真剣で蜻蛉切に恋しなさい!S   作:神喰いの王

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二閃目

九鬼家にあるとある寮の一室。

そこに一人の少年と少女が一緒に眠っていた。一人は寝巻である浴衣を若干肌蹴て気持ち良さそうに寝ている少年。もう一人はウェーブの掛った黒髪に腕には一升瓶と少年の腕を絡ませ、故意か事故か肌蹴てかなり際どくなったパジャマを着た長身の女性だ。もしこの光景を第三者(某小動物系君主)が見たら卒倒するぐらいに衝撃的な光景であろう。

女性の方は気持ち良さそうに少年の腕にすり寄ってくるが少年の方は全く気付かないほど気を許しているのか

全く起きる気配がない。が、

 

ジリ―――バンッ!!

 

目覚ましがなる瞬間、少年の方が一気に覚醒し目覚ましを止めた。そして、伸びをしようとして漸く自身の左腕にひっついている女性に気が付いた。

 

「ハァ~またで御座るか弁慶」

 

少年は若干諦めを含んだため息をもらしながら、慣れた手つきで女性の腕を解いてゆく。

 

「全く、何度注意しても直そうとしないで御座るな。拙者としてはそろそろ女子としての自覚を持ってほしいので御座るが・・・」

 

それとも拙者、男として見られてない?と首を傾げながら自身のベットで寝ている弁慶と呼ばれた女性に布団を掛ける。そして、手早く運動着に着替え立てかけてあった模擬槍を持ち、窓から外を見る。

外はまだ日が完全に昇っておらずまだ少し暗い。

 

「さて、今日も一日精進あるのみで御座る!!」

 

パンッ!と自身の頬を打ち気合を入れると自室を後にした。

 

 

 

 

 

少年が自室を後にした少し後、

 

「ムゥ、今日もダメだったか・・・スピ~・・・」

 

という女性の残念そうな寝言が聞こえたそうな・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

「フッ!ハッ!!ヤァアッ!!!」

 

寮の敷地内にある広大な庭の真ん中で少年は一人槍を振るっていた。

既にあれから何時間も振るっていたようで体は汗に濡れ、槍を振るうたびに汗が飛び散っているが、顔には若干疲労の色が見えるがそれでも槍を雑に振るっている訳ではなく、一つ一つ吟味しながら槍を振るっている。

 

「精が出ますね、忠義さま」

 

ふと、突然背後から声を掛けられ少年『本多忠義』は槍を振るうのを止め声がした方を振り返った。

 

「ああ。おはようで御座るよ、加々美殿」

 

玄関前で立っていたのはこの寮の管理人で九鬼家従者部隊順列六十六位に位置する『加々美摩耶』であった。

 

「はい。おはようございます、朝食までもう少し時間がありますので今の内に汗を流して着替えをお願いいたします」

 

「承知したで御座る」

 

そう言って忠義は差し出されたタオルを受け取り汗を拭う。

 

「既に清楚様、義経さまが起きられ朝の準備を始めている頃でございます」

 

「承知した。そしていつも通りあの二人は未だに起きぬで御座るか・・・」

 

汗をぬぐいながら寝坊常習犯の二人の事を考えながらヤレヤレとため息を吐いた。

 

「それでは先に風呂に入らせてもらうで御座る」

 

「分かりました。そう言うと思いましたので既に着替えをご用意させていただきました」

 

「忝のう御座る」

 

「いえ、これもメイドの務めですので・・・」

 

そうして、忠義は加々美と別れ浴室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

寮内・リビング

 

「フゥ~真よい湯で御座った」

 

「おはよう忠義くん。それとお疲れ様」

 

制服に着替えタオルを首掛け満足げにリビングに入って来た忠義を迎えたのは長い黒髪に清楚な大和撫子の雰囲気を醸し出す『葉桜清楚』が椅子に腰かけながら笑顔で出迎えてきた。

 

「おはようで御座るよ、清楚殿」

 

そう言いながら忠義は清楚の体面に腰掛ける。

 

「あ、まだ髪乾ききってないよ?」

 

「ムッ、別に問題御座らんが・・・」

 

そこで清楚は忠義の髪がまだ水気を帯びている事に気付き注意するが、忠義はどうでも好さそうだ。

 

「ダ~メ。それじゃあ髪が傷んじゃうでしょ?ちょっとじっとしててね?」

 

しかし清楚はそれを許さず、忠義の方に移動すると首掛けてあるタオルをとり鼻歌交じりでゆったりとした動作で髪の水気を拭いて行く。

と、そこで大人しく髪を拭かれていた忠義はある事に気付いた。

 

(こ、これはっ!?せ、清楚殿の胸が正面に!?)

 

髪を拭く際、正面を向くように言われたため清楚とは向い合っている状態、しかも今自分は座っており自然と視線は清楚の胸へと向かってしまう。

 

(し、しかもなんだかいい匂いまでしてくるで御座るーーー!!?!?)

 

「~~♪はいっ!お終い・・・・?どうしたの、忠義くん?」

 

「ふわっ!?な、ななな何でもないで御座るよ!?」

 

「でも、お顔が真っ赤だよ?」

 

「ゆ、湯に当りすぎたのでござろう!今日は少し長風呂で御座ったからな!!」

 

「そ、そう?」

 

「そうで御座る!!ささ、清楚殿。もう直ぐ義経達が来るで御座ろうから席にお着きになされよ」

 

「あ、噂をすればだね」

 

「おはよ~」

 

「べ、弁慶。もっとちゃんと歩いてくれ、義経は困る」

 

そう言っては黒髪をポニーテールにした少女『源義経』とその少女に背負われている先ほど忠義の部屋で寝ていたウェーブのかかった少女『武蔵坊弁慶』だ。

 

「おはようで御座るよ。義経、弁慶」

 

「おはよう二人とも」

 

「お、おはよう忠義、清楚」

 

「全く・・・・。ほら、弁慶しっかり歩くで御座るよ」

 

「あ~い・・・」

 

今にも崩れそうな義経に手を貸し忠義は弁慶を椅子に座らせる。

 

「その様子ではまた朝から川神水を飲んでおったで御座るな?」

 

「ああ、義経が見た時には既に二本開けられていた」

 

「またか、弁慶。いい加減に川神水を飲む量を減らせぬで御座るか」

 

「ムリ」

 

呆れながら言う忠義に対して即答で応える弁慶。そんな態度に忠義は諦めたのか肩を落とした。

 

「ハァ~仕方ないで御座るな。それは追々治していくと言う事でよう御座ろう。それより後は与一だけで御座るな?」

 

「与一くんの事だからまだ寝てるんじゃないかな?」

 

「恐らくまた夜遅くまでアニメを見ていたので御座ろう」

 

「まったく、またか与一は・・・義経が起こしてくる」

 

「いや、主の手を煩わせる程じゃないよ。あたしが起こしてくるから」

 

与一を起こしに行こうとした義経を弁慶が止めに入り気だるそうな雰囲気で与一の部屋へと向かって行った。

 

「あ、弁慶・・・行ってしまった」

 

「よう御座ろう。義経が行くよりは効果的で御座るしな」

 

「ムッそれはどういう意味だ忠義」

 

忠義の言い方に口を尖らせながら不満を言う義経。

 

「気を悪くしてしまったら謝るで御座るよ。唯、もう直ぐ朝食の時間で御座るから弁慶の方が手早く済ませられるで御座るからな」

 

「だ、だが、弁慶の起こし方は・・・」

 

「荒っぽいんだよね」

 

『ほ~ら、起きろ与一~』

 

『ちょっ!?姉御、や、やめっ!ギャー!!!』

 

悲鳴がした後、一拍置いてドボン!と何か重い何かが池に落ちたような音が響いた。

 

「落ちたで御座るな。池に」

 

「落ちちゃったね~池に」

 

「た、大変だー!」

 

弁慶が与一を池に落すのは別に珍しい事でもなく、むしろ夏は結構な頻度で落している。

なので忠義と清楚は慌てた様子もなくのんびりとした態度で受け入れているのだが、義経は慌てて与一を助けに行こうとリビングを飛び出した。

 

「まあ、今日は別段寒くは御座らんから大事に至る訳でも無いが、加々美殿念のためタオルと浮袋をお願いするで御座るよ」

 

「こちらに」

 

そう言って加々美は何時の間に用意したのか救命用の浮輪(長い紐付き)とバスタオルを忠義に手渡した。

忝のう御座るとお礼を言い忠義はリビングを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく、与一よ。お主は学習せんので御座るか?」

 

「う、うるせぇっ」

 

朝の通学路、忠義達は並んで登校していた。その歩いている中で忠義はもう一人の少年、銀髪で切れ長の目をした『那須与一』特徴中二病。に呆れた目をしながらため息を吐いた。

 

「それにしても弁慶。幾らなんでも池に落すのは義経は感心しないぞ」

 

「起きない与一が悪いのよ」

 

咎める義経に弁慶は何喰わぬ顔している。

 

「そうだぞ与一よ。昨日はバックブリンガー。一昨日は高速ブレーンバスター。その前はパイルドライバー。・・・普通、ここまでやられたら否が応でも起きると思うので御座るが?」

 

「・・・よく生きてるよな俺?」

 

「お陰でいい技の実験になるね」

 

「あ、あははは~」

 

ゲッソリと肩を落とす与一とは対照的にホクホクと満足気な弁慶。そんな二人を見て苦笑する、というか苦笑しか出ない清楚。

 

「し、仕方ないだろ。眠かったんだからよ」

 

「どうせ夜遅くまで起きてたんでしょ?」

 

「ち、違うぞ!昨日は組織のエージェントが襲撃を」

 

「はいはい」

 

何時の間にこんな風になってしまったのか与一の中二病は最早手がつけられないレベルまで達している。

 

「与一、夜更かししないでちゃんと寝ないとダメだぞ!」

 

「うっせ、俺の勝手だろ」

 

「与一!」

 

「与一、あんた今度はここで新技掛けるよ?」

 

義経の忠告をめんどくさいと言った感じで切り捨てる与一に対して、弁慶はゴキゴキと鳴らし近づいてくる。それを察知した与一はガタガタと震えながら義経の背に隠れた。

 

「や、止めてくれ姉御!こんな所で姉御の技を喰らったら死んじまう!」

 

必死に逃げる与一にそれを捕まえようとする弁慶。その二人を止めようとする義経。そして、それを楽しそうに眺めている忠義と清楚。何だかんだで騒がしくも愉しい日常であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、それより忠義」

 

「ん?何で御座るか、弁慶」

 

「今朝の私の胸の感触、どうだった?」

 

「「「ブーーーーーーッ!!!」」」

 

「実はまた少し大きくなっちゃったんだよね~」

 

「べ、べべべ弁慶!?な、ななな、な何を突然言ってるので御座るかーー!?」

 

「え~だから、私の胸の感触訊いてるだけじゃん?気持ちよかった?」

 

「え、いや、柔かかったで御座るが・・・て、ハッ!?」

 

「忠義!?」「忠義くん!?」

 

「し、しまったで御座るーーー!?く、なんと見事な誘導尋問・・・!って、義経?清楚殿?あ、あの何をそんなに怒っているで御座るか?か、顔がコワイで御座るよー??」

 

「その話、詳しく聞きたいと義経は思うのだが忠義」

 

「そうだね。私も訊きたいなー?」

 

「ちょっ!?二人とも目のハイライトが消えているで御座るよ!?それに二人のキャラ的にありえないほどどす黒いオーラがにじみ出てるで御座るよー!!!!?って、こら与一!何を逃げようとしているで御座るか!?助けぬか!」

 

「む、無茶言うんじゃねぇ!?そんな暗黒オーラの中に入ったら一発で死ぬわ!」

 

「っというか弁慶!お主、この二人を止めぬかー!お主が原因で御座ろう!」

 

「えー。めんどいからパス」

 

「最悪で御座るな!?」

 

「忠義?」 「忠義くん?」

 

「ちょ、落ち着くで御座るよ二人とも?な、何故に義経は刀を持っているで御座るか?というかどこから出したで御座る!?そ、それに清楚殿もその分厚い六法全書をどうする気で御座るか?ほ、本は武器では御座らんよー?いや、だから、お、落ち着き――――――ギャーーーーーーーーーー!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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