3×3=μ's(さざんがミュ~ズ)   作:スターダイヤモンド

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吹けば飛ぶような…

 

 

 

海未「すみません、先生の手伝いをしていて、少し遅くなってしまいま…と…みなさん、お揃いで何をしているのですか?」

 

穂乃果「あっ!海未ちゃん!実はさ、昨日、勢いで将棋セットを買っちゃって…」

 

海未「はぁ…あまりそういう物は勢いで買ったりしませんが…」

 

穂乃果「だよね!でも、たまたまコンビニのレジの後ろにあったんだよ。オモチャみたいなもんだけどさ…これ駒っていうの?ほら、マグネットでボードにくっつくんだよ!」

 

海未「なるほど…そういうことですか…」

 

穂乃果「今、ブームなんでしょ?だから、ちょっとやってみようかな…なんて」

 

海未「ブーム…というには少し乗り遅れている気もしますが…まぁ、知的な趣味を持つということは良いことですね」

 

穂乃果「ところが、ところが…」

 

海未「はい?」

 

穂乃果「誰もルールがわからないときたもんだ!」

 

海未「誰も…ですか?」

 

希「正確に言うと…ウチ以外…やね」

 

海未「さすが希です」

 

花陽「私は駒の名前くらいはなんとか、わかるんだけど…動かし方までは…」

 

海未「…ということは、穂乃果にはそこから教えなければならないのですね」

 

希「ウチひとりで教えるのも面倒やし…ほら、実際、対戦しながらの方が、わかりやすいやろ?だから、海未ちゃんが来るのを待ってたんよ」

 

海未「なるほど…。しかし、遊び方もわからないのに、よくこういう物を買いますね…」

 

穂乃果「いや、だから…そこは勢いで…」

 

海未「いいでしょう。私も嗜み程度ですが、将棋は指すことができます。駒の名称も併せて、やりながら説明致しましょう。希、相手をして頂いてもよろしいですか?」

 

希「もちのろんやで…」

 

海未「では…」

 

 

 

 

 

海未「まず将棋は、こうして対戦相手と向かい合って、1対1で行います」

 

希「そして、この9×9マスの盤の上で、相手の王様を獲り合うゲームなんよ」

 

海未「はい、先に王を獲った方が勝ちですね」

 

絵里「チェスに似てるわね」

 

真姫「そうね」

 

海未「ですが、チェスと違うところは、獲った手駒を自分の駒として復活させることが出来るのです」

 

希「そやから、チェスよりよっぽど複雑なゲームなんやで」

 

絵里「ハラショー…」

 

真姫「へぇ…」

 

 

 

 

 

海未「競技は…駒をこのように並べるところから始めます」

 

穂乃果「並べる位置は決まってるの?」

 

海未「決まってます」

 

凛「何か法則とかあるのかにゃ?」

 

海未「法則…ですか?」

 

希「どうしてこう並べなきゃいけないか…までは、さすがのウチも知らんけど…まぁ、これは『野球と言ったら9人』みたいなもんで、そういう決まり事なんよ」

 

海未「はい。では…次に駒の名称を説明します。まず…これが『王将』です」

 

 

 

穂乃果「餃子の?」

 

にこ「言うと思った!」

 

凛「『μ's?』『石鹸?』くらい、お約束にゃ」

 

穂乃果「え~…にこちゃんも、凛ちゃんも絶対言おうとしたでしょ?」

 

にこ「い、言わないわよ」

 

凛「い、言わないにゃ」

 

穂乃果「あぁ…ズルいなぁ…」

 

ことり「くすっ」

 

 

 

海未「説明を続けますよ?先ほど希が言いましたが、基本的には、この駒を獲られないように守らなくてはなりません」

 

凛「あれ?さっき『王様を先に獲ったほうが勝ち』って言ってたような…」

 

希「同じことやね。自分は相手の王様を取らないといけないけど、逆に『先に獲られたら負け』ってことやんか」

 

凛「そっか!」

 

海未「攻めることばかりに気を取られて、守りを疎かにしてしまうと、知らぬ間に自分が負けている…などということは、穂乃果のようなタイプの人にはありがちですね」

 

穂乃果「あはは…いちいち引き合いに出さなくても…」

 

希「この王様は前後左右、斜め前後ろ、1マスなら、どこにでも動けるんよ」

 

にこ「…って、これ全部、動かし方が違うわけ?」

 

花陽「そうなんです!それがちょっと難しくて…」

 

希「そこまで複雑でもないんやけどね…」

 

海未「はい。覚えてしまえば簡単ですよ!」

 

 

 

穂乃果「…」

 

にこ「…」

 

凛「…」

 

希「いや、急に黙らんでも…」

 

 

 

海未「今、説明した通り、王将を獲られたらゲームはそこでおしまいですから、孤立させてはいけません。従って、どの方向にも動けますが、むやみやたらに移動させる駒ではないのです」

 

凛「μ'sに例えると…王様って誰かにゃ?」

 

にこ「当然、部長のアタシよ!」

 

穂乃果「え~?リーダーの穂乃果だよ!」

 

海未「そうですね。本来の立場から言えば、どちらかと言うところですが…駒の特性から考えれば…希に近いですね」

 

希「ウチ?」

 

海未「王将はひょこひょこと前に出ていくことなく、後方でドシッと構えてなければいけませんから、にこたちよりは希に近いと」

 

 

 

穂乃果「ぷふっ!」

 

にこ「ドシッと!」

 

凛「ドシッと!」

 

 

 

希「そこ、笑うとこやないんやけど…」

 

 

 

海未「はい、駒の特性から判断しただけで、希の体型を揶揄したものでは…」

 

希「いや、言ってるやん…」

 

 

 

ことり「…あれ?こっちの王様は『点』が付いてるよ?」

 

真姫「王じゃなくて…『玉』?」

 

海未「はい。正式には『玉将(ぎょくしょう)』と言います。詳しい歴史等は私も把握しておりませんので、言及は避けますが…王将と役割は変わりません。確か、対戦する2人のうち、実力のある方がこちらの駒を使うと記憶しております」

 

穂乃果「つまり点があるかないかの違い?目印的な感じ?」

 

凛「『大』と『犬』みたいにゃ?」

 

海未「そう例えるのはどうかと思いますが…」

 

希「実はな、この将棋の駒って、元々、宝物を指してるんよ」

 

花陽「宝物?」

 

希「よく見てみると…金やろ、銀やろ、桂馬は…馬ではなくて『肉桂(にくけい)』…」

 

真姫「肉桂?」

 

希「シナモンのことやね」

 

ことり「シナモン?」

 

希「そう。和風に言うなら『ニッキ』」

 

真姫「肉桂…にくけい…ニッキ…なるほどね」

 

希「その昔はとっても貴重なものやったんよ」

 

絵里「勉強になるわね」

 

希「そして香車は『香炉』」

 

海未「なるほど!!そういうことですか!…つまり、この玉は本来、宝石を表すものであると」

 

希「正解!そやから、本当は『王様を取るゲーム』やなくて『玉(宝物)を取り合うゲーム』やったんよ。歴史的には『王将』の誕生の方が後やったと思う。呼び方に関しては、チェスなんかの影響があるとかないとか…」

 

穂乃果「ひょえ~…希ちゃんって本当に博学だよね」

 

希「勉強にはなんも役立たんけどな」

 

海未「いえ、私もその話は目から鱗でした」

 

 

 

 

 

海未「では、解説を続けます」

 

希「はいな」

 

海未「王将を簡単に獲られないよう、周りに強い駒を置いて守ってあげる必要があります」

 

希「それが、この金や銀やね」

 

海未「正式には『金将』『銀将』と言います」

 

穂乃果「例えて言うなら…水戸黄門の助さん、格さんみたいな感じかな?」

 

海未「穂乃果にしてはいい例えです!」

 

穂乃果「穂乃果しては…は余計だよ」

 

希「金はこう…銀はこう…どちらも前には同じように動かせるんやけど、金は斜め後ろは行けんのよ」

 

花陽「銀は左右と真後ろには行けないんだね?」

 

海未「はい。一見すると同じような駒ですが、金は守りの駒、銀は攻めの駒とも言われています」

 

花陽「攻めの駒?」

 

ことり「守りの駒?」

 

海未「えぇ、あとで説明しますが、駒によって得手不得手というのがあるんです。そういうところも、将棋の奥深いところではないでしょうか」

 

 

 

穂乃果「えっと…やっぱ将棋は覚えなくていいかな?」

 

海未「何を言ってるのですか!常に相手の数歩先を読んで、考えることこそ、将棋の醍醐味!将棋の神髄!何も考えずに脊髄反射的に行動してしまう穂乃果たちにこそ、是非覚えて頂きたい趣味のひとつです!」

 

にこ「穂乃果…」

 

凛「…たち?」

 

海未「当然、にこと凛も含まれています」

 

にこ「ぬゎんでよ!」

 

凛「とんだとばっちりにゃ!」

 

穂乃果「まぁぁ、旅は世に連れ…って言うし…」

 

真姫「意味わかんない…」

 

 

 

希「金は…μ'sで言うなら、えりちやね」

 

穂乃果「金髪だから?」

 

希「そやね」

 

絵里「単純すぎない?」

 

希「ふふふ…」

 

海未「いえ、金の役割は王を守りつつ、ここぞという時に相手にトドメを刺す駒なのです。μ'sでの絵里との役割と似てないこともありません」

 

穂乃果「トドメを刺すって…」

 

にこ「何か物騒ね!」

 

絵里「海未の私に対する印象って、そんな感じなの?」

 

海未「…言葉の綾です…」

 

希「つまり、攻守にバランスがいい、しっかり者…そう言いたかったんやろ?」

 

海未「は、はい!」

 

絵里「むふっ!そういうことね!」

 

 

 

穂乃果(単純だなぁ…)

 

にこ(単純ね…)

 

凛(単純にゃ…)

 

 

 

絵里「じゃあ、これからは『ハラショー』じゃなくて『キンショー』ね」

 

 

 

穂乃果(絵里ちゃん…)

 

にこ(…ポンコツ発動…)

 

凛(アホにゃ…)

 

 

 

海未「…つ、続いて…銀です…こちらは『いぶし銀』などという言葉がある通り、μ'sで例えるなら…私…と言いたいところですが、自分は『角』ではないかと思いますので…ここでは…にこを推します」

 

にこ「アタシ?」

 

希「そうやね!いいんやない。金と並んで王を守りつつ…そやけど、どちらかといえば攻撃的な駒やし、引くときも真後ろやなくて、斜め後ろに逃げるっていうとこが、にこっちらしいかもやね」

 

にこ「どういう意味よ」

 

凛「素直じゃないってことかにゃ?」

 

にこ「アンタねぇ!」

 

希「まぁまぁ…『かよわいウチ』を守ってくれるのが、えりちとにこっちってことで、全て丸く収まるやろ?」

 

にこ「…まぁ、そういうことにしておいてあげるわ…」

 

 

 

穂乃果「かよわい?」

 

凛「ドシッと…なのに?」

 

希「穂乃果ちゃんと凛ちゃんは、あとでワシワシMAXの刑やからね!!」

 

穂乃果「うへっ!?」

 

凛「前言撤回にゃ」

 

ことり「くすっ」

 

花陽「あは」

 

真姫「はぁ…懲りないわね、あなたたち…」

 

 

 

 

 

海未「さて、次は『角行』です。通常は『角』と呼びますね」

 

希「角さんは、前後左右には進めんけど、前斜め、後ろ斜めはどこまでもいけるんやで」

 

穂乃果「格さん?…水戸黄門の?」

 

海未「いえ、そちらは先ほど説明した通り、金と銀です…希も、ややこしくなりますので、変な呼び方はやめてください」

 

希「にっしっし…」

 

ことり「これが海未ちゃん?」

 

海未「はい。自分で言うのもなんですが、斜めにピュッと動く様が、矢を射る私と重なるのではないかと」

 

穂乃果「ラブアローシュートだね」

 

海未「はい!あ、いえ…今、それは関係ありません!!」

 

希「この角と『飛車』と『桂馬』と『香車』は『飛び道具』なんて言われ方もするんよ。う~ん…角かぁ…移動距離も長いし…ウチも持久力のある海未ちゃんにピッタリやと思うな」

 

海未「ありがとうございます。そこで私と対を成すパートナーが、この『飛車』です」

 

真姫「対を成す?」

 

海未「はい。角は斜めにどこまでもいけますが…飛車はこのように…前後左右にどこまでもいけます」

 

花陽「じゃあ、この駒は真姫ちゃんかな?」

 

真姫「私?」

 

花陽「海未ちゃんと対を成すなら…、作曲担当の真姫ちゃんかな…と」

 

海未「そうですね!…と言いたいところですが、真姫だと機動力という面では物足りませんね」

 

真姫「放っておいてよ」

 

海未「ということで、私的には凛ではないかと思うのですが」

 

穂乃果「あぁ確かに!シャー!シャー!って動くもんね」

 

 

 

にこ「飛車だけに?」

 

 

 

一同「…」

 

 

 

凛「にこちゃん…寒すぎにゃ…」

 

 

 

にこ「悪かったわよ…」

 

 

 

 

 

海未「さあ、駒の説明もあと3つですね」

 

希「次は『桂馬』やね」

 

真姫「さっきのニッキね」

 

希「そやね。まぁ、今の将棋だと『馬』の性格が強いんやけど…」

 

海未「桂馬はこの中ではかなり変則的な動きします。先ほど希が『飛び道具』という言葉を使いましたが、唯一、駒を飛び越していけるという、特性を持っています」

 

穂乃果「駒を飛び越す?」

 

海未「動かし方は、こう…もしくはこう…2マス前進して右か左…です」

 

希「ほんでもって…例えばこんな感じで、自分の駒がここにあっても、それを飛び越して、こう置けるんよ。相手の駒がある場合は…こんな感じやね」

 

にこ「他の駒は飛び越せないの?例えば、さっきの角とか飛車とか」

 

海未「そうですね。これは実際の遊び方で説明しようかと思ったのですが…基本的に駒を進める先に自分の駒がある場合は、そこには動かせません。逆に自分の駒を進める先に相手の駒があった場合は、それを『獲る』ことができます」

 

真姫「獲った駒は、自分の『持ち駒』になって、あとで使うことが出来る?」

 

絵里「それがチェスと違うところ?」

 

希「その通りやね」

 

海未「これをμ'sで例えるとすると…ことりでしょうか?」

 

ことり「ちゅん!?」

 

海未「ことり以外、人の頭の上を通り越していくことなどできませんからね」

 

穂乃果「急に駄洒落っぽくなったね…」

 

海未「…ですが、他に該当する人がおりませんので…」

 

 

 

希「お次は…『香車』やね」

 

海未「『きょうしゃ』あるいは『きょうす』とも呼びます。動かし方は…前に一直線!その先に駒が無ければ、どこまでもいけます。しかし、後戻りは一切できません。別名『やり』とも呼ばれています」

 

希「μ'sに例えるなら…」

 

 

海未「穂乃果!」

 

希「穂乃果ちゃん!」

 

 

海未「満場一致ですね」

 

希「そやね」

 

 

穂乃果「いや、満場一致って2人だけだし…。でも、どうして私?」

 

 

海未「聴いてなかったのですか?前にはガンガン進むことは出来ますが」

 

希「後ろに引くことが出来ん駒なんよ」

 

海未「この中だと…穂乃果しかいないではないですか!」

 

穂乃果「え~?穂乃果ってそんな?そんなイメージ?」

 

真姫「そうね」

 

絵里「これは頷く以外ないわね」

 

凛「わかるにゃ」

 

にこ「激しく同意」

 

 

 

穂乃果「えっと…ことりちゃん?花陽ちゃん?」

 

 

 

ことり「ちゅん…」

 

花陽「あはは…」

 

 

 

穂乃果「うわぁ!否定してくれないよ…あぁ、Printempsの絆が…」

 

 

 

希「最後は『歩』…『ふ』やね」

 

穂乃果「『ほ』じゃないの?」

 

凛「それだと、穂乃果ちゃんの練習着みたいになっちゃうにゃ」

 

海未「『歩兵』と書いて『ほへい』ではなく『ふひょう』と読みます。見ての通り、一番数が多い駒です」

 

にこ「一番前に並んでるってことは…真っ先に獲られる駒ってこと?」

 

海未「一般的にはそうなりますね。ゲーム序盤では、相手の攻撃を防ぐ防波堤の役割を担ったりします」

 

希「動かし方は…こうやって、前に1マスずつしか動けんのよ」

 

にこ「トロいわね」

 

希「そうやね…この中では一番非力かもやね」

 

海未「ですが!『歩のない将棋は負け将棋』という言葉がある通り、決して侮ってはいけない駒でもあります」

 

希「そう、μ'sで言うなら」

 

 

海未「花陽!」

 

希「花陽ちゃん!」

 

 

 

花「ぴゃあ!」

 

 

海未「満場一致ですね」

 

希「そやね」

 

 

 

穂乃果「だから、2人しかないじゃん…」

 

にこ「でも、これは想像付いたわ」

 

凛「うん、もう残ってたのは、かよちんと真姫ちゃんしかいなかったし」

 

 

にこ「あれ?」

 

凛「これが最後の駒?…ってことは…」

 

穂乃果「真姫ちゃんは?」

 

 

 

真姫「!?」

 

 

希「そうなんよ…将棋の駒って8種類しかないんよ」

 

海未「えぇ…残念ながら…」

 

真姫「べ、別に無理して私を、駒に当てはめる必要なんてないから…それで寂しいなんて思わないし…悲しいとも思ってないし…」

 

 

 

一同(…思ってる…)

 

 

 

海未「基本的な動かし方を説明したところで、もうひとつ、将棋の特殊なルールを説明します」

 

絵里「特殊なルール?」

 

海未「自分の駒を相手の陣地…この場合、向こうから3列目のことを言うのですが…そこまで侵入すると…駒を裏返すことができるのです」

 

絵里「駒を裏返す?」

 

海未「希、そちらの駒をすべて裏返してみてください」

 

希「ほい」

 

絵里「あっ…」

 

海未「この様に、王と金以外は、表とは違う字が書いてありますね」

 

凛「でもなんて読むかはわからないにゃ…」

 

海未「角に裏側は『龍馬』、飛車の裏側は『竜王』と書いてあります」

 

希「その他の文字は…書き方が全部違うけど…『金』やね」

 

にこ「読める字を書けっていうの!」

 

海未「相手の陣地に駒を進めると、これを裏返すことができます。この状態を『成る』といいます。成る、成らないは任意ですので、その時の戦略により、決めることができます」

 

穂乃果「戦略?」

 

海未「はい。実はこの『成り』によって、角と飛車は確実にパワーアップするのです」

 

凛「どういうことにゃ」

 

希「例えば…角が成ると、今までの動きに加えて…前後左右1マスずつ動かせる場所がプラスされるんよ」

 

穂乃果「おぉ!これは強い!」

 

海未「そして飛車の場合は、斜め前、斜め後ろに1マスずつ動かせるようになります」

 

絵里「ハラショー!!」

 

凛「無敵にゃ」

 

海未「はい。このように飛車と角は非常に強い駒なので、実力差が大きい相手と対戦する場合、上位の者があえてこの2枚を使わないことがあります」

 

希「相手にハンデをあげるってことやね」

 

海未「このことを『飛車角落ち』と言います。野球やサッカーなどでも、主力を温存したりして試合に出さない状態を、こう表現することがありますね」

 

真姫「言葉だけなら、聴いたことあるわ」

 

希「意外と日常的に使ってる慣用句で『将棋由来』の言葉ってあるんよ。例えば『捨て駒』なんかもそうやし」

 

海未「言わずもがなですが『王手』などもそうですね。そして、やられて身動きが取れなくなった状態を『詰む』と言います」

 

希「あんまりいい言葉やないけど『将棋倒し』なんてのもあるし」

 

海未「『高飛車』なんていうのもありますね」

 

凛「それって真姫ちゃんのことかにゃ?…」

 

真姫「ちょっと凛!!」

 

穂乃果「高飛車かぁ…なんとなく意味はわかるけど…本当はどういうことなの?」

 

希「さっき説明した飛車を真ん中ら辺に置いて、相手を制圧する戦法のことやね。前後左右自由に動いて、攻め入る相手を次々と蹴散らす様…から転じて、高圧的な態度のことを言うようになったんよ」

 

穂乃果「なるほど」

 

花陽「こうやって聴いてみると、将棋って昔から日本の文化に浸透していたことが、よくわかるね」

 

海未「はい」

 

絵里「それはわかったけど…ほかの駒は?」

 

海未「そうですね。忘れていました。ほかの銀、桂馬、香車、歩ですが…裏返すと『金』に成るのです」

 

絵里「それはさっ聴いたわ」

 

海未「いえ、さっきは『金と書いてある』と言っただけです。実は書いてあるだけでなく『金』になってしまうのです」

 

絵里「?」

 

真姫「つまり、駒の動かし方が金と同じになるってこと?」

 

海未「その通りです。これを…金に成るので『成金』と言います」

 

希「一瞬にして大金持ちになった人のことを成金って言うやろ。普通の駒がパッと金に変わる様から来てるんよ」

 

にこ「へぇ…」

 

凛「成金?真姫ちゃ…」

 

真姫「待って!私は成金じゃないから」

 

凛「良かったね!真姫ちゃんに似合う言葉がふたつもあったにゃ」

 

真姫「だから、違うってば!…凛…あとで覚えてなさい…」

 

凛「にゃ~」

 

海未「ですが、いいことばかりでもありません」

 

絵里「えっ?」

 

海未「金になることで、これまでの駒の特性は失ってしまいます」

 

穂乃果「…というと?…」

 

海未「穂乃果はどこまでも真っ直ぐ…は動けませんし、ことりも他の駒を飛び越えられません」

 

希「香車と桂馬のことやね」

 

絵里「にこも左右と後ろにはいけるけど、斜め後ろにはいけなくなる?」

 

海未「さすが絵里…飲み込みが早いです」

 

希「にこっちやなくて銀やけどね」

 

真姫「成る、成らないは任意って言ったけど、そういうことね」

 

海未「はい、その時の局面によって、どちらが有利なのか…ただ闇雲の成ればいい…というものでもありません」

 

絵里「奥が深いわね」

 

花陽「で、でも…っていうことは…歩は確実に強くなるよね?」

 

ことり「うん!前にひとつずつしか進めなかったのが、斜め後ろ以外は動かせるんだもん!良かったね、花陽ちゃん」

 

花陽「うん」

 

 

 

海未「はい。一歩づつ前に進んで、その努力が実る姿は、まさに花陽そのもの!!花陽こそが将棋の主役と言っても過言ではありません!!」

 

 

 

花陽「い、いやぁ…海未ちゃん…そんなこと…照れるなぁ…」

 

 

穂乃果「出たよ、作者の花陽ちゃんゴリ推し」

 

にこ「いくらなんでも露骨すぎよね」

 

凛「凛はぜんぜん構わないにゃ」

 

 

 

 

海未「…と、駒の動かし方を一通り解説致しましたので、つぎは実戦と参りましょうか」

 

希「エキシビジョンマッチやね」

 

穂乃果「えっ?まだ続けるの?」

 

海未「ここからが本番ですので…」

 

穂乃果「いやいや、日を改めようよ!ほ、ほら…そもそも練習をしなくちゃいけないしさ」

 

海未「そう言われればそうですね…では、希、勝負はまた今度ということで」

 

希「ほい」

 

絵里「ルールを覚えれば、私も嵌りそうなゲームね」

 

真姫「今まで古臭い感じがして毛嫌いしてたけど…パパが真剣な顔して本とにらめっこしてる気持ちが、よくわかったわ」

 

花陽「すごく面白そうだよね」

 

ことり「うん!」

 

希「相手の手を読む…ことは尽きるところ、心理戦ってことやんか。つまりスピリチュアルやね!」

 

海未「希はそれが言いたいだけでは…」

 

 

絵里「希、練習終わったら、やり方教えなさいよ」

 

希「指導料は焼肉定食やで」

 

絵里「安いものよ!」

 

 

海未「ことり、このあと付き合ってもらえますね?」

 

ことり「は~い!私はチーズケーキがいいなぁ」

 

海未「もちろんです!好きなものを食べてください」

 

 

真姫「花陽!…あっ…えっと…その…」

 

花陽「うん。あとで真姫ちゃんちに行くよ。一緒に覚えよう!」

 

真姫「…あ、ありがとう…」

 

 

 

 

にこ(…アタシたち…)

 

穂乃果(…お呼びでない…)

 

凛(…みたいにゃ…)

 

 

 

 

こうしてこのあと、音ノ木坂の『アイドル研究部』は『将棋研究会』へと姿を変えていったのであった…。

 

 

 

 

にこ「…んなわけあるかぁ~!!」

 

 

 

 

 

~吹けば飛ぶような~ 完

 

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