異世界で転生者が現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

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モリガンのメンバーが吸血鬼と戦うとこうなる

 

 大通りや建物の中にはもう誰もいなくなっている筈なのに、夜になった帝都の景色はあまり変わらなかった。私たちが襲いかかる対象の人間がいなくなっただけだ。大通りや店の前からは買い物をする人間たちの声が全く聞こえない。

 

 その代わりに、帝都の夜空には聞いたことのない轟音が響き渡っていた。飛竜が翼を使って空を飛ぶ音や、ドラゴンの咆哮ではない。先ほどから全く同じ音だった。

 

 その音を発しているのは、私の目の前を飛んで行く奇妙な模様の物体だった。翼が生えているようだけどドラゴンのように広くはなく、その翼の下には奇妙な形状の何かをいくつかぶら下げている。尻尾の先端と背中では金属の細い板のようなものが高速で回転していた。おそらく、あれがこの轟音を発しているのね。

 

 ホワイト・クロックの最上階で私の体を引き千切った敵を追いながら、私はニヤリと笑う。

 

 あいつは日光に似た光で私たちを照らす事が出来るようだけど、私は人間たちから大量に血を吸ったおかげで回復しているし、レリエル様から血を貰ったおかげで、日光に照らされても身体能力と再生能力が少しだけ低下する程度で済む。しかも、再生能力は更に強化されているのよ。

 

 だからもしあの光で照らされながら銀で攻撃されても、そのまま再生しながら反撃すればいい。私たちのような吸血鬼は再生能力を持っているけど、相手は人間だから簡単に死んでしまうわ。

 

 血を飲む事が出来たのは真紅の羽根の付いたフードをかぶっていた男の子と金髪の女の子だけだったわね。他の子の血はどんな味がするのかしら?

 

 下で口の周りを舐め回し、私は速度を上げながら魔術の詠唱を開始する。

 

「黒き棘よ、全ての光を貫き給え・・・・・・! ダークネス・ニードル!」

 

 私の周囲の空間に、無数の闇の棘が出現した。路地であの金髪の女の子たちと戦った時にも使った魔術だったわ。あの時はこの闇の棘をレイピア代わりにしたけど、本当ならこのように周囲に召喚して、相手に向かって放つ遠距離攻撃用の魔術なのよ。

 

 召喚が終わった棘たちが、私の目の前を飛行している奇妙な模様の物体に向かって襲いかかっていく。棘たちのスピードは矢よりも速いし、私が召喚した棘の数は合計で32本よ。全部躱せるかしら?

 

「あら・・・・・・」

 

 あのまま棘たちに貫かれて墜落すると思っていたんだけど、その物体は少しだけ速度を落としたかと思うと、そのまま高度を落としながら右に向かって急旋回を始めたわ。尻尾の先端で回転している金属の小さな板が私から見て左側に向かって連れ去られ、右へと旋回した胴体と一緒に私の棘を回避し始める。

 

 あの物体を串刺しにするために放った棘たちは、1発も敵に突き刺さる事あなかったわ。そのまま夜景に照らされながら帝都の上空を駆け抜けて行くだけだった。

 

「避けられちゃったわね」

 

 ならば、旋回が終わった瞬間にもう一度お見舞いしてあげるわ。

 

「黒き棘よ、全ての――――」

 

 左手を敵に向かって伸ばしながら詠唱を始めたその時だった。いきなり私の右足の太腿が砕け散り、右足が千切れ飛んだわ。

 

 路地であの男の子や金髪の女の子と戦った時のような痛みだったわ。おそらく、地上から私に向かって攻撃してきたのね。

 

「・・・・・・いいわ。あなたから殺してあげる」

 

 千切れ飛んだ右足を再生させながら、私は急降下を始めた。

 

 おそらく、今の攻撃も銀だったのね。右足の再生がなかなか終わらないわ。

 

 今の攻撃をしてきたのはあの建物の辺りね。屋敷のように大きなレンガ造りの建物で、庭には芝生と花壇があるわ。でも、その芝生と花壇はまるで落下してきた何かに潰されたように滅茶苦茶になっていたわ。

 

 滅茶苦茶になった芝生の上に舞い降りた私は、ランタンの明かりが消えているその建物の窓を眺めた。他の建物の明かりはついたままなのに、この屋敷のような建物の明かりはついていない。敵はこの建物に隠れているようね。

 

「・・・・・・!」

 

 私が屋敷に向かって歩き出した瞬間、1階の窓や2階の窓が砕け散り、ガラスの破片の向こうから何かが飛んで来るのが見えたわ。私はそれを回避するために右に向かって飛んだけど、1階の窓を粉砕して私に襲い掛かってきた何かが私の左肩にめり込み、肩の骨を粉砕して私の左腕を吹き飛ばす。

 

 今度は左腕を再生させるんだけど、やっぱり再生するのが遅い。今の攻撃も銀を使っていたみたいね。銀を私に向かって飛ばして来たみたい。

 

 攻撃が飛んできた場所は5ヵ所。つまり、私を攻撃してきたのは5人というわけね。

 

 やっと左腕の再生が終わる。左腕ごと千切り取られた上着の袖も再生させておくと、私はダークネス・ニードルを召喚してあの時のようにレイピア代わりにし、建物から次々に放たれて来る銀を弾き飛ばしながら建物に向かって走って行ったわ。

 

 銀が放たれる度に放たれた場所が煌めき、轟音が響き渡る。あの武器は間違いなく、レリエル様が欲しがっていた飛び道具ね。私を助け出してくれた時に襲い掛かってきた人間たちも、あのような轟音のする飛び道具を使っていたわ。

 

 彼らを全員倒したら、持っていた武器はレリエル様に献上することにしましょう。

 

 銀が放たれる場所は先ほどから変わっていない。1階の隅にある2つの窓と、2階にある窓。銀に砕かれてしまった闇の棘をすぐに投げ捨て、既に傍らに召喚していた闇の棘に持ち替えながら私は建物へと接近して行く。

 

 その時だった。今まで銀が放たれていた場所とは全く違う2階の窓から轟音が聞こえ、その轟音の中から銀が私に向かって襲いかかってきた。

 

 ちょうど砕けてしまった棘を手放して持ち替える瞬間だったから、ガードは出来ない。しかも予想外の場所から攻撃が飛んできたせいで、回避もできなかった。

 

「ガァッ!?」

 

 私に向かってきたその銀は私の鼻の上に命中すると、そのまま私の上顎を抉り取っていく。頭蓋骨や両目まで吹き飛ばされてしまったせいで何も見えなくなってしまったわ。

 

 吹き飛ばされた頭を再生させながら、私は今の攻撃を放った敵について考え始める。窓から攻撃していたあの5人は囮だったのかしら? 今の一撃で私の頭を吹き飛ばすために隠れていたの?

 

 やっと両目の再生が終わった。滅茶苦茶にされた脳と頭蓋骨の再生が終わるまで花壇の陰に隠れていようと思ったその時、建物の玄関のドアがいきなり開いたのが見えたわ。

 

「おう、お嬢ちゃん」

 

「・・・・・・あら。あの時の薄汚いハーフエルフじゃないの」

 

 玄関から出てきたのは、あの時路地で金髪の女の子と一緒に戦っていたハーフエルフの少年だったわ。建物の中にいたのは7人だったということかしら? 

 

 彼は両手に大きな武器を持っていたわ。先端部に穴の開いた槍のような武器を両手で抱えていて、その穴を私に向けているのが見える。

 

 きっとあれが銀を私に向かって飛ばしていた飛び道具なのね。

 

「またカレンの血を吸いに来たのか?」

 

「そうね・・・・・・。今度は全部吸わせてもらおうかしら」

 

 私は彼を睨みつけると、頭の再生を終えてからレイピアを彼へと向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいおい、まだ再生するのかよ・・・・・・」

 

 傷口を再生しながら立ち上がるレリエルをライトで照らしながら、俺はため息をついていた。先ほどから何発も7.62mm弾や.600ニトロエクスプレス弾を叩き込んで頭や心臓を散々吹き飛ばしているというのに、この伝説の吸血鬼は何度も吹き飛ばされた頭や心臓を再生させ続けている。

 

 しかも、心臓を弾丸に抉られても全く呻き声を上げないんだ。

 

「化け物だな・・・・・・!」

 

 俺の隣に戻ってきたエミリアの左肩には、レリエルの爪に切り裂かれた傷痕があった。彼女はポケットからヒーリング・エリクサーの瓶を取り出すと、瓶の蓋を開けて中に入っているピンク色の液体を一口だけ飲むと、すぐに蓋をしてから瓶をポケットに戻し、ライトを装備した2丁のPP-2000の銃口をレリエルへと向ける。

 

 俺も左手に持っていたプファイファー・ツェリスカの銃口をレリエルへと向けると、エミリアよりも先にトリガーを引き、再生を終えかけていたレリエルの頭を再び吹き飛ばした。俺が撃鉄(ハンマー)を引き戻そうとした瞬間、隣にいるエミリアも射撃を開始する。

 

『聖なる焔よ、闇を焼き尽くし光を与え給え・・・・・・! ホーリー・フレイム!!』

 

 銀の9mm弾に肉体を抉られていくレリエルに、フィオナが光属性と炎属性の魔術で追撃する。灯の杖の先端にぶら下がっている蒼白いランタンの中の炎が煌めき、そのままランタンの外へと溢れ出すと、白い炎の球体となってレリエルへと叩き付けられた。

 

 白い火の粉が暗い時計塔の部屋の中で舞い上がる。炎は風穴だらけにされていたレリエルの肉体を飲み込んで燃え上がり、真っ白な火柱へと変貌する。

 

 でも、奴はこれでも生きている筈だ。今まで戦ってきた敵ならば弾丸を叩き込み、風穴から鮮血を吹き上げて崩れ落ちていくのを見た時点で戦いは終わっていた筈なんだけど、この吸血鬼たちはその風穴を数秒で塞ぎ、再び起き上がってくるんだ。

 

「――――さすがだな、人間」

 

「マジかよ・・・・・・!」

 

 やっぱり、火柱の中からレリエルが姿を現した。フィオナの白い炎で全身を焼き尽くされた筈なのに、火傷はもう再生を始めている。顔の右半分にはまだ火傷が残ったままなんだけど、もう再生した皮膚がその傷を消し去ろうとしていた。

 

 俺はプファイファー・ツェリスカのシリンダーの中から空になった薬莢を取り出し、次々に新しい銀の.600ニトロエクスプレス弾を装填していく。もう10発も強烈な.600ニトロエクスプレス弾を叩き込んでいるのに、レリエルはすぐに再生して反撃してくるんだ。

 

 残りの.600ニトロエクスプレス弾はあと15発。それを撃ち尽くしてしまったら、端末が新しい弾丸を用意してくれるまで待たなければならない。

 

 プファイファー・ツェリスカの銃口をレリエルに向けようとしたその時、レリエルは自分の周囲にいきなり闇の棘を2本召喚すると、それを引き抜いてレイピアのように構えながら突っ込んできた!

 

「剣術ならば!」

 

「エミリア、無理すんな!!」

 

 素早く2丁のSMG(サブマシンガン)を腰の後ろのホルスターに戻し、エミリアは腰の鞘からバスタードソードを引き抜いた。黒い制服と防具を身に纏った彼女は、そのままバスタードソードを構えてレリエルに突っ込んでいく。

 

 剣を使った戦闘では、エミリアはかなり強い。ステータスで身体能力を強化されている俺も、彼女に何回か負けてしまったことがある。

 

 レリエルがあの闇の棘をレイピア代わりにして接近戦を挑んでくるのならば、彼女に迎え撃ってもらえば問題ないだろう。相手が巨大な魔物ならば俺も突っ込んで援護するんだけど、レリエルの身長は人間と変わらないんだ。エミリアと一緒に剣や刀で攻撃すれば、間違って彼女を斬りつけてしまうかもしれない。

 

 だから俺は、ここからアサルトライフルで援護することにした。フィオナは魔術ではなく、エミリアが傷を負ったらすぐにヒールを発動させるつもりらしい。

 

 フルオート射撃からセミオート射撃に切り替え、ホロサイトの後ろにブースターを展開した俺は、エミリアの剣戟をレイピアで何度も受け止めているレリエルに照準を合わせる。エミリアのような実力者の一撃をレイピアで受け止めれば簡単に刀身をへし折られてしまいそうなんだが、レリエルが使っているレイピアはあいつが魔術で召喚したものだ。バスタードソードをガードしても折れないのは、レリエルの魔力のせいなのかもしれない。

 

 バスタードソードをエミリアが振り下ろし、レリエルがそれを回避する。そして横からエミリアの腹をレイピアで貫こうとするんだけど、エミリアは腕に装着した防具で闇の棘を横から殴りつけて切っ先を受け流し、逆にバスタードソードの刃をレリエルの脇腹にめり込ませた。エミリアはそのまま刃を押し込んでレリエルを一刀両断にしようとしたんだが、レリエルは反対の手に持っていたレイピアを振り上げると、切っ先をエミリアに向けてから振り下ろしてくる!

 

「エミリア!」

 

「くっ!」

 

 彼女の頭を貫こうとしたレイピアを何とか回避するエミリア。レリエルの脇腹にめり込んでいたバスタードソードの刀身を無理矢理引き抜いてから彼を蹴飛ばすと、エミリアはレリエルから離れる。

 

 俺はすぐにレリエルに向かってトリガーを引き、セミオート射撃でエミリアを援護した。頭や心臓を狙うよりも、足を狙ったほうがいいかもしれない。1発だけ頭を狙ったけど、俺はすぐにカーソルをレリエルのアキレス腱の辺りに合わせてトリガーを引き続けた。

 

 銀の7.62mm弾がレリエルの脹脛を抉る。銀の弾丸の風穴は普通の武器で付けられた傷よりも再生するのが遅くなるから、剣で斬りつけた傷よりも治るのが遅い筈だ。しかも紫外線を放つ特殊なライトで照らされている状態だから、更に再生するのが遅くなる筈だ。

 

「いくぞ、レリエルッ!」

 

「む・・・・・・」

 

「・・・・・・!?」

 

 アキレス腱を撃ち抜かれて体勢を崩すレリエル。エミリアは彼に向かって剣の切っ先を向けて突っ込もうとするけど、レリエルは何か魔術を使ってエミリアを迎え撃つつもりのようだった。

 

 エミリアに向かって右手を向けるレリエル。奴の右腕の周囲に、黒い炎が生成され始める。

 

 拙いぞ・・・・・・。レリエルは詠唱せずに魔術を発動できる!

 

「エミリア、危ないッ!」

 

「!!」

 

「――――ダークネス・コロナ!」

 

 レリエルの右腕の周囲に形成された黒い炎たちは彼の手の平の前で漆黒の火柱へと変貌すると、接近してくるエミリアに向かって放たれた。

 

 漆黒の火の粉をまき散らしながらエミリアに向かっていく漆黒の火柱。エミリアはすぐに右にジャンプし、迫ってくる火柱を躱す。

 

「突っ込むな! 離れるんだ!」

 

『えっ!?』

 

 俺はエミリアに指示を出すと、アサルトライフルを腰の後ろに下げ、用意しておいた水銀入りのソ連製対戦車手榴弾の柄を握った。

 

 レリエルに近づくなと言ったのは、今からこれをレリエルに放り投げるためだった。吸血鬼用に用意したこのRKG-3には水銀も入っていて、爆風で吹き飛ばされた水銀が衝撃波と共に攻撃目標をズタズタにするようになっている。

 

「フィオナ、隠れろ!」

 

『は、はい!』

 

「エミリア!」

 

「いいぞ、投げろ!」

 

「了解ッ!」

 

 安全ピンを引き抜いた俺は、アキレス腱を再生させている途中のレリエルに向かって大型の対戦車手榴弾を放り投げてからすぐに近くにあった柱の陰に隠れた。まるで缶にグリップを取り付けたような形状の手榴弾はレリエルの右肩に当たって床に落ちると、あいつの足元で普通の手榴弾よりも強烈な大爆発を引き起こした。

 

 レリエルが先ほど放った闇属性の魔術よりも強烈な炎が時計塔の最上階の部屋の中で燃え上がり、爆風が中に入っていた水銀をまき散らす。爆風に吹き飛ばされた水銀たちはまるでショットガンの散弾のように飛び散ると、爆風を浴びて滅茶苦茶になったレリエルの肉体を更に切り刻み、部屋の中の柱や回転する歯車を引き裂いた。

 

 レリエルのために用意してきた特殊な手榴弾だったんだが、この攻撃力ならば吸血鬼以外が相手でも使えるかもしれないな。

 

「どうだ・・・・・・?」

 

 飛び散った水銀で削られた柱から、静かにレリエルのいた場所を見つめる俺。レリエルが手榴弾の一撃を喰らった場所は、まだ黒煙に包まれたままになっていた。

 

 その時、黒煙の中から何かが飛び出して来たのが見えた。明らかにエミリアではない。

 

「レリエル――――」

 

「・・・・・・・・・!」

 

 黒煙の中から飛び出して来たのは、今の手榴弾の爆風と水銀でズタズタにされたレリエルだった。爆風でまき散らされた水銀で体中を抉られていたんだけど、俺がさっき撃ち抜いたアキレス腱の傷は塞がっているようだ。

 

 俺はすぐにアンチマテリアルソードと小太刀を引き抜いてレリエルの攻撃をガードしようとするけど、レリエルは俺が突き出した刀を簡単に回避して、腹に向かって右の拳を叩き付けてくる。

 

 レリエルの右腕の拳が腹にめり込んだ瞬間、俺は車上荒らしに殺されたあの時のように目を閉じていた。

 

 

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