異世界で転生者が現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

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カレンとギュンターが吸血鬼の少女を追撃するとこうなる

 

 兄さんとエミリアさんが調査に向かった奴隷の店は、大通りの向こうにある広場に建っている。建物の窓の向こうには奴隷を入れておくための牢屋の鉄格子が見えるし、その鉄格子の向こうには首輪を付けられたエルフと思われる奴隷の女の人が立っているのが見えた。彼女は誰かに買われてしまったらしく、店員が檻の鍵を開けて彼女を連れ出そうとしている。

 

 エルフの女性の叫び声が、入口の向こうから聞こえてきた。

 

「ミラ、フードを」

 

(うん)

 

 今から僕とミラが入ろうとしている店は奴隷を売っている店だ。僕は人間だから問題ないけど、ミラは奴隷として売られることもあるハーフエルフであるため、フードをかぶって耳を隠しておいた方がいい。彼女の黒いチャイナドレスのような制服をデザインしてくれたフィオナさんは、彼女が耳を隠せるようにフードを付けてくれたに違いない。

 

 でも、ミラはエルフのお母さんに似たらしく、肌は他のハーフエルフよりも白い。だからフードをかぶって耳を隠しておけば、もしかしたら人間だと思ってもらえるかもしれない。

 

 僕は軍帽をかぶり直すと、フードで耳を隠したミラと一緒に奴隷を売っている店の入口へと向かった。入口を警備している2人の騎士が、黒い制服を身に纏っている僕たちに向かって槍を向けてくる。

 

「変わった格好だな。モリガンか?」

 

「え? 知ってるんですか?」

 

「ああ。この国でも有名な傭兵ギルドだし、昨日もここに来たぞ」

 

 兄さんとエミリアさんの事だ。僕たちは被害者が吸血鬼に襲われた場所を調査していたんだけど、兄さんとエミリアさんはこの店で逃げ出した吸血鬼の少女の事を調べていたんだ。

 

「例の吸血鬼の奴隷を調べに来たのか?」

 

「は、はい」

 

「そうか。よし、いいぞ」

 

 2人の騎士はそう言うと、僕たちに向けていた槍を退けてくれる。僕は彼らに「ありがとう」と言ってから、フードをかぶって後ろに立っていたミラを連れて店の中へと足を踏み入れた。

 

 店の中に並んでいるのは奴隷の入った牢屋だった。人間以外の様々な種族の奴隷が手枷や足枷を付けられた状態で中に入っていて、店に入った僕たちの事を睨みつけてくる。

 

 店員を探すために店の奥へと歩き出すと、さっき檻の中から連れ出されたエルフの女性が、手枷を付けられたまま立派な服を着た貴族の中年の男性に連れて行かれるのが見えた。その奴隷の女性は涙を流して俯きながら、店の外へと向かって歩いていく。

 

「・・・・・・!」

 

 僕は思わず彼女を無理矢理連れて行こうとする貴族の男性に向かって走り出しそうになった。でも、彼女を助け出すためにこのままあの貴族の男性に襲い掛かってしまったら、この店の店員から吸血鬼の奴隷の話を聞けなくなってしまう。僕たちが受けている依頼はこの帝都で人々を襲っている吸血鬼を倒す事だ。

 

 右手を額に当ててため息をついた僕は、後ろで僕を止めようとしていたミラに「ごめん、大丈夫だよ」と言ってから再び奥に向かって歩き出した。

 

 奴隷たちを助けてあげたいけど、僕たちはこの店の店員から吸血鬼の奴隷の話を聞かなければならない。だから奴隷を助けるためにここで銃をぶっ放すわけにはいかなかった。

 

「すいません」

 

「はい、何でしょうか?」

 

 奴隷のいなくなった空の鉄格子の前で鍵をかけていた店員を見つけた僕は、その店員を呼び止めながら早足で近づいていく。

 

「モリガンという傭兵ギルドに所属している者です。3週間前にここから逃げ出した吸血鬼の奴隷について聞きたいのですが」

 

 兄さんたちがここで調査したのはその奴隷の入っていた鉄格子と破壊された壁だ。中に入っていた吸血鬼は長い間血を与えられずに衰弱した状態だった。でも、その吸血鬼が入っていた鉄格子は何かで押し広げられたようにへし折られていたらしい。

 

 痩せ細った吸血鬼の奴隷にそんな事が出来るのか? しかも、吸血鬼は他の種族よりも身体能力が非常に高い危険な種族だから、痩せ細っているとはいえ他の奴隷たちのように更に手枷や足枷を付けておく筈だ。

 

 誰かが逃がしたのかもしれない。だから僕は、その部屋を調べるのではなく、店員にその部屋に入った客の事を聞くつもりだった。

 

「逃げ出した日に、その部屋に入った客は覚えていますか?」

 

「あの日に部屋にご案内したお客様ですか? ・・・・・・確か、黒いコートを着た30代くらいの男性のお客様がいらっしゃいました」

 

「30代の男性?」

 

 確か、吸血鬼の餌食になった被害者は10代や20代の男女ばかりだった筈だ。僕はメモ帳を取り出して犠牲になった人々の年齢を確認したけど、やっぱり僕が鉛筆でメモをした年齢の項目の中の数字には30以上の数字はない。

 

「・・・・・・ありがとうございました。行くよ、ミラ」

 

(う、うん)

 

 僕は客の事を教えてくれた店員に礼を言うと、再び奴隷たちを助けようとする前にミラの手を引いて店の外へと早足で向かう。

 

 もしかすると、その30代の男性が吸血鬼の奴隷を連れ出したのかもしれない。その男性の死体が見つかっていないということは、その男性は吸血鬼の奴隷を連れ出した後に彼女に襲われていないということだ。

 

 何者なんだろうか? 

 

 そういえば、その吸血鬼の少女が逃げて行った部屋の外にある建物の屋根の上で、2人の少年の死体が見つかっているんだよね。他の死体は血を吸われた傷痕だけなのに、その2人の死体だけ腹に何かで貫かれていたような大穴が開いていた筈だ。

 

 その連れ出した人物がやったんだろうか?

 

「――――ミラ」

 

(どうしたの?)

 

「屋根の上で見つかった2人の少年の死体にだけ大穴が開いていたんだよね? でも、他の死体は血を吸われた傷痕だけだった。・・・・・・最初の2人にそんな大きな傷があるのは、もしかしたらその30代の男性が吸血鬼を連れ出した後、その少年たちと戦って・・・・・・」

 

 衰弱した状態の吸血鬼では、その2人の少年と戦える筈がない。間違いなく彼女を連れ出した人物が少年たちを返り討ちにした筈だ。

 

 そして、腹に大穴を開けて殺す事が出来る力を持っているのは、この世界では転生者か吸血鬼しかいない。

 

「―――ミラ、兄さんたちに連絡を」

 

(分かった!)

 

 吸血鬼の奴隷を連れ出した人物がまだ彼女と一緒に行動しているならば、その吸血鬼の奴隷以外にもう1人の吸血鬼か転生者と戦う羽目になるかもしれない。

 

 拙いぞ――――。

 

『こちら力也。吸血鬼の少女を発見した。現在、彼女はホワイト・クロックの方へと屋根の上を移動している。誰か追撃を頼む』

 

『―――こちらギュンター! 了解だ。任せてくれ、旦那!』

 

『頼んだぞ、ギュンター!』

 

 すぐに兄さんたちと合流しよう。兄さんたちはもう吸血鬼の少女を発見し、攻撃を開始したようだ。ホワイト・クロックの方へと逃げた彼女を、ギュンターさんたちが追撃するらしい。

 

 僕はミラの手を引くと、広場から大通りへと慌てて走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 屋根の上を走っていた吸血鬼の少女の足に弾丸をお見舞いし、路地へと叩き落とした私は、ペレット・レイピアとマンゴーシュを引き抜いてギュンターと一緒にその路地に向かったわ。

 

 大通りからその路地へと入り込むと、壁や地面に足を撃たれた少女の血痕が付着しているのが見えた。私がこの路地に叩き落とした筈の吸血鬼の少女は、路地の奥にある木箱の向こうに座り込んでいるようだった。

 

 血まみれの上着とミニスカートを着ていて、背中には穴だらけのマントを羽織っているようだったわ。座り込んでいる彼女の右足の足首から先は直撃した銀の5.56mm弾によってへし折られていて、彼女はその右足を再生させている最中だった。

 

 筋肉が伸びて千切れかけの足首から先の筋肉に絡みつくと、そのまま足首から先を引き寄せ、砕かれた骨が足首から先に向かって伸びていく。骨がくっつくとその骨を筋肉や他の肉が包み込んでいって、傷口を彼女の皮膚が飲み込んだ。

 

 少女は足首を回してから立ち上がると、レイピアを持っている私を睨みつけたわ。

 

「――――さっきの奴らの仲間ね?」

 

 きっと、エミリアと力也の事ね。

 

 私は彼女に「・・・・・・そうよ」と答えると、ペレット・レイピアの切っ先を彼女に向けた。私の隣に立っているギュンターも、ホロサイトを装着したショットガンのUTS-15の銃口を少女に向ける。もちろん、彼のショットガンに装填されているのは銀の散弾だった。

 

「へえ。薄汚いハーフエルフも一緒なのね」

 

「・・・・・・彼は私の仲間よ。薄汚くないわ」

 

 隣のギュンターを睨みつけながら吸血鬼の少女は彼を侮辱した。確かにハーフエルフは奴隷にされる上に他の種族から迫害されることがある。

 

 彼は女湯を覗こうとする変態ハーフエルフだけど、私の大切な仲間なの。屈強で仲間を大切にする立派な奴なのよ。

 

 だから、馬鹿にして欲しくない。

 

「カレン・・・・・・」

 

「ギュンター、援護をお願い。私が突っ込むわ」

 

「おうッ!」

 

 隣に立っていたギュンターは頷くと、いきなり目の前の少女に向かってショットガンのトリガーを引いたわ。銀の散弾が路地の建物の壁に傷を付けながら、木箱の向こうに立っている少女に襲い掛かる。

 

 少女は回避しようとしたけど、この路地は狭かった。彼女はジャンプして迫ってくる銀の散弾の群れを回避しようとしたみたいだけど、ジャンプした瞬間に両足の太腿の部分を銀の散弾に食い破られてズタズタにされてしまい、まるで転んだようにそのまま目の前の木箱に叩き付けられる。

 

 ギュンターがポンプアクションを済ませている間に、私はレイピアを構えて走り出した。少女は木箱の破片の中から起き上がりながら、上半身に突き刺さった木箱の破片を引き抜いて傷口を再生させている。

 

「はぁっ!!」

 

「!」

 

 少女が起き上がって私の方を見た瞬間に、私は彼女の顔面に向かってレイピアを思い切り突き刺していた。力也が端末で作ってくれた漆黒のレイピアは彼女の右目の上に突き刺さると、頭蓋骨を簡単に突き抜けてしまう。私は彼女の頭を貫通したレイピアをすぐに引き抜くと、今度はその血まみれのレイピアを彼女の喉元に向かって突き刺した。

 

 喉を貫かれた吸血鬼の少女が呻き声を上げる。レイピアを引き抜きながら彼女の顔を睨みつけると、なんともう最初に突き刺した右目の上の傷口が塞がっていたわ。引き抜いたばかりの喉元の傷口も、もう再生し始めている。

 

 銀の弾丸と木箱の破片でズタズタになった傷口も塞がっていた。

 

「くそッ! もう再生してやがる!!」

 

 なんという再生能力なの!?

 

「くっ!」

 

「お姉さんの血は美味しそうね・・・・・・!」

 

 少女は笑いながら長い爪の生えた白い腕を振り上げると、その爪をレイピアを引き抜いたばかりの私に向かって振り下ろしてきたわ。

 

 私はすぐに後ろに下がりながら、左手のマンゴーシュで彼女が振り下ろしてきた爪を受け止めたわ。まるでサーベルを受け止めたような音がしたけど、力也が作ってくれたマンゴーシュの細い刀身には亀裂は入っていなかった。

 

 マンゴーシュに受け止められた爪を押し込んでくる少女。私は小さい頃から剣術や弓矢の訓練を受けていたんだけど、訓練を受けていた私よりも吸血鬼の少女の腕力の方が強かった。彼女の爪を受け止めていたマンゴーシュが、段々と私の顔に近づいて来る。

 

「ふふふっ」

 

「・・・・・・!」

 

 爪を押し込みながら彼女はニヤリと笑うと、彼女の爪をガードしている最中の私に向かって、もう片方の腕の爪を突き出して来たの。

 

 私は慌ててレイピアでその爪をガードしようとするけど、マンゴーシュで受け止められている爪を彼女がさらに押し込んだせいで、ぐらりと私の体が揺れてしまい、そのまま体勢を崩してしまう。

 

 そのせいで爪を受け止める筈だったレイピアがずれてしまった。

 

「さようなら、お姉さん」

 

 私をあの爪で突き刺そうとしている少女が、楽しそうにそう言った。

 

 長い爪の生えた白い腕が、私の右手が持っているレイピアの傍らを突き抜けてきたその時だったわ。私の右側からいきなり筋肉の付いた浅黒い腕が伸びてきて、私の腹を貫こうとしていた少女の白い腕を掴んだの。

 

 その浅黒い腕が彼女の腕を掴んでくれたおかげで、吸血鬼の少女の爪は私の制服の表面に少し触れたところで止まったわ。

 

「え・・・・・・!?」

 

「―――ふざけんなよ、吸血鬼が」

 

 彼女の腕を掴んでいたギュンターは吸血鬼の頭にショットガンを向けると、彼女がマンゴーシュから爪を離して避けようとするよりも先にトリガーを引き、至近距離で彼女の顔面に銀の散弾を叩き込んだ。

 

 彼女の頭を銀の散弾の群れが飲み込んだ。肉片が剥がれ、長い銀髪が銀の散弾に切り裂かれていく。

 

 ギュンターは掴んでいた彼女の腕から手を離すと、UTS-15のポンプアクションを済ませ、上顎から上をズタズタにされた少女の胸に銃口を押し付けた。

 

 至近距離で銀の散弾を心臓に叩き込むつもりなのね!

 

「死ねッ!」

 

 ギュンターは顔を再生し始めた吸血鬼の少女を見下ろしながら叫ぶと、ショットガンのトリガーを引いた。

 

 

 

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