異世界で転生者が現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

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カレンとギュンターの猛攻

 

 奴隷の店の鉄格子が置かれていた部屋から実体化を解除したまま外に出た私は、そのまま空を飛んでホワイト・クロックの方へと向かっていた。

 

 本当ならば信也君とミラちゃんと一緒に行動することになっていたんだけど、力也さんにもう一度あの奴隷の店の部屋を調べてほしいと頼まれたから、私はこっそり実体化を解除してあの部屋を調べていた。

 

 私は幽霊だから姿を消す事が出来るんだけど、実体化を解除して姿を消していると霊感の強い人しか私を見る事が出来なくなってしまうため、ギルドの皆と一緒にいる時は実体化して生活している。

 

 この姿を消す事が出来る能力は、こっそり調査する時に便利だ。壁を自由にすり抜けることもできる。そのおかげで、あの店を警備していた騎士や店員には見つかっていない。

 

 力也さんたちはもう吸血鬼の少女を発見して、ギュンターさんたちに追撃をお願いしたみたい。皆は私の作ったエリクサーを持っているけど、そのエリクサーを全部飲んでしまったら自力で傷を治療することが出来なくなってしまう。だから、私も急いで皆と合流しないといけなかった。

 

『・・・・・・?』

 

 真っ黒な煙突の上を通過した時、大通りを歩いている人が私の方を見上げているのが見えた。真っ黒なコートに身を包んだ、30代くらいの背の高い男の人だった。

 

 霊感の強い人なのかな? もしかしたら、私の姿が見えているのかもしれない。

 

 再び前を見てホワイト・クロックの方へ向かおうとした瞬間、その私を見上げていた人が、飛んで行こうとする私を見ながらニヤリと笑ったのが見えた。

 

『!?』

 

 その人が笑っているのを見た瞬間、私はぞっとしてしまった。

 

 発生源が存在しない恐怖が、私の心にそのまま叩き込まれたような感じがする。あの人が私を見て笑ったのを見ただけで、私はあの人を怖がっているようだった。

 

 あの人は何者なの!?

 

『い、急がないと・・・・・・!』

 

 私はその人から目を逸らすと、慌ててホワイト・クロックの方向へと向かって再び飛び始めた。帝都の中心の方に鎮座するあの巨大な白い時計塔の近くの路地からは、銃声のような轟音も聞こえてくる。

 

 きっと、ギュンターさんたちはあそこで戦っているんだ!

 

 力也さんから貰った灯の杖の柄を握りしめた私は、その路地に向かって高度を落としながら飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「嘘でしょ・・・・・・!?」

 

 俺の隣で、血まみれの服を身に纏ってまた起き上がった少女を見ていたカレンが呟いた。俺とカレンの目の前に立っている金髪の少女の顔面はさっきまで銀の散弾で抉られてズタズタにされていた筈なのに、剥き出しになっていた筋肉や頭蓋骨はもう再生した皮膚に飲み込まれてしまっている。

 

 彼女の再生能力が高いのはもう知っている。でも――――俺は至近距離で、彼女の心臓に吸血鬼の弱点の銀の弾丸を叩き込んで、心臓を粉々にしてやった筈だ。なのに何であいつの心臓は再生してるんだよ!?

 

「馬鹿な・・・・・・! 心臓を吹き飛ばしたんだぞ!?」

 

「残念ねぇ・・・・・・」

 

 銀の散弾に突き破られた彼女の胸の風穴が塞がっていく。再生はさっきカレンがレイピアで串刺しにしてた時よりも遅いけど、弱点の銀の弾丸を心臓に撃ち込んでもこいつはまだ生きている。

 

 どういうことなんだよ!?

 

「銀は苦手よ。でも・・・・・・これだけじゃ死なないわ」

 

「くそ・・・・・・!」

 

 俺はUTS-15のポンプアクションをしてから、路地を包み込んでいる霧を睨みつけた。この霧がなければ吸血鬼の弱点の日光が彼女に襲い掛かっている筈だ。霧がかかっているこの状況は、日光のない夜に吸血鬼に挑んでいるのと同じじゃねえか!

 

 あの吸血鬼にロケットランチャーを叩き込んでやりたいが、路地の向こうには大通りがあるし、民間人がその大通りで買い物をしている。爆発で彼らを巻き込むわけにはいかない。

 

 俺はホロサイトの向こうでニヤリと笑った少女を睨みつけ、もう一度銀の散弾をぶっ放した。散弾は何発か路地の壁に激突して逸れてしまったが、殆どの散弾が吸血鬼の少女に襲い掛かってくれた。彼女の血まみれの服にまた風穴が開き、何発も散弾を喰らった彼女の左腕が肉片をまき散らしながら後ろに千切れ飛んで行く。

 

 でも、彼女はまだ笑ったままだった。左腕の肘から先が千切れているのに、まだ笑っている。

 

「あはははははッ!」

 

「ぐっ!」

 

 散弾に千切り取られた左腕の断面から再び骨と筋肉を生やしながら、傷だらけの状態で彼女は俺たちに向かって突っ込んでくる! 俺はもう1発散弾を叩き込んでやろうかと思ったが、それを命中させたとしてもあの吸血鬼は傷口を再生させながらまた襲いかかってくるだろう。

 

 俺はすぐにショットガンを背中に背負い、腰から液体金属ブレードの柄を引き抜いた。すぐにボタンを押して液体金属を柄の中から出現させ、サーベルくらいの長さで片刃の刀身を形成すると、突っ込んでくる彼女に向かって斬りかかっていく。

 

「だぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

「あははははははははははッ!!」

 

 こいつの左腕はまだ再生が終わっていない。でも、もう傷口から手首の辺りまで腕が生えている。おそらくすぐにあの左腕も再生が終わってしまうだろう。

 

 彼女が振り回してきた右腕の爪を左に回避した俺は、攻撃を外した彼女の右側の脇腹を思い切り蹴り飛ばした。肋骨をへし折られた彼女は口から血を吐き出しながら、路地の壁に叩き付けられる。

 

 俺はすぐに壁に叩き付けられた彼女に向かって接近すると、右下から左上へと向かって液体金属ブレードで斬りつけようとする。

 

「ギュンター!」

 

「!!」

 

 彼女に向かって液体金属ブレードの刀身を叩き付けようとした瞬間、吸血鬼の少女は再生を終えたばかりの左手を自分が叩き付けられていた壁に押し当て、その壁から漆黒の棘のようなものを出現させた。

 

 おそらく闇属性の魔術だ。吸血鬼は様々な魔術を使いこなすが、一番得意な魔術の属性は闇属性らしい。

 

 俺は慌てて体を再び左側に傾けた。だが、彼女に向かって接近している最中にいきなり漆黒の棘を出現させられたから、その棘は俺の右側の脇腹を少しだけ抉った。

 

 でも、全く問題ない。フィオナちゃんが作ってくれたエリクサーを飲まなければならないような致命傷じゃない。

 

「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇッ!」

 

 俺は絶叫しながら、再び漆黒の棘を召喚しようとしていた彼女の首に向かって液体金属ブレードの切っ先を突き込んだ。切っ先が彼女の首の骨を砕き、貫通した刃が彼女の後ろの建物の壁に突き刺さる。

 

「ガァァァァァァァァ!」

 

 口から血を流しながら叫ぶ吸血鬼。俺は左手を液体金属ブレードの柄から離すと、腰のホルスターからプファイファー・ツェリスカを引き抜き、銃口を再び彼女の心臓の辺りに突き付けた。このでっかいリボルバーに装填されているのは銀の.600ニトロエクスプレス弾だ。再生し始めてもすぐに次の弾丸を叩き込んでやるぜ!

 

 プファイファー・ツェリスカのトリガーを引いた瞬間、彼女の胸に大穴が開いた。肉片が路地の地面に落下し、至近距離で強烈な弾丸を心臓に撃ち込まれた吸血鬼の少女がまるで泣き始めたように両目から血を流す。

 

 これで死んだか?

 

 銃口を離そうとしたが、彼女の傷口がまた塞がり始めたのが見えた。間違いなく今ぶち込んだ.600ニトロエクスプレス弾は彼女の心臓を木端微塵にした筈だ。だが、また再生が始まっている。

 

「くそ・・・・・・! 何で再生するんだよ!!」

 

 左手の親指でシリンダーの方へと潜り込んでいる撃鉄(ハンマー)を引っ張り出し、俺はもう一度トリガーを引いた。凄まじいマズルフラッシュが再生し始めた彼女の肉を焼き、その中から現れた.600ニトロエクスプレス弾が再生を終えた心臓をまた吹っ飛ばす。

 

 それでも、また彼女の心臓は再生を始めた。俺は吸血鬼の再生能力に驚きながらまた撃鉄(ハンマー)を引っ張り出そうとしたが、彼女が背後の壁からまたあの漆黒の棘を召喚し、それを右手で引き抜いた瞬間、すぐに彼女の心臓の辺りから銃口を離して後ろにジャンプする。

 

「私は吸血鬼なのよ?」

 

 ニヤリと笑いながら、彼女は右手で壁から引き抜いた漆黒の棘の先端部を俺たちに向けてくる。その棘はいつの間にかカレンが持っているレイピアのような形状に変貌していた。

 

「ギュンター、任せて!」

 

「おい、カレン!」

 

 プファイファー・ツェリスカのシリンダーの中から空になった薬莢を取り出していると、レイピアとマンゴーシュを構えたカレンが俺の後ろから彼女に向かって走っていく。

 

 彼女は吸血鬼の少女が突き出した黒いレイピアの切っ先を躱すと、自分のペレット・レイピアを彼女の腹に突き刺し、すぐに引き抜いて心臓に切っ先を突き立てる。

 

 でも、吸血鬼の少女は次々にレイピアで体を貫かれているにもかかわらず漆黒のレイピアで反撃してくる。彼女はもうカレンの攻撃をガードしていなかった。

 

 カレンは左手にマンゴーシュを持っているが、自分が攻撃した瞬間にそのマンゴーシュで敵の攻撃をガードするのは難しいだろう。敵がカレンのレイピアで串刺しにされてすぐに死ぬなら問題ないんだが、彼女が戦っている相手は心臓を銀の弾丸で吹っ飛ばされても再生する化け物だ。彼女が何度レイピアの切っ先を突き立てても、あの化け物はそのまま反撃してくる。

 

 どうすれば倒せるんだ?

 

 俺はプファイファー・ツェリスカのシリンダーに銀の.600ニトロエクスプレス弾を装填しながら考えていた。あの吸血鬼の少女は銀の弾丸で心臓を撃たれても再生してしまう。やっぱり日光がなければ勝てないんだろうか?

 

 もし日光がなければ勝てないのならば、今日は彼女を倒すのは無理だろう。

 

 マンゴーシュで必死に彼女の剣戟をガードしているカレンを援護するため、俺は再装填(リロード)を終えたプファイファー・ツェリスカの銃口を吸血鬼の少女へと向け、ドットサイトを覗き込んだ。

 

 あの吸血鬼の頭を吹っ飛ばそうとした瞬間、いきなり俺の目の前の地面に鮮血がまき散らされた。

 

 誰の血だ? カレンとあの吸血鬼の血がここまで飛んで来る筈がない。それに、俺が追った傷はさっき棘を躱した時の傷だけだ。

 

 地面に付着した血痕を見下ろしたその時、俺の腹の部分に見覚えのない風穴が開いているのが見えた。

 

「なに・・・・・・・・・!?」

 

 その見覚えのない傷口から噴き出た鮮血が、目の前の地面を真っ赤にしていく。

 

 この傷は何だ? 俺はあの吸血鬼に攻撃されたのか? まさか、あの黒い棘を俺の背後に召喚して攻撃したんだろうか?

 

「――――ハーフエルフか」

 

「・・・・・・!」

 

 後ろを振り返ろうとした瞬間、背後から男の低い声が聞こえてきた。

 

 こいつが俺の腹に風穴を開けやがったのか!? 俺はそいつにプファイファー・ツェリスカの銃口を向けてやろうとしたが、リボルバーを持っている俺の左腕はいつの間にか動かなくなっていた。そのまま、俺は崩れ落ち始める。

 

「ギュ、ギュンター・・・・・・!? ギュンター、しっかりしてッ!!」

 

「ぐ・・・・・・!!」

 

「―――アリア。一旦戻るぞ」

 

「はい、ご主人様」

 

 カレンのレイピアを心臓に突き立てられたまま、俺の腹に風穴を開けた男に呼ばれた吸血鬼の少女はそう言うと、漆黒のレイピアをカレンに向かって突き出し、彼女がマンゴーシュでそれを受け止めた瞬間に左腕を振り回し、カレンの腹を殴りつけた。

 

「きゃっ!!」

 

 腹を殴りつけられたカレンはそのまま路地の壁に叩き付けられてしまう。吸血鬼の少女は何とか起き上がろうとするカレンに近づいていくと、自分の口の周りを舌で舐めてから、カレンの制服の襟の部分を掴んだ。

 

 そして、吸血鬼の牙の生えた口を彼女の首筋に近づけていく。

 

「や、やめろ・・・・・・! ぐっ・・・・・・!」

 

「ほう。やはりハーフエルフは屈強だな。腹に風穴が開いても死なないか」

 

 俺に風穴を開けた男が、うつ伏せに倒れている俺を見下ろしながらそう言った。漆黒のコートを身に纏った30台くらいの男性だった。

 

 その時、その男の背後からカレンの呻き声が聞こえてきた。あの吸血鬼の少女がカレンから血を吸い始めたらしい。

 

「――――アリア。こいつらの仲間がここに向かっている。血を吸うのは止せ」

 

「はい、レリエル様」

 

 カレンの首筋から口を離した吸血鬼の少女は、口の周りについているカレンの血を長い舌で舐め取ると、黒いコートを身に纏った男に向かって跪く。

 

 レリエル様? この男の名前なのか?

 

 まさか、あの伝説の吸血鬼なのか?

 

 レリエルはアリアを引き連れて、俺とカレンに止めを刺さずにそのまま路地の向こうへと歩いていく。腹に風穴を開けられて致命傷を負ってしまった俺は当然ながら立ち上がってレリエルを追う事が出来なかった。

 

 あのレリエルという男は、伝説の吸血鬼のレリエル・クロフォードなのか? でも、あいつは大天使に倒された筈だ。封印されたという説もあるが、どちらにしてもここにいる筈がない。

 

「か、カレン・・・・・・!」

 

 俺は両腕を強引に動かして這いながら、彼女の名前を呼んだ。

 

 彼女の首筋にはアリアに血を吸われた傷痕がある。でも、彼女はカレンの血を全部吸ってはいなかったらしい。

 

 制服の内ポケットからブラッド・エリクサーの瓶を取り出した俺は、真っ赤な液体の入ったその瓶を持った腕をカレンに向けて伸ばす。でも、カレンはその瓶を受け取ってくれなかった。ちらりとエリクサーの瓶を差し出す俺を見てから、彼女はニヤリと笑う。

 

「ハーフエルフって・・・・・・屈強なのね・・・・・・・・・」

 

「しっかりしろ・・・・・・。こ、これを飲んでくれ・・・・・・!」

 

「おい、ギュンター! カレン! どうしたんだ・・・・・・!?」

 

「だ、旦那・・・・・・!」

 

 俺が彼女に向かってブラッド・エリクサーの瓶を持った手を伸ばし続けていると、俺の後ろから旦那の声と足音が聞こえてきた。防具の音も聞こえるから、旦那と姉御が来てくれたんだろう。

 

「しっかりしろ! やられたのか!?」

 

「旦那・・・・・・カレンを――――」

 

 俺は近くにやってきた旦那にそう言うと、ブラッド・エリクサーの瓶から手を離し、そのまま目を閉じてしまった。

 

 

 

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