自分にしかない選択肢   作:ツリ目

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総合スペック中の下な主人公のへたれが頭を頑張って使ってる話です


へたれ、頭を使う

 運営からサービス終了通知と艦娘選べ通知が来た翌日、大学生提督(以下・へたれ)はとにかく驚いていた。

 

何気なく嫁艦の川内が画面側に押し付けてきた手を、自分の手で押し返す素振りをしようとしたら自分の手がパソコンの中に入ったからだ。

 

自分の手がパソコンの画面の中に入り、川内の手に触ることが出来たからだ。

 

「艦娘を一人だけ選んでください、その一人だけは現実世界であなたのもとに来てくれます。」という通知、自分の手がパソコンの中に入る現象、へたれはとにかく混乱した。

 

 

 

 

 画面の中に手が入った。画面に映っている川内に触ることが出来た。

 

「……どゆこと?」

 

恐る恐る手を深く突っ込んでいく。簡単に入っていくので怖かったけど肘の手前から先は入らなくなった。

 

「…………ふぅ」

 

少しだけ息を吐いてゆっくりと腕を引き抜く。水から手を引き上げるときのような感覚がある、画面は液体みたいな波紋が生まれた。

 

腕を完全に抜ききってしばらくすると波紋はすぐに収まった。試しに人差し指だけ突き刺してみるとやっぱり画面の中に入る。画面いっぱいに大きな丸を描くみたいにぐるぐる回しても引っかかりはない。

 

「なあ川内、お前の方からは画面の外に手を出せるか?」

 

『ん、やってみる』

 

川内が画面に向かって手を伸ばす。ガラスに手を押し付けた時の状態になって、そのまま川内が手に力をこめたら

 

人の手が画面から出てきた。

 

(ホントに繋がってる……!)

 

ゲームの世界とリアルの世界が繋がっている、こちらからもあちらからも相手の世界に干渉できる。

 

「す、すげえ……ははっ、どうなってんだこれ……」

 

川内が興奮した顔で腕を伸ばしていく。へたれもその手を掴もうとする。

 

「!?」

 

画面から飛び出した手が指先から角ばって、小さな立方体の集まりに変化してどんどん消えていく。

 

「手を引っ込めろ川内!」

 

『え?』

 

「早く!」

 

川内に痛みや違和感はなかったみたいだけど、へたれの鬼気迫る言い方に圧倒されたのかすぐに引っ込めた。

 

さっきと同じ波紋、その先にいる川内は自分の手を確認している。

 

「川内、痛みとか変な感じとかそういうのないか?手に異常はないか?」

 

『えっと……大丈夫みたいよ。どうしたの?』

 

やっぱりさっきの現象に気付いていないみたいだ。

 

 

 

 

「もしかして……」

 

こちら側にきた体積か、留まる時間か、もしくはその両方か分からないけど一定以上に達したら消えてしまうのか?

 

データをリアルの世界に連れ出そうとしたからか?なら逆にこっちがゲームの中へ入っても大丈夫だったのはどうして?

 

三次元から二次元への干渉が可能になっている時に、二次元から三次元への干渉を完全に切ることができないということだろうか。

 

「……いや違う」

 

たぶんそうじゃない、逆なんだ。

 

大本営は「艦娘が現実世界のあなたのもとへ」と言っていた。友人はデータがまるまる手持ちのPCに移されると推測していた、へたれはそれを聞いて携帯などにも移せて持ち歩いたりできるからそういう言い方をしたのだろうと思った。

 

でもそうじゃない。このゲームは「本当に」データを現実世界に移行させるんだ。

 

川内の手が消え始めたのはおそらく今がその時ではないからじゃないだろうか。艦娘を現実世界に連れ出す実験の期間、完全に実施するわけにはいかないから途中で消え始めた。

 

期限が来る前に連れ出されたら困るのか技術的にまだ無理なのか分からないけど、たぶん今はまだこっちに連れ出すことは出来ないと思う。

 

こっちが干渉出来るのは実験の弊害か何かじゃないか。

 

「…………・」

 

考えれば推測はいくらでも出来る、でも分からない。どれもこれも根拠がない。

 

「ごめん川内、ちょっと明石と入れ替えるよ」

 

 

 

 

「ということが起こったんだ」

 

念のために第一艦隊旗艦の明石のみにした。この状態で明石に説明したら呆れた顔で

 

『提督~、その冗談はあんまりですよ?』

 

と言われた。完全に信じてない。

 

「いやホントなんだって!俺も川内も信じられなかったけどさ、ホントにホントなんだって!」

 

『へえ~、じゃあこっちに手を突っ込んでみてくださいよ』

 

やれるもんならやってみろって顔で煽ってきた。

 

(存分にビビりやがれ)と思いながら手を画面に押し付ける。

 

押し付ける。

 

……押し付ける。

 

「……あれ?」

 

手はパソコンの中に入らず画面で止まったままだ。

 

『ほ~らやっぱり嘘じゃないですか』

 

「いやでもさっき川内にやった時は……!」

 

 

*低練度(90未満)の艦娘は選択できません。

 

 

大本営の通知であった注意書きの一つ、それを思い出した。

 

川内のレベルは128、明石のレベルは35と改造してから育てていない。

 

(もしかして……)

 

『もー、そんな冗談でムキにならなくていいですよ』

 

「ごめん数分くらい待ってて」

 

編成画面でレベルソートを確認、レベル89のイタリアとレベル90の長門がいた。

 

 

 確認してみたら長門が母港にいるときは手が突っ込めたけどイタリアには突っ込めなかった。

 

「やっぱりそうなんだ」

 

他にも理由があるのかもしれないけど、たぶん90以上のレベルじゃないと手を突っ込んだり向こうがこちらに手を伸ばすことはできないみたいだ。

 

どういう理屈なのかは分からないけど。

 

「そうだ、他の人はどうなんだ?」

 

友人の提督に質問を飛ばしてみた。

 

 

1(へたれ):なあ、レベル90以上の艦娘を秘書艦にして画面に触ってみたりした?

 

 

朝だからだろう、返信はすぐにはなかった。

 

「っと、それよりもおーぷん行ったほうが早いか」

 

2ちゃんねるの艦これスレを覗いてみる。

 

 

72:名無しさん@おーぷん:20XX/3/10(?)05:33:04 ID:XYZ

 

 高雄型はやっぱり柔らかかったよーん!摩耶ちゃんってばホント元気で俺ちゃんこまっちゃ~う

 

75:名無しさん@おーぷん:20XX/3/10(?)05:33:45 ID:imY

 

 >>72

 

 お前絶対冴羽だろID的にも発言的にも

 

 

やっぱりおーぷんは平常運転だった。

 

 

 

 




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