異世界で転生者が現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

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番外編2
黄金の瞳の吸血鬼


 

 

 私の心臓に、1本の剣が突き立てられていた。チンクエディアの刀身を伸ばしたような切っ先を持つ、銀色の刃の剣だ。私の心臓を突き抜いた剣の柄を握りしめているのは、背中から真っ白な羽根を生やした金髪の男だった。

 

 私はこの男と戦い、敗れた。だから心臓に剣を突き立てられているのだ。

 

「――――終わりだ、吸血鬼」

 

 何も言い返さず、目の前の男の顔を見つめながらニヤリと笑った。

 

 今まで私を殺しに来た者は、全員返り討ちにしてやった。だがこの男は私の心臓を貫いている剣と左手に逆手に持っている短剣だけで、この私を倒したのだ。

 

 憎たらしくはなかった。私を倒したのはこの男だ。今まで人々を苦しめていた邪悪な吸血鬼を殺し、人々を救った英雄が目の前にいるのだ。

 

 私の心臓を貫いている剣の刀身に私の鮮血が吸い上げられていく。吸い上げられた私の鮮血は、見たこともない奇妙な文字のような模様となり、そのまま銀色の刀身に刻み込まれていく。

 

 この剣は、神々がこの男のために用意した剣なのだろう。その刀身が、邪悪な吸血鬼の血で汚れてしまったのだ。これでこの剣は、全てを切り裂いてしまう魔剣に成り果ててしまうだろう。

 

「――――ハハハッ」

 

 心臓を貫かれながら、私は笑っていた。

 

 今まで300年間もこの世界を支配してきたが、この最後の戦いが一番面白かった。私を恐れながら大人数で挑んできた騎士たちを蹂躙するよりも、ずっと楽しい戦いだった。

 

「・・・・・・今から、貴様を封印する」

 

「・・・・・・?」

 

 封印だと? 私を封印するというのか?

 

 殺さないのか?

 

「我が剣が貴様の血で汚れてしまった以上、もうこの剣で止めは刺せん。この短剣では力不足だ」

 

 確かに、そんなに私の血で汚れた剣で斬りつけても、私を倒すことは出来ないだろう。燃え盛る炎の中に薪を放り込むのと同じだ。あの短剣で私を斬りつけても、止めを刺す前に同じく私の血で汚れてしまうに違いない。

 

 だが、心臓を貫かれて弱体化している状態ならば、私を封印する事が出来るだろう。

 

「―――いつか、復活するかもしれんぞ」

 

「もしそうなったら、次は勇者に頼む」

 

 勇者か。私に挑んできた者たちの中には、騎士だけでなく勇者だと名乗った者が何人もいた。そんな奴らに私を倒してくれと頼んで大丈夫なのか?

 

「――――さらばだ、レリエル・クロフォード」

 

「ふん。――――さらばだ、大天使」

 

 私の体に、無数の白い模様が浮かび上がり始める。これが私を封印するための魔術なのだろう。その白い光たちはまるで太陽のような光を放ちながら、私の体を覆っていった。

 

 

 

 

 

 

 

「ここなのか?」

 

 馬を近くの木につないだ俺の仲間が、アサルトライフルのAK-47を肩に担ぎながら俺に訪ねた。俺はそいつの質問には答えず、黙って自分の端末を操作してグレネードランチャーを装備したM16A3を装備すると、ハンドガンのコルトM1911A1を点検してから目の前にそびえ立つ屋敷の廃墟を見上げた。

 

 ここはヴリシア帝国の北部にあるダンジョンだ。まだまだ世界中には全く調査されていない危険なダンジョンがあるんだが、このダンジョンは特に危険で、今まで何百人もの優秀な冒険者たちを返り討ちにしている。

 

 その理由は、この屋敷の中や周囲に住み着いている危険な無数の魔物たちが存在するということだ。普通の魔物よりも大型である上に凶暴な化け物が、この屋敷の周囲を徘徊していたんだ。

 

「でもさ、やっぱり銃使ったらすぐ終わったじゃん」

 

「まあな。雑魚だったな」

 

 剣を持った騎士たちならば苦戦したかもしれないが、俺たちが持っているのは転生者の持つ端末で生み出した銃だ。魔物たちをすぐ倒す事が出来た。しかも、まだマガジンを1つしか使っていない。

 

「じゃあ、館に突入するか。俺とこいつで突っ込むから、お前は外で待機してろ」

 

「了解だ」

 

 俺は後ろで屋敷を見ていた仲間の転生者にそう言うと、AK-47を持っている転生者を連れて屋敷の入口へと向かった。

 

 外で待っていろと命令した仲間は、アンチマテリアルライフルのマクミランTAC-50を装備している。もし強敵が出現したら、強烈な12.7mm弾で援護してもらう予定だ。

 

 屋敷の入口のドアはボロボロで、簡単に入ることができそうだった。だが、そのボロボロのドアは開けられたような形跡が全くない。つまり、今までここに冒険者が到達したことはないということだ。

 

 俺は後ろにいる仲間をちらりと見てから、思い切りボロボロになっていたドアを蹴破った。仲間がAK-47の銃口を中に向けながら屋敷の中へと突入していく。

 

「・・・・・・なにもいない」

 

「弾丸をぶっ放す必要はなさそうだな」

 

 屋敷の中をアサルトライフルに装着したライトで照らしながら俺は呟いた。どうやら屋敷の中に魔物はいないらしい。

 

「じゃあ例の物を探すか」

 

「ああ。とっとと済ませよう」

 

 俺たちがこの気味の悪い屋敷を訪れたのは、ある物を回収するためだった。

 

 このヴリシア帝国の北部にある屋敷には、大昔に大天使によって封印された邪悪な吸血鬼が眠っているという伝説がある。俺たちが回収しに来たのは、その封印されている吸血鬼の棺だった。

 

 俺たちの所属している組織の本部にそれを持ち帰ることが、俺たちの任務だったんだ。

 

「くそ。階段が崩れてる」

 

「飛び越えろ。俺たちのステータスなら簡単だろうが」

 

「面倒だなぁ」

 

 まるでへし折られたかのように崩れている階段を踊り場までジャンプして飛び越え、2階に続く階段を警戒しながら登っていく。

 

 やはり、館の中にも誰も入ったような形跡はなかった。今までこの屋敷を目指してやってきた冒険者たちは、外にいた魔物たちに殺されてしまったんだろう。だからこの屋敷についての情報は全くない。

 

 もし吸血鬼の棺が見つからなかったとしても、このダンジョンの情報を売れば大金を手に入れる事が出来る。生きて帰ることさえ出来れば利益があるんだ。

 

『おい、聞こえるか?』

 

「どうした?」

 

 無線機から聞こえてきたのは、外に待機させておいた仲間の声だ。

 

『2階の西側の窓の近くに、何か置いてあるぞ』

 

「何か?」

 

『分からん。確認を頼む』

 

「見てみようぜ」

 

「分かってる」

 

 俺は階段を3階へと上ろうとはせずに、そのまま埃まみれの廊下を歩いた。壁に飾られている絵画はすっかり埃で見えなくなっていて、黄金の額縁は錆びてしまっている。彫刻も崩れていて、どのような形状だったのか分からなくなっていた。

 

 歩く度に絨毯の埃が舞い上がる。間違って埃を吸ってしまった仲間が、俺の隣で咳き込んでいた。マスクでもしておくべきだったかもしれない。

 

「あれか?」

 

「ん?」

 

 俺はライトで廊下の月当たりの窓の近くに鎮座している物体を照らしながら仲間に言った。

 

 ライトで照らし出した廊下の月当たりに鎮座している物体は、やっぱり埃で覆われていたが、棺のように見えた。俺はその棺のような物体に駆け寄ると、ライフルから手を離してその棺の表面の埃を払った。灰色の埃の下から出てきたのは赤黒い木製の棺の蓋で、表面には白い何かの文字のような模様が浮かび上がっているのが見える。明らかに普通の棺ではなかった。

 

「・・・・・・これか?」

 

「これだな。伝説の吸血鬼の棺だ」

 

 棺に触れながら、俺は仲間に言った。

 

 間違いなくこの棺だ。この中に、大昔に世界を支配していた伝説の吸血鬼が封印されているんだ。

 

「聞こえるか? 棺を発見した。表面に変な模様が刻まれてる」

 

『おそらく、伝説の大天使が封印の際に使った魔術だろう。運び出せそうか?』

 

「2人でならな。これを組織に持ち帰ってダンジョンの情報を売れば、大金持ちだぜ」

 

「よし、早く運び出そうぜ」

 

 仲間がライフルを背中に背負い、棺に触れようとしたその時だった。

 

 埃まみれの棺の表面に刻まれていた白い模様が、いきなり消滅したんだ。

 

「なっ・・・・・・?」

 

「何だ!? 封印が―――」

 

『おい、どうした!?』

 

「棺の封印が――――」

 

 仲間が無線機を掴み、慌てて外にいる狙撃手に報告をしている。俺は棺にアサルトライフルを向けながら数歩下がると、ホロサイトを覗き込んで照準を吸血鬼の棺へと向けた。

 

 あの模様は大天使が吸血鬼を封印するために魔術を使った際に刻まれた模様だ。それがいきなり消えたということは、封印が解けたということになる。

 

 ということは、まさかあの吸血鬼が目を覚ますということか!?

 

 そんな馬鹿な―――。

 

「――――ガッ!?」

 

「!?」

 

 その時、いきなり無線で狙撃手に報告していた仲間の慌てた声が奇妙な呻き声で途切れたのが聞こえた。俺はホロサイトから恐る恐る目を離し、仲間に何が起きたのか確認する。

 

「・・・・・・!!」

 

 無線で報告を続けていた仲間の転生者は、棺の表面を突き破って出現した腕で喉を貫かれ、痙攣していた。埃で灰色になったカーペットの上に仲間の血が滴り落ち、埃まみれのカーペットの上に気味の悪い模様を刻み込む。

 

 俺は慌ててM16A3の照準を仲間の喉を貫いた吸血鬼の物と思われる腕に合わせると、そのままフルオート射撃を叩き込んで引き千切ってやろうとした。確かにこの棺の中に眠っている吸血鬼は、大昔に世界を支配した吸血鬼だ。だが、俺が持っている武器はこの世界に存在しない銃だ。連続で弾丸を放つ事が出来る強烈なアサルトライフルなんだ。外にいた凶暴な魔物だって、簡単に倒せたんだぞ。

 

 トリガーを引こうとした瞬間、仲間の喉を貫いていた吸血鬼の腕が引き抜かれ、血まみれになった腕がゆっくりと棺の中に引っ込んでいった。

 

 そして、穴の開いた棺の蓋が静かに開き始めた。

 

「ひっ・・・・・・!」

 

 左手をグレネードランチャーのトリガーに近づけ、俺は後ずさった。

 

 仲間の転生者のレベルは100を超えていた。ステータスもかなり強化されていたから、どんな攻撃でも簡単に回避できるスピードと強烈な攻撃でも耐えることのできる防御力を持っていた筈なんだ。なのに、一撃で喉を腕で貫かれてしまったんだ。

 

 ついに棺の蓋が埃まみれの床の上に落下し―――その中から、黒髪の男がゆっくりと起き上がる。

 

 この男が、大昔に世界を支配した伝説の吸血鬼だ。黄金の瞳を持つ30歳ほどの男で、漆黒のコートに身を包んでいた。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

 俺は絶叫しながらグレネードランチャーのトリガーを引くと、更にアサルトライフルのトリガーを引き、グレネード弾が直撃した吸血鬼に5.56mm弾のフルオート射撃をお見舞いしていた。

 

 普通の魔物ならば40mmグレネード弾だけで粉砕する事が出来る。でも、こいつはグレネード弾だけでは倒すことは出来ない。こいつはレベル100以上の転生者を瞬殺した怪物なんだ!

 

 グレネード弾が吸血鬼の腹に突き刺さり、爆風が周囲の埃を吹き飛ばす。

 

 だが、その吸血鬼はグレネード弾が生み出した爆発の中からすぐに姿を現した。腹はグレネード弾と爆風に抉られているというのに、無表情のままだ。体中に5.56mm弾を叩き込まれてもそのまま俺の方に歩いて来る。

 

「・・・・・・!」

 

 グレネード弾で抉られた吸血鬼の腹の傷が、段々塞がり始めているのが分かった。引き裂かれた肉が再び繋がり、皮膚がその肉を覆っていく。

 

「そ、そんな・・・・・・!」

 

 吸血鬼がゆっくりと俺に近づき、鋭い牙のある口を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ギャアアアアアアアアアアアアアアッ!!』

 

「くそッ! 化け物め!!」

 

 無線機から聞こえてきたのは、屋敷の中に突入した仲間の断末魔だった。スコープの向こうには、窓の奥で吸血鬼に血を吸われながらじたばたと暴れる仲間の転生者の姿が見える。

 

 だが、やがて彼の手足は動かなくなり、無線機の向こうから聞こえてくる断末魔も聞こえなくなった。

 

 血を吸い尽くされ、彼は絶命してしまったのだろう。

 

「くそったれ・・・・・・!」

 

 グレネード弾に直撃しても、あの怪物は死ななかった。間違いなくあの怪物がこの世界を300年も支配していた伝説の吸血鬼なんだ。

 

 俺はマクミランTAC-50の銃口を窓の奥に立っている吸血鬼へと向けた。アンチマテリアルライフルの12.7mm弾の破壊力ならば、もしかしたらあの怪物に通用するかもしれない。もし通用しなかった場合は、すぐにこの場から逃げて組織に報告しなければならない。

 

 屋敷に突入したあの2人は間違いなく死んでいる。片方は目の前で血を吸われていたんだ。生きている筈がない。

 

 窓の向こうで、まだあの怪物は突っ立っている。狙撃するのは簡単だった。

 

「―――くたばれッ!!」

 

 その怪物に向かって、俺はアンチマテリアルライフルのトリガーを引いた。

 

 猛烈な轟音とマズルフラッシュと共に放たれた12.7mm弾が、屋敷の2回の窓に向かって突っ込んでいく。窓ガラスを簡単に突き破った弾丸はそのまま無数のガラスの破片と共に吸血鬼の頭に突き刺さると、口元に仲間の血を付着させたままの吸血鬼の首を引き千切り、頭を突き破りながら埃だらけの汚い壁に叩き付ける。

 

 頭が千切れ飛んだんだ。これでくたばった筈だ―――。

 

「―――なっ!?」

 

 千切れ飛んだ首から血を吹き上げながら崩れ落ちた吸血鬼の体が、スコープの向こうで起き上がったのが見えた。その体は壁に叩き付けられてぐちゃぐちゃにされた自分の頭を拾い上げると、頭に刺さったガラスの破片を引き抜きながら自分の首に再びくっつけようとする。

 

「死ねよ・・・・・・! 死んでくれよ、怪物がぁッ!!」

 

 ボルトハンドルを引いて12.7mm弾のでかい薬莢を排出した俺は、今度は首を拾い上げた吸血鬼の胴体に照準を合わせていた。

 

 そして、再びトリガーを引いていた。

 

 2発目の12.7mm弾も窓を突き破り、吸血鬼の胴体のやや左側を貫通する。心臓に命中したはずだ。肉片のこびりついた胸骨の破片や心臓の破片を屋敷の中にぶちまけ、頭を胴体にくっつけようとしていた吸血鬼が再び崩れ落ちる。

 

 今度は心臓を撃ち抜いてやったぞ。

 

「―――ば、馬鹿な!?」

 

 だが、吸血鬼はまたしても起き上がった。弾丸で貫かれた胸の風穴を再生させながら、両手に持っていた自分の首を胴体にくっつけて再生させ、窓の奥から俺の方を見つめている。

 

 仕留められなかった―――。

 

「くそっ!!」

 

 俺はマクミランTAC-50を背中に背負うと、すぐに立ち上がって走り出した。

 

 アンチマテリアルライフルで頭と心臓を狙撃しても仕留められなかった。あのまま狙撃を続けても、あの吸血鬼を倒せる可能性は低い。

 

 何とか組織の拠点まで戻って、あの吸血鬼の事を報告しなければならない。こんなところで死ぬわけにはいかなかった。

 

 俺の3つのステータスの中で一番高いのはスピードだ。転生者を2人も殺した怪物でも、俺に追いつくことは不可能だろう。

 

「な、なんだ・・・・・・!? 蝙蝠・・・・・・?」

 

 森の中を高速で突っ走っていると、俺の周りに漆黒の蝙蝠が集まり始めた。そいつらは俺と同じ速度で飛びながら俺を取り囲むと、俺の頭上に集まって真っ黒な塊に変貌していく。

 

 そして、その頭上の真っ黒な塊が人のような形になり、俺の目の前に先ほど狙撃していた黄金の瞳の吸血鬼が黒いコートを身に纏って舞い降りた。

 

「ひぃっ!?」

 

「・・・・・・・・・」

 

 まさか、屋敷の中から俺に追いついたのか!? 

 

 そんな馬鹿な。あり得ない!

 

「ば、馬鹿な・・・・・・!!」

 

「・・・・・・・・・」

 

 吸血鬼がニヤリと笑いながら、ゆっくり俺の方に歩いて来る。

 

 俺はホルスターの中から慌ててコルトM1911A1を引き抜き、迫ってくる吸血鬼に向かってトリガーを何度も引いたが、何発も.45ACP弾を叩き込まれても、目の前の吸血鬼は立ち止まらなかった。

 

 そして、吸血鬼が笑いながらハンドガンを構える俺の両腕を掴み、俺の首に牙を突き立てた。

 

「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

 伝説の吸血鬼に血を吸われながら、俺も仲間たちと同じように絶叫していた。

 

 

 

 

 

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