這い上がってくる快感を逃がすために腰をくねらせるけれど、それがザンザスを煽ったのか、更に強く快楽を与えてくる。
脇腹を指で優しく触られながら背中を舐め上げられ、嬌声と唾液が口から零れ落ちる。鼻にかかった私の声は悩ましげだ。
時折皎々たる月が私に覆い被さっているザンザスを後ろから照らし、見える少し焼けた男くさいその肉体美は艶かしく、口角を上げ笑う姿は妖しかった。
紀光さんに初めてを奪われてから、好きな人と行為をしたいという気持ちは消え去ってしまっていた。
だから、ザンザスに抱かれることに抵抗はない。
はず、だったんだけど……。
どうしてか、彼の顔が脳裏にちらつく。
馬鹿だな……。
私は、確かに彼が好きだ。もう何年も想っていて、それは愛に変わっている。でも、彼には想い人がいるんだ。
それに、もう失恋したから泣くという年じゃない。
想いを告げるという行動すらしていないのに勝手に悲しむとか、そんな愚かな女になりたくない。
でも彼が心を支配してしまい、集中することができなくなった。
フッと自嘲し、諦めてザンザスの腕を掴む。
「なんだ」
「ごめんなさい、そういう気分じゃなくなった」
「今更何言ってやがる」
「とにかく今日は無理」
「またあの男か」
「え……」
何で、ザンザスが知っているんだろう。
「知ってるぞ。十年後のお前と寝ていた時、たまに名前を呼んで謝りながら無様に泣いていたからな」
ザンザスに押し倒された時から、なんとなく分かっていた。
未来ではザンザスと関係を持っているって。
それに謝りながら泣いていたということは、恐らく未来の私は何もせずに傍観し続けたんだ。愛する人を見殺しにした罪悪感は、夢の中でも私を縛っていたんだろう。
それからこっちを見て鼻で笑ったザンザスは、もう興味をなくしたように「出てけ」と冷たく言い放ち、私は着替えて部屋を出た。
無理矢理襲うことだって出来たのに。彼はスクアーロと同じ不器用な優しさを持つ人だ。
廊下は少し寒いけれど、まだ熱を持った身体には丁度良い。
歩きながら熱を冷まし、これからどこの部屋を借りようか迷いながら曲がり角を曲がると、フランとばったり出くわす。
「あら、フラン」
「あ、真夜さんだ」
声がばっちり被り、少しの沈黙が訪れる。
「そういえばさっき言うの忘れちゃってたんですけど、真夜さんて十年も経ってるのに姿全然変わらないですねー。化け物ですかー?」
人の心情など一切気にせずに人を化け物扱いする無礼なフランは、やっぱり大物なんじゃないか?
いや、ただのアホなのかもしれないけど。
「化け物じゃないわ。私は、生粋の地球人よ」
「本当ですかねー」
訝しげに窺っていたフランは、何かの気配を察したように辺りを見回す。
これは……チェッカーフェイスの気配だろうか。