ラブライブ!-女神と武神のアイドル戦極記-   作:Professor灰猫

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希望って言うのはタチの悪い病気だ





第貮幕 黄金復活編
拾話 十五の武神使い


厳しい厚さも無くなり、日差しもある程度落ち着いて来たであろう九月。学生達の夏休みも終わり、二学期が始まるこの頃。いつもの様にアイドル研究部員(+希)は、夕焼けが広がる空の下を歩いていた。裕也もすっかり怪我は完治し、普通に運動が出来る様になっていた。

 

あれから初瀬と真姫には会っていないが、多分元気であろう。裕也が武神鎧武に変身する事も内緒にするらしく、噂が広まっている可能性も低い。……とも思ったが、あの後何度か変身して目撃されているのだろうか。都市伝説などで『謎の鎧武者と怪物が出現!?』等といったのは、多少ネットで話題になっている。

 

今、この四人で話している事はというと、何と一年の駆紋凱斗についてだった。にこが凱斗を見る度に嫌な顔をするのと、裕也と希も苦笑しているのを朱果が不思議に思い、思い切って聞いているのだった。

 

 

「凱斗……アイツは私と釣り合わないのよ」

 

「何、で……?」

 

「性格なんじゃないか? ずっと口喧嘩してたしな……」

 

「そこにゆうっちとこうちゃんが止めに入って……まぁ、どっちも手を上げる事は無かったんやけどね」

 

 

凱斗は裕也とにこがまだビートライダーズに入っていた頃の残りの半年間、チームバロンのリーダーとして突然現れた男だ。今もビートライダーズをやっているであろう、ザックとペコを引き連れて度々ステージに乱入して来るヤツだった。そんな性格からか、チーム鎧武のステージを守ろうとするにこと口喧嘩となるのが恒例で、どちらも手を上げる事は無く裕也と幸汰が止めていた。

 

ただし朱果にはよく分からない。確かに凱斗は多少強引な所があるが、そんなににこと仲が悪いのだろうか。更に聞いたところによると凱斗は昔の記憶が一切無いらしく、もしかしたらにこや裕也が何か知っているのではないかとも思った。

 

 

「でもアンタみたいなタイプには優しいのよ……何か、自分のペースに持っていけなそうなタイプは」

 

「それ……地味に、私の……事、ディスって……ない? でも……凱斗、記憶喪失……らしい」

 

「まじかよ……アイツも散々だな。でもアイツの過去とかって誰も知らないし」

 

「そうなの……?」

 

「せやね。凱斗くんってチームに入って無かったんやけど、突然チームバロンのリーダーになったんよ。元々はシュラって子がリーダーやってたんけどなぁ」

 

 

チームバロンの元リーダーはシュラと言う男だった。実はシュラがリーダーだった時は、凱斗の時よりも荒れていて、時折他のチームのステージを暴力で奪いに来るような集団であり、まだ口喧嘩しかしなかった凱斗の時代の方がマシだった。

 

凱斗はここら辺に住んでる訳でも無く、本当に突然出てきた男である。その過去を知る者は、同じチームバロンだった連中の中でもいなかった。そして裕也とにこが脱退すると同時に、凱斗も脱退していた様だ。

 

希は裕也とにこが脱退するまで、チーム鎧武とはある程度関わっていたので知っている。だが興味の無かった朱果は、まずビートライダーズと言う集団が在るのも最近知ったらしい。

 

 

「……不思議」

 

「アンタも相当、不思議ちゃんよ」

 

「まぁ凱斗も、確かに変なヤツだよな」

 

「ウチらの周りには、特徴的な子がいっぱいおるからなぁ……」

 

 

そんな事を話しながら歩いていると、道の先には次々と中学生が歩いてくるのが見える。制服からして近くの学校である『音ノ木坂中学校』であろう。すると裕也達に見い知った顔が二つ、こちらに気付いたようだ。

 

 

「にゃ? 朱果ちゃーん!」

 

「……凛……?」

 

 

『にゃ』と声を上げる少女は、朱果を見つけると全速力で走って来る。その足の速さは朱果と同レベル、又はそれ以上ではないだろうか。朱果に飛び付くと頬をスリスリし始めて、朱果も笑っている。何とも微笑ましい事か。そして、この顔は裕也達にも馴染みがある。

 

 

「あっ、戦極先輩ににこ先輩! 後、スピリチュアル先輩お久しぶりです!」

 

「うん、凛ちゃん。ウチは東條希やから、しっかり覚えよか」

 

「凛は相変わらずだな……」

 

 

彼女は星空(ほしぞら)(りん)。見ての通り、元気が取り柄の女の子である。裕也達とは中学校が同じで、何とか話した事もあった。だが、朱果と知り合いというのは初めて知ったのだが。

 

その後からは眼鏡をかけた少女が『凛ちゃーん!』と息を切らしながら走って来る。運動が苦手なのだろうか、凛に追い付くと膝に手を付いてしまった。そして彼女は顔を上げる。

 

 

「お久しぶりです。戦極先輩!」

 

「よっ、花陽。久しぶりだな」

 

「花陽も元気そうね」

 

 

彼女は小泉(こいずみ)花陽(はなよ)。大人しい女の子で、凛の幼馴染みだ。花陽はにことアイドル関係で知り合ったらしく、世間とは狭いものである。そうなると、彼女も朱果と知り合いなのだろうかと疑問に思った。

 

 

「そこの公園で話そうよ! 行こ、朱果ちゃん! かよちん!」

 

「うん……!」

 

「待ってよ、凛ちゃーん! 朱果ちゃーん!」

 

「ウチらも行こか」

 

「そうしましょ」

 

 

まだ家に帰るまでは、時間がある。近場の公園で皆で話そうと凛が提案し、半ば強引だが朱果と花陽を連れて行く。裕也やにこ、希も笑ながらついて行った。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「へぇ……アンタ達って、小学校一緒だったの?」

 

「はい。でも……あれっ……? クラスが一緒だった気が……」

 

「どういう事なん?」

 

 

裕也とにこ、希と花陽は公園のベンチに座っている。凛と朱果は走り回って遊んでいる様だ。話を聞くところによると、朱果と凛と花陽は同じ小学校だったらしい。朱果が別の中学校に行った時に離れたんだとか。

 

だが何故か知らないが、花陽が急に悩み始める。朱果とは同じクラスだと言うのだ。だが朱果は花陽や凛よりも一歳年上の筈。そうでなければ朱果は今、中学三年生という事になってしまう。本当にどういう事なんだろうか。

 

 

「朱果? お前って凛達と一緒に卒業したのか?」

 

「え……? でも……私、昔の……記憶が、曖昧……で」

 

「どういう事なのよ」

 

 

朱果は昔の記憶が曖昧だという。そう言えば朱果の卒業した中学校とはどういう所なのか気になり、裕也は質問してみる。

 

 

「朱果って、何処の中学校卒業したんだ?」

 

「…………? 確か…………沢芽中…………? だった、かな……?」

 

「えっ、そこすっごい頭いい子が入る所だよね!? そんなに朱果ちゃん頭良かったのかにゃー!?」

 

「てか、何でそこも曖昧なん?」

 

 

沢芽中とは『私立沢芽中学校』と呼ばれる。東京都のかなり山奥にある、ユグドラシル・コーポレーションが私立で建てた中学校である。偏差値は恐ろしい程高かったり、運動神経等も良くないと入れないという超エリート中学校だった所だ。流石に沢芽中学校に通っていたというのは、裕也も内心驚いているし、凛も声を荒らげながら驚いていた。

 

それも朱果は頭を抱えながら、曖昧に答えている。考えてみれば彼女は、孤児院出身の筈である。沢芽中学校は入学費も、そこらの学校とは桁が違う。もしかしたらUTX高校と同じ位かもしれない。そうなると、それ程彼女という人材は重要だったのだろうか。

 

昨年度に沢芽中学校は閉校している。多分、入学者が余りにも居なかったから等の問題であろう。

 

そうなると朱果は飛び級をしているのだろうか。いや、今の日本の法律では飛び級は不可能な筈だ。更に謎が深まる。

 

 

「ユグドラシルって一体何なんだ……?」

 

「それ、アンタが一番知ってそうよね」

 

 

ユグドラシル・コーポレーションという会社自体が引っかかる。彼等はただの地域開発をやっているのか。だがそうなると朱果が、かなり優遇されている事になる。彼女が孤児院出身とはいえ、家にセキュリティ最強の高級マンションを与えるだろうか。

 

確かに裕也の親もユグドラシルで働いている。だが恐らく二年間は話していないし、妹とも連絡を取っていない。ユグドラシルがやっている事に微塵も興味が無かったのに、今は凄い気になってくる。

 

 

「まーまー、そんなに気にしてても仕方ないにゃ」

 

「確かに……ユグドラシル、なんて……どーでも、いい」

 

「いや、朱果ちゃんお世話になってるんやし、ちょっとは気にならんの?」

 

「んー……別に……」

 

「一体、何なんだろうなぁ」

 

 

この女子二人は中々の能天気である。凛には難しい話は分からないし、朱果も考えるのが面倒であった。確かに自分の過去は気になるのだが、今はそれよりもこの『今』を楽しみたい。

 

 

『もう……君から大切な物を奪うつもりは無い』

 

 

「…………」

 

 

ただ一つ、あの白い鎧武者が朱果に投げかけた言葉。これだけが気がかりだった。自分が失ってしまった物とは……? 奪われた物とは……? 全く思い当たらなかった。

 

 

「それにしてもなぁ……」

 

 

すると希が突然立ち上がると、花陽の後ろに回り込む。そして胸にぶら下がった二つの大きな球体を鷲掴みにした。その場の空気が一瞬固まる。

 

 

「すっかり大きくなったやん……花陽ちゃん」

 

「のっ……希先輩っ!? あっ……」

 

「のぞ……ぐぐ……やっぱり、そのボールを私にも寄越しなさい!」

 

「にっ、にこ先輩!? だ……ダレカタスケテェー!」

 

「おいおい……止めとけよ……」

 

 

希が花陽の胸をいやらしい手つきでわしわしすると、にこも何故か便乗しわしわしする。花陽からは変な声が漏れて、更には助けを呼んでいる。ここは野外なので、流石にまずいと裕也が止めに入る。一方、朱果と凛はというと。

 

 

「凛……胸部装甲は、大きく……なんなかった、ね」

 

「小学校から体格が変わらない朱果ちゃんには、言われたくないにゃ……」

 

 

お互いの胸を見つめ合い、毒を吐き合っていた。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「はっ……この時間は『スクールアイドルホットライン』の時間です!」

 

「あれ、確かそれって最近始まったスクールアイドルの、『ランキング』ネット配信だったか?」

 

「そうよ、裕也。DJサガラが配信する、スクールアイドル限定のネット配信なのよ」

 

 

すると花陽がスマートフォンを取り出して、とあるアプリケーションを開く。するとその画面にはバンダナを巻いた男、DJサガラと呼ばれる人気DJの姿があった。

 

 

『HELLO! アキバシティの諸君! DJサガラのスクールアイドルホットラインの時間だぜぇい!』

 

 

この番組の配信元もユグドラシルである。何だかんだでユグドラシルは『ラブライブ!』の主催を行っている筈だ。スクールアイドルへの注目も高く、この番組が始まった事により更に人気が出たそうだ。画面に二十位までのスクールアイドルの名が表示される。

 

 

『今日は『Littele Tokyo』の新PVが届いてるぜぇ! これで沖縄の『Lucky』を追い越して二位にランクインだぁ! だが『A-RISE』への壁は、まだまだ高いぜ。他のグループも頑張ってくれよな』

 

 

「凄い……Littele TokyoのPVが見れるなんて……今日は最高です!」

 

「やっぱり、A-RISEの壁は超えれない……か」

 

「このおっさんのテンションも相変わらずやね」

 

「凛はこっちのかよちんも好きだにゃー」

 

 

この番組では新PVの紹介も行ってくれる。更にこの番組の視聴は無料なので、気軽にPVが見れるという優れモノだ。これなら普通の人でも、スクールアイドルを簡単に見れる事が出来る。様々なスクールアイドルに視点が行くので、宝の持ち腐れというケースは無い。

 

だがにこの言った通り、A-RISEの人気とは不動なのだ。昨年度からずっと一位をキープし続けている。それ程、ダンスや歌に魅力があるという事だろう。

 

すると朱果が裕也の袖を引っ張ってくる。何か言いたげな事がある様だ。

 

 

「何だ、朱果?」

 

「あの……オジサン、この間……イチゴの、錠前……くれた、人」

 

「は……?」

 

「本当……ツバサ、さん……も、見た」

 

 

ただのネットDJからロックシードを貰うとは、どういう事だろうか。あの時は敵も多くてそんな事気にしてはいられなかったし、後から聞くのも忘れていた。だが、本当らしい。

 

 

「じゃあこの錠前について、何か知ってんのか……?」

 

「もしかしたら……でも、話す機会……絶対、無い」

 

「だよなぁ……」

 

 

相手は超人気のネットDJだ。連絡してまともに取り合ってくれる気がしないし、第一忙しいであろう。ロックシードの情報を聞く事は、諦める事にする。

 

花陽の方を向くと、何やらにこや凛と一緒に携帯を弄っていた。連絡先を交換している様である。

 

 

「ほら、最近は世の中物騒なんだから。何かあったら私達に連絡しなさいよね」

 

「凛も危なっかしいからって、携帯買ってもらったんだ」

 

「それって凛ちゃんが危なっかしいって事やない?」

 

 

凛は普通に言っているが、確かにそれは凛が危なっかしいという事だろう。そこに希がツッコミを入れる。だが最近の世の中は本当に物騒だ。近頃では通り魔事件なども多発している。更には化物も出てくるのだ。決して安全とは言えない。連絡先を交換していた方が良さそうだ。

 

 

「凛、花陽。俺とも交換しとくか?」

 

「あ、お願いします」

 

「私……とも、交換……する……?」

 

「もっちろんにゃ!」

 

 

裕也と朱果も、凛や花陽と連絡先を交換する事になった。時と場合によって使い分けようと、電話番号とメールアドレスを交換した。写真などを送る為であろう。

 

 

「んじゃあ、気を付けて帰るのよ」

 

「変なヤツ見つけたら、すぐ俺らに連絡先するんだぞ」

 

「先輩達、過保護にゃ」

 

「でも凛ちゃん。最近の都市伝説だと、怪物が出るって噂だよ」

 

 

それが都市伝説じゃないんだなと、四人は心の中で呟く。帰る方向は反対なので裕也達は凛と花陽と分かれた後、四人でまた道を歩き出していた。歩いている中、また朱果の過去についての話題になって行く。

 

 

「結局、アンタの過去ってどんなんなのよ」

 

「分かん……ない……」

 

「中学校の時の写真とか無いん?」

 

「小学校……は、ある……けど、中学校……は、無い」

 

「朱果は自分の過去とか、興味無いのか?」

 

「……少し、だけ」

 

 

朱果も少しは自分の過去に興味があるようだ。裕也は親に聞くという手段もあったのだが、そこまでして朱果の過去を炙り出す必要はあるのだろうか。そう言えば裕也は親との連絡手段を、全く持っていない。ユグドラシルの本社に行って会う事も可能だろうが、あの親二人は本当に忙しいらしい。妹は高校一年生だが、何処の高校に通っているのだろうか。あれ、もしかして家族の事こんなに知らない自分も、おかしいのだろうかと裕也は思ってしまう。

 

 

「ゆうっち、メール来てるで」

 

「本当だ……花陽……?」

 

 

メールの受信音が鳴る。それは裕也の携帯が設定していたモノだった。希に言われて見てみると、メールの送信者は『花陽』となっている。そう、先程分かれたばかりの花陽だった。何か嫌な予感がする。

 

 

「えっと……『変な割れ目がありました。どうすればいいのでしょう』……って、これ!」

 

「まずいヤツじゃないの!? 早く返信しなさい!」

 

 

添付された画像には、あのヘルヘイムの森を繋ぐクラックが写されていた。今、もしかしたら入って行ってるかもしれない。急いで『それには入るな』と返信しようとするが、花陽の携帯の電波が飛んでおらず『未送信』と表示されてしまう。まさか、もう入ってしまったのだろうか。

 

 

「っ……行くぞ!」

 

 

最悪の事態を防ぐ為に、裕也は添付された画像を見ながら走り出す。生憎、花陽は『位置情報設定』を余り気にせず使っていた様だ。いつもなら注意するところだが、この時に限っては有難いと思う。裕也はこんな所でサクラハリケーンを使う訳にもいかず、そのまま走っている。後ろには朱果、にこ、希も付いて来ていた。

 

その時、道の先から謎の人物が現れる。

 

 

「っ……!? アンタは一体何者よ……!」

 

「いやぁ、アンタとは失礼だねぇ」

 

 

人物、では無く腰に戦極ドライバーを着けている。ライダーだ。

 

その青を基調としたライドウェア。更には黄色いレモンの鎧を身に付けて、そのV型の胸部の鎧に右手に持ったレイピアはまさに公爵を想像させる。さしずめ鎧の公爵(アーマードライダーデューク)と言った所だろう。その雰囲気からは前に会った斬月同様、只者では無い事を感じさせられる。

 

裕也は戦いを避けられないと思ったのか、花陽が見つけたクラックの居場所を希の携帯に送信する。一番頼りになるであろう希に送信する事で、花陽や凛への即座な指示を可能にするだろう。

 

 

「お前らは花陽と凛の所に行ってろ! コイツは俺が相手する……」

 

「頼んだわよ! 裕也!」

 

 

にこがそう言って、デュークがいる方とは反対側の道を通って行く。少々遠回りにはなるが、危険は無いであろう。三人の後ろ姿を見送ると、改めてデュークと対峙する。

 

 

「さぁ、早く変身したまえ」

 

「やっぱり戦わなくちゃいけないのか……」

 

 

対人経験の薄い裕也だ。斬月からの敗北もあってか、勝率はゼロに近いと考えている。それでも花陽達を助ける。絶対に負けはしないと心に決意し、戦極ドライバーを腰にあてた。そしてブラッドオレンジロックシードを解錠する。

 

 

『ブラッドオレンジ!』

 

 

頭上のクラックから、ブラッドオレンジがいつもの様に現れる。斬月の戦いの記憶から手が震えるが、深呼吸をし落ち着かせ戦極ドライバーに施錠する。

 

 

『ロックオン!』

 

 

鳴り響くギター音。デュークはレイピアを杖の様にして、そこに両手と顎を乗せながら気長に待っていた。何なんだコイツはとも思いながら、勢い良くカッティングブレードを下ろした。

 

 

『ブラッドオレンジアームズ! 邪ノ道・オンステージ!』

 

 

そして鎧が降りてきて、武神鎧武へと変身が完了する。デュークはというと、その姿を見て何故か歓喜していた。

 

 

「やっぱりカッコイイじゃないか! さぁ、私を楽しませたまえ」

 

「てめぇの娯楽の為に、やってるんじゃねぇんだよ!」

 

 

武神鎧武は大橙丸を握り締めて、低姿勢になりながら走った。デュークは相変わらず棒立ちのまま、武神鎧武の攻撃を待つ。

 

大橙丸で斬りかかると、デュークは『レモンレイピア』で華麗に攻撃を流す。武神鎧武は負けじと向きを変え、無双セイバーのバレットスライドを引きトリガーもほぼ同時に引く。無双セイバーの銃口からは、二発の弾丸が放たれた。

 

一発目はデュークがレモンレイピアで弾き、二発目は胸の鎧に当たった。だがダメージは薄そうで、デュークは何ともないように手を叩く。

 

 

「素晴らしい動きだが、まだまだその力を引き出せていないようだね」

 

「何っ……?」

 

 

話を聞いている余裕など無い。武神鎧武は体制を整えると、大橙丸と無双セイバーの二刀流で真正面からX字に斬りかかる。だが、その攻撃もレモンレイピアで受け止められた後、捻れるように大橙丸と無双セイバーを弾かれ、レモンレイピアが武神鎧武の身体を突いた。

 

 

「ぐぅっ……」

 

 

思わず、よろけて地面に手を付いてしまう。そこにデュークはレモンレイピアを突き刺してくるが、武神鎧武は横に転がりながら回避する。武神鎧武は立ち上がると、デュークはまた話し始めた。

 

 

「まっ、これも私好みにチューニングしてるから、性能的には今の所上かもしれないけどね。それでも君のドライバーは、もっと凄まじい力を引き出せる筈だよ?」

 

「チューニングとか出来んのかよ……」

 

 

このアーマードライダーは一体、何者なんだろうか。この得体の知れない戦極ドライバーの開発者か? そう考えるのが有力だ。とすると、この戦極ドライバーの性能テストという事だろうか。それなら相手の思う通りにやる訳にもいかない。

 

 

「だったら、こっちだ!」

 

 

『キイチゴ!』

 

 

「私の知らないロックシードか……?」

 

 

キイチゴロックシードを解錠すると、このアーマードライダーでも知らないロックシードなのだろうか。少し疑問に思うが、気にせずブラッドオレンジロックシードを取り外し、キイチゴロックシードを施錠する。

 

 

『ロックオン!』

 

 

「へぇ、面白いじゃない……かっ……!」

 

「危ねっ!? おらァ!」

 

 

デュークがスキありとでも言うかのように、ブラッドオレンジの鎧が消えたライドウェアにレモンレイピアを突き刺してくる。それでも裕也は身体を仰け反らせて回避し、デュークに蹴りをいれながらカッティングブレードを下ろした。

 

 

『キイチゴアームズ! シュパッと・ボンバー!』

 

 

「行くぜ! お前もフルーツジュースにしてやる!」

 

 

アームズチェンジが完了すると同時に、生成されたキイチゴクナイをデュークに投げつけていく。流石に起爆するとは知らなかったのか、デュークは少し戸惑っていた。

 

 

「爆発するのかっ……!? まだまだ分からない事が沢山あるねぇ……!」

 

「それはこっちのセリフなんだよ!」

 

 

楽しそうにレイピアを振るうデュークと、荒々しくクナイを投げる武神鎧武。次第に遠距離攻撃を可能としている武神鎧武が押していく。キイチゴクナイが当たる確率も高くなってきた。

 

だが、遂にデュークが動く。

 

 

「これならどうかなっ……!」

 

 

『カモンッ! レモンスカッシュ!』

 

 

カッティングブレードを一回下ろしたのだ。デュークはレイピアを突き刺すモーションを行いながら回転し、こちらに向かってくる。ロックシードのエネルギーも纏っている為、くらったらタダじゃ置かなそうだ。焦る裕也はキイチゴロックシードを取り外し、無双セイバーに施錠する。

 

 

「えっ、やばっ!」

 

 

『ロックオン! 一・十・百……』

 

 

無双セイバーにエネルギーが充填されていくのだが、このままではあの必殺技に当たりかねない。ならばと、上空に思いっきり飛び上がり、無双セイバーのトリガーを引きながらデュークに向かって振りかざした。

 

 

『キイチゴチャージ!』

 

 

「うらぁぁ!」

 

 

無双セイバーから無数のキイチゴクナイが放たれる。そのキイチゴクナイはデュークのエネルギーとぶつかり合い、巨大な爆発を起こした。その巨大な爆発に武神鎧武も飲み込まれ、石のブロック屏に軽く吹き飛ばされる。受身をとっていたからか、被ダメージ量は少ない。

 

爆発の煙が薄れてくると、そこには誰も居なかった。多分、逃げられたのであろう。裕也はロックシードを閉じ、変身を解除する。

 

 

「ったく……一体、何なんだって言うんだ」

 

 

この間の斬月といい今のデュークといい、何故裕也を狙うのだろうか。あの不気味な怪物であるインベスを協力して倒せばいい筈なのに……と考えていると、とある事を思い出した。

 

 

「あっ……花陽と凛!」

 

 

そういやクラックを見つけた花陽と凛の所に、向かっている途中だったというのをすっかり忘れていたのだ。しまったと思いながらも、後悔するよりも先に目の前の事だと裕也はこの場を後にした。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

それを見つけたのは本当に偶然だった。

 

凛がいつもの様に野良猫を見つけ、猫アレルギーなのに猫が好きなので追いかけるだけ追いかけて行く。ただ、いつもの事をしているだけであった。

 

だが今日は何かが違った。何かと言えば、猫の向かった先には奇妙な森に繋がる割れ目があったからだ。猫も凛も不思議そうに見ているし、花陽自信不可解に思っていた。もしかしたら都市伝説にある『森に繋がる扉』なのかもしれない。

 

誰かに相談してみようと考えていると、裕也の事が頭に思い浮かんだ。すぐさま割れ目の写真を撮ると、裕也の携帯に転送する。その直後だった。

 

野良猫が森の中へと入って行ってしまった。それを見かねた凛を危ないよ、とその猫を追いかけていく。花陽も凛が一人で入って行くのは大変危険だと思い、後を付いて行った。

 

 

「変な所だなぁ……」

 

 

周りには一面、蔦が生い茂っている。生えている木や、地面にも……そこら中に蔦が張り巡らせていた。そしてその蔦に生えているのは……幻想的な紫の果実。

 

食べたい。

 

 

「……ううん。凛ちゃーん!」

 

 

謎の食欲に誘われるも、それを何とか振り切り花陽は凛の名前を呼ぶ。すると「猫ちゃーん!」と叫ぶ凛の声が聞こえる。たちまち花陽は声のする方向に向かって、歩き始めた。

 

暫らくすると木の影に、オレンジ色のショートヘアが見えてくる。凛だ。

 

 

「凛ちゃん!」

 

 

その名前を呼ぶが、凛は何かを見てこちらには気付いていない。駆け寄り凛の顔を見てみると、何やら怯えている顔に見える。

 

凛の目線の先には、威嚇する先程の野良猫。

 

そして、その奥。

 

灰色の鬼の様な化物が数体と、まるで牛が二足歩行で歩いているかの様な化物が一匹。謎のスーツを着た人物と戦っているのだろうか。

 

 

「何……あれ……」

 

「……ん?」

 

 

花陽の声に気付いたのだろうか、謎の人物はこちらを見てくる。凛と花陽は恐ろしさに身を寄せあった。その頭は白い髪の毛の様に、前方には『十五』と金色で形成された文字を付けている。胸の部分には骨の様な鎧を着て、顔は黒い。腰には小刀のついたバックル、右手には骨をイメージした大剣が握られてあった。身体からはどす黒い殺気が放たれている。もしかしたら、自分達は殺されるのではないだろうか。

 

 

その『十五の黒鬼』は花陽と凛を見た途端、先程の殺気が嘘かのように長剣を地面に落としてしまった。凛が「え?」と声を漏らす。すると牛と鬼の怪人は、動揺している黒鬼の背後を攻撃した。

 

 

「ぐぅ……!?」

 

 

ハッとしたのか、黒鬼は牛と鬼の怪物から距離を取り、長剣を握り締める。すると牛と鬼の怪物は、花陽と凛に標的を変えた。冷や汗が落ちる。

 

 

「えっ……?」

 

 

威嚇し続ける猫と、そんな声しか出ない凛と花陽。足はすくんで動けず、まさに絶体絶命と言っても過言では無かった。

 

だがそんな状況は意外な方法で打開される。

 

 

「捕まってろ」

 

「ふぇ……?」

 

「にゃ……?」

 

 

あの黒鬼が一瞬で猫の首を掴んだ後、凛と花陽を脇に抱える。そして全速力で森の中を走り出した。凛は突然抱えられて、手足をバタバタさせながら暴れ始めた。

 

 

「にゃ……にゃぁぁぁぁぁ!?」

 

「暴れるな、猫二匹!」

 

 

暴れた後にそう怒鳴られて、ビクッとする凛。野良猫は毛を逆立たせて、黒い手に噛み付いていた。花陽は驚き過ぎて口を開けながら唖然としている。

 

 

「……かよちん、どっから入ってきた」

 

「あああ、あそこです!」

 

 

初めて会ったはずの黒鬼に、低い声でかよちんと言われて焦りながらも、先程潜って来たクラックを指さす花陽。黒鬼は一気に方向を変え、地面を蹴る。そしてクラックを勢い良く通過した。

 

 

「相変わらず猫には嫌われるな……」

 

 

そう呟くと野良猫を優しく下ろした。だが噛み付いた手を話す様子も無かったので、十五は猫の首を掴んで思いっきり引き剥がす。凛と花陽も優しく下ろしてもらい、アスファルトに膝をついた。

 

 

「もう入って来るなよ。面倒だ」

 

 

黒鬼がクラックに手を掛けると、クラックが締まり始める。花陽が「待って」と言う前に、黒鬼はクラックの向こう側に消えてしまった。静寂は暫く続いていたが、猫が逃げていくと同時に二人の肩の力が抜ける。

 

 

「凛ちゃん! 花陽ちゃん!」

 

 

路地の向こう側から希が叫ぶ。後ろにはにこと朱果も居た。三人は凛と花陽の事を見つけると、急いで駆け寄ってくる。にこが花陽の目の前まで来た。

 

 

「花陽! 大丈夫なの!?」

 

「あ……え?」

 

 

にこに声をかけられて、ハッと気を取り戻す花陽。先程、目の前で何かがあったのだが、いきなり過ぎて何が何だか分からなくなっていた。凛はと言うと、

 

 

「凛……怪我、無い……?」

 

「こ……怖かった……」

 

 

朱果に声をかけられたものの、語尾が猫語から標準語に戻っている。まだ、黒鬼や牛の存在に恐怖していた。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「何で凛とかよちんが……」

 

 

そう吐いたのは、凛と花陽をヘルヘイムの森からつまみ出した黒鬼。長剣『黄泉丸』を片手に道を引き返していた。勿論、あの怪物を消す為である。何故か凛と花陽という、イレギュラーが入って来てしまったのだが。

 

 

「俺との勝負が怖くて逃げ出したか」

 

「なわけ、あるか」

 

 

ハハハ、と嘲笑う牛のファントム『ミノタウロス』が灰色の鬼の怪物『グール』を引き連れて、黒鬼を囲み二度と逃げられないようにした。だが、黒鬼は余裕を持っている様にも見える。

 

 

「やれ!」

 

 

ミノタウロスの命令と共に、グールが手に槍を持ち黒鬼に襲いかかる。黒鬼は黄泉丸を振り回し対抗するが、斬っても斬ってもグールにダメージは無い。

 

 

「グールは魔法でしか倒せん。『指輪の魔法使いの武神』では無い貴様に、何が出来ると言うのだ!」

 

「はぁ……」

 

 

態々説明をするミノタウロスに呆れながら、黒鬼は黄泉丸でグールを一旦薙ぎ倒し距離を取る。そして腰から錠前を取り外した。

 

 

「何だ、それは」

 

 

それは『十五の顔が描かれた錠前』であり、ミノタウロスはそのモノを実際に見た事は無かった。黒鬼は戦極ドライバーの錠前を取り外すと、十五の顔が描かれた錠前を解錠した。

 

 

『ウィザード!』

 

 

すると骨の様な特殊なクラックが、黒鬼の上空に開く。そこからは魔法石を象ったような巨大な顔が飛び出して来る。ミノタウロスは『それ』を見た瞬間、身体が震え始めた。

 

 

「貴様……!? 何故、指輪の魔法使いの武神を召喚できる!?」

 

「いや、召喚じゃねぇよ。てか、上のヤツらから聞いてないのか……お前も運が悪かったな」

 

 

ミノタウロスの言葉を否定しながら、十五の顔が描かれた錠前『武神十五ライダーロックシード』を戦極ドライバーに施錠した。

 

 

『ロックオン!』

 

 

「俺は十五の武神の力を操る者……」

 

 

黒鬼は静かに呟き、ゆっくりとカッティングブレードに手をかける。そして力強くカッティングブレードを下ろした。

 

 

『ウィザードアームズ! シャバドゥビ・ショータイム!』

 

 

ロックシードが開かれると『武神ウィザード』の頭を、黒鬼が被った。そして武神ウィザードの鎧が四方向に開かれて、アームズチェンジが完了する。身体を紫の魔法陣が通過し、その中に右手を突っ込むと『ウィザードソードガン』を取り出し、名乗った。

 

 

「……フィフティーンだ」

 

「殺せぇぇぇぇぇ!」

 

 

ミノタウロスが殺意を込めて叫び、殺気の漂ったグールが一斉に襲いかかった。黒鬼……いや『アーマードライダーフィフティーン』はウィザーソードガンのトリガーを引き、発砲する。その弾丸は自在に動き、確実にグールを仕留めていく。

 

 

「はぁっ!」

 

 

ウィザーソードガンをガンモードからソードモードに変形させ、グールを次々と斬り裂いていく。ウィザーソードガンは黄泉丸と違い、魔力を使用している。と、すると魔法しか効かないグールには相当なダメージになっているのだ。更にグールとは他の生物とは違い、知能が極めて低い。単純な戦闘しかできないグールを倒すというのは、武神の力を操るフィフティーンにとっては敵では無かった。

 

 

「残念だったな」

 

 

『ウィザードオーレ!』

 

 

カッティングブレードを二回下ろすとギター音が鳴り響き、ウィザーソードガンの刃に炎が纏う。そして飛びかかってくるグールを回転しながら一閃────それだけで全てのグールが炎に包まれ爆散した。フィフティーンはミノタウロスを見つめる。

 

 

「やめろぉ! 俺は死にたくねぇぇぇ!」

 

 

ミノタウロスは随分と弱気だった。先程の威勢は何所へ行ってしまったと言うのだろうか。だがフィフティーンは、ミノタウロスへ進める足を止めない。恐怖からか人間態に戻ったミノタウロスの胸ぐらを掴み、持ち上げた。

 

 

「お前が一番知ってんだろ……この世界には希望も絶望もあるんだよ。この力が俺にとっての希望なら……お前にとっての絶望だな」

 

「ぜ、絶望なんてしねぇ! 俺らはこの世界と死の世界をひっくり返すんだぁぁ! お前を捕らえて、完全復活するんだぁぁ!」

 

「……下らん」

 

 

ミノタウロスらの目的は、フィフティーンを使って現世と黄泉をひっくり返し一度は死んだ自らを完全復活する……だがフィフティーンにしてみれば、相当下らない事である。協力する気など、微塵も湧かなかった。

 

 

「一度、死んだヤツが戻ってこようとするな……まぁ、俺が言えた義理じゃないがな」

 

 

フィフティーンが低い声でそう告げる。ミノタウロスは、確実なる死への恐怖に襲われる。

 

────消される。

 

この世から存在ごと消されてしまう。気が動転した。

 

 

「お前が俺らに抵抗していけば、さっきのガキ共はどうなるんだろうなぁ! ぶっ殺されてお前も絶望するんだろぉ! アヒャヒャヒャ……」

 

 

『ウィザードスパーキング!』

 

 

無情に鳴り響く電子音声とギター音。ウィザーソードガンをガンモードに戻し、炎が溢れる銃口を人間態のミノタウロスの頭に当てる。焦げ落ちる髪の毛を見ながら、ミノタウロスの首筋を汗が滴り落ちてゆく。

 

 

「……俺を殺しに来ても構わん。ただ……」

 

 

静かに……それでも怒りが込められた声で。

 

 

「凛とかよちんに手を出したら殺す」

 

 

ヘルヘイムの森を、一発の銃声が響いた。

 

 

"骸"の周りには肉塊が転がる。血溜まりの中央に"骸"が無表情で立ち尽くしていた。

 

 

 

 

 




始まりました第貮幕 黄金復活編です

早速出てきたアーマードライダーフィフティーン! ウィザードアームズを使用してミノタウロスを圧倒。いやミノタウロス弱いか……今回は謎が多いまま終わりました。

そして凛ちゃんとかよちんの登場です。凛ちゃんとかよちんはにこや希達と知り合いという独自設定です。はっきり言うと、

小学校A 凛 花陽 朱果
小学校B 裕也 にこ

音ノ木坂中学校 裕也 にこ 凛 花陽 希
沢芽中学校? 朱果

音ノ木坂学院 裕也 にこ 希 朱果


こんな感じです


朱果の謎が深まってしまいました
・小学校と中学校の記憶が曖昧
・凛や花陽と同級生?
・閉校した沢芽中学校とは?

……やっぱり重要キャラなんですよね。朱果ちゃん

そしてフィフティーンは凛と花陽を知っている。どうしてでしょうねぇ……


次回はまたフィフティーンの登場!凱斗さん回はもうちょっとしたらです
そしてまた動き出すメガリバース計画……あれってライダーの喧嘩無かったら普通に面白かったと思うんですけどねぇ

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