それ以外は特に言うことはありません。
「おはよう!」
「あ、おはよう~!」
「優美ちゃんおはよう」
今日はついに高校生最後の登校日、つまり卒業式である。泣いても笑っても今日が最後の登校日、何か今までとは教室の雰囲気も違い、みんながみんな、なかまとの別れを惜しむような、そんな感じがする。
ちなみにだけど、私にとっての今日という日、泣いても笑ってもは高校生活だけでなく、進路も今日決まってしまう。
発表される時間は午前10時のため、卒業式が終わった後にわかる感じ。受かっていればそこへと進学し、ダメなら既に受かっている滑り止め校へと進学する予定。
そしてさらに・・・ううん、今ここで言うべきではないかな・・・。
そんなことを考えていたら、親友であり、仲間であり、大切な人であり・・・そんな2人が声をかけてくれた。
「優美、おはよう」
「おはよう優美~!」2人はいつも通りの感じの挨拶。私も出来る限り自然体自然体!
「あ、おはようっ!」
一応私的には普通に言ったつもりだったけど・・・。
「優美は朝からそわそわしてるわね」
「うんうん~!やっぱり受験結果が気になっちゃう感じに見えるよね~!」
なんか普通にバレちゃってました・・・否定するのもアレなんで普通に答えるかな。
「あー、うん。ちょっと緊張してるかなあ・・・」
「だよね~。あ、それにさ!」
「え?」
「どっちにしても今日で進路決まるってことはさ・・・ねぇ亜由美さん!」
ニヤニヤ笑いながら麻由美ちゃんは亜由美にそう言う。
「そう、ね。卒業式が終わったあとは優美のことは極力1人にした方がいいわね」
具体的なことは言わなかったけど、何を言いたいかなんてわかってしまう。だからそれをちょっと想像しただけでやっぱり恥ずかしくなる。
「もぅ!そう言うこと今言わないでよぉ!出来るだけ意識しないようにしてたのにっ!」
だって今からそんなこと考えてたら心が持ちません!
「優美は今日も相変わらずね」
「最終日もまさに優美は優美だね~!」
やっぱりいじられキャラは卒業しても続きそうとその時確信しました(笑)
う~!なんか話題変えなきゃ!・・・あ!そうだっ!
「ねぇねぇ麻由美ちゃん!」
「ん~?どしたの?」
「柳さんに告白とかされちゃったりしてたりする?」
私は話題を変えたいがためになんとなくそう言った。正直、この間の話を聞いた感じでは告白なんて柳さんはまだまだしそうもないし、私がちょっと仕返し出来るかなって思ったから。
・・・が、それは大きな間違いだったみたいで。
麻由美ちゃんはいきなり真面目な顔つきになり、返事をする。
「うん。されたよ。優美なのによくわかったね」
「えっ!」
あ、ちなみに私も驚いたけど亜由美も知らなかったみたいで無言だったけどめちゃくちゃ驚いてました。
「えっ!って何よ~?私の幸せオーラ感じてくれたんじゃないの?」
「ホントに!?」
「うん、ついこの間だけど」
「だってあの柳さんだよ!?」
「もう~!優美ったら人のカレシに酷いこと言うね~!」
「「カ・・・」」
私と亜由美は2人でそう呟いた後、こそこそっと2人で話す。
「今聞き間違いじゃなければカレシって言ってたわよね?」
「う、うん!さっきまで全然そんな雰囲気なかったのにね?」
「夢かしら?」
「かも・・・?」
いや、別に柳さんは麻由美ちゃんのこと大好きなのは知ってるし、全然あり得ない話ではないんだけどね?それでもなんかあっさりだったしで・・・。
「もう~!2人とも!というか全部聞こえてるし!」
私と亜由美の間に麻由美ちゃんは割り込んでくる。
「なんで信じてくれないのかわからないケド、ホントにホントだからね~?」
そんなわけで麻由美ちゃんは告白された日のことを簡単に説明してくれた。
「・・・という感じですぜ!」
話終えた麻由美ちゃんも、話を聞いてた私と亜由美も、なんかみんな恥ずかしい表情。だって柳さんの告白、なんかカッコいいっていうかね・・・。
「・・・う」
「「う?」」
「うらやましい・・・!」
だってシチュエーションとか告白の仕方とか、柳さんカッコ良すぎなんだもん!
「だってだって!私もそんな感じでされたいって思ったもん!言葉もカッコいいしっ!」
私はそう言うが、麻由美ちゃんと亜由美は苦笑い。
「優美優美~?たかくんは幼なじみだからなあ~!」
「そうよ、林崎くんに同じことを求めるのは無理よ」
わかってる、わかってるんだけど~!
「う~!そうだけど~!」
私がそう唸っていると、麻由美ちゃんは肩を叩きながら話す。
「優美、話には聞いてたけど美結に借りた少女漫画にホントに影響されてるみたいだね。林崎くんにそれを求めるのは酷だよ」
「違うしっ!違くないけど違うしっ!」
× × ×
それからしばらくし、卒業式の時間になり体育館へと移動した。
だんだんと、本当に今日が卒業式なんだと感じ、半信半疑だった気持ちも、本当に最後になっちゃんだと実感が沸いてくる。
私たちの学校の卒業式はそこまで凝ったものでもない。校歌などを歌い、卒業証書も時間の関係で1人1人が受けとるわけでもない。ただ1つだけ毎年いいなと思うことは、私たちの3年間の、様々な場面が写真となってスクリーンに写し出させること。
自分が写ってなくても、色々な思い出が甦る。楽しかったこと、嬉しかったこと、苦しかったこと・・・。生徒の中には既に泣いている人もおり、私自身もなんとなく目頭が熱くなっていく。
そんな写真の中に、私たちにとっては凄くかけがえのない1枚が写し出された。
春公園の後の集合写真。そう言えば撮られたなあ、と思いつつ、あの1枚が私たちの「すべて」を表している気がした。
どんなに辛くたって、逃げたしたくなったって逃げなかった日々。それはきっとみんなの、いや、始めに力を貸してくれた彼のおかげなんだ。
たった一瞬だけの投影であったが、そんなことを考えた私は目に涙を浮かべていることに気がつく。
自分が今いるここからは見えないけども、私は精一杯彼に感謝の気持ちを伝えた。
卒業式もいよいよ終了間近。卒業式代表の答辞。もちろん代表は元生徒会長である麻由美ちゃん。
麻由美ちゃんらしい、凄く前向きな答辞。
と、始まった直後、何やらざわつく。気になり少し耳を済まして聞くと・・・。
「・・・大丈夫?」
「無理しない方がいい、保健室に・・・」
誰か体調でも悪くしたのかな・・・?声の方を振り向くと、1人の男子生徒が保健の先生に連れられ生徒の列から離れる。それを見た瞬間、私はその場から駆け出せずにはいられなかった。
「ちょっと優美ちゃん?」
そう友人に言われたが、聞こえなかった。出来るだけこっそり動いたつもりだったけど、周りが少しざわつき、それに気がついた壇上の麻由美ちゃんも答辞を中断する。
こんなの許さないとわかっていても、私の、私にとっての凄く大切な彼が辛そうなのを見て、駆け寄れずにはいられなかった。
「先生!私が着いてきます・・・!」
「ちょっとキミ戻りな・・・!・・・あら?キミは・・・」
先生は私を止めようとしたが、来たのが私だと気が付きそれをやめた。
「竹下さんなら・・・いいわよ、私の変わりに行って。他の生徒なら許さないけどね」
先生は私とわかったらそんなこと言ってオーケーしてくれた。確証はないけども、きっとこの間のことがあって、気を利かせてくれたんだと思う。
・・・まあ、普通だったらこんな大事な式の途中でこんなことダメだよね(笑)
「あ、ありがとう、ございますっ!」
私はちょっと恥ずかしいのもあったけど、やっぱり嬉しかった。
林崎くんのところへ行くとき、先生に声をかけられた。
「症状は多分寝不足によるめまいだと思うからちょっと寝ればよくなると思うよ」
「あ、はい!わかりました」
「うん。だから特に何もすることは・・・あっ!」
「え?」
なんだろういきなり。何か特別なことでもあったのだろうか?私が少し心配していると、先生はそんな心配をよそに・・・。
「ふふふ、『看病以外の変なこと』はしちゃダメよ?」
「えぇ!?」
「なんでもないわよ~?頑張ってね~!」
「先生~!もうっ!」
先生には感謝しつつもそんなこと言わないで下さいよー!逆に意識しちゃいますからっ!
高校生活最後の大事なイベントを抜けちゃうのは後々考えたら残念かなって思うこともあるかも知れないけど、そのときに大切な人と同じ場所を過ごせなきゃ私にはいい思い出にならないはず。
だから私はあのとき迷いなく、彼の元へと駆け寄れたのだと思った。