魔法少女リリカルなのは 炎の紋章を持つもの   作:コウチャカ・デン

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第79話 「魔物退治」

「いや~、久しぶりに楽しい仕事でしたよ!」

「フェイトのデバイスを弄った方? それとも新デバイスの作成?」

「両方です!」

 

 最近本局に来ることも増えてきたマークとフェイトは、本局第4技術部にて新造・改造された新たなデバイスを受け取りに来ていた。

 

「まずはマークさんです。依頼通りの魔力剣ですが、デバイスの全能力を刃の生成につぎ込んだものになります」

「ん、確かに受け取った」

 

 そもそも、無数の武器を持つマークにとって新しい武器などほぼ無意味ではあるのだが、それでも決して壊れない武器という響きには、少なからぬ興味があった。

 そこへ出てきたのが、フェイトのバルディッシュ・ザンバーである。

 

「魔力の消費を抑えるため、三段階に分けた強度設定をしています。一応、それ以外に制限を取っ払ったモードも用意していますが……本気で制限なく魔力を喰われますから、絶対に使用しないでくださいね?」

「ならなぜそんな機能付けた……」

「いやぁ……憧れません? 『リミッター解除!』とか」

「軍師の立場からすれば、そんな機能に憧れを抱く余地は無いな」

 

 指揮官からすればそんな振れ幅の大きな戦力より、より安定した戦力の方が扱いやすいだろう。

 あくまでロマンを理解しようとしないマークの態度に、マリエルは少しばかり肩を落とす。

 だが、隣にいたフェイトは違った。マークの手前、口にこそしなかったが、一時的にでも限界を超える仕様はとても魅力的に見えたのだ。

 

「ちなみに銘はクラウ・ソラス……光の剣って意味らしいですよ」

「ふ~ん、クラウねぇ……」

 

 残念ながら由来を知らない二人は、その銘に何の感慨も持つことは無かった。

 

「そして、こっちが改造したバルディッシュね」

「はい、ありがとうございます」

「ザンバーフォームを削除して、ブレイドフォームを登録……で、よかったよね?」

 

 マリエルの確認に、フェイトは軽く頷く。

 少し大きめの片手剣程度になったブレイドは、以前マークに指摘された過剰な重量を修正した結果である。

 

「扱いやすさはかなり向上したと思うけど、本当によかったの?」

 

 マリエルの心配は、決して的外れではないだろう。

 もともとザンバーフォームは、フェイトの軽くなりがちな攻撃をカバーするためのフォームだったのだ。

 そのフォームを残さなくて本当によかったのかと心配するマリエルに、フェイトは笑みを浮かべながら答える。

 

「大丈夫ですよ。そっちの対策は考えていますから」

「へぇ、それは初耳なんだが?」

「マークにもまだ内緒だよ。この後行く魔物討伐の時を期待しててね?」

 

 人差し指を立ててほほ笑むフェイトに、マークはかなわないと言わんばかりに両手を上げる。

 

「それじゃあ説明を続けるよ?」

「うん、お願い」

 

 念のためマリエルは一言はさみ、解説を続ける。

 

「剣身を小さくした結果、消費魔力が32%削減されて、強度が17%向上しています。また、マークさんの持参した剣を参考に刃の構造に変更を加えた為、同形状のデバイスと比較して22%の攻撃力の上昇が見込まれますが、ザンバーフォームと比べれば23%の低下となります。剣身の構成時間は41%短縮され、重量は62%の軽量化が……」

「……」

 

 フェイトの手元にはスペックシートが表示され、そこに延々と記された表示は変更前と変更後、さらにいくつかの改造案まで書かれており、もはや混沌としたものになっていた。

 

「マリエル」

「その場合さらに14%の……はい?」

「ごめん、わからん」

 

 隣で必死に理解しようとして目を回しているフェイトの代わりに、早々に考えることを辞めたマークがそう答える。

 

「一言でまとめて?」

「……強化されましたが、その分クセが強くなりました」

「それで十分だ」

 

 全力を投入して強化した機体について、結果としてほとんど語れなかったことに肩を落とす製作者だったが、それでめげるマリエルではなかった。

 

「ふ、ふふふ……いいもん。まだなのはちゃんに頼まれたミーティアモードの計画があるもん……」

「マ、マリエルさん?」

「そう! 魔王戦でマークさんが使用した至高の光『アーリアル』をほぼ同時展開した『流星』を、ミッドの技術で再現する計画ッ!」

「じゃあ、そろそろお暇させてもらうよ」

「え、マーク!?」

 

 何やら危険なスイッチが入ってしまったと察したマークが、フェイトを連れ一目散に退出する。

 退出の間際、何か後ろから声が聞こえたような気もしたが、勘違いという事にした。

 

「……よかったのかな?」

「……今度、六課の隊員にデバイスの改造を進めてみよう」

 

 後日生け贄を出すと言うマークにフェイトは苦笑を返すが、だからと言って止めるようなことはしなかった。

 流石に、進んで話を聞きたいとは思えなかったからだろう。

 

「まあそっちの話は置いておいて……この後の事は大丈夫か?」

「うん、マークが準備している間に、少し慣らしておくから」

「わかった、じゃあ後で」

 

 受け取ったばかりのバルディッシュをかざすフェイトに、マークも軽く手を上げこの場を後にする。

 その数時間後、マーク達はとある管理世界へと訪れていた。

 

「えっと、わたしってここにいて大丈夫なんですか?」

「……管理局の規則的には、ちょっと危ないかもしれないわね」

「魔物対策は俺とグレアムが全権持ってるから、まあ大丈夫だろう」

 

 落ち着かないすずかの問いにシャマルが難しい顔で答え、それをマークが否定する。

 

「……なんで俺こんなトコに呼ばれたんすか?」

「えっと、副隊長だから?」

 

 その後ろで、ロイド隊長に今回の現場を押し付けられたティーダが嘆き、フェイトがそれを慰めていた。

 なぜこんなでこぼこな五人で行動しているのかといえば、先日発見された魔物の調査のためである。

 

「そもそも、ゼスト隊が調査したのに何をしろってんですか?」

「え、そこから?」

 

 ティーダの疑問に、マークは素直に驚きを表す。どうやらどこかで情報が止まってしまっていたらしく、ティーダは今回の調査を行う理由を聞いていないようだった。

 

「まずゼスト隊だが、魔物の存在を改めて確認するも、途中で撤退している」

「え、まさか継戦不能者が……!」

「いや、魔物の動きが不可解で、念のためといった面が強い」

 

 魔物が奥へ奥へと誘導するように配置されているように感じられ、専門家であるマークに相談するため引いたとのことだ。

 そのままマークが調査を引き継ぐことになったが、別にゼスト隊が敗北したわけではない。

 

「……厄介そうな敵ですね」

「まあどんな群れにだってボスはいるし、そこは気にするな。で、調査内容は群れの規模とその脅威度、そして他の群れの有無だ」

 

 わかってはいたが、やはり厄介である今回の任務にティーダは思わずため息をつく。

 

「それで、なんでこんなに非正規の人員が多いんですかぁ」

「建前としては、フェイトとスズカは俺が直接鍛えていることになっているからで、シャマルは前線に送れる補助系の中で一番頑丈だったから」

「本音は?」

「本隊から人員の選定するのが面倒だった」

「マークさん……」

 

 本来ならグレアムが部隊一つ用意するはずだったのだが、正規局員に死者が出ていることを理由に、上層部から制限がかけられてしまったのだ。

 もちろん、そんな生々しい理由をマークは口にしなかったが……

 あまりにもあんまりな理由にティーダが崩れ落ちるが、マークはそれを無視して各々に役割を振る。

 

「まず大前提として、指揮は俺がとる」

「まあ、そうよだね」

「前衛は俺とスズカで、中衛がフェイトとティーダ。後衛はシャマル」

「了解です」

「中衛と後衛を分けたが、奇襲も考えられるし実際は三人で固まって動いてくれ」

「分かったわ」

 

 その後もいくらか陣形と戦術を確認し、ティーダが立ち直ったのを見計らい今回の本題を確認する。

 

「まずフェイトは新しく取得したスキルの確認」

「『疾風迅雷』と、切り札だね」

「期待しているよ。そしてスズカもスキルの確認だが、それ以上に魔物を殺れるかの確認だな」

「……はい」

「まあ、害獣退治は少しずつ慣らしていってくれ」

 

 フェイトについては全く心配していないマークであったが、問題はすずかである。

 

(スズカの想いが俺の予想通りなら、命を奪う事が恐ろしいんじゃなくて、殺した結果どう思われるかが怖いってことになるんだが……)

 

 自分が人間ではないことに強いコンプレックスを抱くすずかは、自身の抱く人間像から外れることを恐れていると、マークは予想したのだ。

 

(そう言う意味では、俺との出会いはスズカにとって運が悪かったんだろうな)

 

 マークが居なければ、すずかは戦場に立つ術を持つことなく、なのは達の無事を祈るだけの生活を送っていただろう。

 だがすずかはマークと出会い、戦う術を手に入れてしまった。

 そうなった以上、戦わないと言う選択を取ることはできないのだが、だからと言って戦ってしまえば自身の考える人間から外れてしまう。

 すずかは今、そんな矛盾の中で苦しんでいるわけだが……

 

(つまり、戦う事が人として正しいと思わせればいいわけだ)

 

 聞く人が聞けば、眉をひそめる程度では済まない考えだが、戦わないという選択ができないすずかにとって、これが最善であるとマークは確信していた。

 

「……名目は調査だが、できれば殲滅しておきたい」

「被害も出てますし、それに越したことはないですけど……」

 

 その一言に、すずかがわずかに肩を震わせた。マークだけではなく、管理局の正式な局員にとっても、魔物は滅ぼすべきと認識していると知ったからだ。

 つまり人にとして、魔物を殺すことは正しい。そうすずかが思えばとりあえずの目標は達成である。

 この程度ですずかの意識が完全に変わるとは思えないが、それでもきっかけにはなるはずだ。

 とはいえ、今回の任務をすずかのために費やすわけにもいかず、マークは合図をだして魔物が現れたという森へと足を踏み入れた。

 

 

 

「ふむ、今のところは雑魚ばかりだな」

「合計十三体。……その全てが、魔導師ランクC相当ですね」

 

 マークの端的過ぎる評価を、ティーダが補足する。

 

「部隊がちゃんと機能していれば、全く危険を感じないレベルですね」

「単体としてもあれだけど、連携とか一切ないし」

「ちゃんと立ち回れば、一人でもなんとかなりますね」

 

 もちろん、早期発見と先手を取る事を徹底した結果ではあるが、それにしたって手ごたえがなさ過ぎた。

 

「じゃあそろそろスキルの方を試してみようか?」

「うん」

「頑張ります」

 

 フェイトとすずかがなお一層の気合を入れ、それに合わせるかのように四体のスケルトンが現れる。

 だが、そのことに今さら驚くような者はいない。索敵能力はともかく、戦場におけるマークの状況把握能力は他の追随を許すものではないと、皆が理解させられていたからだ。

 

「まずはわたしが!」

 

 すずかは宣言し、数秒と駆けることなく先頭に立つスケルトンに肉薄する。

 その段階に至り、ようやくこちらに気付いたスケルトンであったがそれでは遅すぎる。

 

「はっ!」

 

 鋭い呼気と共に放たれた一閃はスケルトンの持っていた剣を叩き、根元から両断してのけた。

 それは理想的な『武器破壊』の妙技。格下が相手とはいえ、一撃で武器を破壊して見せたことからその技能を完全に習得したと証明して見せたのだ。

 もちろん、それだけで終わるはずもなく、武器を失ったスケルトンにすずかは追撃を加え、その首を切り落とす。

 

「次はわたしだよ」

 

 瞬く間に一体のスケルトンを倒したすずかに残りの三体が迫ろうとし、それもフェイトによって阻まれる。

 いや、阻むなんてものではない。高速で飛来する閃光が奔り、あっという間に二体のスケルトンがただの骨に還される。

 その閃光となったフェイトは、まさに『疾風迅雷』。技後硬直すら無視した一瞬二撃は、まだ無理だろうと思っていたマークの想像以上であった。

 

「ほう……」

 

 思わず感嘆の声を上げるマークも、新造デバイスであるクラウ・ソラスで残った一体を頭頂部から縦に両断する。

 

「いやぁ、ここまで来ると敵に同情しそうになりますね」

「結局、相手に一度も攻撃させなかったものね」

 

 いくら格下とはいえ、ただの一度も武器を振るう事すら許さないなど、そうできる事ではない。

 いくらスペックが高かろうが、相手に時間を与えないことなど不可能なのだから。

 

「ほら、行くぞー」

 

 そんなとんでもないことをやってのけたという自覚が全く見られない三人に呼ばれ、ティーダとシャマルもさらに奥へと進む。

 その途中で出てきた下級魔物のそのほとんどが、まともに戦いになる前に屠られることになったのは、ごく当然の結末だろう。

 だが、この程度で終わるようなら正規部隊から被害が出る筈もない。

 一行は、更なる緊張感を持って進んでいった。

 

「モーサドゥーグがまだ難しいかな」

「……すみません」

 

 スケルトン討伐数が二十体を超えてから、次第にスケルトン以外の魔物が出始めたのだが、その中でも魔犬の相手にすずかが躊躇を見せてしまったのだ。

 幸いけがは無かったが、だからと言ってこのまま進むわけにもいかなかくなってしまう。

 

「……もう大丈夫です。次はやれます」

「……まあ、スズカがそう言うんなら試してみるか」

 

 少しの間目を閉じ、瞑想をしていたすずかが覚悟を決めたのかそう断言する。

 とはいえ、マークも全面的に信用したわけではない。もとより戦えなかったからこそ『武器破壊』を習得したのだ。

 たかだか数秒で意識改革ができるなどとは考えられなかった。

 

「あと、そろそろフェイトの切り札も実践してみるか?」

「まだ大丈夫だよ?」

 

 いつでも撤退できるようにマークが提案したが、それにフェイトは首をかしげる。

 

「……確かに切り札を切らなくても対応できるだろうが、その前に試しておく必要があるだろ?」

「あ、うん、そうだったね」

 

 しかるべき時に使ってこその切り札。そう言う認識があったフェイトは、実戦であらかじめ試してみるという考えがすっかり抜けてしまっていたようだ。

 練習では出来ていたようだし、それで十分と考えてしまったのもわからないではなかった。

 そうして次が最後かと思いながら進む五人の前に、おそらくは群れのボスと思われる個体が現れる。

 

「エルダーバールだな」

 

 それはサイクロプス、デスガーゴイルなどと同クラスの上級魔物の一体。能力的には魔導師ランクAAに届くだろう強力な個体であるが、それ以上に問題があった。

 

「……!」

「く、蜘蛛っ!」

 

 そう、エルダーバールは、巨大な毒蜘蛛であったのだ。

 見慣れているマークはともかく、他の四人にとってはトラウマものの巨大さで、その姿は背筋を凍らせた。

 

(ああ、そう言えば虫を見る機会も少なくなったよなぁ)

 

 マークから見れば過剰なまでに清潔さを求めた世界は、このような生き物を見る機会も奪っていた。

 その結果虫に対する耐性が付くこともなく、その上でエルダーバールなど見てしまえば、硬直しても仕方がないことだろう。

 生活環境が違うのだから仕方がないと、そう思うマークであったが、思いのほか復帰が早いメンバーがいた。

 

「うっわ、気持ち悪いっすね……」

「ティーダ、大丈夫なのか?」

「大丈夫じゃないですけど、大丈夫っす」

「何だそれは……」

 

 微妙に腰が引けながらも戦う気のティーダに感化されたのか、残った三人も何とか戦える状態にまで戻ってくる。

 

「できれば触りたくないね」

「できればじゃなくて、絶対触りたくないよ……」

「私は援護だけでいいですよね?」

 

 そんな三人を見て苦笑し合う男性陣であったが、すぐにその意識を戦闘へと切り替える。

 

「さて、あの一体だけなら問題ないんだが……」

「え、まさか……」

 

 仮にも、武装隊を二度も退けた群れのボスなのだ。何の策もなく彼らの前に出てきたわけではなかった。

 四方八方から木々を揺らす音が聞こえ、そこからバールが大量に現れたのだ。

 ようやく動けるようになった一同が再び固まるのに、マークは軽くため息をつく。

 

「防御が低いすずかは下がらせたかったんだが……まあ、怪我をするのも経験の内かな?」

「せ、戦闘を行う以上、怪我をするのは仕方ないと思うけど、あれは嫌です!」

「じゃあ、頑張って躱せ」

 

 言われるまでもなく、すずかは回避に死力を尽くすだろう。生きるか死ぬかの恐怖よりより、巨大蜘蛛への嫌悪感の方が優先されるのだから、やはり戦いへの適正は高いのだろうとマークは思う。

 

「フェイトはさっきの話どおり切り札を」

「わかった!」

「シャマルは魔物の足止めを最優先」

「はい!」

「ティーダはスズカへ向かう魔物に攻撃して、意識をそらせ」

「了解!」

 

 返事こそしっかりしたものだが、まだ動きが固い。嫌悪感はもちろん、不利な状況に追い込まれたという緊張感がかなり影響しているのだろう。

 故に、マークは軍師として叫ぶ。

 

「いかに策らしきものを行おうが、所詮は本能を優先させた蟲にすぎん! やるぞ!」

 

 ただ一言。『七色の叫び』と称される神軍師の言葉により、フェイト達の体に力が宿る。

 その後押しに発射されたティーダの弾丸が、バールに突き刺さり、シャマルが発動したバインドがその巨体を縫い付ける。

 二人の攻撃により、魔物たちの意識がティーダたちに向かったのを確認したすずかは、攻撃より回避を意識した一撃離脱を繰り返す。

 それらを確認し、フェイトは事前に言われた通りに切り札を発動した。

 

「オーバードライブッ!」

 

 あくまで気合を入れるための一言であったが、その前後の違いは歴然である。

 

「強化魔法!?」

「いえ、このクラスの強化なんて……!」

 

 驚愕するティーダとシャマルであったが、それも当然だろう。

 この強化は、ただの強化ではない。以前マークのコピーと戦った際に発動したエーギルによる強化を、任意で発動できるようにしたものなのだ。

 一時的とはいえ、人類トップクラスの力を手に入れたフェイトは、プラズマランサーの一撃でバールを確実に仕留めることを可能としていた。

 否、たとえエルダーバールが相手でも、今のフェイトならば一撃で沈める事が可能だろう。

 

「これはまた……」

 

 フェイトの切り札を複雑な視線で眺めながら、マークはエルダーバールの爪をクラウ・ソラスで弾き、返す刃でその首を切り落とす。

 残ったバールは所詮下級魔物で、正直マークが居なくても完封できるのだが、今回は手出しを控えるどころか、むしろ全力で残った敵も切り伏せる。

 そんなことより、問題はフェイトが行ったエーギル操作である。

 

(理論を知らずに、感覚だけで行うとは恐れ入ったが……これは不味いな)

 

 エーギルというものが生命力である以上、それがどれほど危険な間のかは理解できると思う。

 だから、フェイトの切り札は浅慮という他無く、だが、他のどんなものより強力であった。

 

「……まあ、文字通り命を賭けないと使えないわけだが」

 

 今はまだ、マークの創造した肉体がその負担を優先的に受けているから問題ないが、一線を超えた瞬間にフェイトの命を蝕むだろう。

 後で切り札の使用を厳禁するとフェイトに告げることを決め、最後の大蜘蛛を斬り捨てる。

 わずか数分で二十を超える蜘蛛を討ち果たした一同であったが、マークにとって本当に大変なのはここからであった。

 

「あう、あう、クモの体液がぁ~」

「これはさすがに……」

「とりあえずここを離れましょう。ええ、一刻も早く」

「……」

 

 実体剣である『マーニ・カティ』で戦ったすずかが涙目で混乱し、シャマルは表情をひきつらせ、ティーダもこの場を離れることを提案する。

 フェイトに至っては途中から飛行魔法を使い、地面に降りることすらしなかった。

 

「まったく……とりあえず少し移動するぞ。すずかは一回『マーニ・カティ』をしまえ。そうすれば汚れは払える」

 

 自力で飛べる三人はともかく、おっかなびっくり蜘蛛の死骸を避けて歩こうとするすずかを抱えて、マークも翼を広げる。

 皆が落ち着いた後再会した調査では、魔物の姿は確認できず、ひとまずこの地の魔物を殲滅したと報告することになる。

 もちろん、一度発生した以上二度目が無いとは断言できないのだが、ひとまず今回の魔物発生事件は幕を下ろすことになった。

 

 

 

「さて、あっちの事件も無事終結したみたいだし、こっちも調査の再開と行きましょうか」

「本当にいいのか? ……レジアスからも調査を辞めるように忠告された。お前たちはここで抜けてもいいんだぞ」

「何を今さら。ここまで知って、後は人任せなんてできませんよ」

 

 マーク達が魔物の退治を終えてしばらくして、彼らはとある調査をすべくある場所へと集まっていた。

 その彼らとはゼスト隊……地上最強の呼び声高い面々であり、そして調査内容は、戦闘機人と呼ばれる違法研究についてである。

 

「ウチの娘たちも関係してくるし、ここで引くわけにはいかないわ」

「ふっ、この部隊には保身という言葉を知る者はおらんのか」

「筆頭の隊長がそれを言いますか?」

 

 これから危ない橋を渡る緊張感と、管理局局員としてあるべき正義感が混ざり合い、その意志を固めた一同は、これから行う事を再確認する。

 

「これから、管理局が関与していると思われる違法施設へ潜入する……余人に感知されぬよう、細心の注意を」

「了解です!」

 

 こうしてゼスト隊は、己の信ずる正義のために突き進む。その道の先に、深い闇が横たわると気付きながら……

 

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