クーゲルのガルガンティア   作:エウロパ

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第三話 逃走劇

「……まさか、もう戻ってくるとはな」

 

クーゲルはストライカーの影で小さく呟いた。

今、クーゲルはストライカーの影に隠れている。その視線の先には二人の男女の姿があった。

 

一人は先ほどまでストライカーの装甲と格闘していた金髪リーゼント男。もう一人は開放的な服を着たツインテールの少女だ。

 

しかも、相手にはこちらの存在はバレているらしくリーゼントの男が金属製の長い工具を構えて怒鳴り散らしている。

 

『提言。若干の危険性はあるが貴官の身体能力で二名の攻撃は回避、制圧は可能と判断。漂流部族と接触する絶好の機会であると推察する』

「……そうだな」

 

ストライカーの提言にクーゲルは少し考えてから言うとストライカーの影から一歩を踏み出す決心をした。

 

「行くぞ……」

 

ストライカーの影から一歩を踏み出す……。

もちろん両手も上げてだ。こちらに敵意がないことを相手に示す……。

 

「――――、――――!?」

「――――――――!?」

 

クーゲルの予想通り漂流部族の者達はクーゲルの姿を見て驚きの声を上げた。

 

もちろん未知の言語でだ。

リーゼントの男はクーゲルに敵意をむき出しにし、金属の棒をこちらに向け少女の方は不思議そうに、こちらを見ている。

 

「「…………」」

 

あの男……。

 

クーゲルはリーゼントの目線が気になった。

リーゼントの男は少しの間だがクーゲルからクーゲルが手に持っているレイガンに興味を寄せたのだ。

 

そしてそれから男は警戒を強くした。もしや武器だと気がついたのか?とクーゲルは思った。

 

あの男、身なりはおかしいが、もしや優秀な技術将校なのかもしれん。

 

クーゲルはこの漂流部族の住人が原始的な工具を使っているのを見ている。もしこれらの工具が主流なのだとしたらこの漂流部族の技術力は非常に文明度が低い集団のはずだと予想ができる。

 

これはストライカーの観察でも推察されている事だ。

それなのに男がクーゲルのレイガンをレイガンとは分かっていないかもしれないが、何かしらの武器だと気がついたのなら、この男の技術将校としての腕は非常に高いかもしれないと思った。

 

漂流部族とあなどったのは間違いだったか……。

 

「よし……」

 

クーゲルの頬を一滴の汗が流れる。

そしてクーゲルは漂流部族に話しかけることにした。

 

「あー……我々に敵意はない。我々を救助してくれた事に感謝をしたい。できれば武器を下ろして情報を提供して貰いたいのだが……」

 

クーゲルは慎重に言葉を選び相手を刺激しないようにリーゼント男に言った。しかし事はクーゲルの求める方向とは全く別の方へと進んでいく。

 

「――、――――!?」

 

リーゼントは未知の言語で大声を上げた。

どうやら、こちらの言葉が理解できないようだった。

 

「……やはり言葉が通じないのか……ストライカー。こいつらの言語の解析はどうだ?」

『解析進捗率は53パーセント。より多くの語尾のサンプルが必要である』

「今、翻訳できる範囲で翻訳しろ。ゴタゴタは出来る限り回避したいな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……なぜ、こうなった?

 

クーゲルは焦っていた。

何故、こんな状況になったのか理解できないでいた。

 

「――!――――……――!――――!!――――!!」

 

クーゲルの腕の中でツインテールの少女がクーゲルの腕を叩いたり引っ張ったりして騒いでいる。

 

少女が騒ぐ言葉の意味は翻訳されコミュニケーターから表示されたウィンドウに表示されるが読んでいる暇は無かった。

 

「大人しくしろ!」

 

クーゲルはイラつきながら暴れる少女に言う。

同盟語は少女にもリーゼント男にも伝わらないがストライカーが翻訳して意味を伝える……。

 

今、クーゲルはツインテールの少女を人質にとって工具を武器としてクーゲルに向けるリーゼント男にレイガンを向けて対峙していた。

 

何故、こうなったのか。

それはクーゲルにも良く分からない。

クーゲルは当初、穏やかに平和的に交渉をしようと努力した。

 

しかし、リーゼント男はクーゲルとストライカーの話に耳を貸そうとせず突然、攻撃を仕掛けてきたのだ。そして、気がついたらこの有り様だ。

 

まさか、ここまで攻撃的なヤツだとは……それとも、馬鹿なのか?やはり、漂流部族は漂流部族か……。こうなった以上、最小限の武力の使用は考えなくてはいけないか……とクーゲルは考える。

 

「武器を捨てろ!」

 

ストライカーが翻訳してリーゼント男に伝える。

だが、リーゼント男は完全に頭に血が上ったのかもう止まらない。

 

「――――――……――――――――――!!!!」

 

リーゼント男は自棄になったのか工具を振り上げてクーゲルの方へと向かってくる。

 

クーゲルはレイガンを男の足下の床に向けて引き金を引いた。

 

高熱のレーザーが一秒か二秒ほど発射され男の足下の金属製の床をミミズが通った痕のように溶かし男の行く手を阻む。

 

「――――!?」

 

リーゼント男は突然のレーザーにヨロヨロと足ぶみをして倒れこんだ。

 

クーゲルはその隙を見逃さなかった。

 

「ヒャッ!?」

 

クーゲルは人質にとったツインテールの少女を持ち上げ肩に担いた。そして、クーゲルはリーゼント男に背を向けて走り出す。

 

「――――!!」

 

リーゼント男が後ろで待ちやがれ!とストライカーの翻訳では言っている様だがそんな事はもはや気にしない。クーゲルは急いで格納庫の扉へと向かう。

 

「ストライカー!ここの構造を解析するんだ!それまではお前を動かせん」

『了解。映像を記録し解析する。可能な限り広範囲に移動されたし』

「分かった」

 

クーゲルは格納庫の扉を開け真っ暗な階段を登り錆びだらけの廊下を走る。目の前を照らすのはコミュニケーターのライト機能だ。

 

『懐疑提言。施設の構造を解析するならば少女の人質は不必要。なぜ、人質を捕ったのか理由を問う』

「なりゆきだ。あの状況下では仕方のない事だった……あの状況では正当防衛とはいえ、あの男を無力化する必要がある。だが、それをやれば、こちらへの心象が悪くなるだろう。この少女には悪いが、人質を取れば、こちらへの攻撃は与えにくくなる……かもしれん……」

 

クーゲルがそこまで言うと突然、廊下の明かりがついた。そして、すぐに大きな警報の音が響き渡る。

 

「あの男が誰かに伝えたのか……急ぐぞ。ストライカー!」

『了解』

 

警報がなってすぐ、あちこちの部屋から漂流部族の者達が現れた。

 

彼らの手には工具等が握られていた。恐らくリーゼント男と同じような簡易的な武装だ。こちらの事はすでに伝わっているのだろう。

 

「アビハトシ、タエスホッ!!《居たぞ、あそこだ!!》」

 

その中の一人の男がクーゲルを見て叫ぶ。

道を塞がれたクーゲルは廊下を曲がり追撃を回避する。

しかし、漂流部族の数は多く行く先々で出くわしてクーゲルを追ってきた。それが何度も続く。

 

「―――――!!―――!!」

 

ツインテールの少女も何度も何度もグルグルと揺らされ機嫌がさらに悪くなり暴れだす。

 

「ストライカー!この漂流部族の構造の解析はまだできないのか!」

『懐疑提言。この集団を漂流部族とは断定できない』

「……どういうことだ?」

『これまでの収集された映像において、重力変化、放射線、気密性に関する設備や配慮が一切見当たらない。当該施設は真空、無重力とは無縁の環境下において設計されたものと推測される』

「馬鹿な、ありえんだろ!」

『同意する。しかし、例外となる事例が記録上には……』

 

クーゲルはストライカーが言いきらないうちに、廊下を走りきり錆びだらけの扉を乱暴に開けた……。

 

扉を開けその向こう側へ一歩を踏み出した瞬間にクーゲルは体全体に大気の強い流れを感じる。

 

最初のうちは扉を開けた瞬間から走っていたが目の前の景色を見て走るスピードをダウンさせ止まった。

 

「な……なんだ、これは……」

 

クーゲルは目を見開いた。

目の前には赤い色をした大きなアームがある。だが、クーゲルが驚愕したのはその先の景色……。

 

「トシィドン、ソイス?《なんなの?あんた》」

 

クーゲルの変化を感じ取ったのかツインテールの少女がクーゲルに喋りかける。ストライカーが翻訳した文章を表示するがクーゲルは読むのも忘れてしまった。

 

クーゲルの目の前には漆黒の宇宙空間……。

 

ではなく、翠色の液体の水が永遠と続いていた。そう簡単には消費できないであろう膨大な量の水。

 

クーゲルはアヴァロンに滞在していた事があるが、ここの水はアヴァロンの比ではない。風が吹き、水面が揺れ、嗅いだことのない匂いが全身に押し寄せる。

 

上を見ればここがコロニーや宇宙ステーションでは無いことが分かる。上には宇宙線を防ぐ防壁も透過隔壁もなく水蒸気の雲の向こう側には星々がうっすらと輝いている。水平線の向こうには恒星の熱波ではない光までがさしこんでいる……。

 

「ここは……一体何処なんだ……何が起きてる……」

 

さすがのクーゲルもこの状況には困惑していた。クーゲルは辺りをゆっくりと見回す……。

 

そして背後の建造物の存在に気がついた。

無差別に増築を繰り返したと思われるその建物はとても巨大でパイプやクレーン、タンクなど様々な物がくっついている……どれもクーゲルが今まで見た事の無い物、見た事の無い世界だった……。

 

クーゲルはまるで夢の世界に居るような感覚に襲われたが、すぐにこれが現実である事を思い出す。

 

「タエスホッ!!《あそこだ!!》」

 

クーゲルが来た方から男の声が上がる。

すると、続々と扉から男達がやって来た。中にはあの金髪リーゼント男の姿も見える。

 

「まずい!」

 

クーゲルは周りを見たが、すでに逃げる事は出来なくなっていた。

 

先程とは違い漂流部族……いや、ここの住人達はクーゲルを睨み付け、いつの間にか工具ではなく火薬式の銃火器で武装し半円状にクーゲルを包囲していた。

 

「これまでだな……」

 

クーゲルは腹を決めた様に呟いた。

一方のツインテールの少女は自分の救助に来てくれた者達を見て希望を得てかクーゲルの腕から脱走しようと試みていたがクーゲルの力は強く、できなかった。

 

「来い!ストライカー!!」

 

クーゲルがそう叫んだ瞬間、格納庫の方から奇妙な重低音が響いた。その重低音にクーゲルを包囲していた住民達は反応しその音源を見る。

 

そして、次の瞬間、格納庫の天井が粉砕され辺りに飛び散った。 そこから人型の大きな物体が空中に飛び出す。

 

それは上空で回転すると落下。クーゲルの後ろにあるアームのすぐ近くへと落ちてきた。その衝撃波で水面の水が巻い上がり大きな水飛沫が上がる。

 

人々は突然の事に声をつまらせた。だが、まだ驚くのは早かった。

 

その人型の大きな物体は落下したまま海に沈むのではなく、空中で静止した。ピニオンや昨日、格納庫で作業を行っていた作業員はその正体にいち早く気づく。

 

昨日、海からサルベージされた紫の巨人だ。紫の巨人の頭の上には輝く奇妙な光の輪っかが出現している。住民達はその正体を知りようも無いが、それは不可視の質量球体だ。巨人の巨体を発生させる重力によって牽引している。

 

住人達は目の前に浮かぶ紫の巨人に驚愕していた。それはツインテールの少女も同じだ。あちこちで、どよめきの声が上がる。

 

紫の巨人の正体はクーゲルが良く知る存在、頼れる相棒。人類銀河同盟が誇る科学の結晶マシンキャリバー。その一つ、ストライカーだ。

 

クーゲルは住人達がストライカーに唖然となっている間に動きだしアームの上を走りアームの先端、ストライカーの近くへと行った。

 

住人達の一部がクーゲルの行動に気がつき騒いだが、すでに遅い。クーゲルがアームの先端に辿り着くとストライカーはゆっくりと動き出した。

 

「――――!?《動いたぞ!?》」

「――――!?《飛んでる!?》」

 

住人達が飛翔するストライカーに驚く。

ストライカーはクーゲルの頭上を飛びクーゲルの前にクーゲルを守るようにアームの上へと着地した。

 

「ストライカー……何が……どうなっているんだ?」

 

ストライカーの登場で一転して圧倒的有利の座に立ったクーゲルは少し冷静になってストライカーに聞いた。

 

『貴官と当機は、呼吸可能な大気を備えた惑星の地表上に居るものと推察される』

「なん……だと……」

『観測可能な天体を照合検索……確定。該当は一件』

 

ストライカーが人間で言う口の辺りの部分を緑色の光で点滅させる。

 

『太陽系第三惑星、地球。これまで記録上においてのみ存在を示唆されてきた人類発祥の星である』

 

ストライカーの検索結果にクーゲルはただただ驚愕していたのだった。

 

 




今日は3年前に翠星のガルガンティアがTV放映された記念すべき日です!
なんとか、この日に間に合いました!

次回はそうはいかないと思いますが……。
今後ともよろしくお願いしますです。

『翠星のガルガンティア ~遥か、邂逅の天地~ 下』を買って読みました。
あれはとても素晴らしいです!。まさか銀河同盟があんな事になっていたなんて……。
でも、表紙の絵はちょっとネタバレしすぎてるような気がしました。
いずれにせよレドの物語は一端これで完結で最後までとてもワクワクさせてくれる作品でした。
やっぱり2期をいつかやってほしいと願ってます!。
ガルガンティア最高!!

ガルガンティアと人類銀河同盟に栄光あれ!



次回!後書きに、ぷちっとすとらいかー現る
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