真剣で蜻蛉切に恋しなさい!S   作:神喰いの王

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五閃目

朝、忠義は義経、弁慶と共に海岸へと赴いていた。

 

「ムッ!・・・・この気は・・・」

 

「!?今、凄い力がぶつかり合ったぞ、事件か?」

 

そんな中、突然川神市でデカイ気が二つぶつかり合ったのを忠義と義経は感じ取った。その一つに忠義は覚えがあった。

 

「忠義は分かったのか?」

 

「うむ。弁慶は・・・その状態ではわからぬで御座るか」

 

後ろを振り向くとすっかり出来上がった弁慶が・・・・。

 

「え?・・・ああー!朝から川神水はダメだぞ弁慶」

 

「迎え酒ならぬ迎え川神水だから大丈夫」

 

「大丈夫の要素が一つもないで御座るよ・・・・。(それにしてもさっきの気はヒューム殿。もう一つは誰で御座ろうか?)」

 

弁慶にあきれながら忠義は戦闘のあった方角を眺めていたが、直ぐに気を取り直して、

 

「それより義経。時間もあまりない故、早速始めるで御座るよ」

 

そう言って長槍を構える。忠義の持つ長槍はSFなどで出てくるような機械仕掛けの作りをしていた。

 

「ッ!そうだったな。今日はその為に早起きしたのだからな」

 

義経もすぐさま気を引き締め腰に差している刀を抜く。

 

「うむ。ようやく調整の終わったこの蜻蛉切。その肩慣らしを改めてお願いするで御座るよ」

 

「ああ。義経も忠義の役に立てるのなら嬉しい」

 

「うむ、では弁慶。審判の任、頼むで御座るよ」

 

「は~い。んじゃあ、時間もあんまないから制限時間は五分ね」

 

やる気のない返事と共に弁慶は杯を持ってない手をゆっくりと上げた。

それに伴い忠義と義経の脚に力がこもる。

 

「それじゃあ・・・・始め」

 

「行くぞ!」

 

「参る!!」

 

弁慶の腕が振り下ろされると同時に一瞬で間合いを詰めた二人はそれぞれの得物をぶつけ合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

川神学園・2-S

 

昼休み現在、川神学園食堂では騒然となっていた。

食堂のテーブル丸々一つ埋め尽くすほどの料理の数々、それを一人豪快に食べている生徒に食堂にいる生徒全員の目を釘付けにしていた。

 

「ガツガツッ!!う~ん!川神学園の学食は真に美味な物ばかりで御座るな!!」

 

幸せ一杯といった感じでガツガツと料理を食べているのは武士道プランの申し子の一人である忠義。彼は食堂の全メニューを注文し、テーブル一つ占領しものすごい勢いで胃の中に吸収されていく。

そんな様子を周りの生徒は呆然と見ていた。

普段は忠義もある程度抑えて食べているのだが、今朝は義経と五分間だけとはいえ本気の模擬戦を行い、放課後も学内の挑戦者を義経と一緒に相手をしなければならないため、自身の弁当(重箱五段)に加えて学食全品を食べていた。

 

「ひかえーい、ひかえーい!ひかえおろう!」

 

「紋様のおなーりー!」

 

「ムッ?」

 

食事も終え、茶を飲んで一息ついている時に食堂の入り口付近から聞き覚えのある声と名前が聞こえ忠義はその方を向くと、忠義のテーブルに集まっていた人垣がモーゼの十戒の如くわれた。そしてそこに現れたのは、

 

「おおっ、紋白に井上殿では御座らんか」

 

「フハハハ!相変わらずの健啖家だな忠義!」

 

「っつーか、たった一日で学食のメニュー全部コンプしたのかよ。よくそんだけ食えんな」

 

「むぅ・・・これでも財布事情を考えて腹八分目に抑えているので御座るが・・・」

 

「いや、どんだけ食うんだよ!?」

 

「フハハハ!うむ、一流の武道家たるもの健啖家であるべきだな!」

 

「いや、どうなんでしょうね・・・」

 

紋白の言葉に紋白の同級生『武蔵小杉』が小声で呆れていた。

 

「して、拙者に何か御用で御座るか、紋白?」

 

「うむ!今朝方調整が終わった蜻蛉切はどうであった?」

 

「何の問題もなかったで御座る。しっかり拙者に馴染んでとても扱いやすかったで御座る」

 

感謝するで御座るよと頭を下げる忠義に紋白は笑いながら、

 

「フハハハ!気にするな。アレを完成させたのは我ではなくヒュームにクラウ爺を始めとした九鬼の者たちに久信の力あっての事だ。礼を言うのならばそやつ等に言うがいい」

 

「了解に御座る。では今日の決闘で早速、お披露目で御座るな」

 

「うむ!我もお前と蜻蛉切の雄姿をしかとこの目で見届けようぞ!」

 

「応!では、拙者は午後の授業に行ってくるで御座るよ」

 

「うむ!ではまたな!」

 

紋白の声援に気合が入った様子で立ち上がり、食堂を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

川神学園校庭

 

放課後、忠義と義経は学内の対戦者と決闘を行うところであった。

 

「では、最初は拙者からでいいで御座るな?」

 

「ああ、義経は構わない」

 

義経の了承を得ると忠義は蜻蛉切を持って中央に向かった。

決闘は忠義と義経の交互に相手をする事になり。忠義の最初の相手は、

 

「では、お相手願うで御座るよフリードリヒ殿」

 

「ああ、よろしく頼む本多殿」

 

レイピアを構えやる気十分な騎士クリスだ。本来なら最初の相手はマルギッテだったのだが、彼女は急に任務が入ってしまい代打としてクリスを推薦したのだ。

 

「しかし以外で御座るな。フリードリヒ殿」

 

「何がだ、本多殿?」

 

「いや、てっきり義経と決闘するのであろうと思っていたので御座ったが・・・」

 

忠義の疑念にクリスはああっと前置きをして、

 

「確かに源義経との戦闘にも興味があるが、『戦国最強』本多忠勝の戦闘にも自分は興味があるぞ」

 

「フム・・・。拙者まだ、その名を名乗るに相応しい男では御座らんが・・・」

 

そこまで行って忠義はいったん区切り、自身の愛槍『蜻蛉切』の切っ先をクリスに向けて構えると、

 

「その期待に添える戦いをお見せするで御座るよ!」

 

「ああ!行くぞ!!」

 

クリスがレイピアを構えなおした直後、二人は同時に動いた。

 

「むんっ!」

 

まず最初に仕掛けたのはリーチで勝る忠義。繰り出された突きはまさに光速の突き。

 

「クッ!?」

 

ギリィィッ!!

 

迫りくる穂先をクリスはレイピアでギリギリ受け流す。

 

「ほう、拙者の初撃を受け流すとは見事で御座る。ならば、これでどうで御座るかっ!」

 

初撃を受け流したクリスの技量に感心しながら忠義は返す刀で今度は首元、右肩、腹を狙った光速の三連撃。あまりの速さに穂先が三つになった周りからは錯覚が起る。

 

キィン、キィン、ドガッ!

 

「グハッ!?」

 

首元との右肩の突きは何とか受け流したが、最後の一撃は受けきれずもろに食らってしまった。

 

「グッ・・・まだだ!」

 

喰らった腹を抑え、クリスは果敢に忠義へと向かって行く。そんなクリスに忠義は止めとばかりに突きを放つ。狙うは人中。

 

「ッ!」

 

「ぬっ!?」

 

しかし、繰り出された槍はクリスの胴に中らず、少し体操服を引っかけるだけに終わった。当る瞬間、クリスは状態を半身にして蜻蛉切をかわした。しかし、完璧には避けきれず穂先がクリスの胴を横一閃に通過し、痛みにクリスは顔を歪めるが、痛みに堪えクリスは忠義に向かってレイピアを繰り出した。

 

「ヤァッ!!」

 

レイピアの穂先は迷わず忠義の胴に向かって吸い込まれていく。決闘を観戦していた誰もが中った、とそう思っただろう。それは攻撃を繰り出したクリスもそう確信していた。

が・・・

 

しゃっ!

 

レイピアが中る直前、忠義は一瞬で姿を消した。

 

「なっ!?消え・・・」

 

突然の事にクリスはレイピアを突き出した状態で固まってしまう。

 

「クリ、後!!」

 

「え・・・?」

 

「ぬんっ!」

 

ドゴッ!!

 

「か、ハッ!?

 

一子の言葉にクリスは後ろを振り返えようとした瞬間、脇腹に猛烈な衝撃が走りそのまま横に吹き飛ばされた。

 

ザザーーーーッ!!!!

 

「グゥッ!?・・・な、何が・・・?」

 

困惑するクリスは自身が元いた場所に視線を向けるとそこには槍を振り抜いた状態の忠義がいた。

 

「・・・正直ここまでとは・・・真、驚いたで御座るよ」

 

槍を振り抜いた姿勢から元に戻し忠義はポツリを口にした。

あの一瞬、忠義は自身の力を使い一瞬でクリスの背後に回り込みそのまま無防備な脇腹へ槍を叩きこんだのである。

 

「それまでっ!」

 

終了の宣言が響き渡り、その後にワァッと歓声が上がった。

 

「クリッ!大丈夫?」

 

「ッツ!・・・ああ、なんとかな・・・」

 

一子が慌ててクリスの元へ駆け寄り助け起こし、助け起こされたクリスも脇腹を押えながらフラフラと立ち上がった。

 

「無事に御座るか、フリードリヒ殿」

 

「・・・ああ。まだ痛むが、大丈夫だ」

 

歩み寄って来た忠義にクリスは脇腹の怪我の具合を確かめながらそう返した。

 

「ならよう御座った。最後の攻防、避けられるとは思っておらずつい力を入れ過ぎてしまったで御座るからな」

 

「そうだ。その最後の攻防、どうやってクリの後ろをとったの?」

 

完璧にとらえたと思ったんだけど・・・と一子は疑問を口にする。

 

「どう、といわれてもただ速く動いて後ろをとっただけで御座るよ?」

 

何でもない風に告白する忠義にクリスと一子は驚愕する。この男、単純な脚力だけで神速に近い速度を出したのだ。

 

(速さならお姉様並みね。弁慶とは違ってスピード系ね)

 

「それよりフリードリヒ殿。その体操服で御座るが・・・」

 

「ああ、コレか・・・」

 

忠義の視線の先には丁度鳩尾あたりに横一線で切り裂かれ、そこから覗く肌も蚯蚓腫れのように赤くなっていた。

 

「よければ、拙者が弁償いたすが・・・」

 

「いや、これは戦いで出来た、いわば名誉の負傷の様なものだ。それに、負けた上に服を弁償されたとあっては此方の面目が丸つぶれだからな」

 

「・・・そうで御座るな。無思慮な申し出、申し訳のう御座る」

 

そう言って頭を下げる忠義にクリスはいいんだといい手で制す。

 

「その代わり、次戦うときは自分はもっと強くなっているからな!また戦おう忠義」

 

「っ!・・・わかったで御座る、クリス殿」

 

一瞬名前で呼ばれた事に驚いたものの忠義は微笑を浮かべ、二人は握手を交わした。

 

「では、そろそろ義経の試合の準備が出来る頃なので、拙者はこれにて」

 

「ああ」

 

「またね!」

 

そうして、忠義はその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

その後、忠義と義経は交互に決闘を進めていったのだが、義経はともかく忠義の試合はクリスとの試合と違い全てが呆気なく終わった。何故なら、他の生徒は全て一撃のもとで終わらせているのである。クリスとの試合から忠義の速度が分かっているはずなのだが誰も反応できず、その場から動く事なく、対戦者の中にはガタイのいい者や槍の届かぬ位置に距離を取ろうとした者もいたのだが、筋肉の鎧をものともせず、距離をとる前に決められてしまったのである。連戦で疲れた様子もなく変わらぬ槍捌きで対戦相手を下していった。

対する義経も忠義ほどではないが、対戦者を下していったのだが、連戦による疲れか、それとも対戦者の技量か、最後の一子には多少手間取ってしまったがそれでも勝利を飾った。

その後、忠義達は空き教室でのんびりしていた弁慶と大和達、丁度下校しようとした紋白と合流した。各々決闘により認めあったり、お互い気があったり、持ち前のカリスマでクラスメイトと仲良くなったりと順調に学生生活を謳歌していた。

 

唯一人、与一以外は・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

夜・川神院

 

ここ武術の総本山川神院、そこで二人の老人が対面していた。一人はこの川神院の総代にして川神学園の学長、川神鉄心。もう一人は九鬼家順列零番、ヒューム・ヘルシング。共に彼らの世代では最強であり、二人がいるだけでその場所の威圧感が半端ではなかった。

 

「・・・それで、この俺をわざわざ呼び付けるとはどういう用件だ鉄心」

 

「うむ。回りくどい言い方は嫌いでのう。単刀直入に問わせてもらうが、本多忠義の事じゃ」

 

忠義の名前が出た際ヒュームの眉がピクリと動いた。

 

「最初は勘違いかと思うた。だが、今日の決闘。その戦い方を見て確信したのう。本多忠義。あやつは・・・」

 

「そうだ。鹿角の遺伝子を元にしたクローンだ」

 

やはりと鉄心は思った。忠義は若い頃の性別は違うが、鹿角にそっくりだった。礼儀を重んじ、明るく、見た目によらず健啖家な所。なにより決闘でみせたあの槍捌き。アレを見た瞬間、なんとも言えないものが背筋に走った。昔、自分こそが最強だとそう自惚れていた時、自身と同年齢か少し下の女武者が現れ、初めて敗北を味わった。その時の槍捌きは今でも覚えている(まあ、その後の再戦でワシが勝ったがの)。

と、感慨に浸っていたが、ある事に気付き目の前の人物を睨む。

 

「まさかとは思うが貴様・・・」

 

怒気を含んだ声音。そこから先は口にしない。鉄心の気配が言葉よりも雄弁に語っているからだ。

それを真っ向から受けるヒュームはしかし動じる事もなくこう告げた。

 

「フンッ勘違いするな。これは鹿角が望んだ事だ」

 

「何じゃと?」

 

ヒュームの言葉に鉄心は怒気を納め、代わりに困惑した。

 

「アイツが子を生せない体というのは知っているだろう?そして不治の病に侵され死期が迫っていたアイツは自身の血筋を絶やさないために武士道プランに自身の遺伝子を提供したのだ」

 

「・・・・」

 

ヒュームの説明を受けた鉄心は黙したままだ。

 

「そして忠義だが、アイツは誰からの指導を受けるより先に槍を持ちそれを振るった」

 

その時の光景を貴様にも見せたかったぞというヒュームの表情はわずかだが喜びの感情が窺えた。

 

「本多鹿角、いや二代目本多忠勝の意思は次の代へと引き継がれたと言う訳か・・・」

 

「その通りだ」

 

そう返事をするとヒュームはもう話す事は無いと言う様にその場から立ち去った。

 

「・・・フム。本多の業を身を持って知れば今のモモも変わるかもしれんのう」

 

昔の自分の様にと内心で思いながら自身の部屋に駆け寄ってくる孫の追求をどうしようかと悩む鉄心であった。

 

 

 

 

 

 

 




この世界の鉄心は若い頃、鹿角に敗北しています。公式戦ではなかったため記録には残っていませんが・・・。

次に何故二代目かというと、初代から今まで本多の家系には『本多忠勝』を襲名できるほどの実力者が存在せず、鹿角が初めてだったためです。
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