もしもデミサーヴァントになったのがマリー所長だったら 作:イチヤ
ああああああ…オルガマリー・アニムスフィアタペストリーとか出せよ運営…クソッ、クソおおお!
「…よし、この先が大聖杯に繋がる道だぜ。腹くくれよ、ぐだ男」
もう少しで大聖杯に辿りつける
だが大聖杯に近付くということは…
「ああ、いるぜ
聖杯を守護してる騎士王が、な」
ついにここまで来たか
自然の大要塞、冬木の大空洞と呼ばれるこの地ではいくら低級の魔術師である俺にでも分かるくらいの膨大な魔力を肌にダイレクトで感じる
ここに至るまでにシャドウサーヴァントと化した4人の英霊と対峙してきた
アサシン、ランサー、ライダー、そしてアーチャー、いずれも難敵だった
だが、セイバーのクラスで限界したアーサー王
つまりは星の聖剣
「私にその聖剣を止めることなんて…出来るのかしら。ただの急場凌ぎの成り上がりで宝具の真名さえもわからない私に…」
「大丈夫ですよ所長!所長には先輩も私達もついています」
所長…
宝具の仮開放をモノにした直後は
「ふふん、マシュ、ぐだ男、見てなさい!私が貴方達を無傷でこの冬木からカルデアまで守り通してあげるわ!」
だなんて言っていたけれど、やはり高名な騎士王の名前を前にしてはその自信も揺らいでしまっているのか
「嬢ちゃんの言う通りだぜ
それにアンタは星の聖剣に勝つ、だなんてことは考えなくていい。たった一つだけ、仲間を守り切ることだけ考えてくれりゃそれでいい
優秀なんだろ?それくらいできるさ」
キャスターが自慢げに杖を掲げ、景気づけかのように炎を飛ばしている、この連戦で俺はヘトヘトなのだが…やはりそこはサーヴァント、疲れなどは何処吹く風なのだろうか
「そうだね、実際にセイバーを倒すのはキャスターの仕事だろうから所長はぐだ男君を守ることだけに専念すればいい、けど、ぐだ男君の体調があまり芳しくないかな…決戦に備えて少し休んだ方がいいと思うな、あはは…」
「言われてみると先輩の顔色がよくありません…急なサーヴァント契約で脳に負担がかかっているのかも知れません」
…………っ!ただでさえこの非常事態、疲れたなんて言っていたら無様だと思い黙っていたのに!
ちくしょうロマンのバイタルチェックの精密性を忘れていた、マシュに心配かけちゃっただろうが!
おのれロマン。
「あれ、ぐだ男くん何か怒ってる?え?僕なんかした?」
なんでもないけど…
帰ったら覚えといてね
「ひいい!」
「お?決戦前に体制を整えるか?それも悪くねえ、キメラ鍋でも作ってやる、ちょちょっと狩ってくるぞ?」
キメラ鍋!?そんな鍋は生まれてこの方聞いたことはないが危険な匂いしかしないのは確かだ…
ただでさえ気分が悪いというのにそんなものを食べたら余計体調を崩しそうだ
「そもそもそんなのいないでしょ、ドクター、早く補給物資を送ってちょうだい。
ぐだ男もぐだ男よ?辛かったら辛いって言いなさいよ、あなたはその、私の、マスターなんだし」
お、おお
所長が優しい…まるで聖母のようだ
俺の理想郷はここにあったのか…
「今までの所長からは考えられないほど所長の性格が丸くなっている…ついにオルガマリー・アニムスフィアにも心の雪解けが来たのかな?若き男女の交流、いやあ、いいねえ…あ、補給物資は今送ったよ美味しく食べてくれ、お団子」
心の雪解け…笑
ロマンもいい表現を使うものだ、あ、これあんこ入ってる、つぶあんか…個人的にはこしあん派なんだけどな
「なっ、何を言ってるのよ!サーヴァントとしてマスターの健康管理をしているだけに過ぎないわ!」
「はははっ、いいじゃねえか甘酸っぱくて
よし、腹も膨れて顔色も良くなったみてえだなぐだ男、さあ、行くぜ」
あはは、大丈夫だよキャスター
大丈夫、大丈夫だから、ちょっ、痛い痛い
もう背中叩くのやめてくんない?
「大丈夫、ですよね、先輩…
私には何も出来ませんが、先輩たちを応援するくらいしか私には出来ませんが…
ちゃんと、帰れますよね、みんなで」
ああ、きっと勝てるさ
…なんて保証は出来ないけど
やるしかない、やるしかないんだ
ちゃんと帰ろう、みんなで
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大空洞の中をキャスターに先導されるまま進むと、少し開けた場所に出た
そこに広がるのは──
「…何よ、これ
超抜級の魔術炉心じゃない…なんだってこんなものが…」
「おっと、大聖杯に驚いてる暇はねえぜ…
騎士王様のお出ましだ」
ガシャリ、重い金属の触れ合う音
その音と共に重苦しい声が大空洞に響く
「…ふむ、その様子ではアーチャーも倒れたようだな。案外骨のない男だったということか、いいやあの男はあえて道化を演じ、わざと地に伏したか…そんなことはどちらでもいい、どちらでもいが、面白いモノを連れてきたなキャスター」
そう答えながらも姿を現したのは漆黒の鎧に身を包んだ騎士だった
所長の鎧も鮮やかな黒だがその黒はすべてを包み込む優しげな吸い込まれるような黒だ
しかしあの騎士王の漆黒からは鮮烈な殺意をビシビシと感じる
…ハッキリ言ってその圧力だけで倒れてしまいそうだ
「なっ、てめえ、喋れたのかよ!?
今までだんまり決め込んでやがったのか!?」
「ああ、何を語ろうが監視されている故案山子に徹していたのだ
ふふ、だが、だがな―――面白い。その宝具は面白い。構えよ、名も知れぬ女
その守りが真実か否かこの剣で確かめてやろう」
瞬間、大気が莫大な量の魔力の放出によって震え出す
「なっ、もう宝具を展開するっていうの!?
くっ、やるしかないわね
来るわよ!──マスター!」
その言葉を切り口に俺はオルガマリーに魔力を廻す
「ふっ、受け止められるものなら受け止めてみよ!卑王鉄槌。極光は反転する。光を呑め!
「やらせないわ!絶対に!
守護の光に殲滅の闇が衝突する
二つの強大なエネルギーに力の差は見えない
「…うぅっ、ああ、はあああああああ!」
オルガマリーが苦悶の声を漏らす
宝具の性能差が無い分、純粋な魔力量の勝負となっているのだろう
…悔しいけれど俺の力不足だ、マトモな魔術師ではない俺が与えられる魔力など本来与えられるべきものから比べれば微々たるものなのだろう
一方、万能の願望器である聖杯からのバックアップを受けているであろうセイバーは魔力切れしそうな雰囲気など微塵にも感じさせない
くっ、このままじゃ確実に押し負ける…っ
「─おいおい、俺抜きでドンパチ始めてんじゃねえよ。卑怯だなんて言うんじゃねえぞ?我が魔術は炎の檻、茨の如き緑の巨人。焼き尽くせ!
闇と光の衝突に痺れを切らした炎が介入し、拮抗していた力関係は崩れ──勝敗は決した
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「…お前の呪縛を解くためだ、悪く思うなよ。ロマンの野郎を含めても5対1、それでもお前の方が有利だったんだからな。
おら、早く消えた消えた、俺はもう疲れたぜ」
「───ハッ。いつの間にか私も手を抜いていたらしい
聖杯は守り通すつもりでいたが己が執着に傾いた挙句敗北を喫してしまったな…
どう足掻こうが私ひとりでは同じ末路を迎えるということか」
キャスターとセイバーの身体が光の粒子になっていくのが見える、二人の消滅が始まったのだろう
「あ?セイバー、テメエ何を知っていやがる?」
「ふ、名も知れぬ女とその主よ
気を緩めるなよ、聖杯をめぐる戦い、
「なっ、ここで強制送還かよ!
おいぐだ男!お前の指示、悪くなかったぜ!次があったらランサーとして呼んでくれよ!じゃあな!」
なっ、ちょっと待ってくれキャスター、お礼の一つでも言わせ…あっ
二人が二人共多くの謎を残し、言いたいこともロクに言えないまま二人は消えてしまった
だがセイバーの消滅とともに、水晶体が現れた
ドクターあれは何?もしかして、あれが聖杯なのだろうか
「…あれ、は…!あれが聖杯だ!所長、回収してください、おーい?所長?」
「……
なぜあのサーヴァントがこれを…?」
何か気になることでも?
それはわかるけれど聖杯の回収を急がないと…
「え…?ああ、そうね
ふーん…これが聖杯、か
よし、回収は完了しました、よくやったわぐだ男」
「やりましたね!所長!先輩!」
「フォーウ!フォウ、フォーウ!」
何を言ってるんですか、よくやった、はオルガマリーの方ですよ
俺なんか足引っ張ってばっかりでなんにも出来ませんでしたs…
「まさか君らがここまでやるとは…計画の想定外であり私の寛容さの許容外だね。まったく…」
っ、誰だ!
突如として第六の声が響く、この聞き覚えのある声…
なっ、あんたは…
「レフ教授!レフ教授じゃないですか、教授も無事だったんですね」
そう、大空洞に突然現れた男はカルデアについて全く無知だった俺にマシュと共にカルデアについて教えてくれたレフ教授、レフ・ライノールだった
だが………
「レフ──!?
レフ教授だって!?彼がそこにいるのか!?」
「おっと、その声はロマ二君かな?君も生き残ってしまったのか…
まったく────
どこもかしこもクズばかりで貴様らは本当に救えないな、人間」
呆れと怒りがないまぜになった歪んだ笑みでソイツはそう言い放った
様子が明らかにおかしい…
だが狂わされているようにも見えなければそもそも彼までレイシフトに巻き込まれたとも考えにくいが…
「教授も生き残っていたんですね!これならカルデアに戻ってからも私達は安泰でしょう、カルデアの所長と医療部のトップであるDr.ロマン、それにマスターである先輩とその上レフ教授までいれば安心です」
「マシュ!そいつに近寄ってはダメよ!」
「ん?やあオルガ、元気そうだね、その服はどうしたのかな?以前の君なら死んでも着なさそうなモノのようだが」
「これは…私が得た、守るための力よ!
あなた…一体誰…何者?レフは、レフをどこにやったの!」
「ほう、流石はデミ・サーヴァント。私が人間とは根本から違う存在だと感じ取っているか…」
「マシュ!いいからそいつから離れなさい!」
「え、所長、先程からレフ教授から離れろとは何のことですか?教授も生き残った数少ない仲間なのですから共に行動すべきでは…」
マシュ!オルガマリーの言う通りだ!
そこにいるソイツは何かがおかしい、今すぐ離れるんだ!
「ああ、マシュ、愚かで哀れな人形よ
カルデアなどという組織の為にこの世に産み落とされ、何も成せず死んでいくというのか…ああ、そんな君にだけはプレゼントをあげよう、君の存在理由であるカルデアスの今の状態を見せてあげよう」
パチン!とレフが指を鳴らすと
時空が歪み、カルデアのカルデアスがある大広間に繋がる
そこに浮いているカルデアスは…
「な、嘘でしょ?カルデアスが真っ赤になっている…?なに、なんなのよこれ!ただの虚像でしょう、レフ?」
「本物だよ、オルガ、 君が命懸けで守ってきたカルデアスの、人理の末路だ
マシュも見てご覧、あそこには人類の生存を示す青色は欠片もない、すべて燃え盛る赤色だ」
透き通った青をしていたカルデアスがレフの言う通り煉獄のような色になっていた、奴がカルデアスをあんな状態にしたというのか
「…あれ、が、カルデアス、ですか
でもあれを元に戻す方法もありますよね?」
「あれを?元に戻すだと?笑わせないでくれ、哀れなマシュ…もう地球は、人類は、見限られたのだよ。
このまま殺すのは簡単だが、それでは芸も何も無い、君は君の存在理由とやらに触れてみるといい、さっきも言っただろう?私からのプレゼントだと思ってくれたまえ」
「えっ…なっ、体が、勝手に浮いて―引っ張られ──」
マシュが宙に浮いて、否、浮かされていく、その行き先は言うまでもなく真っ赤に燃え盛るカルデアス
このまま行ってカルデアスに触れればマシュは分解されて死んでしまう
気付けば足が動き出していた
「やめなさい!あれに触れれば貴方も死ぬわ!それにこれ以上レフに近付いたら私たちまで巻き込まれかねない!」
でも、でも目の前でマシュが!
止めるな!オルガマリー!
「ああっ、熱い、熱いで、す
私の生まれた意味は―何も成してなど、いないのに―何も楽しくなどなかった―あああああああ―生きたりゆ、うは、私の生きた証は、せんぱ―死にたく、な──」
カルデアスに触れた途端マシュは消滅した
心に穴があいたようだった、何も考えられない
が、すぐに一つの感情が俺の心を埋め尽くす
もちろん、レフ・ライノールへの…怒りだ!
「ふん、目障りだな
よんじゅう、はちにんめ」
レフが舐めるように俺を見る
ふざけるなよ、目障りなのはお前の方だ…!
…1発殴らないと気が済まない、済むわけがない
「マスター…抑えなさいよ…!
何もなしでただ突っ込めば死ぬだけよ…私だって、怒りでどうにかしそうなんだから」
「やれやれ、では改めて、自己紹介をさせてもらおう
私はレフ・ライノール・フラウロスだ
貴様ら人間の処理係2015年担当をしている。愚かな人間は我らが王に見限られたが故に滅びるのだよ、ああ…もう時間か
さらばだロマニ、オルガ、そして48人目
こう見えて私には次の仕事があるのでね」
レフ・ライノール・フラウロスの姿が霧になって消える、それとほぼ同時に見渡す壁一帯に、いいや空間すべてにヒビが入った
「空間の、崩壊…!
ドクター!急いでレイシフトの準備を!ねえ、聞こえないの!?ドクター!」
あの野郎、どこに消えた、否、どこだっていい、見つけて、殴る、いいや、蹴りもする、殴り、蹴る、刺して、切って、焼いて、マシュが受けた苦しみ以上の苦しみを以て、殺す、アイツを、奴を、殺す、殺してやる、俺が、殺す、殺し、殺して、殺そうとして、殺さずにはいられなくて、殺さなければならなくて───
「落ち着いて、ぐだ男。あー、もう!
落ち着きなさい!マスター!」
バシン!
と、俺の頬に強烈なビンタが浴びせられた
……すいません、取り乱していました
止めてくれてありがとうございます、オルガマリー
そう、ですね。今は一刻も早くここから脱出し生きることが大事だ
ドクター、早くレイシフトをお願い!
「わかってる!既に実行しているとも!ただ、そっちの崩壊の方が早いかもだ!その時は…ぐだ男君と所長の愛のパワーでなんとかして欲しい!ほら愛は何よりも強いって言うだろ?!」
ロマン…こんな時まで…
はは、むしろ笑えてくる
「悪いけど黙っててもらえるかしら!ロマン!
怒りで貴方を殺してしまいそうだわ!」
「意識だけはなんとか強く持ってくれ!意味消失さえしなければ救出は可能だから!」
周りの世界に少しずつ入っていたヒビが、亀裂がどんどん大きくなっていく
ピンチ、ピンチ、またピンチ
今日1日で相当な修羅場をくぐってきたな、自分の人生にまたとない日だったけれど、この日を最後に、最期の日にするわけには…行かない
あの野郎に一発ぶち込んでやるまでは
「ぐだ男、手、貸しなさいよ
今度も手をつないでれば、助かるかもしれないでしょ?」
ああ、そうですね
俺達は手を握る、1人だけじゃとてもとても生きてはいけないから
支え合うために手を取り合う
────────────────────
「のんびりし過ぎよ?昨夜はぐっすり眠れかしら?マスター?」
ん、んー、いいや、あんまりってとこですかね。
おはようございます所長
「冬木では途中からオルガマリーって呼んでたくせに…」
?
何か言いましたか?所長
「いいえなんでもありません。おはようマスター、やっぱりあなたには畳を用意した方がいいのかしらね?」
そっちのが性には合ってるかも…
「あ、二人とも早くこっちに来てくれるかな?休む暇もなくて申し訳ないが僕らも余裕が無い、早速レイシフトの準備に入るよ、いいかい?」
ええ~…まだ眠いのに、あはは冗談、もちろん行けるよ
「向こうについたら僕からは連絡しかできないからね、くれぐれも気を付けて」
大丈夫だよ、俺には最高のサーヴァントがついてるから。ね、所長?
「ふ、ふん!そんなにおだてたって何も出ないわよ?まあ、その、ぐだ男
互いに命を懸け合いましょう?それくらいはしてあげます」
それはいいですね、じゃあ行きましょうか
『アンサモンプログラム、スタート。
霊子変換を開始 します。』
突然で悪いけれど
行き先は1431年のフランス
目的は世界の未来と人理を守るため
七つの世界をこれから救う、そのための第一歩
俺は英雄じゃないけれど、この人となら英雄だって越えられる気がするんだ
序章が終わったのでこれからは普通にオルレアン編も書いていきます
相当な遅筆なので間が空いてしまうかも知れませんが…
なにか感想、批評、意見等々ございましたらいくらでもお願いします!