魔法少女リリカルなのは 炎の紋章を持つもの   作:コウチャカ・デン

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第5話 「これからのあるべき姿」

「じゃあ、行ってきます」

「留守の間は任せたよ!」

 

 先日の戦いののち、フェイト達はいったん報告に戻ることにしたらしい。正直に言えば、マークは報告するような相手がいることに驚いたものだ。

 

「そうはいっても、せいぜい街をうろつく程度だぞ?期待なんかするなよ?」

 

 一応探索を途切れさせないようにするという名目で、マークはフェイト達についていかないで留守番をすることになった。

 

「それじゃあ食事の方を期待しているよ!」

「そっちならいいだろう。この国の人気食『カレー』を作って待ってる」

 

 アルフの希望に、挑戦的な答えを返す。ちなみに、今までマークの作った料理の評判は、最初の料理以外は好評だ。最初のものが不評だったのは、マークの基本の味付けが行軍中のものだったせいか、とにかく味が濃かったのだ。2回目以降は調整され、おいしくなったが、その結果この世界の料理にまで手を伸ばす始末だ。

 

「どんな料理?」

「シチューに似た感じのものらしい。ま、楽しみにしておけ」

 

 そういうマーク自身も、人気のある料理だという程度の知識しかないのだが……

 

「うん、楽しみにしとく」

「そうと決まれば、ちゃっちゃと終らせるよ!」

「まったく……アルフったら」

 

 そういってフェイトは転移魔法を起動させる。その際座標やらなんやらいっていたが、マークは聞かなかったことにした。

 

 

「ふむ……思ったより暇だな」

 

 マークはフェイト達が出て行ってからすぐに料理をはじめ、終わらせてしまった。ものの本によると煮込む時間こそ長いが、市販の材料を使えばそこまで大変な過程はないとのことだったからだ。

 

「掃除、洗濯はさすがにできないし……」

 

 技能的な問題もあるが、マークが1番問題に思っているのは相手の私物に触れることだ。人にとってはゴミ同前でも、本人にとっては貴重なものということはままあることである。

 

「自分探しにでも行くかぁ~」

 

 目覚めてからずっと後回しにしてきたが、そもそもマークがここに居るのは友が願ったからだ。そしてその友の願いは『幸せになってほしい』である以上、マークにとって『幸せになる』のは義務といっても過言ではない。

 

「幸せなんて、押し付けられるものじゃないと思うんだが……いや、そもそも幸せってなんなのか、それが問題だ」

 

 哲学だな、とつぶやきながら部屋を出る。身近にないなら探しに行かなければならない。

 

「だから~そんな強迫観念みたいな考え方は違うって、もっとこう……ほんわかしたもんだろ?」

 

 独り言を続けながらマンションを出て、そこで足が止まる。何処へ向かえばいいというものでないからだ。だからと言ってここにあるわけでなく……

 

「気の向くままに歩いてみるか……あ、時間には気を付けないとな。歩き回れるのは学校が終わるまで~」

 

 そうして完全に気を抜く。さすがに事故にあったりするほどではないが、視界にジュエルシードが入っても気付かないかもしれない程度だ。

 

(何かを探すには気を抜きすぎかもしれないけど、ここまで気を抜いても目に入るものがあればいいな~)

 

 そうして、マークは街へと歩みを進めた。

 

 

「結局何もなかったか……」

 

 安いハンバーガーをかじりながら、公園のベンチでひとりごちる。そこまで長い時間探したわけではなかったが、街を歩いて特に目につくようなものは見つけられなかった。なんだかんだで、ジュエルシードを探すためあちこち歩いていたせいか、新鮮さにも欠けていた気がする。

 

「まあ、そんなに簡単に見つかるようなら、俺は戦場でだって幸せを見つけられただろうしな」

 

 それでもこのまま帰る気にもなれず、まだいったことのない場所があったか少し考える。と、そういえば住宅地のほうには行ったことがなかったと思いつく。

 

「そうだな、そっちを回って帰るか」

 

 もう、何も見つけられず帰ることが前提にあるようなセリフだったな、などと考えながらもマークは歩き始めた。

 

 

「やっぱり何があるってわけじゃなかったな~」

 

 そこまで期待していたわけではなかったが、それでも空振りとなると気が滅入る。それでもあえて何があったかを言えば、元いた世界でも見ることがなかったでかい屋敷……の、門を見つけた。

 

「まあ、建築様式というか、技術や文化も違うわけだし、比較対象としてはいまいちピンとこないな」

 

 そういいながら人気の無い場所へと向かう。理由としては、少しのんびりしすぎたようで、もう『放課後』と呼ばれる時間帯になってしまったためだ。できる限り、あの少女と日常でかち合いたくない。そしてもう一つの理由が……

 

「そろそろ出てきてくれないか?こっちとしてはつけられるようなことした覚えはないんだが」

「驚いた、ばれていたのか」

 

 返事をしたのは男の様で、手には細長い何かを入れた袋を持っていた。

 

「まあ、そこまで警戒されたらね……尾行は本職じゃないだろ、剣士君?」

「……」

 

 男は無言で警戒のレベルを上げる。だがマークとしては今回に限っては、できれば戦いたくなかった。ちょっと挑発してしまったが、まずは理由から確かめるべきと方向性をまとめる。

 

「で、何の用?」

「それはこちらのセリフだ、何が目的でこの街へ来た!」

「ん?この街に入るには特別な許可や申請が必要だったのか?」

 

 マークとしては割と本心からの疑問だったのだが、どうやら男にははぐらかされたように感じたらしい。隙のない動きで袋から二振りの剣を取り出した。

 

「もう一度聞く。目的はなんだ」

 

 先程よりも目が座っている。望む答えでなければ切りかかってきそうな気配である。

 

「あ~、よくわからんが特にこれといった理由があってこの街へ来たわけじゃないぞ?それでもあえて理由を言うのなら自分探しとでも言おうか」

「ふざけるな!」

 

 男は切りかかってこそ来なかったが、かなり強い気迫を込めて怒鳴る。

 

「貴様が炎の異能を使ってこの地で何かをしたことは割れている!それ以上誤魔化そうものなら……」

「あーあー、わかった!あんたの気が立ってる理由はよーくわかった!あれね。俺に話せることはちゃーんと話します。だからその剣仕舞ってくれ!」

 

 正直ここまで敵意をぶつけられると、戦場に立つものとして反応してしまいそうだった。せっかく自分の『幸せ』を探していたのだ。戦士としてではない自分を探す、その始まりに血を流すのは、できれば避けたかったのだ。

 男は剣こそ仕舞わなかったが構えを解き、とりあえず話を聞く姿勢を見せた。マークもようやく自分をつけていた理由を把握し、2人の少女の身内であろう男にどう話すかと頭を巡らせる。

 

「はぁ、ここに来たのは本当に偶然だ。ただそこでちょっと危険物を見つけてな。その処理をしていたのを、あんたのトコの女の子に見られたんだ。今はほかにもないか確認中ってとこだ」

「その危険物は?」

「こっちで知り合いに預けた」

 

 男は胡散臭そうに睨みつけてくるが、これ以上のことを話す気はマークにはない。いくら今は戦いたくないといっても、現状の相方に迷惑をかけてまで貫きたいことではないからだ。

 だがマークはこの会話のうちに一つのカードを手に入れていた。

 

「あんたも……いや、あんたの後ろにいる奴が変り種なのか?とにかくそっちが手を出さないなら、こっちもやることやってさっさと出てく。それでいいだろ?」

「……いつから気付いてたの?」

 

 そういって男の後ろから女が出てくる。一人が素直に出てきて、もう一人が姿を隠して隙を見るっていうのは、割と基本だ。今回は別々に隠れているのではなく、一箇所に隠れていたからより効果的ではあっただろうが……それでも相手が悪かった。

 

「どんなものかは知らないが、あんたも『人』とは違うんだろ?ならわかるはずだ。俺も『人』から外れるようなことは軽率にしない」

 

 マークという『異常な存在』を認識できるということは、彼らもまた『異常』であるということだ。

 

「あんたにとって、都合のいい話だろ?俺が勝手にここにある危険物を始末して、どっかに消えるってだけの話なんだから」

「都合がよすぎるわ」

「危険物だって、使い方次第だ」

 

 一言で切り捨てた女に、こちらにもメリットがあることを告げる。これで、よっぽど偏った考えの持ち主でない限り話は終わる。お互いメリットのあることなのだ。あとはお互いを黙認するだけで終わる。

 

「それを証明するものがないわ」

「慎重だな……度が過ぎると好機を逃すぞ?」

「安全には代えられないわ」

 

 マークは思った以上に慎重な女に内心悪態をつく。基本的に彼は交渉事には向いていないのだ。更に言えば難解な交渉は大抵、彼の友が行っていたため、経験もさほどない。せいぜいがその真似事といったところだ。

 

「……確かに、何の根拠もなく信じるのは愚かともいえるだろう」

「理解してくれた?なら……」

「だが!」

 

 女が言いかけた言葉を遮り、マークは言う。

 

「交渉は最低限の信頼によって成り立つ。それを覆すのなら、それ相応の覚悟はあるのだろうな?」

 

 マークは交渉事には向かない。それに加え、今回はさらに欠点があるのだ。

 

『裏付けが取れない』

 

 マークがどれほど真摯に語ったとしても、それを証明することができない。最終的には『マークという存在』そのものを信じてもらうほかない。だがその信頼を得るのにどれほどのものが必要だろうか?そしてその対価を支払った時に、彼女たちが『信用できない』とすればいったいどうなるか、想像するのもおぞましい結果となる。

だから、今彼と交渉をするなら、どうしてもある程度譲歩しなければならなかったのだ。女はその見極めができなかった。引き際を間違えてしまった。

 

「今回はただ『決裂』だ。だが忠告はした。次はただでは終わらんぞ?」

 

 マークは魔道書を取出し、その手を大地へと向ける。

 

「『エルファイアー』」

 

 今まで使っていた魔法よりワンランク上、その一撃の発した音、光、熱がマーク以外の感覚を焼き、彼の遁走を許してしまう。

 

「すみません。追跡はできませんでした」

「わたしたちの存在にも気が付いていたんですかね?逃げ方に、なんというか迷いがなかったですよ」

 

 その場に残された男女の感覚が戻ったころに、2人のメイドが現れた。本来であるなら、この2人が退路を断つ予定だったのだが……

 

「予想をはるかに超える実力ってこと?これはちょっとやらかしちゃったかな……」

 

 それでも彼女は、どこをしくじったのかいまいちわかってなかった。だがそれも仕方がない事だろう。交渉相手がこの世界に一切情報がない存在だと悟れという方が無茶なのだ。

 

「今度交渉に失敗したら、即戦闘っぽいけど……勝てそう?」

「さっきの炎に当たらなければ何とかなるんじゃないか?」

 

 その予想はかなり楽観的なものだろうと、女はもちろん、言った本人も思っている。炎の起こった地点はクレーターになっているし、彼女たちの包囲を完全に撒くだけの身体能力も持っている。

 

「はぁ、せめて名前くらい聞けたらなぁ……」

 

 次回をにおわせていたので、これっきりという事はないだろう。だが不干渉を提案してきた以上、あちらから接触してくることもないだろうし、探索は続けることになる。最悪の場合、すべての要求を呑んで一刻も早く出て行ってもらうのもありかもしれない、などと女は考えていた。

 

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