爆走兄弟レッツ&ゴー!! 第二回世界GP 作:モンキー・キック
クレモンティーヌの驚いた声にヴィッキーとミシェルは一斉に振り返る。
ヴィッキー「どうしたのクレモンティーヌ?」
ミシェル「そんな声だして…うわっ!何なの!?」
ゴオオオオオ!!と見た目どおりの轟音を響かせ走ってくるデザートゴーレム。
そのまま、ヴィッキーとミシェルのサバンナゼブラも抜く勢いである。
ミシェル「くっ…そうやすやすと行かせてたまるか!」
ヴィッキー「私だって!」
当然だがこの頃の二人はまだチームではなかったのだが、お互い協力し合うようにブロックしていた。
のちに、このレースを会場のモニターで見ていた現サバンナソルジャーズ監督の“シンディ”が、これをキッカケに彼女たちをアフリカ代表に選ぶことを、この時の五人はまだ知るよしもない。
カリーム「…邪魔をするな」
ゴオオオオオ!!…
ガキィイン!バァァアン!──
ヴィッキー「ああっ!」
ミシェル「サバンナゼブラァア!」
デザートゴーレムは前を行く二台をいとも簡単に蹴散らし爆進した。
実況「なんとここで三位にカリーム・ハメド選手のデザートゴーレムが浮上してきた!」
サリマ「!!?…あんなマシンがいたなんて──」
ジュリアナ「どうやらあんたの杞憂は当たったみたいだねサリマ!…だけど私は負けないよ!いっけーサバンナゼブラー!!」
シャアアア…
サリマ「私だって!そこだぁ!サバン…ナ………!!?」
ゴオオオオ!!という走行音とともに、突如サリマのサバンナゼブラの真横に現れたデザートゴーレム。
サリマ「なんだと?いつのまにィ!?くっ…クッソォ!負けるなー!サバンナゼブラー!!」
シャアアア…
カリーム「今度は単純にスピード勝負にでる奴が現れたか…だが」
サリマ「だ、だがなんだ!?」
「──だが、それこそが一番の無謀というもの、残念だったな」
そのカリームの捨て台詞とともに、デザートゴーレムはサリマのサバンナゼブラをどんどん引き離していく。
サリマ「ハァ、ハァ…くっそー!!」
実況「さぁここでカリーム・ハメド選手のデザートゴーレム、ついに二位にまで追い上げた!スタート時の最下位が嘘のような凄い追い上げだがレースはまだ中盤…果たしてマシンは持つのか!?」
爆進するデザートゴーレム。
そのまま今度はジュリアナのサバンナゼブラに追いつこうとしていた。
「へぇ〜あんた中々やるじゃないか」
そう言ったジュリアナであったが、さすがに焦りの表情は隠せずにいた。
カリーム「…」
ジュリアナ「でもいいのかい?私はちゃんと距離を想定してギリギリ最大限に速いペースでゴールまで保つように走っている…だけどあんたのそれはがむしゃらに走ってるようにしか見えないけどねぇ?」
カリーム「がむしゃらに走りたくもなる…こんなにもつまらないレースになるとは思っていなかったからな」
ジュリアナ「(カチーン!)へ〜凄い自信だねぇ、だけどそんなセリフは負けてしまうと惨めなだけだよ」
カリーム「好きに言え…これを俺の慢りととりたくば勝手にしろ」
ジュリアナ「頭にくるねぇ…あんたのその喋り方」
カリーム「なら耳でも塞いでいろ…いけ!デザートゴーレム!」
その声にモンスターマシン、デザートゴーレムは激しい砂煙と土煙をあげ、さらに唸りをあげる。
ゴオオオオオ!!…
ジュリアナ(よし、そこだサバンナゼブラ…)
ジュリアナのサバンナゼブラは煙の中、デザートゴーレムに徐々に近づきはじめる。
カリーム「…やめておけ」
ジュリアナ「な、なにがだ!?」
カリーム「どんな小細工を仕掛けようとデザートゴーレムの前では無意味…お前のマシンなど死する他にない」
ジュリアナ「…あっそう、なら結果を見てから思い知るがいいさ、サバンナゼブラ!遠慮はいらない!やっちまいな!!」
シャアアア…
サバンナゼブラはデザートゴーレムの左リヤの真横につける。
ジュリアナ「そこだ!──」
左リヤタイヤの下にフロントバンパー部分を上手く潜り込ませる。
ジュリアナ「すくってしまえばいいのさ!」
カリーム「なるほど…単純に車体重なら無理があるが、今はともにだがマシンは最高速、その勢いでひっくり返すつもりか」
ジュリアナ「察しがいいじゃないか…私のサバンナゼブラはここからさらにスピードを上げることができる!だから──」
「ガッカリだよ」
カリームはジュリアナの言葉を遮って呟いた。
ジュリアナ「なんだと!まだそん…なこ…と………嘘!?」
ガガガガガガ!!──
ジュリアナ「な…!?」
バーン!!──と大きな音とともにジュリアナのサバンナゼブラは宙を舞う。
ジュリアナ「サバンナゼブラ!?」
カリーム「命拾いしたな」
「一体どうして!?」とジュリアナはデザートゴーレムを見る。
ジュリアナ「あ、あれは…!?」
デザートゴーレムのリヤタイヤはよく見ると“キャタピラ”に切り替わっており、そのせいでジュリアナのサバンナゼブラのフロント部分は粉々になってしまったのだ。
しかし運良くボディまでは巻き込まれずにそのまま宙に吹っ飛ばされた。
ジュリアナ「くそっ!」
カリーム「…」
これでデザートゴーレムはまさに独走状態となる。
ジュリアナ(まぁいいさ、レースもまだ中盤…奴のマシンもどこかでペースを落とすはず)
だが、ジュリアナの予想は大きく外れ、デザートゴーレムはそのままトップでゴールイン──
アフリカ大会本選の第一回戦はこれで終わったが、本当の波乱はこのあとにあった。
ジュリアナ「おい待て!…待てったら!」
レースが終わり、しばらくしてからカリームは会場を去ろうとした。
ジュリアナがそれを呼び止める。
ジュリアナ「カリーム・ハメド!待てって言ってるだろ!…私は…私は納得いかない!!」
サリマ「ジュリアナよしな」
ヴィッキー「そうだよ、悔しいのは分かるけど…」
ジュリアナ「──違う!私はレースの結果に対して文句を言ってるわけじゃない!!」
サリマ「じゃあなんなの?」
ジュリアナ「さっき、大会実行委員の人に聞いたんだ………カリーム!あんたこの大会自体を棄権するらしいじゃないか!」
その言葉にカリームは立ち止まった。
ミシェル「え〜!ど、どうして!?」
クレモンティーヌ「確かに…せっかく一回戦を一位で抜けたのに」
「だから言ってるだろ!私は納得いかないって!!…さっきのレースは負けたが二回戦目からはこうはいかない!優勝するのは私なんだからな!勝ち逃げなんて許さん!!」
ジュリアナはビシィ!──とカリームを指さし吠えた。
それに対しカリームは振り返る。
カリーム「俺は優勝などどうでもいい」
ジュリアナ「な、なにー!?お前この大会がなんなのか分かって言っているのか!?」
カリーム「アフリカチャンピオン大会」
ジュリアナ「そ、そうだ!アフリカチャンピオン大会…この広いアフリカという国でミニ四駆の一番を決めるんだぞ!」
カリーム「規模がいくら大きくても、出てるレーサーがここまで弱いなら………何の価値もない」
そこまで言われジュリアナは怒りが爆発。
「ぐわぁ〜〜!!言わせておけばぁ──」とカリームに飛び掛かろうとしたが、サリマがバッ──と手を前に出して静止させる。
ジュリアナ「サリマ!とめるな!!」
サリマ「まぁ待ってジュリアナ、先に私に聞かせて…カリーム・ハメド、あんたは一体“何”とレースをしてるんだ?」
カリーム「敵は己自身…レーサーのすべきこと、それは余計なことを考えずにただゴールを目指すのみだ」
サリマ「それなら尚更、最後まで大会を走り抜くって答えになるはずだけど…」
カリーム「レースならアフリカだけじゃなく世界中でやっている…俺が求める俺と、それを引き出してくれる相手は今回は出会えなかった…そういうことだ」
その言葉にジュリアナ達は何も言えずにいた。
カリーム「さらばだ…もうここには用はない」
カリームは会場を去った。
このあと、アフリカチャンピオン大会はジュリアナの優勝、サリマの準優勝に終わった。
話は再びルーキー戦の後──
日本からアフリカまでの旅客機の中へと変わる。
カイ「──なるほど、そんなことが」
カリーム「ああ」
カイ「(それでジュリアナ達もあんな怒って…まぁ無理もないですね、でも──)カリームくん」
カリーム「何だ?」
カイ「僕とレースをして、僕が勝ったらサバンナソルジャーズに力を貸してもらいます…あなたが勝ったら二度と僕はあなたに関わりません」
カリーム「本当にしつこい奴だな貴様は…だがまぁいいだろう、貴様とのレースはいくらか楽しめそうだ」
そのカリームの言葉にカイは少し驚いた。
カリーム「どうした?」
カイ「い、いえ…意外と簡単に勝負を受けてもらって、その…少々驚きました………それに」
カリーム「それに…なんだ?」
カイ「今のアフリカチャンピオン大会の話を聞いて、あなたから『レースを楽しむ』って言葉が聞けるとは」
カリーム「………俺も変わったのかもな」
カイ「ルーキー戦でですか?」
カリーム「…ああ」
こうしてサバンナソルジャーズとカリームを乗せた旅客機はアフリカに到着した。