七人の場合   作:くい太

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#SAMURAI7版1週間真剣小説一本勝負のワンライお題、『約束』で書かせて頂きました。


ヘイハチの場合

雷鳴がとどろく。

ひゃあっと一声あげ、ヘイハチは降り出した大粒の雨をさけるように、大樹の下へ飛びこんだ。

それを追いかけるように轟音が鳴りひびく。

夕餉の時間、リキチの家を目指して帰路についたが、しばらくここで足止めされそうだ。

水を吸って重くなった飛行帽をしぼっていると、バシャバシャと派手な水音をさせて、シチロージが走ってくるのが見えた。

おーいシチさん、と声をかけると、一瞬まよった顔をしてから、こちらへひといきに駆けこんできた。

「夕立とは、参りましたな」

ぐっしょりとぬれてしおれる髷を解きながら、シチロージは空をあおいだ。

「せっかくの炊きたてに間に合いませんねぇ」

ヘイハチの頭には米のことしかない。

「ヘイさん、ちったあ自分の体のことも心配したほうがいいですぜ。風邪とか、雷とか」

「雷はそうそう落ちますまい」

「いやいや、それが」

ヒラヒラと手を振ってみせる。

ハッとした。

なぜシチロージが一瞬まよったのか。

男は金属製の義肢をつけている。

「落ちるとしたら、アタシか樹か。ヘイさんにとばっちりがいかないといいんですが」

「私も軍刀やら機械の部品やら、いろいろ仕込んでますから。確率はそう変わらないでしょう」

「ヘイさんよく落ち着いてますな。怖くはないんで?」

アタシはこわいねぇ、こわいこわい、と歌うように呟くものだから、ヘイハチは思わず吹き出してしまった。

「シチさんが不安がる理由の一つに、義手の不調があるんじゃないですか」

ずばりたずねると、シチロージは目を見開いた。

さきほど一瞬まよった顔をした理由。

義手から異音がかすかにしていた。

「かないませんなぁ。本当によく見ている」

「雨がやんだらみせてください」

そのとき、空が白く輝き、腹にひびく割れるような音がとどろいた。

「……かみなりさんにお目こぼし頂いたらね」

こんなに弱気になっている古女房も珍しい。

「承知しました。約束ですよ」

 

飯時、カンベエの前では涼しい顔をしていたシチロージだったが、

「今日はさぞ肝が冷えたろう」

という大将の一言で、古女房殿は口に運んでいた椀の物を盛大にむせた。

「カンベエ様!」

「やはり図星か」

「お戯れを」

ヘイハチはこのやりとりから、腕を義肢にする前から、シチロージは雷をおそれる性質だったと知った。

 

なんでまた、絶縁体の義手にしなかったのか。

 

妙なおかしみを感じ、くつくつと笑いをかみ殺していると、色男が赤面する、実にうまみのある珍しい顔を拝むことができた。

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