爆走兄弟レッツ&ゴー!! 第二回世界GP 作:モンキー・キック
※この話は原作読み切り(単行本7巻参照)の続編にもなっています。
※そしてReturn Resultsのちょっとした前日譚です。
とある場所へと向かう車──
そしてその車中。
「悪いね、君たちも自分のマシンの事で忙しいのに」
ハンドルを握る土屋博士が後ろに座る二人に言った。
豪「何言ってんだよ博士!」
烈「僕らを“この日”に誘ってもらって凄い嬉しいです!」
豪「再び日本を発つまであと一週間…烈兄貴の新ソニックもまだまだ製作途中だけど、こんな“大事な日”は別だぜ」
土屋「フフッ彼もきっと喜ぶよ」
目的の場所に着き、車は停まった。
土屋「さぁ着いたよ」
星馬兄弟と土屋博士がやってきたのはF1のレース会場であった。
豪「行こうぜ烈兄貴!」
烈「待てよ豪!どこにいるのか分かってるのか!?」
二人は会場の中へと入っていった。
「あれ?いねーなぁ」と周りをキョロキョロと見渡す豪。
それに追いついた烈。
「ハァ、ハァ…ダメじゃないか豪!勝手に入っちゃ」
豪「ワリーワリー、つい興奮しちまって」
土屋「二人とも」
烈「すいません博士、勝手に入ってしまって」
豪「でも博士!どこにもいねーぜ」
「そんなことは…おっあそこを見てごらん」と、土屋博士は一番奥のピットを指さす。
そこにはスキンヘッドで顔面の左側に大きな傷をもつ男が、その顔と同じ所に傷があるヘルメットを抱え、椅子に座っていた。
烈と豪はそこに向かって走っていく。
豪「おっさーーん!!」
烈「お久しぶりです!中山さん!」
中山「お、お前ら!?」
土屋「調子は良さそうか、中山」
中山「土屋!…へっ、わざわざ来てくれたのか」
土屋「ああ、お前のこと話したらこの二人も着いて行くと言ってね…タモツもあとでくる」
中山「ったくよぉ…世界一のミニ四レーサー様が引退するオッサンのレースなんか見にきてどーすんだ?」
豪「そんな事言うなよおっさん!」
烈「そうですよ!僕たちは中山さんが引退レースをするって言うから、それをどうしても見届けたくて…」
「…フッありがとよ」
中山はしゃがんで二人と同じ目線になる。
中山「お前らの日本でのレースはテレビでも見させてもらっていたが、中々良かったぜ」
豪「よせやい!照れるじゃねーか」
烈「でも中山さんも凄いじゃないですか!あのエンジントラブルのレースから三位、二位と一気に順位をあげて」
中山「へへ、中々一位は取れないんだがな」
豪「おっさん…ホントに引退しちまうのか?」
中山「………ああ、“ずっと現役でいてやる!”なーんて思ってはいたんだがなぁ、さすがに身体がもう保たねーみたいなんだよ」
豪「そっか…でも今日のレース頑張れよ!」
中山「へっ、あたりまえだ!お前らもしっかり見とけよ!俺がチャンプになる様をよぉ」
烈・豪「おう!!」
土屋「さぁ烈くん豪くん、レースはスタンドで見よう」
星馬兄弟と土屋博士はスタンドの最前列へと向かった。
そこにはすでに佐上模型店の店長である佐上タモツ、そしてその娘の佐上ジュンが座っていた。
ジュン「烈!豪!」
豪「おっジュンもきてたのか」
タモツ「土屋、中山はどのマシンだ?」
土屋「一番右端のピット、あの赤いマシンだ」
豪「頑張れー!!おっさーん!!」
その声が彼に届いたかどうかは分からないが、中山はマシンの中から右手をだし、豪たちに親指を立てた。
実況「F1日本GP決勝!!本日スタンドは超満員です!!」
ビィイイイ!!──という大きな音と同時にランプの色はかわった。
実況「スターート!!!!」
レースは始まった…。
中山のマシンは後方に位置し、序盤は様子を伺うかのような走り。
豪「どうしたんだオッサン?まさかまたマシントラブルじゃ──」
タモツ「いや違うな、あれは周りを見てやがる」
土屋「うむ…烈くん豪くん、一年ほど前に君たちと彼のレースを見た時、最後の最後でマシントラブルが起きたのを覚えているだろう?」
豪「もちろんだよ、確か最終コーナーで無理しちまったんだ」
烈「…そうか、だから他のマシンを伺って無理のないレース展開をしようとしてるんだ」
豪「なんだよそれ!おっさんらしくねーぜ!」
土屋「いや、あいつのことだ、そろそろ仕掛けるはずだよ」
土屋博士のその言葉を待っていたかの如く、中山のマシンは次々と前のマシンを抜いていった。
実況「おおーっと!?ここで中山選手が一気に順位をあげてきた!このレースで引退を決めています中山選手!チャンプに返り咲く事はできるのか!!?」
豪「いっけー!!」
実況「これは凄い!!中山選手、なんと三位まで浮上してきた!そしてレースはファイナルラップ!!」
タモツ「ここからじゃ難しいな」
烈「まだわかりませんよ!」
土屋「烈くんの言う通りだ」
豪「がんばれー!おっさーん!!」
ファイナルラップに入ったと同時に中山のマシンは三位のマシンを交わす。
実況「中山選手!ついに因縁のシューメッヘ選手との一騎打ち!!」
中山「もうあんたのケツ見てゴールするのはごめんだぜ!!」
実況「さぁ最終コーナーに差し掛かる!」
中山「頼むぜ!今度は保ってくれよ!」
最終コーナーで中山は僅かな隙間のシューメッヘのインをついた。
中山「おらああああ!!」
実況「中山インをとった!ついにチャンプ復活か!?」
しかしそれでもシューメッヘのマシンを完全に交わす事はできずに並んでしまった。
最後のストレート──
観客全員が息をのむ。
ヴウゥゥゥゥゥウオオン!!──
…レースは終わった。
実況「中山選手!惜しくも二位!しかし日本のF1レーサーとして見事なレースをしてくれた!」
中山(フン…よしやがれ、負けたのは確かだ)
「烈兄貴!」「ああ!」
烈と豪は客席を降り、コースへと入っていった。
ジュン「ちょっとあんたたち!」
タモツ「ジュン…いかせてやれ」
ジュン「じゃなくて私たちもいくの!」
タモツ「へ?」
土屋「ハハ、よし!皆で中山の所へ行こう」
こうして土屋博士たちも中山のピットへと向かった。
烈と豪が中山のチームのピットへ行くと、すでに中山はマシンから降りていた。
豪「ハァ、ハァ…おっさーん!!」
中山「おまえら…」
豪「良いレースだったぜ!おっさん!!」
烈「凄い胸が熱くなりました!」
中山「そうか…でもよ」
豪「でも、なんだ?」
中山はヘルメットを見つめながらに言う。
「負けちまったさ」
烈「勝ち負けだけじゃないです!」
豪「そうだぜ!あの時だって俺たちと一緒に最後まで走って──」
中山「………ああ、そうだな」
──と、そこへ一位になったシューメッヘが近づいてきた。
シューメッヘ「ヘイ!Mr.中山!」
中山「シューメッヘ…」
豪「な、なんだぁ!?勝ったからって自慢しにきたのか!?」
烈「そんなわけないだろ」
シューメッヘ「アナタとのレース、凄い楽しかったデスヨ!一度ナラズ二度もあのコーナーでインをつくなんて正直、驚きマシタ!マタ、アナタとレースするために日本へ来マス」
「いや、俺はもう」と中山が話すと同時にシューメッヘはスッ──と自分の右手を出した。
それに対し中山も少し照れくさそうに右手を出し、握手を交わした。
そしてシューメッヘは「また良いレースをしまショー!」と言い、自分のピットへと戻っていった。
中山の目に少しだけ光るものが有ることに、烈と豪は気づく。
豪「…おっさん」
中山「へっ、なんだろうなこの気持ちは…もっと…もっともっとレースがしたいと、今までで一番強く思っちまった」
「なら続ければいいじゃないか」
その声は土屋博士だった。
後ろにはタモツとジュンもいる。
中山「土屋、タモツも………ったく、よく言うぜ!引退って決めて挑んだレースだぞ?今さら取り消せやしねーよ」
豪「何言ってんだおっさん!」
烈「そうです!やりたいならやるべきです!」
中山「バッキャロォ!俺ら大人は一度言った事には責任を持たなきゃならないんだ!!だから…だからよ………」
豪「そんなこと知るか〜〜!!おっさんにとってF1ってのはそんなモンだったのかよ!?」
烈「中山さん、僕たちも少しだけミニ四駆をやめていた時がありました、二人でもうやらないと決めて………でも…でもそんな日々はやっぱり苦痛だったんです!!正直、僕たちの場合は無い物ねだりだったけど、中山さんにはあるじゃないですか!マシンが!そして仲間が!」
その烈の言葉に中山はふと後ろのピットに目をやる。
そこには今まで中山と共に走ってきた整備士やスタッフ、他のドライバーが笑顔で中山を見ていた。
「お前ら」
その言葉と同時に中山の頬に暖かいものが流れる。
「…おい兄弟!一つ聞いていいか?」
慌てて“それ”を拭いながら中山が言った。
豪「なんだ?」
中山「お前らにとってミニ四駆ってなんだ?」
烈「友達です」
「友達か………いい友達だな、俺の…」
中山はマシンに手を乗せながらに続けて言う。
「友達もまだ走りてえみたいだしな、もう少し走ってみるか」
「やったー!」と烈と豪は中山に抱きつく。
中山「お、おいおい!よせって!」
豪「嬉しいぜおっさん!………ヨーシ、決めたぜ俺も!」
中山「ん、何がだ?」
豪「俺もいつか、おっさんみたいなF1レーサーになるぜ!」
烈「お前なぁ…ミニ四駆とは違うんだぞ!?」
ジュン「なれたとしても毎回コースアウトしそうね」
豪「な、何だと~!!」
中山「ハハハッ嬉しいぜ!でも『俺みたいな』ってことは呑んだくれなF1レーサーか?」
豪「流石にそこは見習う気はねーよ」
「このガキ、生意気だぞ~」と中山は豪の頭をグリグリする。
豪「あああ~やめてくれ~!」
中山「アッハッハッハ!」
その様子を見て穏やかに笑う土屋博士。
ふと仰ぐと、空は綺麗な茜色に染まっていた。