爆走兄弟レッツ&ゴー!! 第二回世界GP 作:モンキー・キック
結成!新ビクトリーズ!?の巻
時は流れ──現在。
TRFビクトリーズとサバンナソルジャーズのレースの三日前の夜。
一文字兄弟の部屋──
豪樹「………」
“楽しみにしてるぞ………お前たちとのレースをな”
二段ベッドの上の段。
まったく寝付けずに天井を見つめる豪樹の頭の中で、カリームのその言葉が何度も繰り返されていた。
「烈矢、まだ起きてるか?」
下の段の烈矢に豪樹は話しかけた。
烈矢「…なんだよ」
豪樹「あの時…カリームが言ったこと覚えてるか?」
烈矢「………ああ…それより早く寝とけ、明日はビクトリーズの練習相手にもなるんだから」
豪樹「よし決めた!…烈矢、次のサバンナソルジャーズ戦、俺たちも出してもらうよう土屋博士にお願いしようぜ」
烈矢「またお前は行き当たりばったりなことを…」
豪樹「違う…いや、アメリカに連いていくって言った時は半分そんな感じだったかも知れない…けど今は違う」
烈矢「…豪樹」
豪樹「お前だってカリームの言葉に感化されてモヤモヤしてんだろ」
烈矢「…」
豪樹「真剣に頼めば土屋博士も分かってくれる、きっとビクトリーズだって…」
烈矢「ハァ、まったくバカな兄貴を持つと苦労するよ」
豪樹「な、なに〜!?」
烈矢「分かったよ」
豪樹「え?」
烈矢「明日、ビクトリーズのミーティングが終わったら二人で頼みにいこう」
豪樹「へへ、そうこなくっちゃな!…ふぁ〜あ、なんか一気に眠くなってきたぜ、おやすみ〜………Zzz」
烈矢「まったく…」
ガタッ──
烈矢「ん?………気のせいか」
何かが当たった物音がドア付近で聞こえたが、烈矢はそのまま眠りについた。
一文字兄弟の部屋のドア前──
(ヤベ…気付かれたかな)
そこにいたのは星馬豪であった。
豪(トイレの帰りにたまたま声が聞こえて思わず耳をすませたけど………豪樹、烈矢)
次の日──
この日はフリーコースではなく大会用練習コースに来ていたビクトリーズ。
サバンナソルジャーズ戦はリレーレースとなるのでメンバーそれぞれと一文字兄弟の一対一での練習走行となった。
豪樹「そこだー!ブレイジングマックス!!」
豪「甘いぜ豪樹!」
ロングストレートでブレイジングマックスはライトニングマグナムを抜こうとするが、中々上手くいかない。
シャアアア…
豪樹(くっそー、俺たちも出してもらうって決めたんだ!だからここで少しでもビクトリーズに全然負けてないってところを見せねーといけねーのに)
豪「どうした豪樹!そんなもんか!?」
豪樹「まだまだ〜!マックス、ぜってー抜こうぜ!!」
シャアアア…
コーナーに差し掛かる二台。
豪樹「今度こそ…そこだー!」
豪「──何ぃ!?」
ブレイジングマックスはライトニングマグナムのインギリギリを、マックスブレイカーが得意のパフォーマンスとして使っていたドリフトでうまく突いてきた。
豪樹「よし!」
本来あるべき立ち上がりの遅さも、ジェットをヒントにリヤの改造がされてあるブレイジングマックスにとっては問題のないことであった。
が、しかし──
豪「…だから言ってんだろ、甘いって」
豪樹「何を…げげ!?」
ライトニングマグナムもビートマグナム時代の“ドラゴンサスペンションシステム”を更に改良したサスの力により、最高速でも安定したコーナーのクリアを目の当たりにさせた。
尚、アストロレンジャーズ戦の時は完全トルネード狙いのセッティング。
カリビアンズ戦の時はオフロード仕様のセッティングのため、あえて活かさなかった。
二台は立ち上がり直後では並んだが、マックスはあと一歩──ではなく、あと一台及ばず練習走行はマグナムが勝利して終了。
豪樹「…あーくそ!」
豪「…」
三十分後、土屋博士の宿舎にて──
ビクトリーズの次のレースに向けての本格的ミーティングが始まった。
土屋「サバンナソルジャーズとのレース内容がリレーなのはもう知っているね?」
烈「はい、コースについては知らされていませんが」
土屋「それなんだが次のリレーレースは特徴である『それぞれ走者によってコースが違う』というものではない」
J「それって単純にチームレースの時同様、同じコースを回るだけってことですか?なら過去にもそういったレースは…」
土屋「うむ、どうやらそれとも少し違っていてね…みんな、ルーキー戦でルーキーチームとレースした時のことを覚えているかな?」
烈「はい、レーサー二名、メカニック二名、ナビゲーター一名によるある意味、最もチームワークが必要なレースでした」
リョウ「それと何か関係が?」
土屋「思い出してほしいのはその時のコースだ」
豪「コース?」
土屋「ああ、あの時のレースでスタートした直後、コースがいくつも分岐していただろう」
藤吉「そうでげしたな、それをナビゲーターだったJくんがマシンに合ったコースレイアウトをして指示してくれたんでげす」
土屋「そうだ、それを今回は一人で行う…ちなみにバトンタッチする時は一つのコースに戻るようになっている」
烈「なるほど…つまり始めの方の走者は手探り状態のレースになるけど、第四走者、最終走者になると本当に自分に合ったコース選択ができるというわけか」
豪「それって結構運まかせじゃねーか、戦略も何も立てづらいったらありゃしねーぜ」
リョウ「ミニ四レーサーとしてのその場の判断が必要となるレースではあるな」
土屋「フフ、今の君たちなら決してできないレースじゃないはずだ」
豪「よし、いっちょやったるか!」
豪樹「…」
烈矢「…」
こうしてこの日のミーティングは終わったが、それからまた十分後の土屋博士の宿舎──
コンコン──
土屋博士「はい、どうぞ」
ガチャ──とドアが開く。
土屋「おや、君たち…まだ何か話したかったことがあるのかい?」
土屋博士の部屋にきたのはビクトリーズの五人。
藤吉「それが豪くんがわてらと土屋博士“だけ”に、何やら話したいことがあるみたいなんでげす」
土屋「?…うむ、分かった」
──と、そこでまたコンコンとノックが聞こえてきた。
土屋「おや、またお客さんかな」
豪樹「博士ー!俺たちだー!」
烈矢「一文字兄弟です、失礼します」
豪「ヤベ…みんな隠れろっ」
藤吉「へ?どーしてでげす?」
J「別に隠れる必要はないかと…」
「いーからっ!早くいけって」と豪はメンバーを部屋の奥へと押していく。
ガチャリ──
豪「あ、博士博士っ俺たちがいることはあいつらには内緒なっ」
土屋「え?…あ、ああ、分かったよ」
豪樹「おじゃまするぞー」
バタン──とドアが閉まった。
烈矢「…ん?」
土屋博士は部屋の真ん中でコーヒーを飲んでいる。
ビクトリーズは五人とも部屋の奥で狭いながらも一文字兄弟にバレないよう隠れていた。
シーン──
烈矢は何か気配を感じたのか、キョロキョロと部屋中を見渡す。
豪樹「どうした烈矢?」
烈矢「…いや、なんでもない」
土屋「──で二人とも、一体どうしたんだい?」
豪樹「ああ、実は──」
「次のサバンナソルジャーズ戦、俺たちを出させてください!」
烈矢は豪樹の声に被る勢いで話した。
豪樹「あっ、先に言いやがって」
烈「豪…お前、知ってたのか」
豪「まーな」
次の瞬間──
土屋「お、おい!君たちっ!?」
一文字兄弟は二人そろってその場で土下座をした。
土屋「か、顔を上げたまえ、二人とも」
豪樹「いや上げねぇ!…俺たちを出すって言ってくれるまで」
烈矢「お願いします、俺たち本気なんです」
土屋「う〜ん、そう言われてもね…確かに私は監督だが、私一人で決めるわけにはいかない…君たちの気持ちも分かるが──」
豪樹「そこを頼むよ!俺たち、どーしてもカリームたちとレースしたいんだ」
「まずはビクトリーズのみんなにも相談してみないことには──」と土屋博士は五人が隠れてる方をチラッと見る。
烈矢「やっぱりそうか」
──と、その時であった。
「俺はいいぜ!」
豪樹、烈矢「えっ!?」
土屋「豪くん」
隠れていたはずの豪が自ら出てきて話を続ける。
「お前ら二人の気持ちは分かった、でも今回だけだぜ…いいよな、みんな?」
烈「うん」
藤吉「仕方ないでげすね」
J「二人の実力なら大丈夫ですよ」
リョウ「ああ、そうだな」
ビクトリーズは全員出てきてしまった。
豪樹「ななっ!?お前らいつからそこに!?」
豪「初めからだよ…それより博士、俺たち五人はOKだぜ」
烈「だから二人を出させてあげてください」
土屋「私ならかまわないさ…だがそうすると君たち五人の内の二人が出れなくなるぞ」
藤吉「そうでげした!…これまた話し合いが──」
豪「それなら問題ねーよ」
烈「問題ないって…何か考えがあるのか?豪」
豪「ああ、サバンナソルジャーズ戦のメンバーなら、もう“俺”が決めてあるぜ」
藤吉「決めてあるって豪くん…どーせ自分は必ずメンバーに入れて──」
豪「まぁ待てよ…ゴホン!まずは豪樹!」
豪樹「な、なんだよ」
豪「お前は“俺”の代わりに出ろ」
豪樹「………へ?」
豪「聞こえなかった?俺の代わりに選手としてお前が出ろって言ってんだ」
「ええ〜〜〜!!!?」と豪以外のメンバーが驚く。
藤吉「ど、どど、どーしたんでげすか!豪くん!?あれだけ出たがりなくせに」
烈「まさかお前がここまで考えてるとはな」
リョウ「フッ…それで豪、烈矢は誰の代わりに出るんだ?」
豪「烈矢は藤吉の代わりだ」
藤吉「なるほど、わての代わりでげすか、ホッとしたでげ………ってそうするとわてが次のレース出れないじゃないでげすかー!!」
豪「なんだよ藤吉、一回ぐらいこいつらにレースさせてやれよ」
藤吉「な!ぐぐ…(いつもなら強気で言えるでげすが、まさか豪くん本人も代わってあげるとは…これじゃ言うに言えないでげすよ〜、でも)──でも理由を聞かせてほしいでげす!理由を!」
豪「へ?理由?」
藤吉「そうでげす」
豪「身長」
藤吉「………?」
豪「だーかーらー身長だって!豪樹に一番近いのは俺で、烈矢に一番近いのは藤吉、だから選んだんだ」
藤吉「ムキャー!そんな理由で選ぶなでげす!」
豪「でも仕方ねーだろ、ユニフォームが豪樹と烈矢にはねーんだから、代わってくれる奴のを着るしかないとなると…それしかねーよ」
藤吉(ご、豪くんのくせにやけに納得いく話をするでげす)
豪「ん、今なんか失礼なこと考えなかったかぁ?」
藤吉「い、いや、そんなことないでげす…とにかく豪くん!さすがにそれだけでメンバー選出するのは──」
豪「そう言ったってサバンナソルジャーズ戦まではあと少しなんだ、この際仕方ねーさ」
藤吉「だけど──」
「お願いだ、三国藤吉!あんたの代わりに恥じない走りをする!だから…」と烈矢は頭を下げる
藤吉「烈矢くん…ハァ~もう仕方ないでげすね、分かったでげす!わての代わりにビクトリーズとしてしっかり走ってくれでげす」
烈矢「ああ、ありがとう」
土屋「うむ、それじゃあサバンナソルジャーズ戦は烈くん、リョウくん、Jくん、豪樹くん、烈矢くん、以上の五人で行く…いいね?」
ビクトリーズ・一文字兄弟
「はい!」
その後、それぞれの部屋に帰る途中──
豪樹「おい、豪!」
豪「ん、なんだ?」
豪樹「いや、その…なんていうか──」
豪「へっ、礼ならいらねーよ…そんかわりレースまでお前らをGPレーサーとして特訓するからな!」
豪樹「豪…おう!分かったぜ」