「てめえが知ってることを全部吐け」
鋭すぎて殺気さえ感じる。視線で人が死ぬなら桐壺は死んでいるだろう。
それでも平然としているのは桐壺と早蕨の付き合いが長いからだろうか。
「落ち着いてよ、ソウ。言ったでしょ、僕は教団に入っている人と連絡が取れるだけなんだ」
スマホをこれ見よがしにちらつかせている桐壺は残念そうな顔をする。
役に立てないことを残念に思っているのか単純につまらないのか。
「教団に入っている人はどんな人なんですか?」
明石は控えめに挙手しながら質問した。聞かれた桐壺はスマホを操作して画面を見ながら答える。
「大学3回生の女性、身長は165センチの普通体型。
学科は人間科学科で授業は非常に真面目なため先生からの評価は高かったみたいだね。
家族は両親だけで兄弟や姉妹はなし、下宿暮らしだよ」
「へえ、桐壺さんってとってもその人について詳しいんだねえ。ひょっとしてストーカー?」
「ち、違うよ!」
川内の言葉で早蕨が手錠を取り出す気配を察知してすぐに否定する。
「君たちと同じ人から頼まれてたんだよ、環境の問題で宗教に嵌っちゃう人もいるから調べてほしいって」
「同じ人?一体だれのことですか?」
夕張の質問を事もなげに答える。
「僕の幼馴染で、君たちの友達の『大神 通』だよ」
「大神さん?」
聞き間違えではない、苗字も名前も彼女たちが知る友人と同じだ。
「大神さんと桐壺さんは幼馴染っぽい?」
「うん、そうだよ。大神くんから君たちのことはたまに聞いてたんだけどすぐに分からなくてごめんね」
【心理学ロール 川内(心理学)85→??】
「その割には全然動揺していないんだね」
川内は桐壺が非常に落ち着いていると感じた。
「もしかしたら大神さんが死んだことを知ってたの?」
「いいや、今君たちから聞いて初めて知ったよ」
「それならもっと動揺っていうか、驚いても良いと思うんですけど」
「そりゃあ驚いたけど、ちょっと前から彼は自分が死ぬかもしれないって言ってたから」
【記憶力ロール 夕張(アイデア)85→58 成功】
夕張は大学を案内してくれたときの大神のことを思い出した。主人公みたいな台詞は何も考えないで吐かれた言葉ではなかったのか、と今更ながら思った。
そして桐壺が言った人物が自分の話しかけた女性と特徴が一致していることを確認した。
「桐壺さんが言った人なら私も話しましたよ」
「ならなぜそれを早く言わねえんだポニテ」
名前ではなく髪型で早蕨が呼ぶ。
「私には夕張っていう名前があるんですけど?」
一応文句だけ言って自分の感想、意見を述べる。
「話してみましたけど教団について否定的な態度だとあまり話を聞いてくれなそうな感じがしましたね。かと言って肯定的な態度をしたら自分の世界に入って話しまくりそうな風でもありましたけど」
明[うーん、その人から情報を得るのは難しそうですね]
張[私はもう顔が割れてるから話しかけても意味がなさそうだし]
立[夕立ならいけるっぽい?]
張[どうかしら、あの雰囲気だと誰が行っても反応は変わらなそうだけど]
川[言いくるめで何かできない?]
明[情報を出すように言いくるめるってことですか?]
立[自分の世界に入ってる人に言いくるめしても自分の世界の言葉を話されたらこっちは分からないっぽい]
川[やーもしかしたらさ、この件がトリガーになってその人に何かしらの変化があるかもしれないじゃん?大神さんはその・・・なんて名前だっけ?]
張[鏑矢 宇佐美ね]
川[そうそう、その鏑矢さん。鏑矢さんのことを色々気にかけてたんだよね、教団に大神さんのことを伝えて、邪魔に思ったから教団は大神を殺した、とかありえそうじゃない?]
明[それは・・・確かに・・・]
川[だからその鏑矢さんに大神さんの名前を出して反応を窺ってみない?]
立[さんせーい!]
張[まあ他にすることもないし、別に良いかな]
明[異議なし]
K[んじゃ、そんな感じで進めていいな?]
「ってことで、夕立たちは鏑矢さんのところに行くッぽい!」
椅子に座って一人でコーヒーをすすっている早蕨はしばし考えこみ始めた。代わりにたれ目の桐壺が話し始めた。
「君たちが行くのに僕も同行していいかな?」
訊かれて四人は顔を見合わせ、明石が訊き返す。
「それはいいですけど、なぜですか?」
「彼女の身辺調査とかはしたんだけど直接接触したことがないんだ。実際に会ってみないと分からないことが多そうだからね」
「なるほど」
「それはそれとして、もう遅いから会うのは明日にした方がいいね」
時刻はすでに深夜二時に差し掛かろうとしている。
「キリ、てめえに二つ命令する」
椅子から立ち上がって桐壺をにらみつける。いや、目つきが悪いだけなのでたぶん見ているだけだ。
「一つ、明日からのこいつらの捜査に全面的に協力しろ」
「ソウは手伝ってくれないの?」
「お前が、一人で、協力しろ」
「・・・・・・・・・」
「二つ目、これが一番にやってもらいたいことだ」
「こいつらを家に送ってこい」