「よ、妖艶だ……」
「きめーよオッサン」
「ふごっ……!」
「アラ、真夜ちゃんじゃなーい!」
「あ、師匠が長年片想いしてる人だー」
スクアーロに靴を履いていないからと、横抱きされながらヴァリアーの城に入ると、ある部屋に連れてこられた。
そこにはベルとレヴィ、少し離れた所にフランとルッスーリア、そして絢爛豪華なソファーに気怠げに座っているザンザスがいた。ヴァリアー幹部勢揃いだ。
「ゔお゙ぉぉい! ボス、侵入したのは10年前の真夜だったぞぉ!」
本人はそこまで声を上げていないと思っていそうだけど、充分大きな声でザンザスに話し掛けるから、ザンザスは案の定苛立ってスクアーロに手元にあったワインをぶん投げた。高そうなワインが割れ、芳醇な香りが漂う。
私はスクアーロに抱かれているから、彼の髪から伝って赤紫の滴がタオルに染み込む。いくら隊服を着ていたとしても中がバスタオル一枚だけじゃ寒いし、それに加えてワインが染みて冷たい。
もう一度お風呂に入りたくて、私はザンザスに話し掛ける。
「ザンザスさん、あの、説明する前にお風呂借りてもよろしいですか? お風呂上がった時にこちらに来てしまって、正直寒くて堪らないんです」
「好きにしろ」
……あれ? ザンザスが自分中心に動かない。
暴君なザンザスの事だから望み薄だったんだけど、許可が下り、そんなザンザスの様子に少し驚きながらも、私はスクアーロにそのまま浴室へ連れていってもらった。
「はぁ……温まる……」
「お゙ぉい、お前恥ずかしくねえのかぁ。女はこういうの嫌がるだろ」
スクアーロの広い胸に寄りかかりながら、喜びの吐息を漏らす。
数分前に浴室に到着したスクアーロは、私を置いて濡れたまま戻ろうとするから、そのままじゃ風邪を引いてしまうと身を案じ、半ば無理矢理一緒に入らせていた。
「別に、体を見られて恥ずかしがる年でもないですし」
「……そうかぁ」
あ、ちゃんと理解していないな。
男の裸体なんて前の世界で見慣れているから、そんなことに顔を赤く染めるわけがない。生娘じゃないし。あと体型維持する努力を惜しんでないから、自分はプロポーションがいいと自負している。だから別に見られても恥ずかしくない。
それに何よりも、スクアーロは私に何もしないと分かっている。これが一番大きいかな。
スクアーロの腕を私のお腹に回し、あちこちある傷痕を見つめる。
随分前に棄てた、左側の温もり。
私には当たり前のようにあるのに、彼にはそれがなく、寂しくなった。
スクアーロの方に振り向き、肉で塞がって丸くなっている切断部分にそっと触れる。
これは彼の誇りだから、悲しんではいけない。
私はそこに引き寄せられるように顔を近づけ、キスを一つ落とした。
「もしもの時、あなたの力になれるようあるものを授けました。あなたが強く願えば、それは現実となるでしょう」
腕に緩く頬擦りをして、スクアーロに微笑みかける。
今はまだ、分からなくていいから。その時になれば、彼は絶対に願ってくれる。
スクアーロは私を見ると、髪の中に指を通し親指で優しく頬を撫でた。
傲慢なところもあるけれど、紳士なところがあったり、面倒見がよく不器用な優しさを持っていて、ザンザスへの強い忠誠心にはとても惹かれる。
私は人間としてスクアーロが好きだ。
それから、彼は片腕で私を抱き上げて浴槽から出る。自分で出れるのにね。
でも機嫌良さそうだしこのまま委ねていようと決め、私はスクアーロの頭を撫でてからありがとうの意味を込めて頬擦りし、首に腕を回して大人しく抱えられていた。
私はどうしてこんなに主人公をお風呂に入らせているんだろう? 主人公はお風呂が好きなのか?