この素晴らしい健康体に祝福を!   作:エステバリス

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このすばブームが一期終了につき失速し始めたところに、投稿!

はじめまして、エステバリスです。

特に語ること思い付かないので、本編どうぞ!




転生特典に健康を!

 

 

「はじめまして、東雲(しののめ) 冬華(ふゆか)さん。唐突ですが━━━貴女の人生は、終わったのです」

 

あ、終わったんだ。私は目の前にあるそんな現実を、まるで別次元のことのように思っていた。

 

まぁ、そもそもいつ死ぬかわからないと宣告されていたのだ。そんな感じでも仕方ないのだろう。だって死ぬことの覚悟が少なくともその辺の人よりは出来ていたんだから。

 

「……貴女は?」

 

「私は不幸にも若くして死んだ日本の者達の命を導く水の女神アクア。……早速ですが、貴女には二つの選択肢があります」

 

「……あ、その前に一ついいですか?」

 

「なんでしょう?どうしても聞きたいのであればそちらを優先しますが」

 

ありがたい。この質問をしなければ不自然なことがあったのだ。

 

「えっと……私、耳が聞こえないはずなんだけど。なんで……女神様?の声が聞こえるの?」

 

「それですか。それはなんというかこう、女神パワーです。その不思議パワーによって貴女の脳内に直接ッ、言葉を送っているんです」

 

「あ、そうなんですか。それじゃあ続きお願いします」

 

どうやら、アクアと名乗る女神様の話を要約するとこうらしい。

 

まず、異世界というものがある。その異世界は魔王という……今で言うヤクザみたいな人達が台頭していて、本来そこにいた人達が元の世界に輪廻転生することを拒否しているせいで人口やら魔王への対抗やらが少なくなっているとのこと。

 

そこで、私達の世界の側の人間を魔王対策も兼ねて、強力な特典を付与、記憶を保持させたままその世界に送ることで人口問題、魔王問題の両方を解決できるということ。

 

ついでに私達側も一度は憧れるファンタジーな異世界ライフができることが約束されるというwinwinな解決策、らしい。

 

「別に天国に行ってもいいんだけど、それはそれでなにもない本当の意味で極楽浄土。正直退屈よ?」

 

と女神様は言う。正直、選択肢はほぼないと言っても構わないんだね。

 

「あ、じゃあ普通に異世界でお願いします」

 

「それじゃあ転生に持ち込む特典を選んで。このカタログにあるのはオンリーワンのものね」

 

聖剣アロンダイト、怪力、超魔力、妖刀ムラマサ……うん、生前は耳が聞こえない、足が動かない、喘息の三連コンボに晒されていたのでゲームのような娯楽しかやることがなかったからわかるが……すごい痛々しさと強さを感じる。どうでもいいけど女神様、ちょっと口調崩れてきてるよね。

 

だけれど、だけれどだ。今言ったように三連コンボでマトモに身体を動かすこともできない私にはそれで選ぶ特典など━━━そう、一つしかないのだ。

 

「それじゃあ女神様、私を健康な身体にしてください」

 

「━━━そう、それじゃあこの魔法陣から出ないようにして」

 

足下から現れる魔法陣を見ると少しだけ身体が浮き始める。ああ、転生系って落ちるとかワープとか色々あるけど、上に落ちるタイプなんだね……

 

「それでは東雲 冬華さん、願わくば魔王を倒す勇者が貴女であることを祈って━━━もし魔王を討伐した暁には、天界からの褒美としてなんでも一つ、好きなものを与えましょう!」

 

「マジですか!?神様万歳!」

 

「その通りです!それでは、旅立ちなさい、勇者よ!」

 

そうして私の異世界ライフの始まりを告げる鐘が今、鳴ったのだ━━━!

 

◆◇◆

 

鳴るわけがなかった。

 

転生してすぐ私の前に訪れたのはそのものズバリ、金銭問題。この世界のギルドは加入するのにお金がいる。この世界の単価エリスで三千。多分これは円とほぼ同じ感覚でいいのだろう。

 

その時はギルドのバーにいた親切なプリーストがお金を恵んでくれたからなんとかなり、私は職業選択というものをすることになった。ステータスは平均よりかなり上の筋力値と平均程の幸運以外は軒並み平均以下。元々身体を動かす機会にすら恵まれなかった身体なのでステータスの低さにはやたら高い筋力以外納得がいくから仕方ないと割り切っているのだけれど。

 

私はそんな中、筋力値の高さによって複数の武器を所持できる【ウェポンマスター】という上級職に就いた。なんとこの職業、多くの武器を背負うための筋力値が規定値よりも上ならその他のステータスの職業に就くのに足りない部分を筋力値で補ってくれるという親切仕様だったのだ!

 

当然、ステータスが筋肉以外軒並み低い私は最弱職の冒険者かウェポンマスターかの二択に迫られ、転生した時同様選ばせる気のない選択肢のうちの一つを取ったのだ。

 

ここまでは、まぁいい。問題はこの始まりの街アクセル……超がつくレベルで平和。

 

魔王の本拠地こと魔王城から一番遠く、かつ始まりの街というだけあって冒険者のレベルも比較的低いから態々魔王が狙う理由もない。

 

そして更に、魔王の脅威がないせいでここら一帯の魔物はだいたいがレベリングや危険を未然に防ぐ善意によって駆逐されているため、魔物討伐系すらない。

 

その結果、筋力が優れている私は否応なしに土木建築のアルバイトでお金を稼ぐ羽目になった。

 

「……なんで!?」

 

こうして回想していると自分でもどうしてこうなったとしか言えないよ!?どうして私冒険者から土木建築人にジョブチェンジしてるの!?

 

「おーいフユカ!こっち手伝ってくれー!」

 

「あ、はーい、ただいまー!」

 

しかし、この溢れるパワーを活かして業者の人に結構な評価を貰っちゃってる私は同時期にバイトを始めた人よりもちょっとだけバイト代が高い。これがこの仕事をやめられない理由の一つだ。……もう一つはこれ以外にマトモにできるバイトがないっていうのなんだけどね。

 

それでも、このままでは冒険者として何か不味いということは重々承知。ここいらでなにか遠出して討伐系クエストを━━━と言っても、それもほぼ不可能に近い。

 

ウェポンマスターは多数の武器を同時運用することが強みであり、必然的に装備を多く身に付ける結果、本来持つ敏捷性と関係なく死ぬほどトロくなる。そもそもの敏捷値が平均を遥かに下回っている私の動きなんて論外レベルに低い。

 

加えて紙耐久。バイト代をコツコツと貯めてウェポンマスターとして幾つかの武器を購入していつでも旅に出られるようにはしてあるのだが、これらの要因が重なってそもそも武器しか持たないから鎧も盾も持たず、更に鈍足というソロプレイが不可能に近いこの職業では街を出ることすら敵わない程。

 

だからと言って上級職とはいえ低レベルでステータスも悲惨な、しかも職業的に介護必須のウェポンマスターを欲しがるパーティもほぼない。

 

こうしてぼっちになった私は今、冒険者から建築者へとジョブチェンジしているのだ。笑えない。

 

そんなこんなで数ヵ月を生活のための土木建築で過ごし、馬糞の臭いまみれる馬小屋で寝泊まりする日々を過ごしていると、ある転機が訪れたのです!

 

「パーティメンバー募集、ただし上級職の方にのみ限ります……」

 

その貼り紙はギルドのクエスト掲示板の横に貼り付けられていた。そして上級職のみに限る。それを聞いた瞬間、キュピンッ、と何かが閃いた。

 

この始まりの街アクセルは名前の通り、主に冒険を始めて間もない冒険者が多く集う。つまり上級職の人なんて数えるほどもいない。

 

私、拾ってもらえるんじゃないかな!?

 

そこまで考えると私の行動は早かった。貼り紙に書いてあった情報を暗記するとギルドで聞こえる喧騒の中で僅かに「やっぱり上級職には無理が……」という言葉が聞こえた。そっちに目を向けると緑のジャージを着た男の人とどこかで見たような水色の長髪の女性が佇んでいた。

 

多分この人達だ、と思った私は若干急ぎ足でそこに向かう。折角見つけたチャンスだ。こんなところで逃すわけにはいかない!

 

「ぼ、冒険者募集の貼り紙、見ました!ここ、ここでいいんでせうか!?」

 

噛んだ。それはもう盛大に噛んだ。

 

「え、えっと……見た、てことはキミ、上級職?」

 

「そそそそうです如何にも冴えない顔してるくせにちょっとチヤホヤされてモテそうな男の方!」

 

「よっしゃ喧嘩売ってんだなクソアマ表出ろや」

 

いけない、長い病院生活のせいで知らない人と面向かって喋るの緊張してしまう。落ち着いて、ゆっくりと息を吸って落ち着いて……

 

「ごめんなさい芋ジャージの人!別に貴方を乏したわけじゃないんです!別に貴方が見るからに引きこもりだからってバカにしたわけじゃないんです!」

 

「誰が引きこもりだオイ」

 

また地雷踏んだかな!?ええっとどうしようどうしよう━━━と思っていると、私を助けてくれるかのようなタイミングで私達に向けて声が投げ掛けられた。

 

「上級職の募集の貼り紙、見ました。……こちらでよろしいでしょうか」

 

私達の目の前に現れたのは、なんというか如何にもな魔女っぽい女の子だ。赤いワンピースに黒い穴空き手袋、左足を黒のニーソックス、右足を包帯で覆った上にワンピースとマッチするブーツ、特徴的な魔女の帽子みたいなもの。更に黒曜石のように黒い髪と爛々と輝く紅の瞳、の左側を隠す眼帯。

 

とても、魔女だ。

 

「我が名はめぐみん!アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を司りし者!」

 

「……冷やかしに来たのか?」

 

「ち、ちがうわい!」

 

「めぐみんさんですか、素敵な名前ですね」

 

「ゑ゛っ」

 

個性が溢れてて素敵だと思うんですが、どうでしょう。

 

そんなこんなで男の人と私とで全く別の意味で難しい顔をしていると、水色の女性が女の子の方に話し掛けてくる。

 

「その紅い瞳……貴女もしかして紅魔族?」

 

紅魔族、その言葉を聞いた瞬間めぐみんと名乗る少女は気を取り直したようにカッコいいポーズを取って高らかに宣言する。

 

「如何にも!我は紅魔族随一の魔法の使い手めぐみん!我が必殺の魔法は山をも崩し、岩をも砕く……!そんなわけで優秀な魔法使いは入りませんか?それと図々しいお願いですが、もう三日もなにも食べてないのです。できれば面接前になにか食べさせては頂けませんか?」

 

キュー、と悲しげに鳴るお腹が鳴る。すごい可愛い音だ。

 

「……飯を奢るぐらい構わないよ。そっちの子も」

 

「マジですか!?」

 

やったー!ご飯代浮いたー!

 

「……でなんだけどさ、その眼帯はどうしたんだ?怪我でもしてるのか?」

 

「……フッ、これは我が強大なる力を抑えるためのマァズィックアイテム……これが外される時は、世界に大いなる災いがもたらされるであろう……」

 

「封印みたいなものかな?」

 

「まぁ嘘ですが。単なるオシャレで着けているだけ……あっあ!ごめんなさいやめてください引っ張らないでください!」

 

「……ええと、二人に説明すると、紅魔族は生まれつきの高い知力と強い魔力を持っている、大抵の子は優秀な魔法使いになる素質があるの。名前の由来となっている紅い目と、変な名前が特徴なの」

 

変な名前。確かに個性的な名前だけど変という程かな?ゲームとかのインターネット対戦でよくキャラネームをそんなにしてる人がいるけど。

 

「変な名前とは失礼な。私からすれば街の人が変な名前をしていると思うのです」

 

「……両親の名前は聞いても?」

 

「母はゆいゆい、父はひょいざぶろー」

 

「「………」」

 

「個性が溢れてますね」

 

「……ま、まぁ紅魔族は優秀な奴が多いんだろ?それなら仲間にしてもいいか?」

 

「いーんじゃないかしら。冒険者カードの偽造はできないし、爆裂魔法を使うっていうのならそれはすごいことよ。本当に最強の魔法だから」

 

「ふーん……そんじゃ、キミは?」

 

あ、私ですか。じゃあなんとなく、めぐみんさんに乗っかるとします!

 

「我が名はフユカ!ウェポンマスターを生業とする者にして数多の武器を司りし者!槍の一撃で離れた敵を穿ち、必殺の剣でその命を刈り取りししにが、ちょ、やめてくださいなんで私の二の腕をつねるんですか!?」

 

「さっきから黙って言うことを聞いていれば、お前は阿呆かぁぁぁぁぁ!!筋金入りの天然ボケなのか!?頭ひっぱたいてやろうか!?」

 

「いだいいだいいだいいだい!!」

 

あ、なんとか一応パーティメンバーにはお試しという形で入れてもらえました。

 

 






ウェポンマスター
複数の武器を同時運用する上級職。武器を大量に運用する都合、その武器を扱うことにもスキルが必要なため武器の扱いと攻撃関連以外にスキルを保有する余地がほとんどない超前衛のロマン職。
主に前~中衛のダメージディーラーを仕事とし、一応筋力強化の魔法も覚えられる。
しかし如何に筋力が高くとも大量に武器を背負うため敏捷能力にかなりの阻害がかかり、一度ターゲットされたらほとんど逃げられないと言っても過言ではない。要介護。


東雲 冬華
この物語の一応の主人公。前世は人生の八割以上を病院で過ごし、ゲームしか娯楽がなかったためゲームで得た間違ってたり偏ってたりする知識から天然ボケと常識知らずが混在している。
なお、健康な人に憧れていたせいか、好んでいたゲームはほとんどがRPG系統の勇者チックなもの。
職業はウェポンマスター。ダメージディーラーだが、本人のステータスと職業上無駄に火力が高いためオーバーキルを乱発して時々挑発系統のスキルを味方が使ってもターゲットされることがある。
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