いなくそのスーパーナンブタイムだろう。

 

 俺たちから見ればあいつが凄まじい早撃ちをやったように見えるが、あいつはただ必殺技を発動させて、動きが遅くなった敵を次々に狙い撃ちにしただけなんだ。

 

「信也もすごいが、ミラの音響魔術もすごいな」

 

「ああ、響破(きょうは)だな。確かにあの破壊力はヤバいぜ」

 

 腕を組みながら2人の戦いを観戦しているエミリアに、ギュンターがオレンジジュースを飲みながら説明を始める。

 

「音を伝えやすい金属で作られているサウンド・クローの鉤爪を敵に撃ち込んで、相手の脳に音響魔術で増幅した騒音を叩き付けて破壊する技だからなぁ。しかも、鉤爪を撃ち込まれていない敵まで巻き込むんだぜ」

 

『お、恐ろしい技です・・・・・・!』

 

 俺の傍らに浮きながら、フィオナが震えている。

 

 もし銃弾を弾くような外殻を纏った魔物が相手でも、音響魔術を操るミラならば簡単に倒してしまうだろう。

 

 俺はアイスココアのコップを持ってきたお盆の上に置くと、腕を組みながら煙の中に向かって弾丸を撃ち込んでいる2人を見つめた。

 

 おそらく信也はミラに音響魔術で超音波を出してもらい、その超音波をソナーのように使って煙の中の魔物を探知してもらっているんだろう。

 

「・・・・・・ねえ、何あれ?」

 

「ん?」

 

 その時、俺の斜め後ろの席に座って戦いを観戦していたカレンが、空を指差しながら言ったのが聞こえた。俺は腕を組むのを止めながら、仲間たちと共に空を見上げる。

 

「・・・・・・何だ?」

 

 蒼空の中に、鳥のような影が浮かんでいるのが見えた。その鳥のような影は徐々に真下にあるこの闘技場に向かって高度を落とし始めているようだ。

 

 あの影は何だ? 俺は高度を落とし始めたその鳥のような影を凝視し―――端末を取り出しながら立ち上がった。そのまま端末の画面を素早く何度もタッチしてOSV-96と93式対物刀を装備すると、背中に背負っているアンチマテリアルライフルを取り出し、折り畳んであった銃身を展開してから銃口をその上空の黒い影に向けた。

 

 スコープのカーソルの向こう側に見えたのは、何と闘技場に向かって降下してくるドラゴンだったんだ!

 

 どういうことだ? ここは王都の中にある闘技場だぞ?

 

 まさか、あのドラゴンもフィリップが送り込んだのか? 

 

 あの商人はまだ俺たちの銃を手に入れようとしているのか。しつこいな。

 

 俺はため息をつきながら、カーソルの向こうのドラゴンを睨みつけた。

 

 

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