東方超獣録   作:河馬

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3.万屋

今後如何するかだが、アクアガードを此処に待機させ、都に行こうと思う。とは言っても何がいるか解らないこの世の中、独り身で行くのはかなり危険である。と言う訳で、取りあえずコストの制限の確かめを含め、とあるクリーチャーを召喚しようと思う。

 

「来い!『コッコ・ルピア』!」

 

何処からとも無く火の粉が集まり、小さな鳥を形度って行く。

 

「うおっ...」

 

ハッスル・キャッスルを使った時程では無いが、それなりの疲れが体を襲った。同じコストなのに此処まで違うとは。つまり、一日に使えるコストが限られている訳だ。と言う事は一日『3』コストが限界なのである。それを超えれば、ハッスルキャッスルを使った時の様な思わず倒れてしまう様な疲れを伴う訳だ。つまり、今から『1』コストでも使って何かを召喚しようと思えば、あの時の様な尋常じゃない疲れを伴うのだ。

 

それよりも何故、コッコルピアを召喚したかといえば、空を飛べ、見つかっても見掛けはちょっとデカくて赤い鳥なので、あまり目立たないと思ったからだ。護衛としても力も今はハッスルキャッスルのパワー+3000の効力もあり、合計パワーは4000。まぁ十分だろう。そして、コッコルピアを召喚した最大の目的は、その能力にある。

 

 

 

自分のドラゴンの『召喚コスト』を『2』少なくする。ただし、コストは『1』以下にならない。

 

 

この能力は、一見地味に見えてかなり強力である。何せ、『ドラゴン』の召喚コストを『2』も下げる事が出来るのである。ドラゴンとは種族の一つで、ドラゴンの名に恥じない強力なパワーや能力を持つ物が大半である。

 

反面、コストが地味に高く、普通に召喚するとなれば例外を除き、中盤にしか召喚できないものが多い。その欠点を補うのが、『コッコ・ルピア』だ。然しコッコルピアを4体並べたとしても、最低でも『2』コストは払わなければならない。まぁ、余り気にならないデメリットだが。

 

 

「おぉ?」

 

ちょん。と、俺の方にコッコルピアが飛び乗ってきた。何かペットみたいだ。飼いたい。

 

「んじゃ、空から俺を見守っててくれ。俺が襲われそうになったら、無理をしない範囲で助ける事」

 

ぴぃ。と一鳴きして空に飛び立つコッコルピア。割と高いところまで飛んでったので、門番には見つからないだろう。取りあえず、これで都には入れてくれる筈だ。

 

 

「あの、この都に入りたいんですが...」

「....此処は『大和』だ。八坂神社のあるな。見た所...旅人か?変な服を着てるな。」

「えぇ、旅人です。」

 

...『八坂神社』?聞いた事の無い神社だな....まぁ、取りあえず旅人と言う事で良いだろう。服に関しては、まぁ前の世界の死ぬ寸前に来ていた服なのだが、都の様子からして着物が流儀のようだ。つまり、かなり昔の時代って事か?

 

 

「そうか。では、名を名乗れ。」

 

....マジか。如何やら、この村へ入るには記名が必要らしい。別に、何も可笑しな話では無い。然し、俺にとっちゃかなりの大問題だ。

 

 

俺は、此処に来てから名前が無いのだ。前世の名前は何故か思い出せないので、今即興で考えるしかない。ここは時代的にかなり昔の様なので、和風な名前が良いだろう。和風...和風...

 

「や、弥一(やいち)です。」

 

...変じゃないだろうか。いや、変では無い筈だ。こんな名前ありそうだし。

 

「良し。入れ。」

 

....変じゃ、無いよね?

 

 

取りあえず、何か仕事でも見つけようかな。此処に来てから、何も食べてないんだ。いい加減腹が減った。

 

「あの、すいません。何か此処での良い仕事は無いでしょうか?旅を続ける為の資金が必要なんです。」

「ふむ....確か、団子屋で店員を募集していたな。」

 

料金低そう....

 

「あの、もっと本格的な物は?」

「本格的....『陰陽師』とか、『万屋』だな。陰陽師はかなり危険な仕事だが、良いトコの貴族からの報酬はかなり高いらしいぞ?万屋はまぁ自営業になるが、此処じゃ殆ど見ないし、依頼者によっちゃあ大儲けするらしい」

 

陰陽師.....まさか、ホントに『妖怪』なんて物がいるのか?

 

「あ、あの、陰陽師って、具体的にどんな仕事なんですか?」

「何だ?陰陽師を知らないのか?....陰陽師とは、主に『妖怪』の退治、封印を本職とする仕事だ。」

 

.....マジかよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まぁそんな危険な仕事をやる訳も無く、取りあえず『万屋』をやってみる事にした。こういうの面白そうだしね、何事も経験が大事。まぁ、店はかなり小さい木で出来た小屋で、しかも借家だ。何か森の中にぽつーんとありそうな感じの。

 

あの後一回家(ダルマンディ)に帰り、今日の朝借家を借りて今お昼時までこうしてぼけーっと窓から空を眺めて客が来るのを待っているのだが、誰一人来ない。此処じゃ万屋は少ないって聞いたから結構期待してたんだが....自営業って最初は皆こんなん何だろうか。やっぱり宣伝とかした方が良いのか。看板はサービスでつけてもらったので見ればわかる筈だ。

 

コンコン

 

「あ、あのー、すいませーん」

 

とか思ってるうちに客が来た。がちゃりとドアを開けると、そこには15、6位の女の子が立っていた。

 

「依頼でしょうか?」

「はい。あの、コレを私の家まで一緒に運んで頂けませんか?」

 

疲れた顔をしたその少女の隣には、大きな米俵が三表。お使いでも頼まれたのだろうか?

 

「....わかりました。」

 

正直、途中で挫折する未来しか見えない。俺は中学、高校、大学共にテニス部だがそこまで体力や筋力に自身があるわけでもない。だが、これは記念すべき第一号のお客さんだ。断れる訳があるまい。

 

「あ、ありがとうございます」

 

ぶっ倒れないと良いなぁ...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

想像以上にこの依頼は楽だった。一見重そうに見えた米俵だが女の子が小さい方を一つもってくれたし、実際持ってみるとそうでもなく片手で一つずつ運べる程度の重さ。女の子はかなり驚いていたが、まぁほぼ成人の俺と高校一年生位の女の子の純粋な力と体力の違いだろう。

 

「あ、ありがとうございました....」

「いえいえ。あの、代金の方ですが...」

「あっ、待っててください。今払い「その必要はありませんよ」え?」

「いえ、貴方が私の店の初めてのお客様だったので、サービスですよ。出来れば宣伝とかしてくれれば結構です。」

 

別に、大した問題は無い。これくらいならお手伝いみたいな感覚だし、仕事をした気にはならない。俺は仕事には拘りを持つタイプだ。人間、水さえあれば一ヶ月生きられるしね。

 

「.....わかりました。ありがとうございます。」

「お気になさらず。」

 

さて、宣伝の効果ははたしてあるのか。明日が楽しみだ。

 

 

 

この時、未だに俺は気付いていなかった。ハッスルキャッスルの『クリーチャー』のパワーを+3000する能力の中に、自分も入っていたことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

辛い。年頃のかわいい娘に米俵を三表も持たせる母の愛情が辛い。

 

私は、いつもなら両親と一緒に米を貰いに行っているので一度に三表も持つなんて事はありえないのだが、生憎、今日父は仕事に出ており、母も風邪をひいている。

 

別にこんなひーこら言いながらほぼ引き摺るような形で今日わざわざ行かなくても良いと思うのだが、せっかくだから新しく出来た『万屋』さんに頼んで一緒に運んで来いと言われたのだ。まぁ、自分が何時も運んでいる小さい30キロの物が一つあるので、万屋さんには悪いが60キロの物を二つ運んでもらおうと思う。

 

あぁ、やっとついた。

 

それは、木で出来た小さい小屋だった。失礼だが、ちょっと大きめの物置と見ても誰も疑問には思わない位に小さい。そして小屋の屋根の辺りに小さく『万屋』と看板があり、余り目立たない。

「あ、あのー、すいませーん。」

 

がちゃり。と木製のドアが開く。そこにいたのは、いかにも怪しい男だった。

 

まず服装だが、着物じゃないのだ。何か良く解らない素材で黒ずくめである。顔は、まぁ整っている。だが、ジト目で猫背であり、初対面の人にはあまり良い印象は与えられないと思う。

 

「依頼でしょうか?」

「はい。あの、コレを私の家まで一緒に運んで頂けませんか?」

 

わかりました。別に、何でも無さそうに言う。とてもじゃないが、この人が60キロもある米俵を二つも持てるとは思えない。父だって一つが限界なのだ。成人一歩手前位のこの人には、一つですら持てる気がしない。何か、悪いことしちゃったかな....

 

「よっと...」

「嘘!!?」

 

つい、声にだしてしまった。でも、仕方無いと思う。何せ、父でも一つが限界だった60キロの米俵を片手でひょいと持ち上げてしまったのだから。しかも、片手でまたもう一つ持とうとしている。

 

「あっ、一つ持ちます!」

 

流石に三つも持たせるわけにもいかないし、かといって重い方は持てないので咄嗟に30キロの方をふんだくる。

 

「ん、別に大丈夫なんですが....」

「え!!?..い、いえいえ。頼りっぱなしも悪いですし」

「ありがとうございます。助かりますよ」

 

愛想笑いを浮かべ、空いている方の片手でもう一つの60キロ米俵を持つ万屋。ヤベェ超スゲェ。

 

 

別に、何事も無く家についた。途中、米俵を両の手で一つずつもつ異様な光景を見つめている町の人達の視線が痛かったが、想像以上に早く家についてしまった。本当に何者何だこの万屋。

 

「あ、ありがとうございました...」

「いえいえ。あの、代金の方ですが...」

「あっ、待っててください。今払い「その必要はありませんよ」え?」

 

聞けば、私がこの万屋の始めての客だから、サービスしてくれるらしい。荷物を運ばせて貰った位だからそんな高くは無いと思っていたがまさかタダとは。これは心を込めて宣伝しなければなるまい。

 

「わかりました。ありがとうございます。」

「お気になさらず」

 

では。と軽く礼をし去っていく万屋。然し、何処からあんな力が出てくるのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある、一国にて

 

 

「諏訪子様!!大和からこんな手紙が....」

「ん?何だよ、騒がしいなぁ......ん!!?」

「ど、如何されますか....」

「....如何するも何も、やる事は決まってる。戦うしかないね。『洩矢の国(この地)』は渡さない。死んでも守り通すよ」

 

 

 

 

 

 

―――神々の戦いが、始まろうとしていた。

 

 

 

 

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