魔法少女リリカルなのは 炎の紋章を持つもの   作:コウチャカ・デン

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第4話 「持たざる者」

 あの夜から数日がたち、また一つのジュエルシードを見つけた。ただ今回は前回と異なり街中であるうえに、正確な位置がわからなかったのだ。

 

「それで、出てきたはいいけど……どーするんだ?」

 

 いまだ探索については役立たずのマークが尋ねる。とはいえ、ここまで探す範囲を絞れていれば、あと小一時間もあれば普通に見つけられるだろうとも思っていた。

 

「魔力流を打ち込んで、強制発動させる」

「強引すぎないか?そんなことしたら一瞬で相手の子たちにも見つかるぞ?」

 

 だが、その子たちに一歩先んじて発見することはできるわけだし、下策というわけではない。こんなことなら、相手の位置をちゃんと把握しておくべきだったかと後悔する。

 

「こっちは3人であっちは2人出し問題ないって」

「伏兵がいる可能性も考えとけって……奇襲が一番怖いんだから」

 

 そういいながらもあの子たちの戦力はあれきりだろうとも思っている。マークたちだって全員で動いていたのだ、あの子たちにだって出し惜しみをする理由はなかっただろう。懸念するとすれば、フェイト達の言っていた『管理局』であろうが、そちらはまだ来ないだろうというのがフェイト達の見解であった。

 

「じゃあ、マークがフォローに回って?あの子たちはわたしとアルフでどうにかするから」

「大丈夫だって、単純なスペックでいえばあたしらの方が上なんだろ?」

「まあ、そうなんだが……」

 

 長年の経験が、目の前の二人があの女の子たちに負けることはまずないと結論付ける。それでも躊躇するのは、前線に向かうというフェイトがいまだ10歳にならない子供だからなのか……

 

「それじゃあ、始める」

 

 そういってフェイトは魔力を繰り始める。短い付き合いだが、マークがはっきりと断言しないのは、別に反論があるわけじゃない時だとわかっている。こうして無理にでも動けば、なんだかんだでマークはついてきてくれるのだ。

 

「アルフ、結界を。人的被害が出ると後の探索が面倒になる」

「あいよ!」

 

 広域結界が発動し、この場が半ば異界へと変わる。

 

「見つけた」

「さすがにあの子たちも気付いたみたいだね……フェイト!」

 

 アルフの呼びかけに無言でデバイスを、バルディッシュを構えることで答える。

 

「いってらっしゃい」

 

 マークが声をかけるも目線すら合わせずに2人は飛び立つ。1秒を争うので返事がないのはある意味当然だ。

 

「で、飛べない俺はどうしようか……なんて、決まってるよな!」

 

 そういってマークは今までいたビルの屋上から飛び降りる。普通に降りていては有事の際間に合わないと判断した結果だ。

 

「来い『バゼラード』!」

 

 そうして封印から呼び出すのは、彼の持つ短剣の中でも随一の強度を持つもの。それをビルに突き立て落下の勢いを殺す。

 

「つ~~~……って、痛がってる場合じゃないか。さっさとポジショニングしないと」

 

 せいぜい手足にしびれを残す程度のダメージで地上まで下りたマークは、2人のフォローがしやすい場所へと急ぐ。

 

 

「って、これは厳しいな……」

 

 実際ジュエルシードのもとに到着するころには、フェイトはあの白いのとどこかへ飛んで行ってしまっていた。アルフの方もおそらく小動物を追っているのか、近くに姿が見えない。

 

(俺が封印してもいいが……あの封印実はあんまり相性が良くないんだよな……)

 

 ジュエルシードと封印の相性ではなく、マーク自身と封印の相性の問題だ。

 

「仕方がない……ちょっと隠れて様子を見るか」

 

 戦えばまずフェイトが勝つのだ。あとは危険がないようにフォローに回れば、マークが無理に封印しなくてもさほど問題はない。そうしてマークは、ジュエルシードから少し離れた路地に身を隠し、戦況を眺めようとしたその時だった。

 

「お、ライバル無視して回収優先か……さすがに距離が近すぎるぞ!」

 

 先程まで何か話している様子だったのが一転し、高速でジュエルシードへ向かうフェイト達。だがフェイトは相手を引き離せていない。そして2人がジュエルシードをとらえ……何かがはじけた。

 

「う、うう……」

「くっ……!」

 

 ジュエルシードに触れていた2人は、数瞬だけこらえるが吹き飛ばされる。フェイトは体勢を立て直し何とか着地したようだが……

 

「おい、あっちは道に食い込んでるぞ……大丈夫なのか」

 

 幸いというべきか、まだ息はあるようだし、とりわけ血のにおいもしない。地面を砕くことで、体へのダメージを受け流したのかもしれない。とりあえず安心したところでフェイトへ視線を戻すと、デバイスをしまい、突っ込もうとしている彼女の姿があった。

 

「あのバカ!」

 

 一応先程の破裂からジュエルシードは静かになっているようだが、あれは嵐の前の静けさというやつだ。とっさにある杖を使いフェイトをさがらせる。

 

「!……マーク!?」

「下がってろ!俺がやる」

 

 使用した杖は『レスキュー』効果は離れたところにいる対象を自分の周りに呼び寄せるというものだ。

 

「『封印の剣』!」

 

 先日も使ったが、あれは起動していないジュエルシードに対してだったため、今回もうまくいく保証はない。もう一つ可能性のあるものもあるが、あれは1回しか使えないためできればとっておきたいのだ。

 

「ハァッ!」

 

 炎をまき散らし、ジュエルシードへと突撃する。そしてやはりというべきか、ジュエルシードに触れた時点で以前はなかった反発を感じる。

 

「グゥゥ……!」

 

 後ろで何か騒いでいる気配を感じるが、封印に全力を注ぐ。反発はゆっくりと抑え込んでいき、それに従って目の前でゆっくりとジュエルシードが結晶に包まれた。

 

「ふぅ……!」

 

 封印が終わっていと行き着いた時に、それに気付く。

 

「2人とも、帰還するぞ!」

「うん!」

「了解!」

 

 だが2人にはそれに気付かれないよういつも通り振る舞う。消耗したであろうフェイトを気遣ってか、アルフはフェイトを抱えてビルの屋上へと飛んで行った。

 

「さて……『リブロー』」

 

 前回と同じように杖を取出し、少女の傷を癒す。前回は『やりすぎ』と言われたからだが今回は特に理由はない。しいて言うのなら、目の前の少女がけがをしていて、マークにはそれを治す力があったからかもしれない。

 

(丸くなったか?いや、ここを戦場だと思ってないのが原因か……)

 

 そうでなければ治療以前に、前回の戦いの後、彼女たちを生かしておかなかったかもしれない。少なくともジュエルシードの前で『様子見』なんて考えなかったはずだ。

 

「あの……マーク、さん」

 

 そこまで考えて、ここがまだ街中であったことを思い出す。名前はいつ……と思ったところで、先ほどフェイトに呼ばれたことを思い出した。

 

(特に口止とかしてなかったからな)

 

「なんだ?」

 

 気を抜いたのは明らかにミスだ。だが相手に話したいことがあるというのなら、それを聞くぐらいはかまわないとも思う。以前の戦場でも『投降したい』『今の雇い主にはついていけない』といった奴らもいて、そんな奴らと和解し、共に戦場を渡り歩いたりもしたものだ。

 

「どうして……」

「さあ、な」

 

 ジュエルシードを集める理由か、治癒を行った理由か。マークにはどちらの問いにもこたえる言葉を持たなかった。それでも、目の前の少女に答えるならば……

 

「しいて言うのなら『惰性』だな。かつての目的は意味をなさず、今は何をすればいいのか自分でわかっていないのが現状だ」

 

 フェイトに協力をしているのだって、目を覚ました時にそこにいたからという理由が大きい。今までずっと自身の封印を解いたものと共に戦ってきたから、その習慣に則っているだけ。

 

「理由が、ない……?」

 

 少女からしてみれば衝撃だろうとマークは思う。少女くらいの年ごろなら、『将来どうしたい』『ああなりたい』といった夢にあふれていただろう。今だって目的を持ってジュエルシードを集めていたのだろうにそんな中、目の前の青年は『目的がない』という。

 

「まあこれは俺だけの話で、相方たちのことは知らないけどな」

 

 そう、マークはフェイト達の理由を知らない。なかなかデリケートな部分である上に、かなり強引にマークが手伝いを申し出たことも原因だろう。

 

「これで問いには答えた。……次は戦わなくて済むことを期待しているよ」

 

 そう言って、マークはアルフを追ってビルの屋上へと飛ぶ。とはいえアルフのように一足飛びというわけにはいかず、ビルの側面を蹴って三角飛びのような形であった。

 

 

「ふぅ」

 

 飛び上がったビルからしばらく跳ね回り、追跡等がないことを確認して一息つく。

 

「思ったよりきついな……」

 

 その手には、いまだ『封印の剣』が握られていた。いや、固定されていたという言い方の方が正しいかもしれない。

 

「ハッ!自分が行う封印に巻き込まれそうになるなんて……これでよく封印を専門になんて言えたもんだ」

 

 その手は水晶に包まれ、剣と一体化したようになっていた。相性が悪いとはわかっていたが、ここまでとは思っていなかった自分の見通しの甘さにも腹が立つ。

 

「しばらく使用は控えるのが賢明か」

 

 そういって剣から宝玉を取り外し、掲げる。この封印が剣の方まで覆っていたらどうなっていたかと、背筋が凍る思いであった。

 

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