魔法少女リリカルなのは 炎の紋章を持つもの   作:コウチャカ・デン

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A’s
第26話 「襲撃」


 試験が終わり、いざ地球へ! というわけにはいかなかった。これから地球で生活するためには、ある程度の情報を前もって送らなければならないとのことだ。

 

「ある程度文明レベルが高いと、個人情報とかをかなり国で管理しているところが多いのよ」

「億を超える国民すべてを管理しているだって? とんでもないところだな……」

 

 マークが今まで見たことのある最大の国でも人口2~3000万だったのに、その数倍の人間すべてを把握しているなんて、はっきり言って最初は冗談かと思ったものだ。

 

「それが終わったら住居と生活用品の準備……まあ、2,3日で終わるから安心してちょうだい」

「……もういいや、細かいところはそっちにまかせる。それで、俺を呼び出した本題の方はなんなんだ?」

「ええ、フェイトさんたちの学校の件よ」

「学校?」

 

 話を聞くと、義務教育なる制度があるとのことで、フェイトとアリシアがその制度に引っかかるらしい。

 

「入ることは決定しているんだけど……アリシアさんの学年がね……」

 

 外見年齢に合わせると、どうしてもフェイトよりも下の学年になってしまうのだ。本人は『姉』である以上納得しないかもしれない。

 

「飛び級の制度があるところもあるし、同学年以上にできないこともないけど……」

「時間がかかる、か……」

 

 そういった特異な経歴を作るのが手間であるのはもちろん、それに見合った学力をアリシアが身に着けなければならない。そうするとかなりの時間が必要になるのは言うまでもないことだ。

 

「一応、外見年齢を上げる手が無いわけではないが……」

「あるの!?」

「人間を止めれば」

「……この話はなかったことにしておきましょう」

 

 さすがに学校に入るために人間を止めるのは割に合わない。

 

「まあ、同じ学年になったとしても、周りの人がアリシアを『姉』と扱わないだろうし、別の学年のままでもいいんじゃないか?」

「言われてみれば……そうね、そう伝えておくわ」

「頼む」

 

 こうなってくると学年だけでなく、いっそ学校も違うところに通った方がいいのではないかという話も出てくるのだが、こればかりは本人の希望に任せることになる。

 

「編入試験は今のところ問題なさそうだし、二人のことはいいかしら?」

「地球での生活は5年を目安とする、だっけか? 迷惑をかける……」

「もともと長期休養の話はあったから問題ないわよ」

 

 この話は最年少執務官となったクロノの体調を危惧したリンディの友人の提案だったのだが、まさに渡りに船と言ったタイミングであったのだ。それに保護観察期間が終われば、あくまでホームを地球においての話になるが、すぐに仕事に復帰することになる予定なのだ。

 

「それならいいが……まあともかく、これからもよろしく頼む。俺だけじゃ結局何もできないからな」

「そんなことはないと思うけど……私にできることならいくらでも」

 

 こうしてお互いの協力を確認し合った二人は、地球での生活についての話し合いを続けるのであった。そんなことをしていたら、リンディのもとに突然通信が入った。

 

「緊急……こちらリンディ・ハラオウン。何があったの!」

『艦長! 今、なのはちゃんのトコに連絡を入れようとしたらつながらなくて……調べてみたら広域の結界の存在が確認できました!』

「なんですって!?」

「結界……魔導師が戦う時に使うやつだったよな」

 

 マークが軽く以前の戦いを思い返しているうちに、リンディは自分の権限の届く範囲に指示と申請を送る。その一連の流れは一流のそれであったが、一秒を争うかもしれない事態に、それだけでは間に合わないかもしれないとさらに思考を巡らせる。

 

「マーク君、本局の転送施設を使って先行してくれる? なんだか嫌な予感がするのよ」

「了解した」

『わたしも行かせてください!』

「フェイトさん……わかったわ、でも決して無理はしないでね」

『はい!』

 

 おそらくエイミィと共に通信の場にいたであろうフェイトも同行を申し出て、許可を得る。間違いなくアルフも一緒に行くだろうからこれで三人だ。

 

「場所はわかる?」

「ここにはそろそろ長くいたと言えるからな、大丈夫だ!」

 

 そう言って駆け出すマークに続く様に、リンディもアースラへと向かう。ただ、マークたちを本局に滞在させる都合上リンディも本局にいたため、アースラはしばらく実戦から離れていたのだ。スタッフがすぐに集まれる位置にいるとは限らない。

 

(最悪最低限の人数だけでの出動もあり得るわね……)

 

 結界内の状況によってはかなり心もとない状況にもなりえる事態に、思わず舌打ちを漏らした。

 

 

「ナノハは!?」

「見つけた、あっちだよ!」

 

 現場に到着し次第の索敵では、アルフが真っ先に発見した。さすがは狼を素体とした使い魔だと場違いな感想を覚えるが、それ以上の問題があった。

 

「遠い……!」

「フェイト、先に行け! お前が一番早い!」

「わかった!」

「アルフも可能な限りフェイトに続いて、フォローを!」

「あいよ!」

 

 今回は以前の戦いとは違い、マークには『フェイトに協力する』という縛りはないので、遠慮なく指示を出す。全速でなのはのもとへ向かうフェイトを横目に、マークは三角飛びの要領でビルにのぼり、最短ルートで二人に続いた。

 

「くそっ、ナノハにはユーノも付いていたはずだろ!?」

 

 それなのに戦闘が起こり、続いているという事は、少なくともなのはとユーノのコンビと同格、あるいはそれ以上の存在がいるという事だ。

 

(いや、ナノハに切り札があることを考えれば格上の可能性が高いか……間に合え!)

 

 そしてようやくなのはたちがいるであろう場所が視認できる範囲に着いた時、その場から赤い服の少女と、それを追うフェイトが空へと翔けて行った。

 

「また空を飛ぶ奴か……! ホントにどこかに飛竜でも転がってないかねぇ!」

 

 現状、飛行のできないマークにとって最悪の相性といっていい相手だ。最悪前線での戦闘をフェイト達に任せきりになりかねない事態に、悪態をつきつつ割れた窓からビルに入る。

 

「……大丈夫、とは言い難いようだが、間に合ってよかった」

「マークさん!」

 

 マークの登場に反応したのはユーノだけで、その様子からなのはには相当なダメージが入っていることが予測できた。

 

「よかった……治療をお願いします!」

「言われるまでもない……状況は?」

「……わかりません。ただ、あの子が急に襲ってきたとしか……」

 

 ユーノの話を聞きながら『ライブ』の杖を使用する。その回復速度はユーノの使用魔法の比ではなかった。

 

(悔しいな……ずっと隣にいたのに、こんなに何もできないだなんて!)

 

 ユーノは自身の適正から、なのはを前衛にしなければ戦うことも難しいことに思わず唇をかむ。だが、そんな感傷に浸る余裕はないとばかりにマークはユーノに指示をする。

 

「ここだと、視界が悪すぎる。移動をした後なのはに防御を施し、戦線に復帰しろ。……できるな?」

「はい!」

「わ、私もまだ……」

「ダメだ、俺の回復魔法は優秀だと自負しているが、それでも怪我があった事実をなくすようなものじゃない……戦闘の継続は許可できない」

 

 どれほど強力な回復であろうと、いや、強力であればあるほど体には負担となる。そういった意味では、今は戦場にいるため怪我の治療を優先しただけで、ユーノの回復魔法の方が優秀といえるぐらいだ。

 

「で、でも……」

「でもも何もない。いいから休んでいろ」

 

 どちらにしろ、デバイスとバリアジャケットを失ったなのはに戦線への復帰は不可能と判断し、マークは戦場へと向かう。敵はなのはを戦闘不能に追い込むほどの力を持つのだ。フェイト達だけでは荷が重いかもしれない。

 

(遠距離からの援護……命中精度を考えれば『ファイアー』が妥当か)

 

 そもそも嘱託魔導師として活動するうえで、様々な制約を設けられているのだが、それでも負ける気がしなかった。

 

一つ、敵対者の身柄の確保を義務付ける。

 

かなりオブラートに包んでいるが、要は『間違っても殺すな』という事だ。この条件があるだけで、質量兵器の使用が許可されていても使いにくくなるが、もともとそのつもりであったので問題ない。

 

一つ、基本的に現場の局員の指示に従うこと。

 

これも問題ない。上官の命令通りに動くのは軍人の基本である。

 

一つ、『フォルブレイズ』の使用は、クロノ・ハラオウンあるいは、リンディ・ハラオウンの許可を必須とする。

 

さすがにこれはどうかと思ったが、神器クラスの魔法は他にもあるので呑んでおいた。もちろん、よっぽどのことが無い限りは使わないつもりではある。

 

一つ、マークに施された封印の解除はクロノ・ハラオウン及び、リンディ・ハラオウンの許可を必須とする。

 

不殺を貫くのに『非殺傷設定』はとても便利な術式であるので、封印を解くつもりは現状全くない。

 

(他にもあったが、戦闘関係はこんなものか……)

 

 改めて制約に問題が無いことを確認して、マークはフェイト達を探す。そして発見した場所は、やはりマークの手が届きにくい上空であった。

 

《高度を下げろ! そこじゃ届かん!》

《アルフもいるから大丈夫! このまま押し切れる!》

 

 確かに、マークから見ても戦況はいくらか有利に進んでいる。だが、それですむ相手ならなのはが落とされることもなかったはずなのだ。だがそんな懸念に反して、フェイトとアルフのコンビは互角以上の戦闘を行い、ついに赤い少女をバインドで縛ることに成功した。

 

「終わりだね……名前と出身世界、目的を教えてもらうよ」

 

 フェイトが戦いの終わりを告げるかのように問いかけるが、マークの中の疑問はそれで収まることはなかった。

 

「この程度なんて、そんなはず……」

「なんかヤバいよ!」

 

 その想いを肯定するかのように放たれたアルフの警告に呼応するかのように、剣を携えた何者かが唐突に飛来し、フェイトを弾き飛ばす。

 

「フェイト!」

「シグナム……」

 

 思わずそちらに意識をやったマークの隙を突くかのように、青いコートの男がアルフを叩き落とす。

 

(伏兵だと! やってくれるじゃないか!)

 

「レヴァンティン、カートリッジロード」

「させるか! 『ファイアー』!」

 

 フェイトへ向かう女騎士へとマークは攻撃を加えるが、その一撃はたやすく切り捨てられ、その直後フェイトも叩き落された。

 

「マジかよ……」

 

 相殺や受け止められることはあったが、さすがに切り捨てられたのは初めてだったマークは、思わずつぶやきながらもフェイトが叩き落されたビルへと走る。

 

 

(今の一撃、わざと気を引いてから放たれたからよかったが……それがなかったら直撃したかも知れなかったな)

 

 先程の火弾を放ったものが居たであろう場所はすでにもぬけの殻であったが、これは思った以上に苦戦するかもしれないという予感に気を引き締める。

 

「……なんか言えよシグナム」

「大事ない様で何よりだ、ヴィータ……いや、思った以上の手練れがいるようだな」

「……うるせぇよ、こっから逆転するところだったんだ」

「そうか……」

 

 それでも先程の攻防を見ていたためか、赤い少女には若干勢いがない。それを確認した女性は軽口に適当に返しながら、バインドを破る。

 

「ともあれ無事でよかった。お前が怪我でもしたら、我らが主が心配する」

「わかってるよ……もう」

 

 少しむくれる少女に、回収して置いた帽子をかぶせ現状を確認する。

 

「実質3対4と数の上では不利だが、実力はその限りではない」

 

 問題があるとすれば先程の火弾の男だが、集団戦から切り離せばそこまで脅威になることはないだろうと結論付ける。

 

「1対1と2対3に分けるが、異論は?」

「ふん、歴戦の騎士による連携ってやつを、見せつけてやるよ!」

 

 そう勇んで飛ぶ少女から少し外れるように、シグナムと呼ばれた女性は火弾の魔導師へと向かう。もとより現在この場所は彼女たちの領域である以上、探索は容易い。

 

(見つけた! しかし、こいつは……)

 

 程なくして戦場を並はずれた速度で走る男を発見したシグナムは、進路をふさぐかのように降り立ちその姿に驚く。

 

「まさか一切の防具をつけずに戦場に出てくるような者だとは、さすがに思わなかったぞ」

「……何分、急な事だったものでな。鎧を着こむ暇がなかったんだ」

 

 そんな男の返事に、シグナムは違和感を覚える。シグナムの知る魔法は『ミッド式』と『ベルカ式』の二つだが、そのどちらも防具の展開にそう時間がかかるものではない。だがその直後、そんな疑問を、違和感を消し飛ばしてしまうだけの衝撃がシグナムに走る。

 

(すさまじい気迫だ……まさか、まだ十代であろうにもかかわらずこれほどの気概を持ったものと戦うことになるとはな)

 

 目の前の男が何処からともなく取り出した赤い槍を構えた途端、先ほどまでとは比べ物にならない存在感が放たれたのだ。しかしシグナムとて、その程度で気圧されるようなぬるい鍛え方はしていない。

 

「ベルカの騎士、ヴォルケンリッターが将シグナム。それに我が剣『レヴァンティン』だ」

「……管理局嘱託魔導師、ナーガ一族の戦士マークだ。得物の銘は『フレイムランス』」

「いざ尋常の勝負と行こうか!」

「襲撃者の分際で!」

 

 名乗りの直後の激突は派手なものにはならなかったが、それでもこの戦闘の趨勢(すうせい)を決める戦いになると、お互いが肌で感じる激突となった。

 

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