ラブライブ!-女神と武神のアイドル戦極記- 作:Professor灰猫
運命とは決まっているものだろうか。
力を手に入れた時……運命が変わるのか?決まるのか?
それとも力を手に入れた時には既に決まっているのか?
それは誰にも分からない……。
壹話 変身
「へい、フルーツパフェ2つ。おまちどさん。今日はブラッドオレンジだ」
「ほぇー……珍しい奴だな」
「ブラッドオレンジって美味しいのかしら……」
「まぁまぁ食ってみろって」
「「いただきます」」
俺とにこはアイドルショップをある程度回った後、行きつけのフルーツパーラー『ドルーパーズ』に来ていた。時刻は12時過ぎ。俺らはさほどお腹は減っていないので、ここで済ませる事にした。
フルーツパフェを出してくれたのは、ここのマスターの
ここのフルーツパフェは日替わりで、乗せるフルーツが変わるのだ。とある日はバナナ、とある日はブドウ、とある日はメロン……など毎日毎日全く違うフルーツになる。
今日は……まさかのブラッドオレンジ。果肉が血の色をしている……ちょっと変わったオレンジだ。余り、店などに売っているという訳でも無いので、食べるのは初めてだ。俺らは恐る恐る、口に運ぶ。
「これ……美味いな」
「そうね……普通のオレンジより甘い気がする」
にこの言う通り、このブラッドオレンジは普通のオレンジよりも甘い。パフェの生クリームの甘さと共に、ブラッドオレンジのフルーツの甘さが口に広がる。これはこれで悪くない。まぁ普通のオレンジでも甘さの後にサッパリした味が来るから、それはそれでいいんだけどな。
まぁ、取り敢えず坂東さんのフルーツパフェは美味い。俺らはスプーンを持っている手が止まらず、ひょいひょいと口に運んで行く。
俺らが食べている途中で、天井の隅にあるモニターにとあるCMが流れて来た。
『New Generation New Life!秋葉原の皆様にユグドラシル・コーポレーションが提案する、新しい暮らしです』
「すっかりユグドラシル・コーポレーションもデカイ会社になっちまったなぁ……」
「今では電気、水道、ガスが買収されて……殆どがユグドラシル・コーポレーションから送られてるんだってな」
「私はUTX学院を買収した事しか知らないんだけど……」
それは大企業『ユグドラシル・コーポレーション』のCM。ユグドラシル・コーポレーションとは、主に秋葉原等の地域開発などを行っている。にこの言った通り、UTX学院という音ノ木坂学院よりも遥かに大きい高校ですらも買収した。そんな金がある事に驚きだ。
「そう言えば祐也のお父さんとお母さんもユグドラシル・コーポレーションで働いてるんでしょ?凄いわよね」
「そうなのかなぁ……」
そう……俺の父さんと母さんはユグドラシル・コーポレーションの開発部という所で働いているらしい。正直、どんな事をしているかは全くとして分からないので、全然実感というものがわかない。
そんな事を言ってる俺らをよそに、もう一つ別のCMが流れてくる。
『What'cha do what'cha do?I do “Private Wars”ほら正義と狡さ手にして』
「このスクールアイドルってのも有名になったよなぁ……あ〜ライスだっけ?」
「アライズよ!」
「んでスクールアイドルの大会────ラブライブ!の第1回の大会で優勝したんだよな」
「……」
「坂東さん……その話は……」
「あ……すまんなにこちゃん……」
「いいのよ……」
流れて来たのは有名スクールアイドル『A-RISE』のCMだった。坂東さんが変に間違ったのを、にこが思いっきりツッコミを入れる。
A-RISEは先程話したUTX学院のスクールアイドルで、にこもそこを目指していたのだが、入学費的な問題と、学力の問題で諦めた。UTX学院は受験に5万円、入学費に100万円と高額でお嬢様校みたいな感じの所である。ちなみに共学です。学力に関しては言う事もあるまい。にこは頭も余りよろしくないので音ノ木坂学院でもギリギリだった。勉強は俺が教えた。
坂東さんがスクールアイドルの大会『ラブライブ!』の話をした時に、にこが黙って俯いてしまったのは理由があるのだが……まぁここでは話さないでおこう。
まぁ何だかんだ話している内に、フルーツパフェを食べ終わってしまった。
「ご馳走様……祐也、UTXに行くわよ。はい、お代」
「へいへい。あ、フルーツパフェは俺の奢りでいい」
「本当?ありがと」
フルーツパフェはにこに奢ってやった。男だからな、連れの女の子に奢るぐらいなら当たり前だと思う。あとアイドルグッズとかの荷物も、俺が進んで持ってやってる。
「祐也。UTX学院に行くなら、幸汰にツケ払えって言ってくれねぇか?」
「アイツまだ払ってなかったんすか……」
「あぁ。1万1千円分な」
幸汰とは俺の後輩だ。特にとあるダンスチームに入っていた時に、よく絡んでいた奴だ。コイツの紹介は後でいいな。
「あ……あとな。にこは何でツインテールじゃないんだ?」
「何か家出てくる時に、リボン取ったんすよね……オフだからじゃないですか?」
「まぁ、ストレートも似合うぞって言っといてくれ」
「分かりました」
にこは何故だか知らないが、家を出てくる時にリボンを取って、ツインテールではなくストレートにしたのだ。似合ってるから全然良いんだけど……。
俺らは店を出ると、UTX学院に向かった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「相変わらずでけぇよなぁ……」
「ほ、ほら!A-RISEよ!」
目の前にはUTX学院がある。やはり毎回見る度にデカイと思う。巨大モニターには先程のA-RISEが映っている。
歌いながらダンスをするのには相当な体力がいるらしく、笑顔を保つのも難しいらしい(にこ情報)。それをやりこなしている彼女達は、血の滲むような練習をこなしてきたのだろう。
「ちょっとあの子可愛くない……?芸能人かな?」
「いや多分違うと思うけど……綺麗だよね」
「守りたくなるような可愛さだわ……」
「隣のイケメンって彼氏さんかな?」
「人形が肩を並べているみたい……」
「わぁ……」
「……」
周りがざわついている。後半の方は余り聞き取る事が出来なかったが、にこが可愛いというのは認識できた。
確かに今髪を下ろしているにこは、芸能人と思える程美人だ。だが当の本人は、目を輝かせながら、モニターに夢中になっていて聞いていないようだ。
「祐也ー!」
すると後ろの方から、俺を呼ぶ声がするので振り向く。そこには手を振りながら走ってくる奴がいた。
「幸汰じゃん!久しぶりだな!」
「おう!元気だったか?」
「お陰様でな!そういや坂東さん、ツケ払えって言ってたぞ」
「あはははは……今度、払えたら払うよ」
この元気な奴が
幸汰は俺やにことも幼馴染みで、中学までは一緒だったんだが、高校となった時に俺は音ノ木坂学院。そしてその翌年に卒業した幸汰はUTX学院に入学したのだ。コイツも余り勉強は出来ないので、スポーツ推薦でここに入ったんだとか。運動神経だけは、ずば抜けてたからな……。
「そういや今日は1人か?」
「いや、にこも一緒にいるぞ」
「に、にこも!?……っていねぇじゃねぇか」
「あれ……?さっきまで、ここにいたんだけどな……」
幸汰に言われて隣を見ると、にこがいなくなっていた。さっきまでモニターに釘付けだったんだけどな……。
「取り敢えずにこを探さねぇとな……」
「祐也!お、俺も手伝うよ!」
という事になり、俺は幸汰と一緒に、にこを探す事になってしまった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
祐也に「トイレに行ってくる」などと言うのは恥ずかしかったので、祐也には黙って近くのトイレに行って用を済ませた後に、普通に歩いてたんだけど。
「何よこれ……」
ビルの間の路地に、ジッパーの様な裂け目が浮かんでいたのだ。流石に最初は見間違えかと思って、目を擦ったんだけど……やっぱり見間違えじゃなかった。近くを歩いている人は、全く気付いていないようだ。
裂け目の奥を良く見てみると……不可解な森が広がっていた。木には蔦がグルグルと巻かれ、そこには見た事も無い紫色の果実がなっている。
「行かない方が良いわよね……」
未知の世界過ぎて、逆に恐怖心を感じた。入ったら怪我をする……もしくは帰れないのかもしれないと。だが……
「きゃっ……!ハンカチが……」
良いタイミングというよりは、悪いタイミングと言った方がいいだろう。急に強い風が吹き、先程まで手を拭いていたピンクのハンカチが飛ばされて、裂け目の奥の森に入っていってしまった。
普通のハンカチなら取りに行かないだろうが……そのハンカチは、私の誕生日に祐也から貰った大切なハンカチなのだ。
「ちょ、ちょっとぐらいなら大丈夫よね……」
そう思ってハンカチを探す為にも、ワンピースのスカートを上げながら、裂け目の中に足を踏み入れた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「いない……そう遠くには行ってないと思うんだけどな……」
「トイレにでも行ったんじゃねぇか?」
「それだったらもう戻って来てもいい筈なんだが……」
俺らは必死ににこを探していたが、見つけられる気配が無かった。幸汰の言う通り、トイレならば戻ってきてもいい筈なのだ。だが、戻って来る気配も無い。
「おい!祐也!」
突然、幸汰が俺を呼び、とある方向に指を指す。
そこはビルの間の路地……だが、そこには信じられない物があった。
「何だこの裂け目……」
「奥は森か?」
この世のモノとは思えない裂け目が浮かんでいた。そして幸汰の言う通り、裂け目の奥には森が広がっている。
「もしかして……にこはここに?」
「どうだろうな……取り敢えず行ってみようぜ!」
もしかしたらという事もあるので、幸汰に言われた通りに、裂け目を越え森に足を踏み入れる。
「何だここ……」
「薄気味悪ぃな……」
その森は、全てが蔦で覆われていて、別次元にも思えるような所だった。その蔦には紫色の皮で覆われた果実……?だろうか。そんな物がなっている。
それを見るととてつもない食欲に襲われた……が、流石に未知の物は危ないだろう。毒なんか入っていたらたまったもんじゃない。幸汰が手を出さなきゃいいが……
「美味そうだな……」
「やめろよ幸汰……そんな物に手を出すな」
「お、おう……わりぃわりぃ」
思っている側から幸汰が、果実をもぎ取って食おうとしていた。本当に毒とか入ってたらどうするつもりなんだよ……。
「……ん?あの服着てるのって、にこじゃないか?」
「え……まじで?おーい!にこ!」
「えっ!?祐也と……幸汰!?」
「よう、にこ!久しぶり!」
ピンク色のワンピースが見えたので、もしかしたらと思い、幸汰が叫ぶ。やはりにこだった。久しぶりの再開の所悪いんだが、早くこの森から出たい。
「そういや祐也……こんなの拾ったんだけど……」
「なんだそりゃ?バックルと……錠前か?」
「これ……」
にこが手渡して来たのは……小刀が付いた、黒いバックル状の物だった。最初は玩具なんじゃないかと思ったが、にこから手渡された時のバックルの重量で玩具では無いと、一瞬で分かった。さらにもう一つ、『L.S-07』と書かれた錠前を渡された。これらには見覚えがある。
そう……今朝見た夢に出てきた、青い鎧武者が使っていた物と同一だった。同一かと言われてみればそうでも無くて、錠前は形状こそ同じだが、フルーツをかたどっているような部分の色が、オレンジから赤黒くなっていた。さらには黒い茨模様まで付いている禍々しい物だった。
物は試しと思い、腰にバックルをあててみる。
「うぉぉ!?すっげぇ!」
「自動で巻かれた……?てか腰になんてものぶら下げてんのよ!」
「本当だ……刀も付いてる……」
なんと黄色いベルトが自動的に巻かれてしまったのだ。黒かったプレートには……鎧武者だろうか……?そんな顔が浮かび上がったが……まさかな。そして左腰には錠前を填めるようなホルダー、右腰には黒い刀がぶら下がっている。
すげぇと叫んでいる幸汰の方を見る。すると幸汰の手には、まだ果実が握り締められていた。
「おい……まだ果実握り締めてんのかよ……」
「あ、バレた?持ち帰ってから食ってみようと思って……」
「幸汰、馬鹿じゃないの?こんな物食べれないと思うわよ……?ちょっと美味しそうだけど……」
「ハァ……んなもん捨てんぞ……ぉ?」
「え……?果実が錠前に変わった……?」
「えぇぇぇぇ!?何かすげぇ!」
幸汰から取り上げて捨てようとすると……その果実は俺の右手の中で、急に光出した。そして見ると、その果実は錠前へと変化していた。幸汰だとなんなかったのに……。流石に、俺ら全員驚いている。
一つは『L.S-05』と書かれた錠前。このデザインされた果実は……パイナップルだろうか?もう一つは他の2つよりも一回り大きく、『L.V-01』と書かれた錠前。これは……桜……?果実ですらない。
「これ何するんだろうな?アクセサリーか何かか?」
「キーホルダー?かしら……」
「んな物、作ってどうなるんだ……」
俺はにこの言った事にツッコミを入れる。流石にそれは無いだろう……とそんな感じに、俺らは目の前の光景に盛り上がってしまっていた。
だが盛り上がってるのも束の間……恐怖は突然現れる。
《キュルァァァァァ!》
「「「え……」」」
謎の奇妙な声の方向に、俺ら3人は視線を向ける。そこには……灰色の怪物が3匹……こちらに向かって来ている。
「ちょっと……何よ!あれ!」
「おい……やべぇんじゃねぇの……」
「にこ!祐也!逃げるぞ!」
「きゃっ!?」
俺はにこの手を掴み、さっきの裂け目がある方向に向かって全力疾走する。幸汰もしっかりついて来たので、ただひたすら走っていた。
そして裂け目までの距離が、残り十数メートルという所で、誤算が生じた。
「痛っ!」
「にこ!大丈夫か!?」
にこはヒールを履いていたのだ。ヒールではこの森の中を走るのには、適する筈が無い。おんぶすれば逃げ切れるのではとも思ったが……怪物はすぐそこまで来ていた。
「っ……どうすれば……」
『うらぁぁぁぁぁっ!』
『グゥ"ォ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!』
「まさか……!」
ここで今朝の夢の事を思い出した。青い鎧武者は、この小刀が付いたバックルと錠前を使って、怪物をやっつけていた。俺は後戻りは出来ないと思い、賭けに出た。
「幸汰!にこをおぶって、木の陰にでも隠れてろ!あとこの荷物も持っててくれ!」
「お、おう!分かった!」
「え!?祐也何するつもりなの!?」
幸汰はにこをおぶって隠れたな。にこは何故か暴れているが……気にしちゃいられない。俺はあの茨模様が付いた、赤黒い錠前を解錠した。
「よし……変身!」
『ブラッドオレンジ!』
「え!オレンジか!?」
「な、な、な、何あれ!」
ドスの効いた音声が鳴り響く。ブラッドオレンジなのか……これ。解錠するとジッパーの様な裂け目が頭上に現れ、そこから赤黒いオレンジの鎧が降りてくる。考えてなどいられないので、俺はこの錠前をバックルの窪みに施錠する。
『ロックオン!』
施錠すると、ベルトからギター音が流れて来た。そして隣の小刀を、果実に向けて倒した。
『ブラッドオレンジアームズ!邪ノ道・オンステージ!』
小刀を倒すと激しいギター音が鳴り響き、またドスの効いた悪趣味な音声が響き渡る。そして赤黒いオレンジの鎧が降りてきて、頭を覆い被さった。それと同時に身体は青いパワースーツで覆われ、顔なども覆われてしまう。
「「「……」」」
そして鎧が開くと、俺はにこと幸汰の方を振り向き、見つめ合った後……。
「「「えぇぇぇぇー!?」」」
3人の叫び声が、この奇妙な森に響き渡った。
そう……俺は夢に見た青い鎧武者と、似た姿に変身していたのだ。
という訳で、祐也が変身してしまいました。
なんかにこを書くとアホって言うより……何か普通に冷静な人になってしまうのは申し訳ございません。
ただやっぱり幸汰(紘汰さんぽい人)を書くとただのアホになってしまう。
……ラブライブ!なのに女1:男3になってるのは何故だ……。