爆走兄弟レッツ&ゴー!! 第二回世界GP 作:モンキー・キック
「みんな!ミュージックスタートだ!!」
そのピコの掛け声にカリビアンズのメンバーは「イエ〜イ!!!」と盛り上がり、同時にジャミンRGの走りも明らかに変わった。
どこか変則的、それでいてマシン一台一台が役割を熟知しているような、走りは楽器の如く、五台のジャミンRGはまるで音楽を奏でているようであった。
J「走りが変わった!?」
藤吉「凄い速さでげす!」
五台のジャミンRGはビクトリーズの三台を一気に引き離す。
烈「くっ…二人とも!カリビアンズがもし一週差を縮めてきた時、そこが本番だ!」
J「はい!」
藤吉「勿論でげす!」
その頃客席ではレースを観戦しているアストロレンジャーズの姿があった。
エッジ「リーダー、あの走り…」
ブレット「ああ、多少気になるな…オペレーター頼めるか?」
オペレーター「分かった、解析完了次第、データを送る」
ハマーD「しかしいくら速くなってもあの差はどうにもならないように思えるな」
ジョー「残り四週にして先頭二台とは一周差…確かに無理があるわね」
「そんな事ないさ」
アストロレンジャーズの会話の後ろから“その声”は割って入ってきた。
ミラー「誰だ?…あっ!」
ブレット「フッ、お前も観戦とはな…ミハエル」
後ろに座っていたのアイゼンヴォルフのミハエル。
ミハエル「フフ、なんたってビクトリーズのレースだからね…でも思わぬ収穫だよ」
ハマーD「収穫?」
ミハエル「ほら、“彼ら”のリズム…いや、音楽はさらに速くなるよ」
ファイター「ここで一気に差を詰めてくるカリビアンズ!一周差の先頭二台と並んだぁ!!」
ピコ「やっ!ウンコ!」
豪「へっ、スゲーじゃねーか!その走り!さっきは悪かったな、あんな事言って」
ピコ「気にしてませーん!でもこっからが勝負です!」
リョウ「勝負はいいが一周差だぞ!?」
ピコ「だから今から抜きまーす!」
アイコントをする豪とリョウ。
するとライトニングマグナムとライジングトリガーはそれぞれ左右に移動し、コースの真ん中を大きく空けた。
ピコ「えっ、ウンコ?」
豪「お前らをブロックするのは俺たちじゃねぇ…烈兄貴たちさ」
ピコ「………後悔するよ?」
豪「言うじゃねーか!だがな、それでも勝つのは俺たちビクトリーズだ!!」
ピコ「フフ、よしみんな!さらにテンポあげるよ!」
「イエ〜イ!!」
ファイター「さぁなんと!カリビアンズ!一周差あった先頭二台を抜いて7周目に突入!しかしライトニングマグナムとライジングトリガーもハ周目に入ったぞー!!果たして追いつく事ができるのか〜!?」
客席──
オペレーター「今からデータを送る」
ジャミンRGの解析データがブレットのノートパソコンに送られてきた。
内容は以下のとおり。
『以前と大きく変わった点はギ
ア。
このギアはどの既存のものと
も違った形をしており、六周
目からのあの変則的な走りは
そこからくるものだと思われ
る。
それと同時にあのギアは初め
からつけていたものとも分か
る。』
エッジ「ギアか…」
ジョー「それも最初からなんて…ギア以外にも何かあるんじゃないかしら」
ブレット「──いや、カウンターギアの方をよく見てみろ、素材がやけに脆いものを使ってる」
ミラー「ホントだ」
ミハエル「あとそれとは逆に他のギアはかなりの強度があるようだね」
ハマーD「一体なんのために?」
ブレット「………なるほどな」
エッジ「何か分かったのか、リーダー?」
ブレット「あの五回のピット作業、おそらくカウンターギアを交換したんだろう」
エッジ「でも最初から使ってたって」
ミハエル「うん、正確には交換…“しあった”」
ハマーD「五回ものピット作業は一周につき一台ずつ、ギアを慣らせていたと?」
エッジ「つまりは最後の五回目のピットインで最初に使っていたギアがそれぞれのマシンに戻り、あの走りに至ったのか」
ブレット「思うにあのカウンターギアはレース毎の使い捨て」
ミハエル「そうだね、あえて脆い素材で作りコースにあったマシンの走りをギアを削る事で調和させる…だから一回だけ、それもチームレースだけの作戦だ」
ミラー「彼らにそんな走りができるなんて信じられない」
ミハエル「いや、ピコくん…彼がいるなら可能かもね」
ジョー「なぜ?」
ミハエル「“僕と同じ”だからかな」
ブレット「“耳がいい”…というわけか?」
ミハエル「フフ、正解!それよりレースを見よう…ビクトリーズがどう対応するのか楽しみだ」
ファイター「これは凄まじい走り!クールカリビアンズ!!今までオフロードをここまで生かした走りがあっただろうか〜!!?」
そのファイターの言葉どおり、オフロードの少し気を抜けば命とりになるであろう小さな障害さえもカリビアンズの味方をしているようであった。
そして五台のジャミンRGは驚異的な追い上げを見せ、九週目に入ろうとするブリッツァーソニック、スピンバイパー、プロトセイバー
烈「残り二周…前の二人がワン・ツーフィニッシュ安全圏に入るまで絶対にいかせない!!」
ピコ「よーしみんな!サンドバーストコンビネーションだ!」
「イエ〜イ!!」
五台のジャミンRGは縦一列に並ぶ。
J「一体何を?」
そこでジャミンRGの走りはまた変わる。
ローラーやバンパーを吹き飛ばし、そのまま縦一列に詰めてきた。
烈「あれはサンドバースト走法だ…二人とも!」
藤吉、J「おう!!」
三台のマシンは、左右の
ピコ「そのままいけ!ジャミン!」
シャアアア…
ファイター「あーーっと!ジャミンRG、凄い勢いで加速するがこのままではブリッツァーソニックと接触してしまうぞ〜!!?」
藤吉「烈くん!」
烈「いや、彼らはそんなレースはしない…何を狙っているんだ?」
(三台の隙間は角度を付けているからあのスピードのジャミンRGでは無理だ…まさか──)
「上か!!?」
ピコ「正解でーす!でももう遅いです!」
五台のジャミンRGは先頭がブリッツァーソニックに接触しそうになる寸前──その場で飛んだ。
もしくは“跳ねた”と言う方が相応しいのかもしれない…まるでバッタのように。
烈「な…」
藤吉「なんでげす!あれは!?」
ピコ「“ペペ”の力でーす!」
烈・J「ぺぺ!?」
藤吉「…あ、なんか思い出したでげす!確かルーキー戦で親のコネで出てたレーサーでげすよ」
J「親のコネ?」
藤吉「そうでげす、その子の親がルーキー戦のスポンサーだったんでげすよ」
ピコ「フフ、ルーキー戦が終わったあと仲良くなってね、その彼のマシンのアイデアをジャミンにも取り入れたのさ!」
ファイター「さぁ残り二週という所で、とんでもない展開だ〜!!レース中盤で一周差をつけられていたクールカリビアンズが、ここにきてビクトリーズの三台を抜いた!そして約半周先には豪選手とリョウ選手!果たして追いつけるのか〜!!?」
豪「げげっ!?マジかよ!烈兄貴たち抜かれたのか…」
リョウ「あの差をここまでつめてくるとはな、恐れ入るぜ…よし!豪、ラスト一周入る前にピットインだ!そこで二台の最高速をあげる」
豪「ああ!いくらなんでもこの差からの全力じゃ、あいつらも追いつけっこねーぜ!」
タムタム「どうする?ピコ、絶対前の二台もラスト一周で今より更にスピードを上げるはずだよ」
リタ「うん、このままだと追いつけないよ!」
ピコ「そうだね」
リタ「『そうだね』じゃないよピコ!」
ピコ「まぁまぁ落ち着いてリタ、そんな怒ってちゃダメだよっ!レースは楽しんで笑顔でしなくちゃ!」
リタ「そんな事わかってる、けど………ごめん」
ピコ「いーさっ!でもみんなの言う通り、このままじゃ追いつけない…だから“アレ”を使おう!」
パティ「“アレ”ってまさか」
モンティ「“アレ”か!?」
ピコ「そうさ!“アレ”さ!」
タムタム「でも“アレ”を使えるのは少しだけって言ってたのはピコじゃないか!?」
ピコ「うん…だけど今日は長く持つと思うんだ!みんなのマシンのリズム、今までで一番最高だから!!」
リタ「…ピコ」
ピコはメンバー一人一人に笑いかけ「笑顔笑顔」と言うと、メンバーもみな笑顔になった。
「よーし!それじゃあピコ!あのコーナーから仕掛けよう!」とタムタムが前方のコーナーを指差す。
ピコ「うん、イイね!」
藤吉「彼ら…一体何をする気なんでげか」
烈「分からない…けど、これ以上離されるわけには──」
しかしそれでも三台とカリビアンズの差は少しずつ離されていく。
J「くっ」
そして五台のジャミンRGがコーナーに差し掛かる。
ピコ「よし………新たに取り入れたギア!オフロード!ぺぺのマシンからヒントを得たサス!…この“三つ”が重なった時、新たな走りがジャミンRGに宿る!いくぞー!『ラスタファリズム走行』!!」
縦一線に走っていたジャミンRGは散開し、フォーメーションとはかけ離れた走りとなった。
先ほどのようにピョンピョン跳ねるマシンもあればパフォーマンスのように回転させるマシンと様々。
それを見て「ワアアアアア!!」──と観客は一気に盛り上がる。
まるで音楽のライブに来ているかのよう。
それほどクールカリビアンズの走りは面白い“魅せ方”をしているのだ。
そんな歓声の反応に、ピコ達の様子を把握できない位置にいる先頭二人は思わず驚く。
豪「何だよ!?何があったんだ!!?」
リョウ「この盛り上がり………ピコたちか」
観客席にいるブレットたち──
ハマー「まさかここまで進化したマシンになってたとは…そして凄い盛り上がりだ」
ミハエル「あの走り、僕らのベルクカイザーでも敵わないかも…フフ」
ブレット「オフロードNo.1マシン…か」
藤吉「あっという間に見えなくなったでげす」
J「なんて速さなんだ」
烈「…まずいな」
『カーン!カーン!カーン!』
藤吉「この鐘の音は──」
ファイター「さぁここファイナルラップ!ビクトリーズの先頭の二人、ここでピットイン!!」
豪「急げ!」
そこへ土屋博士が駆けつけてきた。
「豪くん!リョウくん!!」
リョウ「博士!後ろは状況はどうなってますか!?」
土屋「カリビアンズと君たちの差はもう20秒もない!」
豪「なにぃ!?もうそんなに縮めてきたのか!!」
リョウ「それじゃあ、やつらはもうすぐ…!」
ギャアアアア!!──と激しい走行音。
豪・リョウ「!」
ファイター「こんな展開を誰が予想しただろうか!遂にここにきてクールカリビアンズがビクトリーズの先頭二台を本当の意味でその目に捕らえたぁ〜!!」
ピコ「ウンコ!リョウ!見ーつけた!」
豪「げげっ!?」
リョウ「よし、セッティング完了だ、早くいくぞ!」
豪「あ、ちょ…ああ」
完全オフロード仕様となったライジングトリガーは凄まじい速さでスタート…だが──
リョウ「豪!どうした!?」
ライトニングマグナムはあまり変わらず、それどころかピットイン前よりも遅くなってしまった。
豪「くそっ、やっちまった」
土屋「豪くん!…まさかセッティングミスか、レース状況を教えたのが逆に焦りを…すまない」
豪「気にすんな博士!俺が悪い!………仕方ねぇ、リョウ!先に行ってくれ!俺は何としても二位でゴールするからよ!」
リョウ「…わかった!信じてるぜ、豪」
豪「ああ!」
ファイター「これは凄い速さだライジングトリガー!さっきとは打って変わり完全オフロードにセッティングを変え、一位を狙い勝負に出た〜!!」
客席──
ブレット「前言撤回だ…やはりリョウ・タカバのマシンも恐ろしいオフロードの化け物だ」
ジョー「うん、さすがね…だけど」
ミハエル「豪くんはピンチだ」