アオイハル   作:Kの人

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前回のラブライブ!

スピリチュアルやねっ!


第三話

「とりあえず服を脱ぎなさい」

 

いきなりこんな事を言われたらどうする? それも女の子にだ。普通は男の方から言うのが妥当ではないだろうか……。いや、それは完全に変態でセクハラだ。俺がもしも言ったのなら間違いなく捕まる。火を見るよりも明らかだ。

 

とりあえず、今の俺の顔は何とも言えない微妙な表情をしているだろう。間違いなく定期テストよりも難しい難問を突き付けられた気分だ。もし、分かると言うやつがいたら、今すぐ俺と変わってくれ。

 

「は?」

 

周りを見渡せば色鮮やかポスターが壁一面を埋め尽くし、本棚には雑誌やら漫画やらCDやらが数多く乱立している。これだけの描写で分かったくれたとは思うが、俺たちがいるここは教室ではない。普段授業を受ける教室よりも約半分の大きさ、音ノ木坂学院アイドル研究部の部室。整理整頓がされているにも関わらず、物が多くありすぎるため混沌と言う二文字をどこか思い浮かべることが出来るそこは俺がたまに遊び訪れる時と何も変わらない。部員が部長一人しかいないこの部では当然俺とソイツ以外人影はない。

 

「は、じゃないわよ。早く脱ぎなさい」

 

要するに、だ。俺は密室にてソイツと二人きり、という訳だった。これだけ書くとこの作品の年齢設定を変えなきゃいけん。健全な学生諸君には刺激が強すぎる展開になってしまいそうだ。ただ、勿論俺とコイツの関係はそんな甘いものではないため、そこは安心してくれ。

 

「いや、お前何言ってるのか分かっているのか?」

 

「アンタこそ何意味の分からないこと言ってないでとっとと脱ぎなさい」

 

ブレザーの下のピンクのブレザーは夏でも冬でも毎日のように着ている彼女のトレードマーク。艶やかな黒髪を赤いリボンでツインテールにしている髪の長さはセミロングと言ったところだろうか。あんまり、コイツ髪をほどかないため、詳しいことは推測と言うことになってしまう。気の強そうな釣り目に大きな瞳。瞳の色は赤みがかっており光の当たり具合では赤そのものに見えることもある。

 

彼女の名前は矢澤 にこ。俺とは三年間同じクラスというある意味で腐れ縁的な関係だ。

 

スタイルは……俺の口からは何も言えない。ただ一言いえば東條よりもタキちゃんのそれに近いと言えばその意味が分かってくれると思う。二文字で表せば貧相、三文字で表せればまな板。……おっと勿論このことはオフレコで頼む。バレたら殺されかねん。

 

しかし、スタイルの方はともかく、顔に関していえば十分にコイツは整っている。東條や今日会った高坂後輩と引けを取らないほどの美少女だ。残念なのはその頭の出来と、スタイルだけ……。

 

「――いってぇ! いきなり何しやがるんだ!」

 

そいつは何を思ったのか急に救急箱に入っていた消毒液を俺の顔めがけて噴射した。傷口に染みて非常に痛い。それと目に入ったらどうするんだ。それに、消毒液がもったいない。俺が抗議の眼を向けると、

 

「何か失礼なこと考えたでしょ?」

 

何だ女子と言うのは全員何かしらのスピリチュアルに精通しているのだろうか。もしくは俺が分かりやすいだけかもしれない。恐らく後者だろう。

 

「いや、それは、あれだ」

 

「あれって何よ!?」

 

「いってぇ! だから、消毒液がもったいないから止めろって! ってか、それよりもお前自分でさっきから何を言っているのか分かっているのか?」

 

コイツは間違いなく分かっていない。肝心な所で抜けているのがこの矢澤 にこと言う少女だ。

 

「勿論分かっているわよ!」

 

何を考えているのかその辺りはさっぱり分からないが、矢澤は貧相な体を強調するかのように腕を組みながらどこか偉そうに応える。前々から思っていたがタキちゃんと言いコイツといい腕を組んで偉そうにするのが好きだな。あれかな、貧相な奴は――。

 

「今度は目を狙うわよ」

 

「――すまん」

 

「たっく、本当にアンタって……。いいからさっさと脱ぎなさい」

 

ため息をつきながらやれやれと、矢澤は首を振る。まぁ、ここらで東條と別れた後、ここまでに何が会ったのかいい加減説明しておきたいと思う。別に興味ない奴は読み飛ばして貰えばいい。そんなに長い話にもならないと思うから、暇なら少しばかり聞いて行ってくれ。そうすれば、今の意味不明な状況も多少は理解してもらえるかも知れん。

 

まぁ、今までの事を説明すると言っても数行で終わるような話だ。

 

まず、東條と別れた俺はそのまま教室へと向かった。俺の席は一番窓側の最後尾。男子学生が一番に狙うその席だ。運よくそんな席を手に入れた理由は単純に俺のくじを東條が引いたらその席になったというだけの話だ。さすがスピリチュアル女子、くじ運も半端じゃないらしい。その運を俺にも一割でもいいから分けてほしい。昔からおみくじを引いても中吉以上引いた試しがない。

 

席が一番後ろなため教室に入るために開ける扉も必然的に後ろになる。今日の俺も例に漏れず後ろから教室へと入り、後ろの黒板添いを沿うように席へと向かった。カバンを席へと置いた時、前の席の奴が口を開いた「偉く、重役出勤じゃないの」 そう俺の前の席とは矢澤 にこの席だ。

 

矢澤は俺の方を向きもせず、可愛らしい彩の弁当を箸で突いていた。そんな矢澤に俺も適当に言葉を返すと、矢澤もその箸の動きを止めることはせず話をつづけた。あぁ、ここで一つ言っておくが、矢澤 にこという少女は顔を見ないで話すような失礼な奴ではない。寧ろ見た目に関わらず意外としっかりしている。俺と矢澤は高校三年間何の因果か分からないが同じクラスで過ごしてきた。要は顔を見なくても失礼じゃない位にはお互いのことを信用しているということだ。本人の前では恥ずかしくて言えないが、俺の一番の友人はこの矢澤にこと言う少女だったりする。もし、そんなことがバレたら死んでも死にきれないので、黙って貰えると助かる。俺って友達少ないのに定評があるため、数少ない友人は大切にしないといけないのだ。

 

しばらく、何気ない会話に興じていた時だった。ふいに矢澤が後ろを振り向いた。赤みがかった目と俺の黒い瞳が交差する。これから先はテンポよく行きたいので会話だけ載せておく。

 

「アンタ、その顔どうしたのよ?」

 

「いや、あれだ。ちょっと今朝派手にこけただけだ」

 

「はぁ!?」

 

「はぁって言われてもなぁ……」

 

「だ、大丈夫なの!?」

 

「ちょっと、顔近いって!」

 

「うるさい、ちょっとよく見せないさいよ。……ってアンタ唇も切っているし、目の上腫れているじゃない。それにデコも赤いわよ」

 

「多分、デコはタキちゃんの出席簿だと思う」

 

「それによく見れば右手の甲も怪我しているじゃないの……アンタ、本当にこけたの!?」

 

「あ、あぁ……もちろん」

 

「ふーん、まぁいいわ! とりあえず、来なさい。ここじゃあれだろうし」

 

「え?」

 

「え、じゃないわよ。ほら、行くわよ。それ救急箱よね」

 

「あぁ、うん。東條からさっき借りた」

 

「なるほど、希の荷物がやけに今日は多そうと思ったらそういう事だったか……。よし、そうと決まればさっさと行くわよ!」

 

「だから、行くってどこにだよ」

 

「部室よ!」

 

「はぁ? 部室!? ――って、引っ張るなって節々痛むから頼むって! おい、聞いてますか? 矢澤さーん!!」

 

回想終わり。案外長くなったな、すまんすまん。以上が東條と別れた後今までの経緯だ。腕を引っ張られ強制的に連れてこられたのが、ここアイドル研究部部室である。ここまで話せばある程度この状況が分かって貰えただろう。事実だけ見ると、個室に美少女女子高生と同じ部屋にいると言う展開なのだが、どこにも色っぽさがなければ、お互いに何も意識していない。

 

「とりあえず、お前はもう一度ゆっくりさっきのセリフを言ってみ」

 

確実に分かってない友人にそう言えば、そいつは何を言っているの、といった顔で渋々と口を開く。

 

「だから! さっさとその服脱ぎなさ……ぃって……」

 

段々とその声が小さくなる。最後はモゴモゴととても聞き取れるものではなかった。そして、それに比例するように顔が赤みを帯びてきた。この馬鹿は漸く気付いたか。

 

「い、いや! あれよ! あれなのよ! 別にそんな意味じゃないのよ!そ、そうなの! あれなの! ただ、怪我の治療を!」

 

「って止めろ! 消毒液振り回すなって染みるんだって! 分かってるから、お前のことは、十分分かっているから!」

 

顔を完全に赤く染めながらぶんぶんと腕と顔を振る我が友人。失敗した。何も意識させない内にさっさと服脱いでおけばよかった。いや、それならそれで全てが終わった後に気が付いて顔を周知で赤く染め、死にそうにさせている姿を鮮明に思い浮かべることが出来る。結局、早いか遅いかの違いでしかなさそうだ。

 

「いい!? 私は別にあんたのことを何とも思っていない! ただ、心配しているだけなの!」

 

「あぁ、知ってるよ」

 

思わず薄い笑みが出てきてしまった。いや、別に面白いことがあったわけではない。ただ、矢澤 にこという女の子が優しい少女だと再認識できたからだ。本当に俺には過ぎた友人だ。

 

「じゃあとりあえず、脱ぎなさい。シップくらいは貼ってあげるわよ」

 

「うん、ありがとう」

 

「べ、別に友人として当たり前でしょ」

 

ほら、良い奴だろう? そこのアンタに是非とも紹介してやりたいくらい自慢の友人だ。まぁ、多少の妥協も許せないのと自我が強いのが少し傷だけだどな。俺とは違う意味で友達が少ないのは主にそういった欠点が少しばかり悪目立ちしただけだからに過ぎず、コイツは本来ならクラスの輪の中心にいるべきやつなのだ。まぁ、そんな話は置いておこう。過去の話は今語るべきではないし、そのうち語らずを得ない時がくるはずだ。来なければ来ないで全く構わない。他の誰かはともかくとして、少なくともあんたは、この矢澤にこと言う一人の少女の本質を分かってくれたと思うからな。今はそれだけで十分だ。

 

とりあえず、俺のある春の日の昼休みは、こうして過ぎていった。

 

後、矢澤さん、シップ貼るときもう少しゆっくり貼ってくれませんか? 顔を真っ赤に染めるのなら貼らなくていいし、それにお前直視出来てないじゃん。それにシップはそんなに振りかぶって――っておい、そんな助走は要らんだろ。シップだぞ、お願い聞いてくれ!――うぎゃあああああああ!!

 

 




プロローグからプロット投げ捨ててはいたんですが、キャラが勝手にここまで暴走するとは……。

プロット書き直すの三回目ってこれプロット意味ないじゃん。もう、投げ捨てちゃえ!
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