目を開けると、私は自室じゃなく暗闇に包まれた場所に立っていた。
「お目覚めかい?」
「っ……誰?」
振り向くと、そこには思いもよらない人物が装飾された椅子に腰掛けていた。
「チェ……ッカー、フェイス……?」
「私は君と会うのは初めてだが、君は私を知っているのだろう?」
「……まぁ、会ったことはないですが、知ってはいますね」
「ほう。状況がまだ把握出来てはいないが、冷静なようだね。やはり、君は優秀だ。望月真夜くん」
……はは、さすが最強で生粋の地球人。なんでもお見通しってわけね。
というか、これはどういうことなんだろうか。いきなり気絶して夢でも見ているのかな?
夢でもないと、漫画の中のキャラクターであるチェッカーフェイスが現れるわけがないし。
「……ここは、あなたの空間ですか?」
「いや、ここは君のいる地球と私達の地球の狭間。異次元であり、君の夢の中でもある」
異次元が私の夢とは、どういうことなんだろう。
けどやっぱりここが私の夢なら、私には主導権があり思うようにできるはず。
そう解釈し、私にコーヒー、チェッカーフェイスには紅茶が出てくるように想像する。
すると思ったとおりコーヒーと紅茶が現れ、それを一口飲んだけど、やはり夢のせいか味はなかった。だけどコーヒーを飲むという行動に意味がある。
私は昔からコーヒーを飲むと集中力が増し、物事をもっと冷静に考えることができる。
「ふう……。それでは、私をここに連れてきた目的は何なのか、説明して頂いてもよろしいかしら?」
「ああ。……実はね、君には私のいる地球に来て、ただ過ごしてほしいだけなのだよ」
「……それはつまり、あなたの個人的な願いということ?」
「そうだ。ある日私はとても遠い場所から、微かに私と同じ種族の気配を感じとった。それが……」
「私というわけなのね?」
「そうだ。理解が早くて助かるよ」
「はぁ……心当たりがあるのよ。私は、あまりにも容姿が変わらない。十二歳までは物凄く成長が早かったのに、それからは容姿が変わっていない。童顔にしても、変化があまりにもなさすぎている」
さっきまで意気込んでいたのに、あっさりと私の謎が解明されて拍子抜けしてしまった。
まさか自分が漫画の世界の人間だったとは思いもよらなかったけど。
でもその話が本当なら、あの人達に会える。ずっと望んでいたけど、叶わないと諦めていた夢。
「それが、私と同じ種族であるという証なのだ。君の母親もそうだろう? それは、君がまだ母親の中にいたときに、君が自分を育てさせるために力を分け与えたからだ。普通の地球人では君が充分に育つ前に死んでしまう。私達と普通の地球人では、生命エネルギーの量が違いすぎるからね」
チェッカーフェイスは味がないことを分かっているのに気にせず紅茶を飲んでいる。
その姿が様になっていて少し苛立つが、空気が壊れるので気にしないことにする。
「私はユニ以外の同じ種族が生き残っていたことがとても嬉しいのだ。君が今いる環境は、影で見ていたから知っている。どうだろう? こちらに来てはくれないか?」
「私があなたの世界へ行くとして、世界の均衡は崩れないかしら?」
「そのことは問題ない。元は十人以上いたのだから、一人増えたところでどうということはない」
「そう」
きっと、あっちの地球に行ったら、普通の生活はできなくなる。
けど私が普通の人間じゃない限り、こっちの地球にいたら化け物として見られることは目に見えているし、いつまで生きているか分からないから、私だけ生き残って独りぼっちになっちゃうんだろう。
だったら、もう答えは決まっている。
「どうやら決まったようだな」
「……はい。私は、あっちの地球へ行きます」
「……ならば、君を私達の地球へ送ろう。願いを聞き届けてくれたこと、感謝する」
チェッカーフェイスが立ち上がり、私の頭に手をかざす。
私がいなくなったら、騒ぎになるだろうな。
父さん、母さん、親不孝者でごめんね。紀光さんや吉野さんも、ごめんね。
別れることは寂しい。だけど、後悔はしなかった。
眩い光が私を包み込む。
心にあったのは、寂しさと、それよりも大きい期待だった。
次から本編開始となります。