魔法少女リリカルなのは 炎の紋章を持つもの   作:コウチャカ・デン

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第7話 「接触~月村家~」

「……まあ、ここに至る過程はよくわかったわ。とりあえず妹を守ってくれてありがとう」

「どういたしまして。こちらとしてはもう1度話し合う気になってありがとうと言っておこうか」

 

 マークは少女に連れられていつか見た大きな門をくぐり、その屋敷の一室に招かれていた。そして少女がおそらく家人であるだろう5人にいきさつを説明している間、ゆっくりお茶をしていたわけだが……

 

「まあなんていうか……敵対する気はないのよね?」

「ま、好んで戦おうとは思ってないがね」

 

 前回のことがあってか、はっきりかなり警戒されているのでマークにとっては居心地が悪い。

 

(いや、言うほどでもないか?)

 

 心地いい環境とは言えないが、そこまで忌避するほどではない気もする。この矛盾した考えが通用するのも、マークがそれなりに長い時を生きていたからであるといえるだろう。

 

「俺の要求はあまり変わらんよ。相互不干渉ってだけだ」

「あなた以外の組織も動いているんでしょう?それなのに不干渉は厳しいわね」

 

 確かに管理局という組織も動いている以上、個人で不干渉といっても無理があるように聞こえるだろう。だが彼らには彼らの理屈がある。

 

「あっちはあっちで、俺以上に不干渉であろうとするだろうさ。現場の裁量といっても限界がある」

 

 あくまでフェイトから聞いた話ではあるが、問題はないだろう。もしかしたら異能を正しく理解するこの一族が話を持ちかければ答えることもあるだろうが、管理局側から接触することはまずないだろう。

 

「そう……まあ、所属不明のあなたに言ってもしょうがないか。でも全くの不干渉っていうのはいただけないわ」

「なんでさ」

「簡単よ、お情けをかけられたみたいで気分が悪いの。こちらとしては危険物を排除してもらうんだから、それ相応の対価を払わないと気が済まないわ」

 

 一瞬呆気にとられたマークは、次の瞬間には思わずといった感じで笑みをこぼす。

 

「ククッ、損な性格だな」

「この国には『損して得をとれ』なんて言葉もあるのよ」

「なるほど、真理だな」

 

 そうしてひとしきり笑った後、改めて向かい合う。

 

「それじゃあ自己紹介と行こうか。俺はマーク、元傭兵ってとこかな」

「やっと名前の交換ができるのね……月村忍よ。夜の一族、わかりやすく言えば吸血鬼よ」

 

 忍が投げつけた爆弾に一瞬マークは眉をひそめたが、それだけで周りにいる人たちに次ぎを促す。

 

「いや待て、今のは流せるとこじゃないだろ!?」

「……先に紹介を終わらせてくれ」

 

 忍と名乗った女性の隣にいる男からツッコミが入るが、それすらも流す。

 

「……小太刀二刀御神流剣士、高町恭也」

「月村忍の妹で、すずかです」

「メイドのノエル・K・エーアリヒカイトと申します」

「同じく、ファリン・K・エーアリヒカイトです」

 

 それを聞き終えたマークは、それぞれの名前を呟き記憶しているようだ。

 

「よし、覚えた。……じゃあ改めて、マークだ。ナーガ一族、ハーフではあるがマムクートだ」

 

 再び名乗りだしたのを、何事かと思っていた5人だが、聞き覚えのない単語が出てきてさらに首をかしげることになった。マークはそれを見て満足げな笑みを浮かべる。

 

「ま、スズカも言っていただろ? 俺は『次元漂流者』だって。ならこういうことになることも考慮に入れておくべきだったな」

「ひょっとして……吸血鬼って聞いたことないの!?」

 

 この世界においては割とメジャーな存在である『吸血鬼』も、異界においてその名が知られているとは限らない。逆に、マークにとっては割と知られている『マムクート』という存在を彼女たちは知らないのだ。

 

「説明……いる?」

「いらん。俺も説明する気はないし」

 

 忍たちにとって『吸血鬼』が特別な意味を持つように、マークにとって『マムクート』は特別なのだ。マークには自分の『力』を隠す気はないが、何より今後使う予定のない力だ。積極的に広める気もなかった。

 

「そっちが名乗ったから名乗っただけだし、懇切丁寧に語るつもりはない」

「そう? 残念ね」

 

 そういって肩をすくめる忍に対して、とりあえず要求するものを考える。

 

「ま、名前の交換は終わりだ。そして対価のことだが……とりあえず寝床と……換金を頼みたい」

 

 おそらく管理局による監視がある今、フェイト達のもとへ帰るわけにはいかないのだ。あまり関係がこじれないように、同時に深くならないように手を貸してもらうことにする。

 

「了解! で、換金するものは?」

 

 そう尋ねられてマークが出したのは、友から受け取った財宝の1つ『赤の宝玉』だ。フェイト達と買い物に行ったときに換金しようとしたのだが、身元を保証するものがなく、お金に換えられなかったのだ。

 

「ずいぶんと大きいわね~……ってか、どこから出したの?」

「秘密」

 

 大体赤子の頭程の大きさの宝玉を預かりながら、忍は呆れたような声を出す。てっきり指輪サイズのものが出てくると思っていたが故の発言だ。

 

「それじゃあ、ほかに必要なものができたらいつでも言いに来てちょうだい。ノエル、彼に部屋を用意してあげて」

「はい、こちらになります、マーク様」

「呼び捨てで構わんよ」

 

 そういいながら部屋を出て行った二人の後を、すずかが追っていく。おそらく改めてお礼を言ったり、聞いておきたいことがあるのだろう。

 

「なんだかあっけなく終わったな……信用していいのか?」

「いいんじゃない? そりゃ打算とかいろいろあったんだろうけど、すずかを助けてもらったわけだし……それに前回、向こうから攻撃してこなかったしね」

 

 疑問を投げかけた恭也だって、進んで疑いたいと思っているわけではない。だが2人ともが不用意に信用しては、万一の際に動けなくなってしまうがゆえに、そういった役割を果たしているのだ。

 

「まあ、しばらく滞在するみたいだし、その間に見極めるなり仲良くなればいいじゃない。かかわるなってことは、かかわったらなんだかんだで手を出しちゃうからでしょ?」

「そこまで言ってしまうのも極端じゃないか……」

 

 そういいながらも、文句を言いながら手を貸すマークの姿が想像できるのだから、恭也もなかなかお人よしといえるだろう。

 

 

 そんな会話が交わされていることを知ってか知らずか、マークはノエルに案内を受けながら、これからの指針を考える。

 

(かかわる人も増えてきたし、そろそろ最低限の決まりごとぐらい作っておくかな?)

 

 とりあえずではあるが、ここにきてマークは自分のあり方を自分の中で明確にする。

 

1つ、決して人を殺さないこと。

 戦士ではない自分を探す以上、むやみに命を狩るようなことはしない事とする。

 

1つ、決して誰かに隷属しないこと。

 自身の幸せを見つけるため、誰かに従って道を決めるようなことはしない事とする。

 

1つ、決して誰かを隷属させないこと。

 自身の幸せを、誰かの不幸の上に立てるようなことは絶対にしない。上のあり方と合わせて、万人を対等に扱う事とする。

 

1つ、上の3つの決まりは絶対のものとしない。

 どんなことにも例外はある。極端なこと『世界を滅ぼすことが幸せ』などとのたまう様な奴まで気にする必要はないという事だ。

 

(ま、とりあえずはこんなとこか……思うところがあったら変えていこう)

 

 ここで注意すべきは『こうあるべき』と決めつけて自分の可能性つぶしてしまうことだ。それさえしなければどうにだってなるだろうと、そうマークは考えていた。自分がすでにある可能性をつぶそうとしてしまっていることに気付かず……

 

 

「だめだよ!管理局まで出てきたんじゃ……」

 

 なんとか追跡をまいてホームに帰ってから、どれだけの時間がたったであろうか。アルフは絶望的な状況だと感じていた。

 

「もうどうにもならないよ……」

 

 確かに良い状況ではないが、本来であるならここまで追い込まれるとは思っていなかった。

 

(……確かに期待はするなって言ってたけど、本当に音沙汰ないなんて!)

 

 それはこの世界にきてから共に活動し始めた青年の存在だ。確かに共に行動をしていたが、完全に信用まではしていなかった。いつ敵対しても大丈夫なように、マークの能力が明らかになるたびに仮想敵としてシミレーションしてきたのだ。

 

(過小評価しないようにかなり強めに設定していたとはいえ、結果はほぼ全敗)

 

 そのマークが、現在連絡が取れない状況にあるのだ。管理局に負けただけならまだいい。だが最悪のケースとして、フェイト達の情報を売った可能性もあるのだ。

 

「大丈夫、だよ」

「大丈夫じゃないよ!ここだっていつまでばれずにいられるか……」

 

 だがフェイトはそれほど深刻には考えていないようだった。それが単に世間知らずなだけなのか、マークのことを信じているからなのか、はたまた別の理由があるのかまでは、使い魔であるアルフにもわからなかった。

 

「あの鬼ばば……あんたのかーさんだって、フェイトにひどいことばっかする!」

 

 現状の不安を無意識のうちに別の形にしようとしているのか、アルフの矛先は今回の件の首謀者に向かう。

 

「あんな奴のために、もうこれ以上……」

「母さんのこと、悪く言わないで……」

 

 だがそれはフェイトにとって悲しいことだ。2人ともフェイトにとってかけがえのない人たちなのだから。

 

「言うよ!だってあたし、フェイトが心配だ……」

 

 だがアルフは止まらない。

 

「フェイトはあたしのご主人様で、あたしにとっては、世界中のだれよりも大切な子なんだよ……」

 

 そこにどれほどの想いが込められているのか……

 

「群れから捨てられたあたしを拾ってくれて、使い魔にしてくれて、ずーっと優しくしてくれた」

 

 第三者ですら容易に感じるほどの想い……

 

「フェイトが泣くのも悲しむのも、あたし、嫌なんだよ!」

「ごめんね、アルフ……」

 

 それでも少女には届かない。

 

「だけど、それでも!私は母さんの願いを叶えてあげたいの……」

 

 アルフがフェイトのことを想うように、フェイトもまた母のことを想い、決意を固めていた……ただそれだけのこと。

 

 

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