あれからどうなったのか。
もちろん私はこの場所に住むことになりましたよ?提督に就くことが条件で。
さて私は今この時代にいる妖精さんと接触しようと電さんに頼み工廠に向かっています。天龍さんは夕食の準備をするとのことで食堂に。まさか料理が出来るとは……負けてます私。くっ。
ちなみに先ほどから妖精さんはずっとポケットの中に隠れているようで時折ひょっこりと顔を出しては見たこともない景色に興奮していました。
シャイな彼らにとって顔を出すという行為はなかなか稀有な行動。それほどまでに彼らはこの時代に興味があるみたいなんですが、私的にはあまり喜ばしくない。
なぜなら彼らが興味を持って何事も起きなかったことがないからです。時には同類誌に興味を持ち同類誌の中に人を送り込んで演出させたり、何もない島を発展させ沈没させたり、踏んで滑れば過去にタイムスリップするバナナの皮を生み出したりと何事も大規模すぎて満身創痍間違いなしの太鼓判を押せるような事しかしないのですから。
できれば小規模に収めてほしいんですがそれを説いたところで明日には忘れるのが彼ら妖精さんなのです。
何故あそこまでの科学力を持ちながら理解はしてくれないのか。
「少々お待ちくださいなのです」
私が妖精さんとの(思い出したくはない)思い出を思い返している間に工廠に到着していたらしく、電さんは工廠の奥へと走り去っていきました。
にしても妖精さんが住むにはちょっと意外な所ですね。工廠と呼ばれたこの場所にはあらゆる機器がそこらじゅうにあり、稼働していないとはいえ部屋中に油の臭いが充満しています。
お世辞にも彼らが好むような場所には思えませんがごみ溜めに住んでいたりする彼らならばあり得る?のでしょうか。
そんな風に思っていると小走りで何かを掌に乗せながら電さんが戻ってきました。
「お待たせしましたのです!」
「いえいえ、それでその方達がここの妖精さんですか?」
「お初です」「見慣れぬ御仁ですな」
「おやまぁ」
まさか妖精さんがこんな流暢に言葉を話せるだなんて。ちょっと驚きです。
「初めまして。私は新しくここの提督になったものです」
「おぉ、あの野郎の後釜ですか」「彼奴は元から気に食わぬかったので良かった」
「……あの、前の提督さん嫌われてません?」
「あはは……」
乾いた笑みを浮かべる電さん。こんなに優しそうな彼女にこんな笑みを浮かばせるとは一体どれほどの人物だったのか。ある意味興味がありますね。関わりたくはないですけど。
そんなことを思っているとポケットから顔を覗かせるだけだった妖精さん達が電さんの目があるにも関わらず飛び出してきました。
「あはーい」「どうもー」「めずらしおなかまー」
「む」「これは……」
「はわわっ!?びっくりしたのです!」
「驚かせてすみません。この方たちが私と一緒に未来から来た妖精さん達です」
「な、なんだかファンタジーな方達なのです」
「妖精さんは元々ファンタジーの住人ですよ?」
「あっそうでした」
やはり私と一緒で長い間妖精さんと付き合っていると彼らに慣れてしまってファンタジーな人物だということを忘れてしまうんですね。
調停官になっていても妖精さんに会ったことがない方々は彼らのことを新人類とあまり認識しておらず物語の中にしかいない人達と思っている方もたくさんいます。ですがその逆もあるのです。
彼らとあまりにも接していると彼らのことをファンタジー側の住人ではなく思えてしまいます。私達の時代の者からすれば自然と見なし、彼女達からすれば業者か生みの親と言ったところでしょうか。
「はじめまして」「なんだかきしかんありふれてます?」「でじゃぶなのでは?」
「見たことない風貌だが……」「うむ。私達と同じような存在か、いやそれ以上だろうな」
そんな会話をしながら妖精さん達は他愛もない会話をし続けました。時折何を言っているのか分からないようなところもありましたのでそこらへんは割愛します。
数分ぐらいでしょうか。その会話を電さんとただただ見続けているとふと彼らがどこかへと走り去っていってしまいました。電さん曰く走り去った方向には妖精さん用の工場があり、そこで妖精さん達が艦娘から家具まであらゆるものを作り出しているんだとか。
工廠といっても使われているのはごく僅か。部屋のほとんどは前に人類が使っていたものをそのまま再現しているからこそあるものでありほとんど妖精さん達は使われていないらしいです。
だから先ほどからしている油臭さなんかは前にいたごく一部の艦娘が使った後に洩れたものだろうと言っていました。
艦娘と呼ばれる中でも夕張と言う方がよくここで何かしら生活の為に必要なものを作っていたんらしく、人類用の船も作ってたりしていた辺りその夕張って方の腕前がよく分かります。
本人曰く「妖精さん達に比べればまだまだ素人」と言っていたらしいです。いや、そこは比べる相手をちゃんと選びましょうよ。
「そういえば電さん、艦娘ってどのような過程で生まれているんですか?」
「艦娘は鋼材、燃料、弾薬、ボーキサイトと呼ばれる四つの材料で建造されるのです。それらの割り振り次第によって駆逐艦、軽巡洋艦、重巡洋艦、戦艦、軽空母、空母、潜水艦などが生まれるのです。
たまに他の艦船が建造されることもあるんですがそれは大型建造といった少し大掛かりな手法で造られます」
「なるほど。ここの妖精さんでもそれほどの科学力を持っているんですね。まぁ不可思議なところもありますがそれもまた妖精さんということですかね」
「確かにそう言われると科学力云々よりもありえないような話ですね」
「となると深海棲艦と呼ばれる方々も何者かに造られているってことなんですかね」
「詳しくは分かりません。ですがよく言われているのが轟沈した艦娘に怨念が憑いたもの、らしいなのです」
「怨念、ですか」
確かにそう言われてしまえば先ほど説飯された『艦娘に似た艦娘ならざる者達』というのも納得がいきます。
ですがなんだか引っかかりますね。出来れば帰るまでにこのもやもやするものをスッキリさせておきたいのですがそれはまぁ手が空いたときにでも解決していくとしましょう。
ふとすぐ近くから「くぅ~」と鳴る音が聞こえてきました。音が鳴った方を見ると、耳まで顔を真っ赤にさせながら俯く電さんの姿がそこにはありました。
「おなか空きましたね」
「は、はいなのです」
「そろそろ天龍さんも夕食を作り終えてるんじゃないでしょうか?一度食堂の方に行ってみましょう。案内お願いします」
「妖精さん達はいいのですか?」
「あぁ、あの方たちは楽しいことがあればいなくなりませんし大丈夫でしょう。何かしら落ち着いたら私の元に戻ってくるでしょうし」
「分かりました。では案内するのです!」
ここの妖精さんに私が未来に帰れるかも聞きたかったのですがあの調子じゃ後日に回した方がよさそうですしね。
あと艦娘と人類との関係とこれまで起きた深海棲艦と艦娘の戦闘と生態など、仮とはいえ提督に就くのですからそちらの方も聞いておかなければならないでしょう。
ですがそれは追々ということで今は食事をしてお風呂に入ってふかふかのお布団に入ってから今後のことを整理したい。
今日だけでたくさんやるべきことができてしまったことに頭を悩ませなければならないとは。いくら妖精さん関連の騒動に巻き込まれ慣れているとはいえこれほどまで悩んだのは初めてのような気がします。
私は電さんの後ろをついていきながら小さくため息をついたのでした。
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