翌日、私は朝早く並中へ向かった。もう既に応接室にいるはずの、彼の元へ。
応接室の扉の前まで気配を消して行き中の気配を探ると、やっぱりいた。
三回ノックして扉を開けると、予想していた通りトンファーが飛んできたからそれを避けずにキャッチし、足の向きを整えスカートを摘まんで少し広げ、前の地球でさんざん使っていた笑顔を浮かべて一礼する。
「挨拶が遅れてしまい申し訳ございません。初めまして、私昨日転入して参りました望月真夜と申します。以後お見知りおきを。雲雀財閥のご子息、雲雀恭弥様?」
こう言えば、絶対に怒って食いつくと知っていた。彼はプライドが高いから、家のことを話されるのを極端に嫌っている。
彼は雲雀家の子息ではなくただの恭弥という一人の人間として生きたいのだから。
そうすると、予想どおり子供のように雲雀はムッスーと怒っていた。
その姿はまだ青くて可愛らしく、笑いそうになるのを必死で抑える。
「……君、なんなの。強いの?」
「はい。確実に」
それは驕りじゃなく、歴とした事実。
「ですが、今日私はあなたと戦いに来たわけではございませんの」
ふふふ、と余裕の笑みを溢してやれば、雲雀も不敵に口角を上げ、「君の都合なんて関係ないよ」と横暴な発言をしてきた。
だけど、雲雀の好きになんかさせてあげない。
「あと何日かしたら、沢田綱吉達が行方不明になります」
目の前に来て一撃を喰らわせようと振り上げたトンファーは、私の顔面まであと十センチというところで綺麗に止まった。
「会ったばかりの君を信じると思う?」
「そして彼等が行方不明になった後、あなたも彼等と同じ場所に行くのです」
「人の話聞きなよ。僕は忙しいんだ。君の戯れ言に付き合っている暇はないよ」
雲雀は攻撃をやめて机に戻ろうと踵を返したけど、次の言葉で確実に足を止めるはずだ。これで止めなかったら、この少年は雲雀恭弥ではない。
「強敵と戦えると言っても?」
予想したとおり、彼は一歩を踏み出すことはなかった。
「私がここに来た理由は二つ。一つ目は、ただ単にあなたにお会いしたかったから。二つ目は、もっと強くなるあなたを見たいからです。その為に、あなたに一つ、お教えしましょう」
「僕は誰の力も借りないよ」
「その強敵と対等に戦うためには、先日あなたが受け取ったリングが必要不可欠なのです」
ゆらりと緩やかな動きで雲雀は振り返る。
「どうして君が、その事を知っているんだい?」
もう、笑みを隠すことはできなかった。
「そのリングに、あなたの死ぬ気の炎を灯すのです」
「今すぐ理由を話しなよ。話さなければすぐさま君を咬み殺す」
今にも噛みついてきそうな雲雀をスルーし、そのまま説明を続行する。
「死ぬ気の炎は覚悟が強ければ強いほど澄んだ炎になり、大きさが増します。そうですね、あなたなら“ムカツキ”、と言った方が分かりやすいでしょうか」
「……咬み殺す」
まったく、“待て”すら出来ないんじゃまだまだだな。自制を覚えない子供は成長しないよ。
かなりの速さでこっちに向かってきていた雲雀を暢気に見つめ、降り下ろされたトンファーを、人差し指で止めた。
「強者に立ち向かうことはとても賞賛できることなのですが、今のあなたはただの無謀なお子さまです。相手の力量を測るということを覚えなさい、お坊ちゃん」
雲雀の顔に息を吹き掛ければ、巨大な死ぬ気の炎が灯り、その力によって雲雀は壁を壊しグランドへ飛ばされた。
一瞬で雲雀の元へ飛び、倒れて動くことができない雲雀の頭を撫でる。
「いいですか、忘れてはいけませんよ。あなたのムカツキによって、そのリングは炎を灯すということを。その他は、あなたの師匠に教わってください」
痛みに呻きながらも何か言いたげな雲雀から視線を外して校舎に手をかざすと、壊された壁の瓦礫が浮いて元の場所に戻り、固まった。
ちなみに大地の重力で瓦礫を浮かし元の型にしてから、霧の構築で組み立てたのが種だ。
ついでに晴れの活性で雲雀の怪我を治療してその後放置し、応接室の窓枠まで飛んで鍵を重力で開け、授業が始まる10分前までソファーで寝ることにしたのだった。
※原作には雲雀家が詳しく描かれていないため、この小説では財閥ということになっています。
雲雀が雲雀家関係なく一人の人間として生きたいというのは、風が雲雀との関係を話すのは雲雀が嫌がるからしないと言っていたので、もしかして家が関係していて、家をあまり好いていないからかも、誰の力も借りないとか言ってるし。と私が勝手に思っているだけです。