魔法少女リリカルなのは 炎の紋章を持つもの   作:コウチャカ・デン

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第64話 「守るべきもの」

「ハーケンセイバー!」

『遠距離でどうにかしようって言うのは、流石に甘いぞ!』

 

 三対一となり、ようやく均衡を見せていたマークのコピーとフェイトの戦いであったが、それが長く続かない事は誰もが理解できていた。

 

《この密度の戦闘では、あと十分も戦い続けるのは難しいですね》

《同感! 魔力的にも、体力的にも集中力的にも!》

《……そうだね、何とか隙が作れればいいんだけど》

 

 アインハルトとヴィヴィオの発言に、フェイトも同意せざるを得ない。ただ一つ異論があるとすれば、フェイト自身は十分も持たない事だろう。魔力量は二人よりも多いし、実戦経験から集中力も勝るが、いかんせん一人で戦う時間が長すぎた。限界は、近い。

 それでもフェイトは、元々この戦いは自分のものであるとこの場では余計な真面目さを発揮し、コピーと正面から戦う。雷と炎がぶつかり合う中、二人の格闘少女がフェイトをフォローしようとマークのコピーに迫る。コピーの言葉に触発されたというのもあるが、もともと遠距離戦は得意ではないのだ。

 

「はあぁぁっ!」

「たあぁぁっ!」

『おっと!』

 

 口調こそおどけていたが、アインハルトとヴィヴィオの拳をかわすコピーの目は真剣だ。徒手格闘戦の経験がほとんど無いコピーにとって、慎重にならざるを得ないのだ。しかし、それでもなお二人はコピーの警戒の上を行った。

 

『なっ!?』

「今です!!」

 

 それは、躱すしかないだろうと思い放ったレヴァンティンによる上段からの斬撃を、ヴィヴィオが両手を交差させ正面から受け止めたのだ。それはマークの常識では考えられない事で、思わずその身を硬直させてしまう。

 そして、その隙を撃つのは、ヴィヴィオのパートナーであるアインハルトの役目だ。

 

「覇王断空拳!!」

 

 足先から練り上げた力を一点に集中させた一撃は、轟音と共に動きを止めたコピーを弾き飛ばす。傍から見ていれば確実に沈んだと思えるような一撃であったが、それを撃ち込んだ少女の顔は晴れなかった。

 

「大丈夫ですか、ヴィヴィオさん?」

「は、はい。ただ、思った以上にあの一撃が重くて……アインハルトさんは?」

 

 そう、マークの斬撃は全力の一点防御、セイクリッド・ディフェンダーの上からヴィヴィオの拳を傷つけていたのだ。そして、それはアインハルトについても変わらなかった。

 

「……予想以上に、いえ、本当に人かと疑うぐらい堅かったです。少し、拳を痛めました」

 

 コピーの武装はオリジナルのものをコピーできなかったため鎧などの装備は一切なく、欠片がオリジナルの攻撃を防げる装備を生成できないと判断されたため、本当にただの服なのだ。それにもかかわらず殴った方の拳が壊れるなど、どれほどの強化かと背筋が凍る思いであった。

 

「今の足止め、どんな形でもいいからもう一度できる?」

 

 だが、ヴィヴィオ達からしてみれば絶望的な結果も、フェイトからしてみれば希望の塊であった。疑問に首をかしげようとする二人であったが、それを切り札があると強引に納得させる。

 もちろん、未来のフェイトを知るヴィヴィオを完全に納得させたわけではなかったが、それでも頷かざるを得ない気迫がそこにはあった。

 

《どちらかと言えば、フェイトママは攻撃力が高いわけじゃなかったと思ったけど……?》

《でも、自信あるみたいでしたよ?》

 

 アインハルトが感じた自信はヴィヴィオも感じていたことだ。それもありフェイトの切り札を信じたわけだが、その自信の源が詳細の知らない強化魔法だとは流石に思いもしない二人であった。

 だが、詳細が分からないとはいえ、フェイトの自信に根拠が無いというわけではないのだ。

 

(マークが、私を一人で行動させてもいいって思えるだけの力を持った術だ。たぶん、あの時以上の……)

 

 思い返すのは、はやてを乗っ取った魔王との戦い。あの時は右腕左足に半ば振り回されるように戦ってしまったが、もしその力を一撃に束ねて放てば、まさしく必殺にふさわしい一撃となるだろうことは、容易に想像できた。

 

「危険な役目を任せてごめん……でも、ちゃんと、守るから」

「わかった!」

「任せてください!」

 

 申し訳なさそうな、それでも強い意志を込めた瞳に、ヴィヴィオ達も力強く頷く。

 

「じゃあ、いきます!」

「ソニックシューター!」

 

 アインハルトが突撃し、それをヴィヴィオがフォローする形で戦闘を再開する。対するコピーは、先ほどの攻防を分析しながら、これを迎撃する構えを見せる。

 

(特殊な防御スキル……だが、ダメージを完全に遮断できるほどではないのか? それに加え、小回りの利く重い拳打……徒手空拳とはいえ、舐めてると痛い目に合いそうだな)

 

 考えをまとめ、再び接近してくる二人のタイミングをずらそうと『エルファイアー』を放つコピーであったが、これもまた驚愕の結果を呼ぶことになる。

 

「覇王流―――旋衝破!!」

『はぁ!?』

 

 あろうことか、アインハルトはコピーの『エルファイアー』を掴んで投げ返してきたのだ。それに対し、コピーは回避を考えずに帰ってきた攻撃と二人を迎撃することを選ぶ。だが、これは悪手と言って構わないだろう。わざわざ三人分の同時攻撃を受ける必要など、欠片もないのだから。

 

「アクセルスマッシュ!」

「はっ!」

『このっ!』

 

 自身の魔法にヴィヴィオの魔法と強打、それにアインハルトの追撃を剣一本で受けることなど流石にかなわない。それでも、コピーの剣速は魔法を切り裂き、アインハルトの拳を相殺することに成功する。残ったヴィヴィオの拳打は、左腕で受け止めダメージを最小に抑えようと試みるが、コピーに格闘戦の心得は全くないのだ。

 

『ぐっ……!』

 

 左腕の防御をすり抜けたヴィヴィオの拳はコピーの胸部に突き刺さり、肺から空気を押し出す。そして動きが鈍ったところを見逃すほど少女たちは甘くなかった。

 

「はあぁぁあ!」

「たあぁぁあ!」

 

 動きが鈍った中、クロスレンジで繰り出される連撃をコピーは甘んじて受け入れるしかなかったが、それで沈むような柔な体ではない。そして、二人の攻撃はコピーの動きを止めるだけの威力を持ち合わせてはいなかった。

 だが、コピーは知らない。アインハルトの使う覇王流は、ただの格闘術ではない。戦乱の世に生まれた、徒手戦闘術なのだ。その技術には、当然対武器戦闘も含まれている。

 

「そう簡単に、思い通りにはさせません!」

『ちっ!』

 

 そもそも剣を振らせない間合いの取り方から始まりその対策は多岐にわたるが、残念なことにコピーもいつまでもやられてばかりではいなかった。

 

『このっ!』

「くぅっ!」

「アインハルトさん!」

 

 剣による反撃を諦め、アインハルトを弾き飛ばしたそれはただの体当たりであったが、間合いさえ十分取れればどうにでもなる。一人がいなくなれば、十分に剣を振り回せるとばかりに視線をヴィヴィオに向けるが、空間ができて手を出せるようになるのはコピーだけではないのだ。

 

「プラズマランサー・ファランクスシフト!」

 

 それは、フェイトが一人で戦っていた時の名残。飽和攻撃を目指した跡だったため、まだ十分な数はそろっていなかったが、二人の援護には十分すぎる数であった。

 ヴィヴィオへと奔る刃を複数の雷撃で相殺し、更なる追撃を行うべくスフィアの位置を修正する。

 続くであろう一斉攻撃を警戒し、コピーが個々への注意をそらしたのは一瞬。だが、その一瞬こそ、ヴィヴィオの望んでいたものであった。

 

「っ!」

 

 短い呼気と共に放たれた突きは、コピーの顔面を目指し、紙一重で躱されてしまう。だが、それだけで十分であった。

 

『っ!?』

 

 コピーの視界が揺れる。そう、ヴィヴィオは最初からクリーンヒットなんて狙っていなかった。当たるに越したことはなかったが、それでも動きを止めるのに、必ずしも綺麗な一撃を入れる必要は無かったのだ。

 そして顎をかすめ、脳を揺らされたコピーにできた隙は、切り札を使うのに十分すぎるものであった。

 

「術式解放!」

 

 その言葉とともに、フェイトの全身をある種の力が浸透していく。それこそがマークの言う『エーギル』なのだが、今のフェイト達にそれを知る手段はない。

 今必要なのは、力に対する知識ではなく、この力を全てコピーに叩きつけることだけだ。フェイトは加速する意識の中、バルディッシュザンバーに力を込める。

 

(間に合え!)

 

 体中を軋ませながら広がった莫大な力が、永遠に感じるほど長い一瞬で全身を駆け巡る。莫大なエネルギーを流し込まれた雷刃が、かつてない光を放つ。

 

「―――え?」

 

 空気がはじけるような音が聞こえた気がした。その次の瞬間には、ヴィヴィオの目の前でコピーが何らかの衝撃を受け弾き飛ばされていた。

 

「まさか……フェイトママ!?」

 

 ヴィヴィオがその考えに至った時には、すでにマークが数十回は見えない何かに跳ね飛ばされていた。

 

『この……一体何が!?』

「考える暇なんて……あげないっ!」

 

 元々機動力はマークを上回っていたのに加え、今回はマークが施した常識を超えた強化がある。その結果フェイトの速力は、完全にコピーの知覚を超えるレベルにまで達していたのだ。

 だが、そこまで達してなお食い下がるのが、フェイトの前に立ちふさがるものがただのコピーではないことを証明していた。

 

『いつまでも、好き勝手出来ると思うな!』

「なっ!?」

 

 間違いなく神速の域にあるフェイトの斬撃が、少しずつだが防がれ始めたのだ。いや、そもそも最初の数十もの斬撃を受け、なお健在であることからもコピーの実力が垣間見えるというものだろう。

 そして、徐々に対応されつつあるという恐怖に、ついにフェイトは屈してしまった。

 

「ああぁぁああぁっ!」

 

 神速に加え、限界を超えた強化が施された右腕による必殺の一撃。それでも、冷静さを欠いてしまえば、類稀なる一撃も凡百のものへとなり下がってしまう。

 

『なるほど……モルフの腕と、専用の強化術式か』

「う、嘘……!」

 

 呆然とした呟きは誰のものであったか……コピーの持つレヴァンティンを半ばまで砕きながらも、フェイトの斬撃はそこで止められてしまう。さらにフェイトの使っていた切り札まで見抜かれては、勝ち目など残っていようがなかった。

 

『正直、褒められたものではないな。こんな術で勝負をかけずに、ちゃんと粘っていれば増援も期待できただろうに……』

「確かに、それでも最終的には勝てたと思う……けど、わたしはともかく、あの子たちにけがはさせたくなかった」

 

 鍔迫り合いを続けつつ交わされるコピーの言葉には、僅かな失望と悔恨が込められていたが、フェイトは気付かない。しかし、コピーはフェイトの言葉の内に強い思いがあることに気付く。

 

『何を……?』

「顔も知らない子だけど、まったく意味が分からない子だけど、それでも……!」

 

 そして、その想いに答えるように、フェイトの持つマークに渡されたお守りがその力を発揮する。

 

『……! 『ファーラの力』か!?』

「あの子が、わたしのことを『ママ』って呼ぶなら……絶対に、守ってみせる!!」

 

 叫びと共に、フェイトの胸に下げたリングが光を発し、完全に止められていたバルディッシュが息を吹き返したように薬莢音を響かせる。コピーの持つレヴァンティンが悲鳴を上げ、更なる欠片をこぼすが、そんなことを気にする余裕などなかった。

 

「撃ち抜け、雷刃!」

『『華炎』!』

 

 二人の絶叫を最後に、視界が白く染まり、音が消えた。この場にいたすべての者がそう感じた次の瞬間、溜めこまれたものを解放するかのように、轟音が響き、爆風が吹きすさぶ。

 そのすべてが過ぎ去ったあとに残されたのは、轟音や爆風に翻弄されグロッキーになった少女と、街を抉るようにその存在を主張する赤熱した大きなクレーターであった。

 

「ふ、二人とも……無事?」

「わたしは大丈……ぶ、です。ヴィヴィオさんは……」

「な、なんとか……」

 

 三人は、お互いの無事とコピーがいない事を確認すると同時に座り込んでしまった。幸いなことに外傷はそれほどでもないので、疲労が原因だろう。

 本当ならこのまま休みたいところであったが、残念なことに、三人に休む時間は与えられなかった。

 

「! 何か近づいてくる」

「うぅ……もう少し休ませてくれたっていいのにぃ」

「……」

 

 フェイトの警告に対し泣き言をいうヴィヴィオであったが、隣のアインハルトは無言で立ち上がり構えを取るのを見て「流石アインハルトさん!」と感心しながらゆっくりと立ち上がる。ただ単にしゃべるのも億劫になっていただけあったのは、本人のためにも黙っておくほうがいいだろう。

 

「あれは?」

「……ガーゴイル、だね」

 

 そこに現れたのは二体のガーゴイル、ではなく、その上位種デスガーゴイルであった。ただしその違いが分かるものはこの場にいなかった。だがそんなことは問題無いと構えを取る二人に対し、フェイトは立ち上がることすらできなかった。

 

(まさか……こんなに早く!?)

 

 それは、限界を超えた強化の代償。前回の経験から筋肉痛ぐらいは覚悟していたが、これは想像をはるかに超えていた。感覚すら麻痺するほど壊れた体は、もはや立ち上がることもできない有様であった。

 もはや戦うこともできないと顔を青くするフェイトであったが、幸いなことにこの場で再び激戦が繰り広げられることは無かった。

 

「紫電一閃!」

「ラケーテンハンマー!」

「シグナム!」

「ヴィータさん!」

 

 上空から不意を突く形で急接近し、デスガーゴイルをそれぞれ一撃で仕留めたのは、ようやく駆けつけたシグナム達であった。

 

「無事か!?」

「うん、なんとか、一応ね……あ、この二人は私のことを助けてくれた人たちですから」

 

 構えを取る二人とは異なり、立ち上がることも出来なかったフェイトに顔色を悪くするシグナムであったが、本人の言葉にとりあえず顔色を取り戻す。

 

「そうか……ご助力、感謝します」

「いえ、結局有効打は加えられませんでしたし……」

 

 謙遜ととれる言葉に対し、そこに何かを悔やむような空気を感じたため、シグナムは続く言葉を飲み込み、話を変える。

 

「ところで、マーク……いや、今だけはシリウスだったか? 奴はどうした」

「まだ来てないですよ」

「ってことは、お前ら三人でアイツのコピーをやったのかよ!」

「マークが分かれる前に強化の術を残して行ってくれたから……それのおかげだよ」

 

 ヴィータの感嘆の声に、軽い否定の言葉を返すフェイトであったが、マークと言う存在が、たとえコピーであったとしてもそれだけで何とかなると思えない騎士たちには、簡単に流されてしまう。

 

「流石にこのまま戦闘は無理のようだな……一度帰還して、回復を行うべきだろう」

「そうだな……シャマルを帰すべきではなかったか?」

「結果論だろ? アイツのコピーが残っていたなら、この編成がベターだったのは間違いないんだし」

 

 軽く方針を話し合う騎士達であったが、ここでまた状況が一転する。

 

「間に合った……いや、間に合わなかったのか?」

「なっ!?」

「さっきの!?」

「マーク!」

「おせーよ!」

 

 つい先ほど倒したはずの存在が、再び目の前に現れたことに動揺し構えるヴィヴィオとアインハルトであったが、フェイトとヴィータの反応にさらに混乱してしまう。

 

「あ~、こいつはオリジナルだ。ニセモンにその槍は持てねーだろ」

「闇の書が神器をコピーできるような品なら、流石に現物をこの世に残していないさ」

 

 ヴィータのフォローにさりげなく危険な言葉で返すマークであったが、その言葉よりマークの持つ槍の方が気になったようであった。

 

「その槍は……」

「その前に、誰だお前ら」

 

 マークのわずかに警戒が含まれた質問を遮られてしまうも、それも仕方ないことだろうと納得し、自己紹介をする。

 

「信じてもらえないかもしれませんが……今この世界より、十年ほど未来から来たものです。アインハルトと呼んでいただければ」

「同じくヴィヴィオです」

「…………」

 

 沈黙がその場を支配するが、その沈黙はただ痛ましいものを見るものだけではなかった。

 

「そう言えばあの子、わたしのこと『フェイトママ』って……未来から来たって意味だったんだ」

「いや、流石にこれはねーだろ」

「まあ、本当のことを話す気が無いと言う意思表示だろう」

 

 あれはそういう意味だったのかと納得してしまうフェイトに、言い訳としてもあり得ないと呆れるヴィータ、自分なりの解釈をするシグナムと、とりあえず反応は判れた。だが、そんな周囲の反応を無視してお互いの目を見続けるアインハルトとマークには、全く違う緊張感に包まれていた。

 

(少なくとも、ここで嘘をついて警戒されるわけにはいかない……せめて、言葉ではないところで、信じてほしいと主張しないと!)

 

 先程のコピーの実力を見た以上、間違っても敵対だけは避けたいというのは、誰もが思う感想だろう。下手に言い訳を重ねても嘘っぽくなってしまうと考えるアインハルトは、目をそらさない事でそう主張する。そして、その意図は正しくマークに伝わっていた。

 

(……未来から、か)

 

 ヴィータの言うとおり、言い訳としては下の下だろう。しかし、突拍子の無いことを言ってマークたちを惑わすにしては、この理由はピンポイント過ぎた。

 

「……信じよう。だが、どんな理由でこの時代に来たのかは、また後に話して欲しい」

「はい、わかりました」

「おい! 本当にこんなの信用出来んのか!?」

 

 マークの決断にほっと息をつくアインハルトであったが、これにヴィータが噛み付く。いや、今回はマークに対して噛み付いたのではなく、慎重を喫するためにあえて反対意見を言った、というのが正しいだろう。

 

「流石に背中を任せるほどではないが、肩を合わせるぐらいはかまわないだろう。そんなことより、今は時間が惜しい」

「敵のレベルは、隣を警戒しながら戦えるレベルを超えているぞ?」

「そのお隣さんも、隣を狙いながら敵と戦えるレベルには達していないさ」

 

 元々本気で反対していたわけではない二人は、肩をすくめるようにして了承の意を示す。そんな様をしり目に、マークはフェイトの体を診るため隣に膝をつく。

 

「……すぐには治療できないな。人の目が多すぎる」

「覚悟はしてたから。大丈夫、痛みは無いよ」

「麻痺してるだけだ」

 

 診断結果は『継戦は不可能』であったが、アースラに返すことはできないと判断する。万が一ではあるが、容体が急変した時に傍にいるためだ。

 

「結構集まってるな……現状は?」

『まず、すずかちゃんとユーノ君が鎧と魔導師と戦闘中で、クロノ君が……じゃなくて、シロノ君がシリウス君の連れてきた子を連れて戦場に入って、敵と思われる存在に遭遇。なのはちゃんとはやてちゃんがそれぞれのコピーとピンクの子と戦ってる』

 

 マークの現状確認にエイミィが応える。ちなみに、現在倒した欠片は守護騎士たちが六つ、フェイトが一つである。

 

「あ、俺がここに来るまでに二つ潰したから、全部で九つ終わったことになるな」

「じゃあ、確認できたのは十四個か……」

「あと倒してないのが一個、これは放っといていい奴を確認した」

 

 つまり、残りの敵戦力は管制代理と鎧と十個の欠片という事である。

 

「……一度確認できているものを片付けるか。三組に分かれて増援を」

「いや、ハヤテと合流して終わらせよう」

「え? すずかやクロノは!?」

 

 シグナムの提案を跳ね除けようとするマークに、フェイトが待ったをかける。だが、マークはあくまでこの案を推し進めようと言葉を連ねる。

 

「こちらの余力が少ない。すべて倒さずに、大将を狙うべきだろう」

「そうかもしれないが……」

「相手にまともに戦う気があるなら、わざわざ仕切り直すこともしなかっただろ? 今回の戦いは、管制代理とハヤテの戦い以外はおまけにすぎんよ」

「おまけって……」

 

 マークの言い様に苦い顔をする一同であったが、確かに納得できる部分もあった。そうであるなら本命を終わらせることこそが、今戦っている者たちへの最大のフォローとなるのも道理である。

 

「わかった。では……」

「ああ、ハヤテとナノハの処へ行くぞ!」

 

 掛け声とともに一斉に空に飛び立つみんなに遅れるのは二人、マークとフェイトであった。

 

「わたしは……」

「見学だな。ほら、行くぞ」

「ひゃっ!」

 

 フェイトの傷付いた体を痛めないように、マークはそっと抱きかかえ舞い上がる。これからしばらく足手まといになるからと固辞するフェイトと、現地で見たほうが学べることも多いとゴリ押しするマークとのやり取りが続くことになる。

 

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