プロローグに出会いを求めるのは間違いだろうか? 上
聖杯戦争
『聖杯』、別名「万能の釜」、「願望機」とも呼ばれ、手にする者の望みを実現させる力を持つといわれる存在。そして、これを手に入れるための魔術師同士の争いを聖杯戦争と呼ぶ。聖杯戦争とは広義において聖杯と呼ばれるもの(真贋は問わない)を手に入れるための行為全般を指し、聖杯によって選ばれた七人のマスターと呼ばれる令呪を持つ者たちが、サーヴァント(使い魔)として、セイバー(剣の騎士)・アーチャー(弓の騎士)・ランサー(槍の騎士)・ライダー(騎乗兵)・キャスター(魔術師)・バーサーカー(狂戦士)・アサシン(暗殺者)、計7つの器(クラス)に分けられた英霊を使役して戦いあう、言わば聖杯を降ろすためのひとつの儀式である。
◇◇◇◇◇◇
「私死んだのよね(・・・)」
白の少女が一人過去を思い出す
それはギルガメッシュとの戦闘であった。
バーサーカー、イリヤを守る為戦うが
ギルガメッシュの持つ宝具
天の鎖によって捕らえられる
天の鎖(エルキドゥ)
天の雄牛を捕縛した鎖である
神聖が高いほど餌食となる
バーサーカー(ヘラクレス)は神性(ゼウスの子)
である故に対神兵装に捕まる
鎖はバーサーカーの両腕を締め上げ、
あらぬ方向へとねじ曲げていく。
全身に巻き付いた鎖は際限なく絞られていく
岩のような首でさえ、為すすべもなくその張力で絞り切ろうとしていた。
バーサーカーを戻そうとするも
ギルガメッシュは、
イリヤの空間転移さえも許されない
そして12回目の死が訪れた
バーサーカーの中心をギルガメッシュの
宝具が貫く...12回の死
その後
イリヤの目をギルガメッシュの宝具が一閃
そして、イリヤは貫かれる
感覚でバーサーカーの下へ這い寄る
真っ暗で真っ暗で何も見えなくとも....
イリヤはバーサーカーに寄り添う
それに答えるかのようにバーサーカーは
最後の攻撃が....
届くことは無かった
ギルガメッシュの最後の攻撃により
バーサーカーは光の粒子となりて消えた
イリヤはバーサーカーの姿が見えることは無い...
いや、ずっと傍にいた
これまでも。これからも。未来永久に....
そしてイリヤの人生は終わりを告げた
ように思えた.....
「ようこそ死後の世界へ。私は、あなたに新たな道を案内する女神。イリヤスフィール・フォン・アインツベルンさん、あなたは本日午後00 時00 分に亡くなりました。辛いでしょうが、あなたの人生は終わったのです」
思い出している間に眠ってしまった。
目が覚めると、そこは椅子が二つあるだけの空間みたいな部屋の中だった。
そこに、唐突に俺は突っ立っている。
そして、目の前には椅子に座った一人の自称女神。
「此処は死後の世界って事は理解できたけど、これから私はどうすれば良いの?」
「同じ世界、または違う世界に転生できるわ。勿論特典を持っていけるから同じ結末には成らないはずよ」
(横にポテチがあるのは....別に良いかな?)
「特典って何があるの、自称女神さま?」
「自称って、私は本物の女神ですって特典の種類は私も分からない、それ程多いのよ。勿論あなた「サーヴァントを選べるの!?」そ、そうだけど」
急にテンションが上がるイリヤに付いていけないアクア。本来なら立場が逆のはずだがアクアはイリヤの年齢を知らず子供だと思っているらしい。
「それじゃ、私の特典はサーヴァントで決定ね!待っててねバーサーカー。直ぐに会えるから」
イリヤの願いはただ一つ。もう一度バーサーカーに会うこと、それ以外は何もいらない。
ふと疑問が浮かぶイリヤ
「でもどうして特典の付与や転生なんてさせるの?最後に記憶はどうなっちゃうの」
「質問多いわねぇ。それは、どうせ送るなら、若くして死んだ人なんかを、肉体と記憶はそのままで送ってあげようって事になったの。それも、送ってすぐ死んじゃうんじゃあ意味が無いから、何か一つだけ。向こうの世界に好きな物を持っていける権利をあげているの。それは、強力な固有スキルだったり。とんでもない才能だったり。神器級の装備を希望した人もいたわね。……どう? これならお互いにメリットがある話でしょう? あなた達は、異世界とはいえ人生やり直せる。異世界の人達は即戦力になる人がやってくる。悪くないでしょ?」
「うん。それはいい考えだと思う。」
それで人の役に立つならば尚更。
「ふふ、それじゃぁ召還へ移りましょうか」
◇◇◇◇◇◇
此処は懐かしきアインツベルンの工房
アクアが特別にアインツベルンの形をした場所に
連れて行ってくれた。
ふと、不意に工房に入る前に開けた窓から見た夜空の光景が頭を過る。満月のようで満月ではない。
「満月?じゃないわね。あれは何て言うのだったっけ」
工房にはイリヤ一人、故に答える声はない。若干の寂しさを覚えイリヤは溜め息を吐く。そして、気を取り直し再び召喚へと意識を向ける。懐かしい感じ。
今から召喚するのはかの大英雄ヘラクレス、召喚するクラスはバーサーカー。イリヤの大切なサーヴァント。召喚に必要な媒体として聖遺物もちゃんと用意してある。
「大丈夫、問題ないはず(・・・)」
そう呟いたイリヤは肩の力を抜くため、大きく深呼吸する。そして....
「閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる刻を破却する。
―――――Anfang(セット)。
――――――――告げる。
――――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。
誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者。
我は常世総ての悪を敷く者。
されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。
汝、狂乱の檻に囚われし者。
我はその鎖を手繰る者――。
汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
イリヤが詠唱を紡ぎ終えた瞬間、工房を“眩い光”が包み込んでいた。