アオイハル   作:Kの人

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はじめまして、これからよろしくお願いします。

作者の力量不足で誤字脱字等が多いと思われます。何かありましたら報告していただきますと大変助かります。また、感想の方も厳しい意見を含め募集しておりますので、何か書いていただけると作者が喜びます。





そして、毎度のことながら思う。あらすじってどうやれば上手く書けるのか……。


プロローグ

自分自身でこれまでの人生を振り返ってみると、別に他人が言う様な苦労や心労を感じたことは殆どと言ってなかった。寧ろあるのは、気軽に何でも出来るという身軽さと、何事もある程度は前向きに考えることが出来るポジティブさを手に入れることが出来たという前向きな考えだ。

 

平和の国日本だけの話かも知れないが、人生意外となるようになるのだ。で、なければ俺がこうして生きていない。なるようにならなければ、俺はきっとどこかの路地裏で鴉か野良猫の餌になっているはずだ。我ながら何とも説得力のある言葉だと言える。

 

それにいくら日本が平和だと言えども俺以上に不幸な星の下に生まれた人は多くいるはずだし、それこそ世界に目を向ければ掃いて捨てても掃ききれないほどいるのだろう。俺はそんな人達に比べるとまだまだ幸福な方だろう。五体満足に産んでもらい、今もまだ健康そのもので自分の足で立てている。これ以上に望むことはないし、これ以上を望むのなら望みすぎだ。強欲が身を滅ぼしかねん。

 

別段、運命という存在を信じている訳ではないが、それに似た時の運と呼ばれる物はあると思う。人間には干渉の出来ない領域、廻りあわせと言うのは確実にある。人生上手くいくときもあれば行かない時もある。何が上手くいき、何が上手くいかないのか、それはただの人間には分からない領分だ。なら、俺は分からないながらも一生懸命に努力してみようと思うんだ。

 

――人事を尽くして天命を待つ。

 

運命は神の考えることだ。人間は人間らしく働けばそれで結構。全力を尽くしてそれでもダメなら諦めでも何でもつくものだ。全ては時の運であり、偶然と言うものでもある。

 

閑話休題。すまんすまん、話題がそれてしまったな。

 

俺がいきなり何で運命とか天命とか言う話をしたのか言えば、別に少女漫画みたく運命の相手に出会ったとかそういう風なノリではない。寧ろ、そんな運命の相手がいれば紹介して欲しい勢いだ。年齢=彼女いない歴というのが最近のラノベやら漫画では当たり前らしいのだが、現実にそれだと悲しいものがある。いや寧ろ悲しいものしかない言っても過言でない。

 

おっと、また話が逸れて言っているな、悪い悪い。つまりだ、俺が何を言いたいのか、と言えばきっとあの時、あの場所であの子と出会ったのは――

 

 

 

                         ――時の運やら偶然やらと呼ばれるそれに違いない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日は春にして暑かったが特段語るような日ではなかった。いつも通りの春の晴れた日。空は雲一つない快晴で、青い絵の具を水でふやかした画用紙に垂らした様なそんな青空が頭上一杯に広がっていた。太陽は見えない。区画整理が施され、ビルが所狭しと並び立つこの街では、日陰を探すのに苦労はしない。

 

そんな空の下を学校に向かって歩く。行き交う人々は少ない。後、二時間ほどでも早ければ通勤通学に行き交う人々がそれなりにいるのだが、今の時間では随分数が減っている。左腕に嵌めている時計を見る。数年前に千円で買ったアナログ時計は十時を少し過ぎた辺りを無常にも指している。

 

今日は別に休日ではない。四月のある平日だ。つまり、それが指し示す事実は、覆りようのない遅刻と言う二文字だ。

 

「……はぁ。これ絶対タキちゃんにどやされるよなぁ……」

 

見た目は完全に女子小学生という何とも漫画にでも出てきそうな担任は説教が長い。間違いなく昼休み50分は説教に消える。食堂の日替わりランチの食券一週間分を賭けてもいい。何ならそれにジュースもつけよう。三年担任として付き合ってきたのだ、分かりたくなくても分かってしまう。それに後、一時間も遅れていくと、説教の時間が倍になるもの間違えなしだ。こちらも、同じく肉うどん一週間分の食券を賭けてもいい。放課後に延長戦が間違いなく待っている。バイトに間に合わなくなるのは何としても避けたいのでこれだけは避けなければいけない。見た目が見た目なので怖くも何ともないのだが、適当に聞き流すと説教が伸びるのもいただけない。

 

「まぁ、いいか。のんびり行こう」

 

どれだけ急ごうとも遅刻は遅刻だ。説教は確実に待っているし、遅刻と言う二文字が変わる訳ではない。変わるとすれば同じ、二文字の欠席か、三文字のサボり、かに変わるまでである。本当ならそちらの方がいいのだが、下手に仮病を使い過ぎるとタキちゃんが家に来る。見舞いいう名目でサボりの説教をしに来る。実際に一年と二年の時は来た。

 

それに、四月のこんな早くからサボりまくると後半になって出席日数に追われ、追試に追われる羽目になる。最期の高校生活くらいそれは避けたいし、一年も二年もタキちゃんが担任で無かったら留年している可能性も大きかった。出席日数と言うのは俺にとって鬼門だ。いや、なら勉強は出来るのか、って聞かれると回答に困るのだが、少なくとも一夜漬けをすれば赤点を回避できるだけの学力は俺にはある。何の自慢にもなってないな、すまない。追試のプロと呼ばれる理由は少なくともテストの粗点ではなく出席日数やらノート点やらで追試を受けているだけなのでそこのところは勘違いをしないでいただければ助かる。

 

と、いう訳でサボるのはなしだ。長々と説明した挙句結論はサボらずに学校に行く、となれば俺にはやはり作家になるのは無理な話らしい。長々とどうでもいいことを書き綴った挙句に内容がとても浅い物語が出来そうだ。そもそも作家を目指してはいないので、どうでもいいのだが……。

 

「……ん、今日は久しぶりにこっちから行くか」

 

雑居ビルが立ち並ぶ一角にて立ちどまる。目の前には細い路地。その裏路地を通っても高校にはつける。これだけビルが建ち並べばいくら区画整理がしっかりとされているとはいえ、一本道を外れる裏路地になると入り組んだ道になる。ビルとビルの間の狭い空間の道は昼間であろうと日光はまず当たらず、薄暗い。昼間であろうと夜であろうと人通りは殆どない通りだ。地元に住んでいる俺ですら殆ど通らない。通る理由がないのだ。普段は大通りを通って高校に向かう。その方が早いし、距離も微妙に大通りの方が近い。

 

――まぁ、でもたまにはいいだろう。気晴らしにもなるし。

 

さて、そうと決まれば話は早い。大通りから一歩裏路地へと足を進める。足取りは軽い。

 

どれだけのんびり歩こうとも高校までは15分もあれば十分にたどり着く。どうせ、遅刻なら後一時間以内にたどり着けばどの道を通ろうとも変わりはない。何かトラブルに巻き込まれない限りはどうやってもミッション達成できるイージーゲームだ。何とも気軽なものだ。

 

思い返せばこんなことを考えていたのがいけなかったのだろうか。この世界は漫画やアニメのような世界ではない。そのことは重々にして分かっているのだが、どう考えてもそれは所謂、フラグと言うものに他ならなかったからだ。現実世界でもフラグやら言う存在はたまにあるらしい、これが今日一番の俺の発見である。

 

フラグの回収は早かった。時間にして僅か数秒と言ってもいい。裏路地に入って二歩目のことだった。それは音として、まずは聞こえてきた。

 

「ちょっと、いい加減やめて下さい! 学校があるんです!」

 

「いいじゃねぇか。ちょっとくらい遊んでいこうぜ」

 

と、そんな声が聞こえてきたのだ。方角からしてビルの影、ちょうど曲がり角になっており大通りからは見えない位置。少し気になりそちらを覗いてみる。いや、どうせそっちに向かわないと学校に辿り着けないのでそのついでと言ってもいい。

 

「そうだぜ、お嬢ちゃん」

 

「ほら、ケンジきっと怖がってるんだよ。何、心配しなくても俺たち三人が君のことを楽しませて上げるって!」

 

そこで目にしたのは三人の男と一人の少女。男の方は金髪三人で俺には背を向けている。その奥にはヒラヒラとか見える紺の制服。この三年間で嫌になるほど見たそれは、間違いなくその少女が俺と同じ高校だという事を示していた。顔やら体形やらは取り囲む野郎三人に隠れて良く見えないが、恐らく知らない顔だ。同級生でないとなれば、後輩だろうか……? 自分で言うのも悲しくなる話なのだが、学校に知り合いが少ない俺には恐らく見たことのない少女だろう。

 

「だから、私学校にいかないといけないので、失礼します!」

 

「ちょっと待ってよ」

 

去ろうとしたらしい少女の手をを一人の男が掴む。

 

「離して下さい」

 

「いいじゃん、少し遊ぶくらい。別に学校一日サボった所で大丈夫だって」

 

何ともべたべたな場面で思わず言葉を失った。いや、ナンパするのは結構だけどもう少しやり方ってもんがあるだろ。今日日漫画でも見ないぞ、こんなナンパ……。

 

「いい加減にして下さい、さもないと――」

 

「――さもないと、どうするって?」

 

ゲラゲラと悪役じみた品の欠片のない笑い声を上げながら男がビルに片手をつく。きっと顔の方も同じく下種の極みのような顔をしていること間違えなしだ。見なくてもそれくらいは優に想像がつく。

 

さて、と男が動いたおかげでこちらからはその少女の全貌がようやく見えるようになった。

 

端正な顔立ちに大きな目。顔立ちから言うに綺麗というよりも可愛いといった言葉が似合う少女だ。髪型は肩にかかる程度のショートヘアで左サイドをリボンで留めている。口で説明すればそんな感じの髪型だ。サイドポニーって言うのかな、あれ?

 

俺、男だし、女子の髪型の名前とかあまり分かんないんだ。今度、万が一にも髪型について詳しく知る機会があったらちゃんとした名称を教えるから今日のところはこれくらいで勘弁してくれると助かる。

 

制服のリボンの色は赤。うちの学校は女子ならリボン、男子ならネクタイの色が学年ごとに違う。今年度で言えば一年生が青、二年生が赤、三年生は緑だ。やっぱりと言うべきか少女は一つ下の二年生らしい。

 

そんな少女と目が合った。

 

「やぁやぁ、お兄さん方! そんな少女ではなく、俺と遊びませんか?」

 

別に俺は自分自身で性格が良いなんて思ったことはこの17年間で一度もない。さらに言えば性格がいい何て言葉も言われた試しがない。道端でお金を拾えばお札でない限り交番に届けようという気にもならなければ、街中で喧嘩を見ても基本的にスルーする。

 

しかし、だ。気付いた時には既に動き出していた。

 

「あぁん?」

 

振り返った男ども間をすり抜け少女を掴んでいた男の手を払う。力を入れてないのか、それとも俺がいきなり声を掛けたことにより力が緩んだのか、それは分からんが案外簡単にその手は離れた。

 

「早くいきな」

 

怖い顔で睨んでくる男どもを無視して少女に言う。少し早口になったのはご愛嬌と言うことで。

 

「で、でも……」

 

不安そうな瞳が俺を映しだして揺れる。

「何だぁ、お前、いきなりやって来て何様だコラァ」

 

「おっと、これは名乗遅れたな、失敬失敬。まぁ、通り名なんてカッコいいもんないから、通りすがりのただの先輩と名乗っておこう」

 

正直言って凄んで来る男の顔は怖い。改めて見れば三人とも難いもそこそこいいみたいだし。今にも逃げ出したい。しかし、それを億尾に出さずあくまでも俺は平生を装う。心情を顔に出さないことに関しては結構自信がある。

 

「良いから早くいきな」

 

もう一度、今度は少女に背を向けて話す。ここは俺に任せて先にいけ、とも悩んだのだがそれは確実に俺が学校に辿り着く前に天国に辿り着きそうな言葉なのでやめておく。

 

「で、でも……」

 

少女は未だに悩んでいるようだ。正直早く行ってほしい。このままだと俺にも少女にもいい展開にはならない。

 

「俺たちはそこの子に興味があるんだよ。野郎は引っ込んでろ!」

 

一人の男が俺の体をかわして少女の腕を再び掴まんと手を伸ばす。

 

正直に言ってこれはばかりしたくなかった。一番の理想は少女が俺が最初に腕を払ったタイミングでそのまま立ち去るのがベストだった。しかし、こうなってしまったものはしょうがない。賽は投げられた。なら、毒を食わらば皿までだ。

 

男が一歩踏み出したそのタイミングで腕を振るう。溜めている暇はない。力がそこまで入らないが出来ることなら戦闘不能にしたい。ならば狙うのは一か所。少ない力でもあわよくば一人の男の行動を奪える所。即ち――顎だ。

 

そこを出来る限り力を籠め、早く殴る。

 

「て、てめぇ!」

 

やっぱり一撃戦闘不能に出来るなんて漫画のような展開はない。殴られた男は少しよろけただけで足取りもしっかりしている。あわよくば、なんて淡い期待はどうやら抱くべきではなかったようだ。

 

「だから、言っているじゃないですか。お兄さん方、俺と遊びましょうって――おい、君。まだ分からないのか? 早くいってくれ。はっきり言って邪魔になるだけだ!」

 

少女に背を向けたまま言い放つ。すこし乱暴な言葉遣いになったのは目を瞑って欲しい。こうなればもう、四の五も言っていられない。俺は先制攻撃を仕掛けて喧嘩を売ったし、どうやら相手もそれを笑って許してくれるような懐の深い人間ではないようで、怒りで顔を赤めている。

 

「す、すみません」

 

そんな声ともに走り去る足音。

 

その足音に向かってもう一度口を開く。

 

「そこのビルの角を右に曲がってまっすぐ行けば大通りだ。そこから学校へ行け。それと、今回で懲りたならもう裏路地は通るなよー」

 

うん、これでいい。

 

「てめぇ! 何様がコラァ!」

 

先ほど殴った男の蹴りを右腕でガードする。鈍い音を立てて肉と肉がぶつかる。

 

「――本当によかった」

 

ふぅ、と胸を一つ撫でおろしたい気分だ。状況的には最悪なのだが、心情的には幾分か先ほどよりましである。

 

「あぁん、何がいいんだぁ!? これからお前は俺たちにボコられるっていうのによぉ」

 

うん、本当に良かった限りだ。ボコボコにされる様を少女に見られなくて……。

 

別に喧嘩をしたことがないわけではない。ヤンキーや不良の様に誰それ構わずに喧嘩を売るなんてことはしないのだが、喧嘩をする機会は男なら一度や二度はあるだろう。そして自分の強さ位自分で分かっている。どう足掻いても俺には一対二以上の喧嘩になれば勝てる気がしない。格闘技でもやってない限り一対多数で喧嘩に勝てる人間なんてそうやすやすとはいない。少なくとも俺には無理だ。

 

ど下座程度で許して貰えるのなら何百回でもするのだが、どうやら雰囲気的にどうあがいても許しては貰えないらしい。

 

しかし、ただでやられるのは癪なので右手を力いっぱい握る。何時だって男の子は強がりなのだ。

 

とりあえず、俺が今考えるべきはこれだろう。

 

――一1時間以内に終わるかなぁ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いってぇ……結構本気でボコボコにしやがって」

 

少しばかり悪くなった視界には絵の具の青を水に垂らしたよな空が映る。相変わらず雲一つない。今日は快晴だ。仰向けに倒れているおかげでしっかりその青が目に入る。瞼が腫れているのか視界が少しよろしくない。この分では鏡を見れば笑える顔になっていることだろう。グッと腹筋に力

を入れて上半身を起こす。たったそれだけの動作だけでも随分とあちこちが痛んだ。本当に笑えるほどボコボコにしやがって……。今どきの若者は手加減ってやつを知らないからなぁ、って俺も若者か。

 

だから先制攻撃だけはしたくはなかったんだよなぁ。

 

俺から殴り掛からず、ある程度穏便にすめばここまで笑える状況になってはなかったはずだ。二三発殴られてそれで終わり、上手くいけば俺が頭を下げただけで済む可能性すらあった。まぁこれは言ってもしょうがない。あの状況では他に手段がなかった。少なくとも俺は人事を尽くした。そしてその結果の天命がこのボロ雑巾具合だ。それならば諦めも尽くし、納得もする。

 

「どこも破れたりしてないよな……?」

 

億劫になりながらもなんとか立ち上がり制服を見回す。貧乏人の俺としては制服を買い直さねばならないという事態だけは何としても避けたい。三年になって新しい制服なんて買いたくもないし、買う余裕もない。もし、買い直す羽目になれば一か月は朝食を抜かないとやっていけなくなる。

 

「……ふぅ、どうにか助かったか」

 

不幸中の幸いというべきか所々砂で汚れてはいるが破れたりしているところはない。ブレザーのボタンもちゃんと全部ある。先ほどまで倒れ込んでいたのにも関わらずそこまで汚れていないのも好ポイントだ。区画整理がされ地面のほとんどをアスファルトが覆っているこの街にもいいところはあったみたいだ。手でパタパタと埃を払えば学校に行けるようになるくらいには綺麗なるだろう。

 

それよりもだ、俺が考えないといけないことは他にある。それは単純にして明快。

 

「――バイト先への言い訳どうすっかなぁ……」

 

時計の針というのは何とも非情だ。

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