これから宜しくお願いします!
雪歩が妹って•••なんか、良いですよね。
「お兄ちゃん、起きて」
そんな優しい声と共に、身体を揺さぶられる。
重い瞼を開けると、そこには茶髪でボブヘアーの少女の顔があった。
「ああ、もう朝か」
起き上がり、欠伸を噛み締めながら身体を伸ばす。
「おはよう、雪歩」
少女の名前は萩原 雪歩、俺の双子の妹だ。
「おはよう、お兄ちゃん。もう7時だけど、大丈夫?
今日は早めに学校に行くんじゃなかったっけ?」
「•••へ?」
時計を見ると、短針は7時を指していた。
「ぁああああああ!!!」
慌ててベッドから飛び起きる。
「やばい!今日会議があるから早めに行かなきゃ駄目なんだった!
遅れると大地に説教食らっちまう!雪歩は先に降りといてくれ!」
速攻で身だしなみを整え1階に降り、用意してあった朝ご飯を一瞬で平らげ、慌ただしく玄関のドアを開ける。
「行ってきまーす!雪歩、起こしてくれてありがとな〜!」
時刻は7時10分、集合は25分だ。学校は徒歩圏内だから、電車に左右されることは無い。まるで自分を応援してくれているかのような追い風と共に、萩原 時雨は全力で駆けて行った。
間に合わなかった。
俺が校門前に着いたのは7時30分、完全に遅刻だ。
だがここで諦める訳にはいかない。まだ手はある。
汗だくで息を切らしながらいけば、どれだけ俺が急いだのかきっと分かってくれるはずだ。
そしてやって来たのは特別棟3階の奥、生徒会室だ。
ふう、と息を吐く。意を決して扉を開けるとそこには、
2年で生徒会副会長であり、俺の友達でもある川澄 大地が、鬼の形相をして仁王立ちで待っていた。
「随分遅い登校だな時雨。集合は25分だと言っておいたはずだが?」
額に青筋が浮かび上がっている。••••••あ、これ駄目かも。
「遅れたのは悪かった、だが言い訳をさせてくれ!」
「•••聞いてやろう」
よかった、聞いてくれるみたいだ•••。何とか首の皮1枚繋がったところだが、ここからが勝負どころだ。
「俺は昨日の夜、今日の会議の為にどんな案を出そうかと色々と企画を練っていたんだ。それで夜遅くまで起きてて•••。決して遊んでたとかそういうのじゃ無いんだ!」
これは本当のことだ。昨日俺は今日の会議で良い案を出して、たまには活躍してやろうと思い本気で案を考えていて、その結果遅刻という結果になってしまったのだ。
「•••そうか」
大地の怒気が薄れてきた•••。よし、これはいける!と、思ったのも束の間、大地は何か思いついたように口角を釣り上げ笑みを浮かべていた。
「お前がそこまで言うんだ。きっと俺たちの誰も思いつかないような素晴らしい案を出してくれるんだろうな?」
「•••へ?」
本日2回目の素っ頓狂な声を上げてしまった。その俺の返事で大地は悟ったのか•••
「おい」
「はいなんでしょう!川澄様!」
「正直に言え」
一気に周りの温度が下がった気がした。
「あ、あの、ですね〜、その〜、案を考えたのはいいんですけど、不肖私めには纏める力というのが少々乏しかったようでして「長い!」ぐふぉ!!」
腹パンされた•••、めっちゃ痛い•••。
「御託はいい、はっきり言え」
「案を纏める前に寝てしまいました、申し訳ございませんでした!」
深々とこれでもかというほど頭を下げる。それは最早芸術の域に達しているのではないだろうか。
「お前という奴は•••、お前も俺と同じ生徒会副会長なのだから、もう少し自覚というものをだな•••」
「はーいそこまで!もういいよ大地」
今この場の雰囲気にそぐわない明るい声が聞こえる。
「し、しかし会長」
あの大地ですらこの人には敵わない。
「確かに遅れたり企画を纏めてくるの忘れたりとか、色々と言いたいことはあるんだけど、時間も時間だからそろそろ始めないとさ」
何故ならこの人こそが3年で生徒会長の何でもできる完璧超人。
「それに企画が纏まってなくても案自体は考えてあるんだからそれを会議で出してくれたらいいよ。ね、時雨」
神崎 竜馬、その人なのだから。•••って
「•••」
沈黙が流れる。
「時雨?」
「えーっと、実は、昨日寝て起きたら、考えてた案全部ぶっ飛んじゃって•••あは、あははは•••」
竜馬さんは普段はとても優しく人当たりもいい。その上顔も整っており運動神経、成績すらいいのだから男女共に人気がある。
もちろん嫉妬をする者も現れるだろう。しかし、それもごく少数だ。
何故ならこの人の性格上、憎まれるということも殆ど無いのだ。
「•••時雨」
だがそんな竜馬さんでも、怒ることは当然ある。大地の様に怒気を溢れさせるのでは無く、この人は静かに笑みを浮かべる。その様子はまるで見る者を凍りつかせるような絶対零度と言っても過言では無いだろう。
「は、はい」
当然それに俺が敵うはずもなく
「明日までに僕たち全員を文句無しで納得できるような最高の企画を纏めてくるように」
要するに、
「あ、明日って期限短すぎじゃ「やるんだ、分かったね?」イエス、サー!!」
会長には一生勝てる気がしない。
そしてその後の会議は円滑に進み、放課後。
え、展開早過ぎって?•••書くことが無かったんだよぅ。
と、いうわけで放課後。
「じゃあな、時雨。明日は楽しみにしているぞ」
中指で眼鏡をくいっと上げ、ムカつく笑みを浮かべながら大地が言ってきた。
あの眼鏡を上げる動作ほんと何なの?普通に持ち上げたらいいじゃん。何でわざわざ中指で上げるんだよって思うの俺だけ?•••全国の眼鏡掛けてる皆さん、すいませんでした。
「お前こそ、明日俺の企画聞いて腰抜かすんじゃねえぞ!首洗って待っとけ!」
「そうか、楽しみにしておこう。じゃあな」
「おう!また明日な!」
なんだかんだで俺たちは仲が良い。大地とは幼稚園からの付き合いで、所謂腐れ縁というやつだ。初めは色々あったが、まあその辺りは後々話していこう。とにかく今は1番の親友と言えるだろう。
大地と別れ、家に帰る途中、俺は案を考えまくっていた。
会長たち生徒会全員を納得させる企画•••あれでも無い•••これでも無い•••、などと考えている内に、家の前に着いた。
「あ、時雨さん!」
急に後ろから自分の名前を呼ばれる。聞き覚えのある、明るい声だ。
自分の心臓がドクンと跳ね上がる音がする。
振り向いてみると、そこには3人の少女がいた。
1人は俺の妹、雪歩。相変わらず男の人は苦手なようで、すれ違う男性を見た瞬間隣の子の背中に隠れてしまった。
もう1人は雪歩の友達の菊地 真さんだ。少し短い黒髪とボーイッシュな顔立ち、格好から女子からの人気が高く、本人は嬉しい反面、少し気にしているそうだ。
そして最後に雪歩の友達であり、先程俺を呼んだ声の主でもある、
天海 春香さんだ。俺や雪歩、真さんの1つ年下で、頭につけている2つのリボンが特徴的な、とても明るく、活発な女の子だ。
「春香ちゃん、こんにちは。雪歩に菊地さんも。今帰り?」
心臓が脈打つ。声は上ずっていないだろうか。
「はい!これから雪歩の家でお話しようってことになりまして、あ!時雨さんもご一緒にどうですか?」
「いや、お誘いは嬉しいけど、遠慮しておくよ、女の子同士で話したいこともあるだろうし」
ああ、やばい。これはきっとそうなんだろう。
「いえいえ、3人だけでならいつでも話せますし、それに時雨さんがいた方がもっと楽しくなりますよ!」
太陽の様に眩しい笑顔を向けて言う春香ちゃん。
「そう?それなら少しだけお邪魔させてもらおうかな」
やっぱり俺は、
「はい!」
俺は、この子が、
天海 春香ちゃんのことが、好きなんだ。