(ほぼ)高速艦のみのTRPG   作:ツリ目

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いよいよお話が始まります。


セッション開始

 舞台は現代日本、場所は本州のどこか。

 

 

明[舞台設定が雑じゃありません?]

 

K[シナリオは一回しか作ってないから仕方ないだろ。むしろ雑なほうが後付設定を楽につけられるからな]

 

 

 第二次世界大戦からおよそ七十年経ち、世の中は平和そのものだ。十二月に入って寒さが厳しくなってくるので厚着じゃない人間のほうが少ない。夏でも白いマフラーを外さない女性はより目立たなくなっている。

 

「……………………」

 

バーに入って来た女性がそれだ。

 

女性にしては背が高く、百七十センチはあるだろうか。マフラーで顔が一部隠れているが、それでもかなりの美人であることが分かる。動くたびに揺れる黒いロングコートと白いマフラーは他の色が含まれていない。余計な色がないことがただでさえ目立つのに、その美貌が周りの視線を集める。

 

「川内さーん、こっちよー」

 

奥のカウンターから彼女―川内を呼ぶ声がする。その声がするほうに行くと三人の女性が集まっていた。

 

「ドーモ、こんばんは。夕張=サン、明石=サン、夕立=サン、川内です」

 

お辞儀と共に川内は挨拶をする。

 

 

川[アイサツは大事、古事記にも書いてあるしね]

 

K[無理に忍殺語を使わなくていい]

 

 

「ドーモ、こんばんは。川内=サン、明石です」

 

「ドーモ、こんばんは!川内=サン、夕立です!」

 

「ドーモ、こんばんは。川内=サン、夕張です。って、毎回やっちゃうけどやらなくてもいいのよね?」

 

質問をしたのは夕張と呼ばれた女性だ。背丈は川内にこそ及ばないものの百六十は超えている。綺麗な緑のシュシュで髪をポニーテールにしている。

 

 

K[おい夕張、ちょっと3D6を振ってくれ]

 

張[え?いいけど、なにかあるの?]

 

K[いいからやれ]

 

張[う、うん……。十になったわ]

 

K[それがお前の女子力な]

 

張[え?]

 

K[それを五倍して1D100で判定、成功したら女子力ありってことで振れ]

 

張[ちょっと!どういう意味よそれ!]

 

K[なあ夕張、もし金があったらお前は開発とオシャレのどちらに使う?]

 

張[そ、それはもちろん開発だけど……]

 

K[ま、判定に成功したらいいんだよ]

 

張[じゃあ明石さんはどうなのよ!その二択だったら明石さんも開発を選ぶはずよ!]

 

K[じゃあ明石もやれ]

 

明[ちょ、ちょっと夕張さん!私まで巻き込まないで下さいよ!]

 

立[夕立もやりたいっぽい]

 

川[じゃあ私もやろうかなー。ルパンで言うところの不二子ちゃん枠だし]

 

K[んじゃ、お前ら全員3D6振れ。使うタイミングはお前らが勝手に決めろ]

 

明[……六です]

 

立[四……、夕立に女子力はないっぽい?]

 

K[リアルとは関係ないが、なかなかひどいな。川内はどうだ]

 

川[私は十四だから一番ね]

 

明[こればっかりはリアルラックだから仕方ありませんけど、夕立さんと私の倍以上じゃないですか]

 

K[どうせ茶番技能だし、使うにしても五倍だから大差ねえよ(女子力とかよく分からねえけど適当でいいだろ)]

 

【女子力ロール 夕張 女子力×5→23 成功】

 

やや脱色気味ではあるものの髪はしっかり手入れされていてサラサラだ。化粧も素材を活かした軽めのものだ。

 

その夕張の確認に肯定の意を示す。

 

「私が勝手にやっているだけだからね。でも挨拶は大事よ、古事記にも書いてあるし」

 

「……そうだったっけ」

 

明石に聞いてみると苦笑いをして答えてくれた。

 

「私も全部を知っているわけじゃないですけど、古事記にはそういう当たり前のことがだいたい書いてあるそうです。だからあっても別におかしくはないですね」

 

「古事記なんて読まないから夕立は知らないっぽい」

 

座っていて分かりにくいが、身長が百五十あるかないかくらいの少女こと夕立が声をあげる。他の三人よりも幼さの残る夕立がつまらなそうな顔だ。

 

「まあいいじゃないの」

 

 

明[そういえばKP、私たちはなんでこんなところに集まったの?]

 

K[そうだな、そろそろ話を進めるか]

 

 

 

 

 

 

四人が話しているとバーの扉が開かれる音がした。扉の方向を見ると背の高い男がいた。背丈は日本人離れしていて、何かスポーツをしているのか上着からでも鍛えていることが分かる。

 

そんな男が四人に気付くと軽く手をあげた。知り合いのようだ。

 

「集まっているな、みなさん」

 

男―大神通がそう言って彼女らのほうへ歩いてくる。にこやかとは言えないが、友好的な態度だ。大神は川内と同級生で、四人と同じ高校だった。今日はそんな彼から呼び出されて四人は来ている。

 

「ドーモ、お久しぶりです。大神=サン、川内です」

 

「ドーモ、お久しぶりです。川内=サン、大神です」

 

川内の忍殺語に合わせて大神もお辞儀と一緒に挨拶をする。

 

「明石さんも夕張さんも夕立もお久しぶりです。ロクに連絡もしていなかったのに急な呼び出しに応じてくれてありがとうございます」

 

そう言って深々と三人にも頭を下げる。

 

「そんなに改まらなくてもいいですよ大神くん」

 

明石がそう言ってようやく顔をあげた。

 

 

K[お前ら、誰でもいいから目星を振れ。強制ではないからやらなくてもいいが]

 

張[目星だったら……明石さんが一番高いわね]

 

明[せっかくだし皆で振りませんか?初心者向けって言っていましたしいきなり罠があるとは思えないですし]

 

立[早く振りたいっぽい!]

 

川[せっかく提督が提案してくれたんだしね、やってみよっか]

 

【目星ロール 明石 目星 90→68 成功

 

   夕張 目星 83→62 成功

 

   川内 目星 85→36 成功

 

   夕立 目星 83→85 失敗】

 

立[夕立だけ失敗っぽい!?]

 

 

 夕立以外の三人は大神の表情がやつれていることに気付いた。以前の彼は多少のことではへこたれないくらいに心身ともに頑丈だったので、彼の異変に気付いた探索者は不思議に思うだろう。

 

「大神くんちょっとやつれた?」

 

「……そう見えますかね、やっぱり」

 

「うーん、よくわかんないっぽい」

 

「あなたにしては元気がないように見えるかな」

 

「どうやら疲れが溜まっているらしい」

 

そう言って四人を見渡す。

 

「本日集まってもらったのは他でもない、一つ頼みがあって来てもらったんです」

 

「頼み?」

 

「ああ。引き受けてもらえるかどうかは話だけでも聞いてもらいたい」

 

そう前置きとして話し始めた。

 

「俺が大学で心理学を学んでいたことは知っていると思う」

 

「分かった、留年していてもう後がないんでしょ」

 

「違う、頼むから話の腰を折らないでくれ……。そのあとに資格を取ってスクールカウンセラーをやっていた。その勤め先の友達の様子がこの頃おかしくなってきたんだ」

 

彼が言うにはその友人がおかしな宗教にのめり込んでいたという。そんなものに傾倒してはいけないと止めようとしたのだそうだ。しかし、その友人は大神の言うことに耳を傾けなかった。それどころか日を追うごとにおかしなことを口走り始めた。

 

『あなたも一緒に来なさい。そうすればあなたも愚人という枠組みから抜け出せます。我々は賢人なのです、あなたが選ばれた人間なら分かるはずです』

 

虚ろな目で語る友人はドラッグでも決めているようだったそうだ。こちらが何を言っても相手は聞く耳を持たず、洗脳しようとする人形のように同じことばかりを繰り返した。

 

 

 どう考えても正気とは思えない友人に嫌な予感がした大神は、宗教団体について調べようと友人の後を尾行した。その宗教団体に潜入し、何が友人をおかしくしたのか調べるために。

 

 そして、彼はその宗教団体の講演をしている会場に辿り着いた。そこで彼は見てしまった。何百人もの人が無言で舞台を見つめる様子はライブが始まる直前のようだったが、その全員が無表情で私語の一つもない様子は異常だった。

 

 およそ一時間と経たないうちに大神は見てしまった。

 

 

「集まった連中がおかしな呪文みたいなもんを唱え始めた。すると、舞台に上がっていた人間の身体が崩れていったんだ」

 

「崩れていった?」

 

「どういうこと?」

 

「手品か何かでしょうか?」

 

「いや、違うんです。布かなにかを被せて、どかしたら灰になっていたというのなら分かるんです。だが、CGみたいに灰になっちまったんだ。絶対にトリックがあるはずだと思ったんだが、現れたソレは現実だって嫌でも理解させやがった」

 

そこまで話してお冷の水を飲みほす。表情はより暗いものになる。

 

「ソレって何なのか気になるっぽい」

 

夕立が訊いてからようやく重い口を開いた。

 

 

「あれはバケモノだった」

 

 

「形状は神話にでも出てくるもの以上におぞましい姿だった。現実にいてはいけないあれの姿に俺は身体が動かなくなった。……かろうじて目線だけは動かすことが出来たが、それさえも失敗だった。集まっていた連中は恍惚の表情を浮かべていた……。集まった人間とバケモノの二つが異常な空気が支配していた」

 

大神の言う内容を想像した探索者たちは背筋が凍るような冷たさを感じた。

 

【SANチェック 0/1】

 

明[さっそくSAN値チェックですか]

 

立[これがみんなの言ってたSAN値チェックっぽい?]

 

張[これが醍醐味の一つね。最初だから軽めにしてるのかしら]

 

K[話で聞いただけだからな。実際に会ったらしっかり重くしてやるから安心しろ]

 

川[その割に言い方が軽いよね。提督のことだからたかが知れてるけど]

 

【SAN値チェック 明石 SAN 50→45 成功

 

  夕張 SAN 35→93 失敗

 

  川内 SAN 55→54 成功

 

  夕立 SAN 55→59 失敗】

 

K[失敗した奴らはSAN値を一つ減らせ]

 

 

「そのあと、進行役みたいなやつが出てきてどこの国の言葉だか知らないが何かを言っていた。何を言っているのか分からなかったが、その内容が連中を洗脳していることは分かったよ」

 

「ご注文はお決まりでしょうか?」

 

大神が話し終わったタイミングで店員が注文を聞きに来た。

 

「あー、とりあえずジンジャーとかお願いします」

 

「ジンジャエール五つでよろしいですね」

 

「はーい」

 

店員が帰ってから大神の口は開いた。

 

「俺のほうでも色々と調べたりしているんですが、詳しいことは全く分からないんです。相談というのは他でもない、その友人を助けたいんです。一介のカウンセラーでは友達のカウンセリングくらいしか出来ないんです」

 

「……うーんと、大神くんの相談っていうのは宗教に嵌っちゃってる友達を改心させてあげたいってこと?」

 

「大まかに言うとそうなります。教団は友人が言っていたようなことを目的にしているという噂しか……。聞けば夕立は警察、川内は裏情報通、明石さんと夕張さんはネットにおける情報通と聞いています。俺の他のコネは全て断られました。もうみなさんしかいないんです」

 

悲痛な表情で懇願する。

 

 

K[大神の依頼を引き受けたらシナリオが始まる。別に引き受けなくてもいいが、その場合はそいつだけ蚊帳の外だな。全員が受けなかったらいつの間にか世界が滅亡していましたって結末になる]

 

川[受けない手はないよね]

 

明[そうですね。あ、他に何か情報とか出してもらえますかね]

 

K[聞きたいことがあったら聞いてみろ、本人が言っているように詳しいことは分からないだろうが]

 

 

「えっと、その教団の名前って分かりますか?」

 

「確か……浮雲教団だったはずです」

 

【アイデアロール 夕立 アイデア 55→16 成功】

 

教団に夕立は聞き覚えがあった。上司がその教団について調べて愚痴っていたのを思い出す。

 

「夕立の上司がその教団のことを調べてたっぽい」

 

「何か言っていましたか?」

 

「所轄が違うから分からないけど、聞いてみたら多分教えてくれるっぽい」

 

夕立は自信たっぷりに言うが、その上司が親切な人間だとは限らない。

 

「大神くんが化け物を見たのってどこ?」

 

「大学近くの教会だ。元はキリスト教の教会だったらしいんだが、何年か前に買い取られて改装され、違う宗教のための教会になったんだとか」

 

 

張[とりあえずはこんなところかな。後は私たちで調べていきましょ]

 

立[これ以上は何も分からないっぽい?]

 

K[ここに関してこれ以上の助言は俺から出来ないぞ]

 

明[大神くんから得られる情報はもっとあるかもしれませんけど、各々で行動して情報を集めましょう]

 

K[んじゃ、このシーンはこれで終わっていいな?]

 

川[大神くんに相談を受ける旨は伝えよっか]

 

 

「他ならぬ大神くんの頼みだし、受けさせてもらうわ」

 

「本当ですか、ありがとうございます!」

 

夕張が快諾の意を伝えるとほっと一息ついた。

 

「いや、みなさん以外のコネが使えなくなって他に頼りがなくなっていたんです」

 

「そんなに切羽詰ってたんだね」

 

「まあ、な……。内容が内容なだけに話すら聞いてもらえない人も多かったんだ。それじゃあ、俺もこれから行くところがあるからこれで」

 

そういうとジンジャエール分の料金を置いて店から出て行ってしまう。

 

「大神さんなんか忙しいそうっぽい」

 

「本当に追いつめられていたんでしょうね」

 

「手伝うのはいいけど、情報が少なすぎるわね。夕立ちゃんの上司から話を聞いてから動きましょう」

 

「私も裏ルートの情報網からも調べてみるよ。何か分かったら教えてもらえるとやりやすいかな」

 

「まずはみんなで話を聞きに行きませんか?信用していないわけではありませんけど、夕立ちゃんだけで話を聞きに行くのは少し不安が……」

 

「むう、夕立じゃまっぽい!?」

 

「いえ、そういうわけじゃないんです!」

 

「まあまあ。でも一気に知ることができるのは手間が省けるわね」

 

「もう遅いしお開きにしない?せっかく集まったけど私も仕事があるし」

 

「じゃあ明日また会いましょう。集合場所と時間はLINEなどで」

 

「「「はーい(ぽーい)」」」

 

 

 

 

休憩時間

 

 

「とりあえずここで区切るか」

 

提督がそう言ってセッションを一時的に停止させる。

 

「まだ話としては全く進んでいないが、どんなもんだ?」

 

提督の質問にそれぞれが答える。

 

「うーん、夜戦もないしダイスもちょっとしか振ってないから何とも言えないかな」

 

「まだ全然暴れてないから退屈っぽい」

 

「川内さんと夕立さんの探索者を見たときはどうなることかと思いましたが、そういう導入にならなくてよかったです」

 

「もう少し進んでみないと分からないけど、開発の質が上々って分かってよかったかな」

 

各々の感想を聞いてもっともらしく頷いて見せる。

 

「やり方次第ではかなり長くなる、気長にやっていってくれ」

 

「提督さんのシナリオがどんなものか楽しみですねえ」

 

「ルーニーをやっても構わねえけど、初心者がいることを忘れるなよ」

 

そう言いつつテーブルにコップを四つ用意する。

 

「何を飲む?」

 

「ジュースっぽい」「コーヒー(夜まで眠いし)」「栄養ドリンク」「牛乳」

 

「……栄養ドリンクあったっけな」

 

髪が犬耳のようにピョコピョコしている夕立にミックスジュース、白いマフラーで口元が隠れている川内にはブラックコーヒー、メロンのない夕張には牛乳を入れた。

 

栄養ドリンクは

 

【アイデアロール 提督 アイデア 60→13 成功】

 

棚の中に買い溜めしてある物があった。賞味期限を確認して明石に渡す。

 

「続きは休憩してからにしようか」

 

 




ちょっと長くなってしまいましたね
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