「待って!」
そう、飛び起きた天馬の目に映ったのは
「………………あれ……」
見慣れた自分の部屋だった
「………………はぁ……」
一つ息を吐きだすと、目覚めたばかりで朦朧とする頭を抑えて、天馬は考え込む。
――今のは……全部夢……。
――でも、それにしては妙にリアルで……今でもハッキリと覚えている。
――あの男の声だってまだ……。
「天馬……?」
「!」
そこまで考えると隣から自分を呼ぶ声が聞こえ、天馬は振り返る。
と、そこにはまだ眠そうな目をこすりながら彼を見るフェイがいた。
どうやらさっきの天馬の声で起きてしまった様だ……
「どうしたの……? 大きな声出して……」
まだ眠気の混じったダルそうな声でそう尋ねるフェイに、「なんでもないんだ」と天馬は謝る。
それを聞いて「なら良いけど……」と言うと、フェイは再び布団に潜ってしまった。
アステリにも悪い事しちゃったな……と思い隣を見る、が。
「……あれ」
瞬間、天馬は気付いた。
ベッドで眠っているはずのアステリの姿が無い事に。
不思議に思い、狭い部屋の中をぐるりと見回すが。
やっぱりいない……
布団の中で寝返りをうちながらもう一度寝ようとするフェイに、天馬は尋ねる。
「ねぇフェイ。アステリがどこに行ったか知らない……?」
天馬の声に「え」と驚きの声を上げると、布団から顔を出してキョロキョロと周りを見回すフェイ。
「本当だ……どこ行っちゃったんだろう……」
――フェイも知らないのか……。
「どこに行ったんだろう」と心配そうに話す天馬に、フェイは「すぐ戻ってくるよ」と安心させる様に言い放った。
フェイの言葉に天馬も「きっとトイレか何かだろう」と自分の中で片づけ、もう一度布団の中に入る。
部屋の中ではカチカチと時計の針が進む音だけが響く。
その中で天馬はさっき見た夢について考える。
――あの世界は一体なんだったんだろうか……。
未だ鮮明に覚えている夢の風景を思い出しながら天馬は考える。
あの世界も、そこにいた黒い塊の様な奴等も……
それに、あの黒い服を纏った男も……
他人からしてみれば、全部『夢』で片づけられる様なモノばかりだったが……天馬は、気になって仕方が無かった。
部屋の中では相変わらず、時計の針が進む音と、後ろで眠るフェイの寝息だけが響いていた。
――それにしても遅いな……アステリ……。
あれから十分近く経過した。それでも、一向にアステリが帰ってくる気配は無い。
トイレにしては遅すぎる。
「もしや慣れない場所で迷子になっているのか?」なんて考えたが……
家はそんなに広くないし……トイレならこの部屋を出て左にまっすぐ進めばある。
じゃあどうして……
瞬間、天馬の中に言い表しようの無い不安が生まれる。
(まさか……何かあったんじゃ……)
――やっぱり捜しに行こう……。
そう考え出すと天馬は居ても立ってもいられず、隣で眠っているフェイを起こさない様に部屋を出た。
部屋を出て、木枯らし荘の中を全て捜してみたがアステリの姿はどこにもなかった。
まさかと思って玄関を見てみると……
「やっぱり……ない……」
そこにはあるはずのアステリの靴が無く。代わりに、なぜか開いているはずの無い玄関の鍵が開いていた。
それはアステリが外に出た事を証明する、何よりの証拠だった。
(どうしてこんな夜中に……)
天馬はより一層強い不安を抱きながら、誰にも気づかれない様に家を出た。
外は夜中なだけあって、人っ子一人歩いておらず。いつも近所の人達で賑やかな公園や住宅街も静まりかえっていた。
まだ少し肌寒い夜の町を一人、歩いていく。
木枯らし荘の周りには……いない。
近くにある公園にも…………いない。
「アステリ……どこにいるんだよ……っ」
夜の雰囲気も合わせて彼の不安はどんどん強くなってくる……。
「あと近くで言うと……河川敷……くらいかな……」
――胸騒ぎがする。
――早く、アステリを見つけないと。
天馬は走り気味に河川敷へと向かった。