「源義経、見参!!」
現在、忠義はヘリの上にいた。眼下では義経が抜刀して壁を垂直に駆け降りている所だ。目指すは天神館大将『石田三郎』。
「ふむ。しかし、義経には困ったもので御座るな。幾ら今日川神学園に編入する事になったからといって川神対戦に参加したいとは・・・」
まあ、義経らしいと言えばらしいで御座るがっと眼下の川神の工場を見ながら忠義は顎に手を添え苦笑した。
「ムッ?」
眼下の義経が一度別れすぐさま戻って来た。その表情には反省の色が見える。
「ハァ、相変わらずの見栄っ張りで御座るな」
その態度に大体察しがつき忠義はパイロットに自分も降下すると告げ、夜の空へと身を投げ出した。
ダンッッ!!!!
「な、何だ!?」
「彼は・・・?」
「た、忠義!?」
「おお、お主まで来ていたのか?」
突然、義経の背後でものすごい着地音が鳴り響き、その方を向くと川神学園の制服を着て額に鉢金を巻きつけた少年が立っていた。
「はい、英雄殿。お初にお目にかかる。拙者、今日より義経と共に川神学園2-Sに編入する事になった本多忠義に御座る。以後、お見知りおきを」
ペコリとお辞儀する忠義に少年、『直江大和』は若干困惑しながら、
「は、ハァ、どうも。あ、あの一体何処から?」
「うむ。無論ヘリからに御座る」
「ご、御座る・・・?」
「・・・それで?忠義くんは何をしにここへ?もう川神大戦は終了してしまいましたけど・・・」
忠義の語尾に戸惑いを見せる大和に対して褐色肌でメガネをかけた美少年『葵冬馬』はここに来た理由を問うた。
「うむ。身内の回収に御座る」
「あうぅ・・・」
視線を向けられた義経は恥しそうに顔を赤く染め、縮こまってしまった。
「全く、お主はすぐに見栄を張るので御座るから・・・。少しは周りの者を頼る術を持つで御座るよ」
「し、しかし、義経は義経だから・・・」
「昔の武将は何でも一人でやっている訳では御座らんよ。そもそも、何でも一人でできるなら兵は要らんで御座ろう」
「あ・・・」
そう言って義経の手を優しく握り、額にバツ印の傷を持ち金色の制服を着た『九鬼英雄』に向き直り礼をした。
「それでは英雄殿。拙者と義経はこれにてご免で御座る」
「うむ。先ほどお主の言葉中々に良かったぞ。我の胸にも刻んでおこう」
「恐縮に御座る。それでは」
そう言って忠義と義経は英雄達と離れていった。
今日はいよいよ、忠義達の川神学園転入初日。
「義経、大丈夫で御座るか?」
川神学園の学園長であり川神院総代である『川神鉄心』が壇上に立ち喋っている。そんな中、忠義は心配そうに義経を見ていた。
「だ、大丈夫だぞ忠義?義経は大丈夫」
「全然、大丈夫そうにないので御座るが・・・」
「でも義経ちゃんの気持ちもわかるよ。皆の前で挨拶するのって緊張するよね」
「そうかな?あたしは普通だけど・・・」
見事にガチガチに緊張してしまっている義経に対して清楚は同意するように胸に手を当てて苦笑する。対して弁慶は何時もの様に気だるげな様子で微塵も緊張してなさそうである。
「まあ、もう少しリラックスするで御座るよ義経。・・・所で与一は何処に行ったで御座ろう?」
ポンポンと義経の頭を撫でながら与一の姿が無い事に気付き辺りを見回す。
「そ、そう言えば、与一の姿が何処にもいない!?」
「あの馬鹿、こんな大事な時にどこでサボっているんだい?」
「ど、どうしよう忠義くん!?」
「ううむ・・・」
与一がいない事に気付き義経と清楚が慌て、弁慶が怒り、忠義が唸る。
そうしている間にも学長が話を終え、清楚の名前を呼んだ。
「仕方のう御座る。拙者、ひとっ走り行って与一を捕まえてくるで御座る。お主たちは先に挨拶を済ませるで御座るよ」
「う、うん。わかった」
「済まない、忠義。義経は感謝する」
「でも、与一のいる場所なんて分かるの?」
「大体見当が付いているで御座る。御免!」
そう言うと同時に忠義は一瞬にしてその場を消えた。
川神学園・屋上
バンッ!!
「やはりここにいたで御座るか、与一」
「な、なんだ忠義かよ。何の用だよ?」
「うむ。本当なら今説教をしたいので御座るがこの学園の施設をまだ把握しきれていなかったのでここまで来るのに苦労したで御座るからな時間がのう御座る。故に問答無用」
ガシッ
一瞬で与一の傍まで移動した忠義は寝転がっている与一の襟首を掴んで持ち上げた。
「ヘッ?お、おい・・・。なに人の襟首を掴んでやがる?」
「さきほど言った様に問答無用で御座る」
嫌な予感が先ほどからビンビン来ているのか与一は顔を引き攣りながら問いかけるが忠義は無視して柵に足を掛けた。目指すは壇上。
そして・・・
「アイキャンフラーイ、で御座るーーーー!!!」
「うぉわあぁぁぁぁぁっ!!!?」
一気に跳躍した。
忠義達が壇上へと跳躍する前、校庭では若干騒然としていた。
「本多忠義!那須与一!・・・ううむ。どこに行ってしまったのかのう・・・」
「どうやらいないみたいですネ(先ほどまで、確かに男の子が一人いた筈、いくら全校生徒に意識を向けていたとはいえ知覚できなかったとワ)」
「おー。早速サボりとは、ユニークですな」
忠義と与一の名前を呼びながら探す鉄心に緑のジャージを着た中国人『ルー・イー』と加齢臭のするおっさん先生『宇佐美巨人』も探すが一向に姿を現さない。
「あわわ、忠義~」
「与一の奴、やっぱりアルゼンチンバックブリーカーだな・・・」
「忠義くん・・・」
騒ぎ出す生徒達に義経が慌てだし、弁慶が与一の制裁を決め、清楚が心配しだした。
「ううむ。仕方ないでは『アイキャンフラーイ、で御座るーーーーー!!!』『うォわあぁぁぁぁぁっ!!?』ムッ!」
鉄心が次の生徒を紹介しようとした瞬間、学園の屋上のあたりから二人の生徒の声(うち一人は悲鳴)が響き渡った。
そして・・・・
ダンッッ!!!!!
「ゲフゥッ!?」
「な、なにっ!?」
「そ、空から人が降ってきましたーーー!?」
「アイツは・・・」
壇上には額には鉢金を巻いた少年と頭から壇上に突っ込んだ銀髪の少年がいた。
「申し訳御座らぬ、学長殿。本多忠義、並びに那須与一。只今参上したで御座る」
「おおう。中々派手な登場じゃのう」
「申し訳御座らん。与一を捜索するのにこの学園の室内を完璧に把握しておらず思わぬ時間を食ってしまったで御座る。これも拙者の未熟と監督不行き届き、申し訳御座らん」
ペコリと頭を下げる忠義に鉄心はカッカッカッと笑いながら、
「よいよい。若いのに中々礼儀を心へておる。それよりも早く皆に挨拶をしなさい」
「ハッ!では・・・」
そう言ってマイクの前に立った忠義はゴホンと咳をして堂々とした姿勢で、
「拙者の名は本多忠義。今日よりこの学園の2-Sに編入する事になった。若輩な身ゆえ何分至らないことが御座ろうがよろしくお頼み申す」
言い終えるとペコリと頭を下げ、顔をあげると(主に女子の)歓声が響き渡った。
「本多忠義?忠勝じゃなくて?」
「あ、もちろんゲンさんの事じゃないからね?」
「ウッセ、ンな事は分かってんだよ」
歓声の中、生徒からの疑問に忠義は再びマイクの前に立った。
「うむ。確かに忠義などという英雄は御座らん。拙者は本多忠勝のクローンで御座る。では何故名前が違うか?これに対する理由は清楚殿とは違い、『生涯仕えるべき主を定めたならばその時は本多忠勝を名乗れ』と生みの親であるマープル殿に言われそれまで名は
「へぇ戦国最強と謳われた、本多忠勝のクローンか・・・期待できそうだな(それにあの脚力、フフッ楽しくなってきたな)」
忠義の話を聞き、長い黒髪に豊満な体の美少女、武神『川神百代』が好戦的な目で忠義を見つめていた。
「さて、拙者の挨拶はここまでにして・・・ほら、与一!何時までそんな所で寝ているで御座るか!しっかり立つで御座るよ!!」
未だに先ほどの体制から動こうとしない(というか動けない)与一に忠義はやれやれと言った感じで起き上がらせ、何度も頬を殴打する。
「いや、さっきの着地の時に思いっきり頭から突っ込んで気絶しているようだけど・・・」
「というか、生きてんのか?アイツ」
周りの心配そうな声と視線に忠義は若干焦りながら与一の頬を更に貼り飛ばしていく。
「た、忠義!それ以上やったら、与一の顔が大変な事にっ!」
「既に倍以上の大きさになっているけどね~グビグビ・・・はー、美味しい」
「おおーい!ひょうたんが気になっていたが後ろで弁慶が酒飲んでいるぞー!!」
「弁慶、我慢できなかったのか?」
「申し訳も」
咎める義経に対し、弁慶は頬を赤く染めながら反省していない。
「こ、これは皆も知っている川神水で酒ではない」
「何だ、そうか。・・・・って川神水なら飲んでいい訳じゃないぞ!」
金髪のドイツ系美少女『クリスティアーネ・フリードリヒ』が一瞬納得しかけたが直ぐに思いいたって注意した。
「皆さん、すみません。私はとある病気でして。こうして時々飲まないと体が震えるのです」
「何だそうなのか。なら仕方がないな」
「ていうかそれはア・・・むぐっ」
「空気読めよモロ。良いんだよ美人なら川神水ぐらい」
弁慶の話にクリスがそれならばしょうがないと納得している所に『師岡卓也』がキレのいいツッコミを鼻とうとしていようとしたがガタイの良い少年『島津岳人』が慌てて抑える。
「それにしては特別待遇過ぎる気もしますが」
「その代わり、弁慶は成績が学年で四位以下なら、即退学でいいと念書を貰っておるしな。じゃからテストで四位だったら、サヨナラじゃ」
生徒からの不満を鉄心がそれを認めている条件を説明することで抑えた。
「弁慶、お前は五杯で壊れる。これ以上は」
「分かってる・・・そもそも今飲んでいるのはワザとだし。全校の前で一度この姿を見せておく・・・こういう人間だといつでも好きな時に飲める訳で」
「無用に敵を作っているようで。義経はハラハラだ」
「いや、もう手遅れで御座ろう・・。それに弁慶、許可が下りているからといって学園ではあまり飲み過ぎてはダメで御座るぞ」
「大丈夫大丈夫。競争意識を刺激しているわけ、良しとして」
弁慶の言葉通り、2-Sクラス辺りからこちらをかなりライバル視している生徒がゴロゴロと確認される。
「それより、忠義。いい加減止めたら?」
「ああ!?与一の顔がアン○ンマンのようにっ!?」
「ぬおっ!?しまったで御座るーー!!?」
叩きすぎたーーー!!?と騒いでいる忠義達を見て鉄心はため息を吐き、
「仕方ない。とりあえずこの五人が武士道プランの申し子たちじゃ。皆、仲良くするのじゃぞ」
鉄心の挨拶に忠義達は慌てて整列し各々礼をした。
「後は武士道プランの関係者じゃな。共に一年生で1-Sじゃ。さぁ、入ってくるがいい」
鉄心の言葉と共に楽器を持った者たちが現れた。
「お?なんか行儀よさそうな連中が来たぞ」
「あれは高名なウィー○交響楽団・・・なぜこんな所に」
そして、演奏が始まりそれによって生徒達が騒ぎだした。すると、突然従者の姿が現れた。いきなり校庭に現れた彼らは、2列に並んで壇上の横まで歩いてくると、次に向かい合って頭を下げながら肩を組み、ただ一人が歩くための道を作っていく。
そして、できあがった道を悠然と歩く額に×のある少女『九鬼紋白』。
「我、権限である!」
「フハハハッ!何を隠そう、我の妹である!」
「わかっとるわー!それ以外何があると言うのじゃ!」
「九鬼が二人も揃うとは・・・カオスすぎる」
「見た瞬間心が震えたっ・・・圧倒的カリスマ!!・・・・自分が恋に落ちる瞬間を認識してしまった」
2-Sのざわめきが他のクラスにまで伝播していった。
「我の名は九鬼紋白。紋様と呼ぶがいい。我は飛び級することになってな。――――」
壇上にあがった紋白は、後ろにヒュームを従えて説明をしていく。それによると、武士道プランによって川神学園の護衛が強化されるため、紋白自身もそこに入ることで護衛の分散を防ぐためのようだ。そこに、百代が一つ疑問を投げかける。
「・・・おいじじい、もう一人の転入生はどこだ?」
「さっきから紋ちゃんの横におるじゃろ」
「オイオイ、やっぱりそんなオチなのか」
その疑問――1-Sに入る人間は2人に対して、壇上には紋白の1人しかいないからだった。そして、それに対する鉄心の答えに、全生徒が目線を横へずらす。そこにいるのは、微動だにしないヒュームだけ。
もうなんでもありだ、この学校。視線を向けた生徒たちは思う。
そんな中、1年生からは話題が合わないのでは?といった疑問の声があがったが、それに対してはヒュームがそつなく返答する。彼自身も問題なく馴染める自信があるようだった。その後は滞ることなく?(ヒュームが百代に対して挑発的な態度をとること以外)進み、臨時集会は解散となる。