ライフ4000とかすぐ消し飛ぶんじゃが   作:満満不満足

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※レッドアイズ大好き倶楽部閲覧注意※
※ザ・ワンパターン戦法※


第2話

 さきほどの俺の完勝で終わったデュエルから暫くして。

 俺達は行きつけのカードショップに向かっていた。前の世界では俺がよく利用していたのだが、この世界ではこいつがよく利用しているらしい。

 さっきはディスクが無いせいでまともにカードを見る事ができなかったから、今度はちゃんと見られるだろう。……もうあんな視線は突き刺さらない筈だ。

 

「何だよあのカード……ダメージ6000? わけわかんねえよ、インチキ効果も大概にしろよ……」

 

 こいつ、まだ言っているのか。一撃で焼き殺されたのを未だ引きずっているようで、今に至るまでの道中はずっとこんな感じだ。

 

「いつまで言ってんだよ、ありゃお前さんの運が悪かっただけだって。逆に俺が6を出されて終わってたかも知れなかったんだし」

 

 ごみくずのように相手を焼き殺せる可能性も、糞雑魚のように蹂躙される可能性も同じように秘めているからギャンブルはやめられねえ!

 

「そうだけどよ……あー納得いかねー」

 

 そうは言うが【出たら目】を使わなかっただけありがたく思ってほしい、あれを使ったら運ゲーが糞ゲーに変わるのだから。それにLPが4000というのも悪いし、4000の世界なのに【ダイス・ポット】を作った奴も悪い。……うん、だから俺は悪くないな。

 

「まあまあ。あのデッキは家に置いてきてまた別のデッキを持ってきたんだ、だからショップ着いたらまたデュエルしようぜ」

 

「え? まだ別のデッキがあるのか? んだよ、それを先に言えよ! 今度はあんな体たらくは晒さねえからな!」

 

 切り替えの早い事で。まあ、いつまでもウジウジしているよりかはよっぽど好感が持てる。

 機嫌も良くなり足早にもなっているあたり、本当にデュエルをするのが好きなようだ。

 俺も、せっかくのソリッドビジョンでのデュエルだというのに見目の良いモンスターを使わずには終わりたくはない。

 それを意識して今度はそりゃあもうカッコいいモンスターを主軸に添えたデッキにしたんだ。【ダイス・ポット】は好きだけど……お世辞にも見目が良いとは言えないから……。

 

★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆

 

 無駄話に花を咲かせる事十数分。

 俺達は件のカードショップに着いていた。店の場所も外観も前と変わっていなかったから、店内もそう変わってはいないのだろうと思っていたのだが……油断した。

 馴染みの安っぽいショーケースはケース自体が高級品と思われる物に変わっており、数自体も激増。更にはテーブルが四台しかなかったデュエルスペースも、テレビで流れていた時のデュエルで使用されていたもの程立派ではないにせよ、随分な広さのコートが二面。おい、店の広さどうなってんだ。

 

「これは、まあ……随分とご立派なカードショップなようで……」

 

「そうか? これぐらい普通じゃねえか」

 

 普通!? この規模が普通!? ちょっとこの世界本当にカード関係に力入れすぎじゃないですかね……?

 

「んじゃあよ、俺ちょっとデュエルコートの予約入れてくるわ」

 

「予約?」

 

「おお。他にも使いたくて待ってる奴がいるのに、横入りするわけにはいかないだろ? 入れてくるから適当にカードでも見てろよ」

 

 ……デュエルだけならテーブルでもいいと思うんだがなあ。店内の客に見られながらってのはどうにも緊張してしまう。現に今コートを使っているデュエルは客達の注目の的だし。

 

『僕は【モリンフェン】で攻撃! モリンフェン・クロー!!』

 

『うわーーーっ!』

 

【モリンフェン】の鉤爪を使った華麗な攻撃が決まり、LPが0になった事を知らせるブザーが店内に響き渡る。それと同時に店内は沸きあがり、勝者を称える声と敗者への惜しみない拍手が。う、うわー……マジ震えてきたんですけど……。見られたくねえ……。

 自分の事で騒がれたり、注目を集めたりというのはどうにも俺は好きになれない。この状況を鑑みるに、持ってきたデッキの選択をミスってしまったのではと後悔してしまう。でも他にデッキ持ってきてないし……あ゛ーどないしよ。

 

「なんだよ。適当にうろついてるかと思ったのに、わざわざ待ってたのか?」

 

「いや、ちょっとデュエル見てて……。なあ、マジで俺達もあんな風に見られながらデュエるんか?」

 

「なに言ってんだよ、当たり前じゃねえか。むしろ俺達のデュエルを周りに見せつけてやろうぜ! お前もデッキを変えてきたみたいだし、これが本当のデュエルデビュー戦ってもんだ! なあに、最初は緊張するかもしんねえけど、すぐに気持ち良くなるって!」

 

 うーーわーーマジかよちくしょう! 本当にこんな見られながらやるのか!?

 

「俺達の番になるまで暫くかかるんだ、適当にカードでも見てようぜ」

 

「あ、ああ、せせやな」

 

 あばばばばば無理無理ほんと無理。遊戯王が普通になっててちょーうれしいよーとか思ってたけど……そうかこういう弊害もあるのか!

 あかん……こいつには悪いが始まったら速攻で決着(けり)をつけにかかろう。LP4000とか……なんて抜かしていたが、今回ばかりはこの少なさに感謝だ。

 

「ふう、やっぱエクシーズモンスターはたけえな。俺も使ってみたいんだけどな」

 

「……うわほんとだ。【グレンザウルス】のくせに」

 

 それにしても色々と価格ぶっ飛んでないか? 【グレンザウルス】でお値段五桁って……。

 

「でもよ、これでもかなり良心的な金額なんだぜ? 他のも見てみればわかるけどよ」

 

 言われ、他のカードにも目を向ける。確かに【グレンザウルス】でも安い方で、有用なエクシーズは比べ物にならないぐらいの金額だ。

 これ学生じゃあ手ぇ出せなくね? 社会人でもこれでは些かキツいだろうに。エクシーズだけでなく、シンクロや融合も。……エクシーズとシンクロに比べると融合はやや安いけど、それでもなぁ。こっちの世界じゃあ全体的にエクストラのカードは値が張るみたいだ。

 しかし、まあ、陳列されているカードを見るに、アニメなんかでよくある世界で一枚しか存在しないカードってのは無さそうだな。

 普通にNo.(ナンバーズ)だとか、ゴッズのドラゴンとか置いてあるし。……ただ目玉が飛び出しそうな値がついてはいるが。しかもなんか特別そうな雰囲気のショーケースに飾られて。

 

「でも、ペンデュラムは無いんだな」

 

「あん? ペンデュラム?」

 

「あん? って……。ほら、あれだよ、ペンデュラム召喚の」

 

「……いや、知らねえなあ」

 

 どういう事だ、この世界にはペンデュラムは無いのか? こいつのこの反応と、一枚も陳列されていないペンデュラムカード。

 ……無いなら無いでいいか。そっちの方がいいしな。もうEMEmだとか、EM竜剣士なんて見たくもない。本当に見たくもない。ペンデュラムは、わるい文明。

 

『朝垣さま~。朝垣(あさがき)深夜(しんや)さま~。デュエルコートが空きましたんでー入ってどうぞー』

 

 やる気を欠片も感じられない喋り方のアナウンス。この喋り方……。こいつ(この店員)前の世界でもここで店員をやっていたな。しかし、そうか……。とうとう順番が回ってきたのか……。

 

「おっ! 漸く回ってきたか! 早速行こうぜ! さっきは運で負けたが、今度は俺が勝つからな! 初心者とは言え手加減はしねえぞ!」

 

 そう言って、深夜は浮き足立った様子でコートの方へと向かう。……緊張するが、多分何度か数こなす内に慣れるよな。いつまでも緊張するだとか、ウダウダ言ってられん。ここは気合を入れてワンキルしてやろうぐらいの気概でデュエルに臨もう。

 

★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆

 

 中々の面積を誇るデュエルコート。その両端に、俺と深夜は向かい合っていた。

 二度目のデュエル。さっきとは違い、今回は少なくない数の見物客がその眼を俺達に向けている。ちらりと客の方を見る。その表情はこれから始まるデュエルが楽しみで仕方がないと訴えているように思えてならない。それこそ、大人も子供も関係無く。

 

「さて、と。早速始めようぜ! あのわけわかんねえ負け方をしてからお前にリベンジしたくて仕方なかったんだ!」

 

 いや、これ以上無いぐらいにわかりやすい負け方だったと思うけど……。

 とにかく、ディスクを構え意思を示す。――あいつにはこれだけで充分伝わったようだ。

 

『デュエッ!』

 

 先攻は――また俺か。手札はというと……うん? ……おかしい。このカードは結構前にエラッタされて効果が変わった筈だ。それなのに、なんでテキストがエラッタ前のものに?

 俺はエラッタ後の方しか持ってはいなかったのに。これは使っていいのか? …………使ってから考えよ。

 

「俺のターン。俺は手札から【伝説の黒石】を召喚!」

 

「【伝説の黒石】……ッ! て事はお前、まさか!?」

 

「【伝説の黒石】の効果により、自身を生贄にしてデッキからレベル7以下の「レッドアイズ」モンスターを特殊召喚する! 召喚するのは【真紅眼の黒竜】だ!」

 

 召喚したのはマニア価格数十万で御馴染みの、強化をされた事でそこそこ戦えるようになったレッドアイズ。ふははーすごいぞーかっこいいぞー。

 やはりアニメやら漫画同様にこの世界でも知名度は高いらしい。レッドアイズを召喚した途端店内は一気に盛り上がり、先程の【モリンフェン】がフィニッシャーになった時以上の沸きあがり具合だ。

 

「へっ……まさかお前もレッドアイズを持ってただなんてな。ったく、それならさっきのデュエルで使えよな」

 

 お前も? こいつも持っているのか? こっちじゃ知名度だけ高くて別段お高いってわけではないのか。でもこの盛り上がりっぷり。……うーむわからん。

 

「カードを二枚セットしてターンエンド。ささ、お前のターンだ。早く引きな」

 

 LP 4000 手札 二枚

 モンスターゾーン 【真紅眼の黒竜】☆7 ATK2400

 魔法&罠ゾーン セット二枚

 

「おう! ドロー――」

 

「――トラップカード発動! 【破壊輪】ッ!」

 

「………………は?」

 

「フィールドに表側表示で存在するモンスターを破壊し、お互いにその攻撃力分のダメージを受ける! 破壊するのは当然【真紅眼の黒竜】だ!」

 

 幾つもの手榴弾が取り付けられたリングを装着させられ、レッドアイズは直後の事を想像してか【破壊輪】を取り外そうと激しくもがくが、必死の抵抗虚しく無常にも爆発に呑まれてしまう。爆発は爆風を生み、爆風は俺達を焼き尽くさんとコート中に広がるが――

 

「更に【地獄の扉越し銃】を発動! こいつは自分が受ける効果ダメージを相手に押し付ける事が出来るッ! ってわけで俺の分まで焼かれて死ね!」

 

 爆発音に混じる一発分の小さな銃声。

 しかし充分過ぎるほどに撃ちだされた弾丸は働いてくれた。弾丸は俺が受ける筈のダメージを乗せて深夜の身を貫き、そのまま勝負を決めてくれたのだから。

 デュエルの終了を告げるブザーに、まさに鳩が豆鉄砲を食らったかのような顔を晒す深夜。そして静まり返った店内――うん? 静まり返った店内?

 勝つ事でやんややんやと騒がれるのは嫌だが、自分のした事でこうもお通夜のようになってしまうのも俺は嫌なんだ。……え? 本当になんで? やっぱりエラッタ前の奴使っちゃ駄目だった?

 

「え? は? ……は?」

 

 未だフリーズ状態の深夜と見物客。……なにこれ気まずいんですけど……。

 

「……Feel It! 鼓動がBu Bu Bu Burn!」

 

 この気まずい空気を打破すべく、僕は横チェキを決めながらそう言った。

 

「うるせえよ馬鹿野郎! 煽ってんのかてめえ! つーかなんだよあれ! 運が絡まないあたり【ダイス・ポット】より(たち)(わり)ぃじゃねえか! しかもせっかくのレッドアイズを!」

 

「……もしかして、バーンって使ったらいかんのか……?」

 

 まさかとは思うがこの世界はバーン非推奨なのか? それならこいつがキレるのも頷ける。確かバトルシティじゃバーン禁止だったし。

 

「……いや、そういうわけじゃねえんだけど……そういうわけじゃねえんだけどさぁぁぁ!」

 

 なんだ、なら別にいいじゃないか。深夜といい、見物客が静まり返っているのってレッドアイズ爆発させたから? レッドアイズなんて爆散させてなんぼだろうに。

 デュエルも終わったのだ。次にこのコートを使うデュエリストの為に俺達も退くとしよう。

 

「じゃあ、デュエルも終わったんだ。俺達もさっさと――」

 

「なんなんだ今のデュエルは! 梔子(くちなし)くん! 見損なったぞ!!」

 

 名指しでブーイングとか、なにこれひどい。……って、名指しで? ああ、こんだけの人数が居るわけだし、中には一人や二人知り合いは居るだろう。

 その人物は俺に面と向かって更なる文句を言いたいようで、人混みを掻き分けながらコートまでやってきた。

 現れたのは体格の良い、黒髪を七三に分けた――って誰だこいつ!? 前の世界にこんな知り合いは居なかったぞ!?

 

「げ、多賀岩(たがいわ)……。お前も来てたのか」

 

 この七三男は多賀岩というらしい。深夜はこいつと知り合いみたいだが、しかしこいつはなんだって俺の名前を知っている?

 

「……どなかかは知らんがなんだねあんたは? 人のデュエルにケチつけて」

 

「同じクラスの仲間だっただろう! 何を言っているんだ! それにあのデュエル、なんでレッドアイズにあんな惨い仕打ちが出来るんだ!? レッドアイズが可哀想じゃないか!」

 

 ……同じクラス? どういう事だ、人間関係は前と一緒じゃないのかよ。

 

「あのデュエル嫌いだった梔子くんが遊ヶ丘に入学するんだ。ならこうしてデュエルするのも至極当然の事だろう。君がこのコートに立っているのを見てどんなデュエルをするんだろうとワクワクし、いざレッドアイズを召喚したのを見た時それはもう大興奮したものさ。まさか僕以外にもレッドアイズ使いがいただなんて、ってね。それがどうだ!? 朝垣くんのターンになった途端のあの爆殺劇は!? 僕は決してきみをレッドアイズ使いとは認めないぞ!!」

 

 あ、熱い。どんだけこいつはレッドアイズが好きなんだ。深夜も「こうなるとこいつマジで熱くなるからな……」とか言っているし。こんな奴にレッドアイズとか爆散させてなんぼとか言ったら一体どうなるんだ……?

 

「梔子くん! 僕とデュエルだ! もし僕が勝ったら金輪際レッドアイズは使わないでくれ! いいね!?」

 

 んな勝手な……。助けを求める為に深夜の方に顔を向けるも、あいつは諦めたように首を横に振るばかり。ああ、駄目って事か……。多賀岩くんとやらも俺の返答を待たず深夜の立っていた場所にディスクを構え陣取っている。次の人の順番はいいんですかね……?

 逃げられる雰囲気でもないし、これは受けるしかないか。本当に熱い奴だな彼は。

 

「さあ、デュエルだ!!」

 

 開始の宣言と同時に始まるデュエル。先攻は多賀岩くんだった。しかし一度目、二度目の時と違って……今回は手札固まってんなぁ。

 

「僕はまず【手札断殺】を発動する! お互いに手札を二枚墓地に送り、その後に二枚ドローする!」

 

 あー、これはちょっと嬉しいかも。墓地に送るのは【ブレイクスルー・スキル】と……しゃあねえ、【ギャラクシー・サイクロン】にするか。

 お互いに二枚引き直す。このドローで良いカードを引けたのか、多賀岩くんは嬉しそうに顔を綻ばせる。

 

「【手札断殺】で墓地に送った【カーボネドン】を除外して発動! このカードは自身を除外する事で手札かデッキからレベル7以下のドラゴン族通常モンスターを守備表示で特殊召喚できる! 僕が呼び出すのは当然ッ! 【真紅眼の黒竜】だ!」

 

 呼び出されたレッドアイズは彼を背に、身を固めながら俺と対峙する。心なしか、その眼は俺を睨んでいるようで……。睨んでいるように見えるのは敵同士だから……だよな?

 

「そして【黒炎弾】を発動! 自分のフィールドの【真紅眼の黒竜】を対象にし、対象にした【真紅眼の黒竜】の元々の攻撃力分のダメージを梔子くんに与える! いくぞ梔子くん! レッドアイズの怒り、思い知れッ!」

 

 レッドアイズから吐き出された巨大な黒炎が、容赦無く俺を焼く。つーかマジかよ、LP4000のこの世界で【黒炎弾】!?

 

「貴様ッ! 【黒炎弾】だと!? そんなバーンカード使って恥ずかしくないのか! てやんでぃバーローちきしょうめ!」

 

「お前が言うな! お前だけはッ! お前だけは死んでもいっちゃなんねえ言葉だからなそれは!」

 

 見物客に混じり観戦している深夜がそう俺に野次を飛ばす。あいつどんだけ根に持ってんだよ、あの程度で悲鳴を上げているんじゃOCG次元じゃやっていけないぞ。

 

「更に僕は【伝説の黒石】を召喚する! さっき梔子くんも使っていたし、効果の説明は要らないね? 【伝説の黒石】をリリースしてデッキから二体目の【真紅眼の黒竜】を特殊召喚!」

 

 ヴェェ!? レベル7が二体……そしてレッドアイズデッキ……いやまさかね、この世界エクシーズめちゃくちゃ高いし……。同じクラスって言ってたんだ、という事は多賀岩くんは学生だろう。学生があんな値段のエクシーズなんて持っているわけ――

 

「レベル7の【真紅眼の黒竜】二体でオーバーレイ! 二体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築! 偉大なる黒竜よ! その身に鋼を纏わせ、あらゆる障害を跳ね除けろ! エクシーズ召喚! ランク7! 【真紅眼の鋼炎竜】!」

 

 うわぁ……うせやろ? 本当に出てきたんだけど……。【黒炎弾】食らった1ターン目にこんなん立つとかナニソレイミワカンナイ!

 

「さて……【真紅眼の鋼炎竜】の効果の説明は必要かな?」

 

「いや、いらん。そいつの効果はよぉぉく知ってるからな」

 

 エクシーズ素材があると破壊されないとか、素材取り除いて墓地から通常の「レッドアイズ」蘇生とかはどうでもいいんだ。カード効果を使う度に500ダメージがLP4000のこの世界だと痛すぎる! しかも【黒炎弾】までかまされたわけだし……。

 

「そうか。なら僕はこれでターンエンド」

 

《多賀岩》

 LP 4000 手札 二枚

 モンスターゾーン 【真紅眼の鋼炎竜】★7 ATK2800

 魔法&罠ゾーン なし

 

「ドロー!」

 

 うーん……。あんまりよろしくない手札だ、マジどうしよう。とりあえず耐えるしかないな。鋼炎竜(あいつ)をどうにかしないとだけど、カード三枚で退かすってのはこのデッキだとちょっと厳しいんだよな。

 

「俺はモンスターをセット。カードを二枚セットしてターンエンドだ」

 

《梔子》

 LP 1600 手札 三枚

 モンスターゾーン セット一体

 魔法&罠ゾーン セット二枚

 

「僕のターン、ドロー! 勝負を決めさせてもらう! 僕は【真紅眼の飛竜】を召喚! バトルだ! 【真紅眼の鋼炎竜】でセットされたモンスターを攻撃!」

 

「の前に【ブレイクスルー・スキル】を【真紅眼の鋼炎竜】に対して発動! ターン終了時までそいつの効果は無効!」

 

 ああ、燃える燃える。てかセットしたのがこいつじゃなかったら俺負けてたな、危ねえ。

 

「俺のセットしたモンスターは【メカウサー】だ。このカードはリバースした時フィールドに存在するカードを選択し、そのコントローラーに500のダメージを与える! 対象は【真紅眼の鋼炎竜】! てわけで500のダメージだ!」

 

「くっ……! だがこれで梔子くんのフィールドはがら空き――」

 

「【メカウサー】にはまだ効果がある! こいつが戦闘で破壊され墓地へ送られた時、同名のカードをフィールドにセット出来る! 来てくれ! 【メカウサー】!」

 

 いつの間にかコートに出現した不自然な穴倉から出てきたのは、たった今破壊された機械仕掛けの兎と瓜二つなモンスターである【メカウサー】。

 召喚された【メカウサー】は防御の為に身を固めると次第にその姿が薄れ、一枚の裏側表示のカードへと変わる。

 

「それなら! 再度攻撃するだけだ! いけッ! 【真紅眼の飛竜】! セットされた【メカウサー】を攻撃!」

 

「【メカウサー】リバース、対象は【真紅眼の鋼炎竜】。500ダメージだな。こいつも戦闘破壊されたからデッキから最後の【メカウサー】をセットする」

 

「……僕はこれでターンエンド」

 

《多賀岩》

 LP 3000 手札 二枚

 モンスターゾーン 【真紅眼の鋼炎竜】★7 ATK2800

          【真紅眼の飛竜】☆4  ATK1800

 魔法&罠ゾーン なし

 

 凌げたはいいものの、こっからどうするかな。なんだかんだ一度デュエルを始めた以上は勝ちを狙っていきたいが……引いてから考えるか。

 

「ドロー! ――ッ! まずは墓地から【ブレイクスルー・スキル】を除外して発動!」

 

「なっ!? 墓地からトラップを発動だって!?」

 

「お決まりのリアクションありがとう。対象は当然【真紅眼の鋼炎竜】だ!」

 

「くそ……ッ! あともう少しなのに、ダメージを与えられないだなんて!」

 

 いやあ、500ダメージとかしょっぺえよって前は笑っていたが、うん、笑えんわこれ。

ブレイクスルーなきゃ負けてたし。

 

「【闇の誘惑】を発動、デッキからカードを二枚ドローし、手札から闇属性モンスターを除外する!」

 

 ――来た! これで勝つる! 勝利の方程式は全て揃った! 羽箒を打たれなければ!

 

「俺は【真紅眼の黒竜】を除外!」

 

「レッドアイズを!? ……破壊の次は除外だなんて、きみはレッドアイズに恨みでもあるのか!?」

 

 しゃあないだろ、こいつぐらいしか除外するカードないんだから。どんだけレッドアイズ大好きなんだよ。

 

「俺も【伝説の黒石】を召喚! 自身を生贄に、デッキから【真紅眼の黒竜】を守備表示で特殊召喚する! そしてカードを一枚セット、ターンエンド!」

 

《梔子》

 LP1600 手札二枚

 モンスターゾーン 【真紅眼の黒竜】☆7 DEF2000

 魔法&罠ゾーン 二枚

 

「とうとう万策尽きたようだね。レッドアイズを呼び出せても、サポートしてあげられないのならそれは無駄な足掻きでしかないよ!」

 

「……いいや。俺は信じているからな」

 

「信じている? そうは言っても、あれだけ惨い仕打ちをしたきみが言っても信用は出来ないぞ!」

 

「好きに言うがいいさ」

 

 さあ。殴れ。殴ってこい、そのまま殴ってくるんだ!

 

「バトル! 【真紅眼の鋼炎竜】できみのレッドアイズを攻撃だ!」

 

 ぶつかり合う互いの黒炎弾。奴の攻撃力とこちらの守備力の差は800。この差は戦闘において致命的な致命傷になり得る差だった。

 向こうの黒炎弾は俺のレッドアイズのものよりも一回り大きく、いとも簡単に打ち破り勢いそのままにレッドアイズの身を焼き焦がす。その身を焼かれ、レッドアイズの悲鳴がコートどころか店内に響き渡るが――それこそ、俺の待っていた展開だった!

 

「戦闘で! 破壊したな!? この瞬間トラップカード発動! 【レッドアイズ・バーン】!」

 

「【レッドアイズ・バーン】……? なんだそのカードは。そんなカード、僕は知らないぞ!」

 

 このカードを知らない? さっきのブレイクスルーも詳しくは知らなかったみたいだし、この世界のカードプールはどうなっているんだ? エラッタ前のカードもまかり通るしペンデュラムは見かけないしでわからない事ばかりだが……まあいい、今はこのデュエルに集中だ!

 

「このカードは自分フィールドの表側表示の「レッドアイズ」モンスターが破壊された場合、そのモンスターを対象にして発動出来るカード! 俺達はそのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを受ける!」

 

【真紅眼の鋼炎竜】のバーン効果なんぞ、今となっては知ったこっちゃない。多賀岩くんが殴った以上、こっちはカードを二枚発動するだけなのだから! 

 

「なあっ!? いや、だが僕のLPは3000! 対して梔子くんのLPは1600だ! そんなカードを使っても――まさか!?」

 

 抑えきれない俺の笑みを見て彼は悟ったらしい。残りのセットカードの正体を。ああ、そうだとも。多賀岩くんのその予想は当たっている!

 

「そして【地獄の扉越し銃】を発動! さっきの俺と深夜のデュエルを見ていたらしいし……説明はしなくても問題無いな? ってわけで俺の分まで食らえ!」

 

「――くそぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 直後、大爆発がコートの中心で発生する。爆発音に混じりレッドアイズの悲鳴が聞こえてきたのは恐らく気のせいではないだろう。すまん、レッドアイズ。さらば、レッドアイズ。きみのおかげで俺は勝利する事が出来たよ。

 

「あーあ……こいつまたやりやがった……」

 

「いや、これはだな、負けたらレッドアイズ使うなって言われたし……」

 

 勝利を掴みかけていながら敗北を喫した多賀岩くんと、勝ったのに友人含めた見物客達にドン引きされる俺。…………いつだって戦いは虚しいものなんだな、まさに誰得なデュエルだったわけだ。逆転負けが余程ショックだったのか、多賀岩くんは呆然としていて膝を折ったまま動かない。その居た堪れない姿に、些かやり過ぎてしまったかと考えてしまう。でもああしなきゃ勝てなかったし……。

 未だだんまりの多賀岩くんと、デュエルを見ていたお客さん達。……なんだよこれ、まるで俺が悪者みたいじゃないか。

 

「俺はただ……デュエルで笑顔を……」

 

「少なくともこのデュエルではなれねえって」




Q:この世界ペンデュラムないの?
A:今はないです。話が進むと出てきます。

Q:フレアメタルにブレスル打ったらその発動でダメージ食らわない?
A:バーン効果が適用されるのは効果処理後で、処理が終わる前にブレスルで効果が無効になってるから適用されない的なみたいな。タブンネ。

Q:次の投稿は?
A:黒き森のウィッチが許されたら。
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