魔法少女リリカルなのは 炎の紋章を持つもの 作:コウチャカ・デン
ただしご都合により登場人物増。
「ねぇ、マークは本当にこの世界の知識がないの?」
「こんなところで嘘は言わないよ? ただ人の心理というのはどこもそう変わらないようだからな、あれぐらい問題ないよ」
マークの質問攻めでつぶしてしまった次の日、ついやってしまったと謝るマークに丸め込まれてジュエルシード集めを手伝ってもらうことになってしまった。
彼女たちの反論はことごとく論破され、彼は手に入れたばかりの何の変哲のない服をまとい、不慣れであることを理由に3人で街へと繰り出すことになったのだ。
「別にあんたが飛べれば、こんな苦労はしなかったんだろうけどね」
「飛竜とかがいれば何とかなったんだけどね」
「さすがに飛竜がこの世界にいたらちょっと……」
この世界では幻想の生物だ。かなり面倒なことになるのは間違いないだろう。いや、もうすでに面倒事はあったのだ。この世界の治安組織に『補導』されそうになってしまった。
「最終的に何とかなったとはいえ、できれば今後こんなことは避けたいな」
マークが言いくるめなければ、最悪強行突破をしなければならなかっただろう。
「就学時間や夜に出歩かないことになっちゃうけど?」
「……それはだめ」
「大丈夫だって、あまり目立たないとこ通ればそう見つからないよ」
アルフは簡単に言うが、この人の多い街で姿を隠すのがどれほど大変か……そうマークが考えるのとは裏腹に、人はよっぽどのことがなければ『見間違い』『勘違い』あるいは『何か事情がある』と納得する生き物でもある。そんなことを話しているうちにジュエルシードの反応があった。
「フェイト!」
「うん!行くよアルフ!」
「ふ~ん、これがジュエルシードの反応か……」
真っ先に駆けて行った2人の後ろを追いながら、マークはその反応を吟味する。だが、それがいけなかった。
「っておい、速いな2人とも!」
特にフェイトに至っては、もう見えないところまで先行してしまっている。たとえ考え事をしていなかったとしても、その速さはただでさえ本調子でないマークを置いていくには十分だった。
「なんて言うか……一方的だな」
やっとの思いで追いつくと、もう2人は戦い始めていた。フェイトは茶色い髪の女の子と、アルフは……何か小動物と対峙しているようだ。だがマークから見ると、その内容はまだ戦いといえるようなものではない。
「待って……! わたし、戦うつもりなんてない!」
「だったら、わたしとジュエルシードに関わらないで」
なるほど、とマークは納得する。相手の子は人と戦ったことがないのだろう。そう考えるとこの内容にも納得がいく。
(困ったなぁ……なおさら手が出しにくいじゃないか)
数多の戦いを越えてきたマークにとって、敵を前にすれば息をするかのように殺すことができる。しかし民間人は別だ。相手が敵で、戦士でないのならその命を奪う道理を彼は持たない。
(だが、手伝うと言ったしな)
うまいこと加減して足止めする。そう思い直し、その場に足を踏み入れ声を大にする。
「『ソレ』の相手は俺がする! お前はジュエルシードを!」
相手が何者かわからないので、とりあえず固有名詞を伏せておく。フェイトの目的も、目の前の少女と戦うことではないのですぐに反応して離脱する。
「ま、待って!」
「『ファイアー』」
そういいながら追おうとする少女に対し、共に封印されていた魔道書の1冊を取出し前方に火の魔法を放つ。
「なのは!」
「隙だらけだよ小動物!」
マークの攻撃により、辛うじて保っていた均衡が崩れる。
「かはっ!」
「ユーノ君!? っく!」
小動物がアルフの攻撃によって『落ちた』。空にいる少女も、マークの牽制に対して何もできずに翻弄されている。
「2人とも、終わったよ!」
そうしている間にフェイトは回収を終えたようだ。マークは仕上げとばかりに魔法の威力を上げて、爆風をうまく使い少女を空から落とした。
《やり過ぎじゃ……》
《直撃は1度もないから大丈夫だよ》
習ったばかりの念話で少し話す。声を出さなかったのは、相手にこちらの弱みを見せないためだ。実は攻撃を躊躇していたなんて思われたら面倒だからな。
「うっ……」
起き上がろうとする少女に、フェイトは言葉をかける。
「今度は、手加減できないかもしれない。だから、ジュエルシードは……あきらめて」
そういって飛び去るフェイトとアルフ。
(いや、だから俺は飛べないんだって)
少し遅れて、それも歩いて帰るなんて少し恰好がつかないな、などと思いながら1本の杖を出し、残された少女たちに向ける。
「え……?」
「『リザーブ』」
そこから淡い光が放たれ、少女と小動物を癒す。範囲回復魔法とでも呼ぶ代物だ。
「な、んで……」
(……フェイトに『やり過ぎ』って言われたから、なんて言えないよな)
「……こんなことは忘れて、日常に帰りなさい?」
昨日フェイトから聞いた話に、この世界には本来魔法がないという話があった。とっさに思い出して言ったことだが、これなら治療をした筋も通るだろう。
そうしてマークは少女の前から走り去った。一応フェイト達が飛んで行ったのとは反対の方向だ。
「こういう時に限って、何かしらのことが起こるのはなんでかなぁ」
帰る先を特定されないようにと遠回りをしたのだが、割と全力で2時間ほど走りぬいた先で、例のアレを見つけてしまったのだ。
「まあ、人気の無いところだってことがせめてもの救いか……」
正直な感想として、フェイトかあの少女のどちらかがここのジュエルシードに気付いていたらあの戦いは起こらなかったんだろう、と思ってしまう。
「済んだことはいい、問題はこれをどうするかだけど……」
見つけることができたことは、幸運以外の何物でもないだろう。ただこれは触って大丈夫なのか疑問が残る品であるのだ。
残念なことに、フェイトに連絡をする手段がない。念話自体はできるようになったが、効果範囲は目視できる範囲のみだ。直接呼びに行くというのもだめだろう。なら、残る手段は……
「俺が封印するしかないのか?」
一応使えそうなものはある、あるのだがコレに使えるのかは不明だ。だが、ここで放っておくわけにもいかないのはもはや言うまでもない。
「やらないで後悔するより、やって後悔するべき……か」
そして1振りの剣を呼ぶ。かつて異界にて魔竜を封印した英雄の持っていた剣『封印の剣』だ。
「ハァッ」
気合一閃、炎を煌めかせ振るわれた剣は、ジュエルシードに突き立てた部分から結晶を発生させる。そしてジュエルシードを覆い、こぶし大の大きさになったところで変化が止まり安定した。
「ふう、これで一安心……!」
そこで気づいた。いや、それまで気づけなかったのだから、どれだけ鈍っているのだろうか。
「あ、あ……」
「い、いまの……」
そこにいたのは2人の少女だ。つい数時間前にジュエルシードを巡り戦った少女と同じぐらいの年だろう。
(あの白い制服のせいかな)
フェイトより先にあの子と同じくらいと思ったのは、あの子の戦闘服も白かったせいか。
「なんでこんな……」
思わず顔を覆ってしまうが、それだけの動作で2人の少女はビクッと震える。
(こちらとしては子供に向ける剣はないんだがな……)
そう思った後に『戦場に立たない』と付け加える。そして剣をしまい結論を出す。
(うん、なかったことにしよう)
周りの大人たちが『子供のたわごと』と切り捨ててくれることを祈りながら、今度こそ彼は、本拠地のマンションへと駆けて行った。
2人の少女に強引に出てきてもらいました。