あれから、色々な依頼が舞い込んできた。その中には、夫が浮気してるか確かめて欲しい等、お金を貸して欲しい等かなり個人的な物まである。払うおおまかな料金はこっちで決める事が出来るが、余り多い金額を要求しても批判されて客が来なくなるだけなので、そんなセコい事はしない。まぁ、食べていける位の金をがあればいいので、難しい依頼でもそんなに多く料金はとってはいかないつもりだ。
そして、今俺が受けている依頼。それはかなり可笑しな依頼で、『今日何か神様がドンパチするらしいから、それを俺の変わりに見て感想を伝えてくれ』と言う物。
話を聞けば、この大和の神の『八坂神奈子』と呼ばれる軍神様が、『洩矢の国』と呼ばれる所の侵略を今日の昼に開始する予定で、それを食い止めるべく、洩矢の神の『洩矢諏訪子』と一線交えるらしい。てか神様とかもいるのか...まぁこんな可笑しな依頼別に受けなくても良いのだが、神様の戦いと言うのに少し興味がある。
と言う訳で、今は『洩矢の国』と呼ばれる場所に徒歩で向かっている。神が進撃しに行くのは今日のお昼時なので、それに間に合うようにこんな朝早くからわりと遠い洩矢へ移動するのは実際かなりめんどくさい。一応護衛としてアクアガードは連れてきたが、別に戦いをしに来た訳でも無いので、妖怪に襲われでもしなければ出番は無いだろう。まぁそれが一番なのだが。
「貴方は、食べても良い人類?」
「えっ」
何か何処からともなく現れた金髪幼女が話しかけて来た。咄嗟にアクアガードが俺を守る様に金髪幼女の前にハサミをカチカチ鳴らしながら立ち塞がる。ザリガニの威嚇みたいだ。然し、この幼女は何を言ってるんだ?食べても良いって、食べても良い訳無いじゃん
「だから、貴方は食べても良い人類?」
「....ダメだろ」
「えー!?」
「何で残念そう何だよ....」
この金髪幼女、どうも俺を食べたいらしい。物理的に。然し、これはどういう事だ?人を食べる人間がこの世界にいるって事なのか?それとも、この幼女まさか『妖怪』だったり....無いか。
「だって!、一ヶ月何も食べてないんだよ!?」
「大和に行けば良いだろ、案内するぞ?」
「ダメだよ。大和はおんみょーじがいるから、入れても直に退治されちゃう」
陰陽師に退治される?.....何故に?。
「陰陽師が退治するのは妖怪だけだろ?なら君は大丈夫じゃないか」
「え?何言ってるの?私妖怪だよ?」
「......」
マジかよ。こんな幼女が妖怪....まさか妖怪って、皆こんなのなのか?だとしたら妖怪を倒す毎に凄まじい罪悪感が....
「ねーねー、私お腹好いてるんだけどー。指一本だけでも良いからさ!恵んで!」
「ダメです。てか人以外食えないのか?」
「いや、食べれるけどさ。やっぱ『人食い妖怪』だからかな?イマイチしっくり来ないんだよねー」
しっくり来ないって何だ。
「悪いけど、俺今急いでるんだ。お昼時までには洩矢の国に着かなきゃなんないし」
「もりやのくに?あー、あそこね。何か今日騒がしかったよ。何かやるの?お祭り?」
「大和の神が、今日あそこを侵略をするらしい。俺は訳あってその侵略の様を見なきゃなんないんだ。と言う事でじゃあね。アクアガード、行くぞ」
見た所、別に悪い妖怪と言う訳でもないみたいなので、ほっといでも大丈夫だろう。さっきからずっとハサミを広げてカチカチ威嚇してるアクアガードを呼び戻す。然し、初めて妖怪と会ったな。何か無害そうで拍子抜けしたけど。
「あ!ちょっと待ってよ!私も行くー!」
「え、別にそんな楽しくないと思うぞ?」
「良いから良いから!私今暇だもん!」
「そーかい。...あのさ、妖怪って皆君みたいに人間の姿してるの?」
「いや、違うよー。逆に私みたいなのは少ないんだー」
あ、良かった。まぁ着いてくる分には問題いは無いだろう。
聞くところによると、この金髪幼女妖怪、名前は『ルーミア』と言うらしい。何でも、一ヶ月前まではかなり有名な妖怪で『宵闇の妖怪』と言う偉くカッコイイ二つ名も有るらしい。だが、とある陰陽師に破れてどんどん力が衰えていき、今に至ると言う。こんな金髪幼女が名を馳せるなんて、その時のルーミアはどんだけ強かったのだろうか。
「ねぇ弥一、あった時から気になってたんだけどさ、このカニみたいなの何?美味しいの?」
「俺の護衛みたいなもんだ。てか食うなよ」
「へぇー。多分食べないよ。美味しく無さそうだし」
「多分かよ」
何だかルーミアは見た目的にも性格的にも凄く幼い。俺は、正直言って子供があまり好きでは無い。幼稚園児とか見てる分には問題は無いが、絡まれるとなるとダメだ。ルーミアはまぁまだ絡まれても大丈夫な性格なのだが、子供の中にはたまに物凄くデリカシーの無い事を言ってくる奴だっているのだ。
俺の顔を見るやいなや「大丈夫?にーちゃん顔色悪いよ?お腹空いてんの?」とか言ってくるのだ。まぁ元気なさそうな眼つきしてるのは認めるが、まぁ少し猫背で体弱そうなのは認めるが、それ等は俺のいわばコンプレックスなのだ。ちょっと酷い。
と、急に何か胸騒ぎを感じる。遠くから何かが近づいてきている様な感じだ。いや、何と無くだが。
「ルーミア、何か感じないか?」
「うん。...何かが近づいてきてるよ」
「あぁ、何と無くそう感じるな」
次の瞬間、ビュンという音と共に何かの集団が俺とルーミアの上を物凄い勢いで飛んでいった。一瞬しか見えなかったが、それらは人影の様にもみえた。
「今のって....」
「多分、弥一が言ってた神様だと思うよ」
「だよなぁ...」
あんな速さで飛べるのは鳥でも無理だし、ルーミアの言ってる通り神様だろう。然し、これは可笑しい。時間はわからないがまだ昼では無い筈だ。多く見積もっても精々10時位だろう。つまり、予定より早くなった。これは急がねばなるまい。
「ルーミア。急ぐぞ」
「うん!」
何故か凄い乗り気なルーミアを尻目に、俺は洩矢の国へと急ぐのだった。
「ふぅ....やっと着いたな...」
「疲れたぁー」
あれから一時間程歩いてようやく洩矢の国に着く事ができた。国と言うよりは村と言う印象が近い。
然し、何処で戦争なんてしてるんだ?とてもじゃないが、こんな所で戦争をしてるなんて思えない。可笑しな点と言えば、村人が見当たらない所位だろうか。
「うおっ!?」
「うわぁ!?」
途端、ドォォン!と村の奥の方からもの凄い音が聞こえ、地響きが此処まで届いてきた。...なるほど、大和の神の狙いはあくまでも洩矢諏訪子って事なのか。通りで此処では全く被害が無い訳だ。
「よし、行くぞ。良いか?絶対に見つかるんじゃないぞ?何されるかわかったもんじゃない」
「あいあいさー!」
....本当に大丈夫なのだろうか。
「...酷い有様だな」
「すごー」
村の奥に近づくにつれ周りの木々がなぎ倒されていたり、地面が抉れていたりと地形的な変化が目に見えてわかるようになってきた。恐らく、これが神々の戦い爪跡なのだろう。凄まじいもんだ。
「フン。私等の戦争に紛れて村人を食らおうってかい。妖怪にしては良く考えたじゃないか」
「「!!?」」
何時の間にか、俺達の真上に女性がふわふわと浮かんでいた。独特な雰囲気を醸し出していると同時に、変な格好をしている。背中に縄を輪にしたものを着けており、何か紙みたいなのがぶら下がっている。アクアガードは最初から気付いていたのか、いつの間にか俺の前に出て警戒態勢に入っている。
「あっ....」
「ガッ...」
「え?」
ドンドンッ!と、二つの何かが、地面に突き刺さった音がした。ルーミアとアクアガードの方からだ。見てみれば、ルーミアから柱の様な棒が生えていた。アクアガードにも生えており、ルーミアのより少し大きめだ。
違う。生えてるんじゃない。柱に貫かれている。ルーミアは胴から赤い液体がだらだらと流れており、アクアガードからは頭から何かが混じった緑色の液体が垂れている。両者共に、動く気配は無い。
「.....は?」
「村人よ、危なかったな。私は『大和』の神、八坂神奈子。コイツは人の成りをしているが、列記とした妖怪だ。幾ら妖怪でも、胴を貫かれ、神力による再生の阻害もしていれば助かるまい。もう一匹は見た事は無いが、妖怪の類に間違い無いだろう。」
急展開すぎて、言ってることが良くわからない。
「おまえが....やったのか?...」
「あぁ。感謝しろ。食われるところだったぞ」
この瞬間、俺の頭はこの神を倒す方法しか考えられなかった。頭に血が上り冷静な判断が出来なかった。
「....『豪速 ザ・レッド』!」
倒れそうな程の疲労感なんて、全く気にならなかった。
「ッ!!.....行け!ザ・レッド!」
軍神に喧嘩を売るなんてバカなマネは、いつもの俺なら絶対にしないだろう。しかもこの神は村人と勘違いした俺を守ろうとしたのだ。否は此方にある。
赤いバイクに乗った人に似た物が、神奈子に突進して行く。
「ん?何だい?この赤いの」
「『侵略発動』......」
唯、ルーミアとアクアガードを殺した事が本当に許せなかった。それだけだった。
『轟く侵略 レッドゾーン』
『最強』にして『最速』の『侵略者』が、神に牙を向く。
先に行っておきますが、この作品では原作キャラは死にません。不滅です。