(ほぼ)高速艦のみのTRPG   作:ツリ目

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夕張って何気に万能じゃね?

【昼過ぎ 視点 夕張】

 喫茶店に最後まで残っていたのは夕張だった。

 

K[他の三人とは別行動になるが、どうする?]

張[そうねえ、教会に行ってみたいところだけど、夕立ちゃんが行きそうだから他のところに行こうかしら。KP、私の探索者は大神くんの連絡先を持ってる?]

K[探索者は全員持っているぞ]

張[じゃあ、大神くんに電話しようかな]

 

 大神に電話をかけると三コールほどで繋がった。

『もしもし、夕張さんですか?』

「そうよ、今大丈夫?」

『大丈夫です。何かあったんですか?』

「大神くんが言っていた人と直接会ってみたいんだけど、どうにかならないかしら?」

『……最近はずっと図書館に籠っているみたいですから学校に来てもらえたら会えると思います。でもあまりお勧めできませんよ、話が通じませんし、何か知っていても教えてくれるかどうか』

「話してみるだけ話してみたいのよね」

 

張[直接会ってみたら何か分かるかもしれないしね]

K[そうか(心理学持っていないのに大丈夫なのか)]

 

『分かりました。いつごろに会いますか?』

「善は急げって言うし、今から会えないかしら」

『はい。まあ学校にさえ来てもらえれば会えますから』

電話を切って夕張は大神のいる学校に向かうことにした。

【1D3→3 学校まで三〇分】

K[この間に何かするなら言え。簡単な行動なら二つか三つくらいできる]

張[うーん、手持ちのノーパソでネットから情報をゲットしたいところね。浮雲教団でググってみてもいいかしら?]

K[(このままやらせると明石と情報がダブるな)その前に質問だ。シナリオの難易度は甲、乙、丙のどれにする?]

張[難易度を変えるとどうなるの?]

K[他の探索者の状況をどのくらい伝えるか変更する]

張[そうねえ、初心者がいるし丙でお願い]

K[じゃあ伝えるが、ネットで浮雲教団について明石がすでに調べている]

張[それだったら……、うん、何もしないでおこうかな]

K[了解した]

 

 

 

 三十分後、大神が勤めている大学に着いた。入口には大神が立っていた。

「わざわざごめんね、忙しかった?」

「大丈夫です、スクールカウンセラーなんて来る人間はあまりいませんから」

「そういうものなの?」

「ええ。カウンセリングを受けるよりも知り合いに話を聞いてもらったり自分でなんとかしたほうが良いという人が多いので。赤の他人に話を聞いてもらうだけですから信用できないんでしょう」

「私たちも利用したことはなかったなー」

「やはり他人には任せたくないということですか?」

「相談するような悩みがなかったもの。困りごとって言ったら機械いじりし足りないくらいだったし」

「それは……専門の人に任せるしかありませんね」

大神は苦笑しながら夕張を誘導する。

「あの人はおそらく図書館にいるはずです。講義には参加しているようですが、それ以外の時は図書館に籠っています」

「前は聞きそびれちゃったけど、大神くんが助けようとしている人と大神くんってどんな関係?」

興味本位で問いかける。大神は気にした様子もなく答えた。

「大した関係ではありません。俺はカウンセラー、彼女は大学生、それだけです」

「それにしては気にかけ過ぎじゃない?」

「……ですかね」

やや苦い表情で答えた。

「ただそれだけなのにコネを頼っていって川内さんや夕立ちゃんのところまで行ったのに、ただのカウンセラーと大学生っていうのはねえ」

「…………………」

大神が唐突に歩を止めた。夕張は怪訝そうに大神を見る。

「どうしたの?」

「たったそれだけでも助けたいからカウンセラーをやっているんですよ」

大神ははにかみながらそう答えた。しかし自分のやっていることにちょっとした誇りを持っているようだ。

「傲慢だとは分かっていますが、助けられるなら皆助けてあげたいんです。大学で心理学を学んでカウンセラーになったのは、一番たくさんの人を助けてあげられると思ったからなんです」

「…………………」

「無茶なことだと分かっています。付け焼刃で傷つけてしまうことは嫌でしたが、見て見ぬ振りをするほうがもっと嫌です。出来ることはなんだってしたいんです」

ただ漠然と学内を彼は見つめる、おそらくその方向に助けたい人がいるのだろう。

その眼は決意があって、覚悟があった。

「大神くんってさ」

夕張が大神の顔を見る。優しく微笑んで

「なんかカッコいいわね」

「え?」

「とにかく誰かを助けたいっていうところとか見返りを求めないところとか、なんだか物語の主人公みたい」

「え、あ、いや、別にそんなつもりじゃ……!」

身振り手振りであたふたして何かを弁解しようとしている。そんな彼に微笑みかけて、背伸びをして頭をなでる。

「頑張ってね」

子供のように扱われて呆然として、居心地良さそうに目を閉じて、短く返事をした。

「頑張ります」

「うん!」

満足げな表情で夕張は大神の頭を撫で続ける。どれだけ経っただろうか、大神が恥ずかしそうに進言する。

「あの、学生の目にも触れますし、そろそろ終わってほしいんですけど」

「え?あ」

周りを見渡すと何人かの大学生が二人(大柄なカウンセラーと背伸びをして男の頭を撫でる美人)を見ていた。その数は少しずつ増えて注目を集めてしまっている。

「じゃ、じゃあ早く図書館に行きましょう!」

慌てて大神の手を引いて走り出す。

「夕張さん!そっちじゃないです!図書館は反対方向ですよ!」

 

 

 少々騒がしいことになったが、問題なく図書館に到着した。さすがに大学の図書館というだけあって量は膨大だ。人の数もそれなりである。図書館自体がそれなりの面積を持っているので誰かを探すとなると時間がかかりそうだ。

「こっちです」

しかし探し人がいる場所は決まっているのか、大神は迷いなく歩いていく。

【目星ロール 夕張 目星 83→60 成功】

図書館内を見回してみたが、これといって何があるということはなかった。

大神の後を追いかけていき、目的の探し人と思われる人間を見つける。

「大神くん、あの人が?」

「はい。彼女が『鏑矢 宇佐美』です」

大神と夕張の視線の先にいる女性が目的の人物のようだ。顔面偏差値はそれほど高くなさそうだが、背丈は女性にしては高いほうのようだ。

 鏑矢は恍惚とした表情で目の前に広げてある書物を眺めている。

「……彼女は何をしているのかしら」

「分かりません。聞いてもみても以前お話したときのようなことしか言ってくれなくて……。ただ、担当の教授から聞いた話では授業にほとんど参加していないそうです。もともと熱心に授業を受けていただけに覚えていたそうで心配していました」

 

K[大神の案内はここまでだ。何もしないなら大神はこれで帰るが、することはあるか?]

張[そっかあ、どうせなら一緒に行動したかったけど。大神くんに聞くこともないし、大丈夫]

 

「じゃあ俺はこれで」

そう言うと出入り口に歩いていく。視線を鏑矢に戻して考える。

「はてさて、どうしましょうかね」

鏑矢はひたすら書物を眺めている。

【目星ロール 夕張 目星 83→46 成功】

しばらく観察していると夕張は気付いた。鏑矢は書物を眺めているだけでページを捲っていない。読むのが遅いだけかとも思うが、それにしては遅すぎる。彼女はページを開いているだけで読んでいない。

(鏑矢さんは一体何を見ているの?)

遠目に見ているだけではそれ以上のことは分からない。

 鏑矢のすぐ隣まで言って声をかける。

「こんにちは」

鏑矢は恍惚とした表情のまま顔をあげた。

「隣、いいかしら」

「どうぞ?」

疑問形ではあるものの承認を得たので隣に座る。書物の類を持たないで隣に座った彼女からすぐ視線を外す。

「あなたが鏑矢さんで合ってるかしら?」

「あら、どうしてご存じなのですか?」

身体ごと夕張のほうを向く。見た限りでは普通の人で、何かが不味いことになっている気配はない。

「最近変な宗教に傾倒しているって話を聞いたのよ」

「変な宗教ではありませんよ」

言い方は穏やかだが、頑として譲らない様子だ。

「浮雲教団は紛い物の宗教などとは違います。あの方々は賢人である私たちを次のステージへと連れて行ってくれるのです、愚人が何を言おうともこれは変わりようのない事実です。それは……」

鏑矢が語り始めるとそれ自体が洗脳行為のようだ。言葉は留まる事を知らず、次第にヒートアップしていって声が大きくなる。

「そう!浮雲教団こそが唯一にして絶対なのです!それ以外の宗教は全て偽物です!」

周囲の人たちはその声で文句を言おうと近寄るが、大声をあげているのが鏑矢だと見るとすぐに戻ってしまう。

「さあ、あなたも浮雲教団に入りましょう!」

「……悪いけど、私は無神論者だからお断りするわ」

「入団希望ではないなら何の御用ですか?」

「大神くんがあなたを助けたいって言っていてね、手伝ってあげてるの」

「助ける?」

空気がわずかに張り詰める。

「まるで浮雲教団が悪しき集団のような言い回しですね?」

「別に宗教は個人の自由だけど授業にはちゃんと参加したほうがいいと思うわ。だいたい今の日本で生贄を要するような宗教なんてロクなもんじゃないでしょ」

「ふざけないでください愚人!!」

鏑矢が一際大きな声で怒鳴る。狂犬のようにがなりたてて図書館から出て行ってしまった。

 周囲の人たちはまた集まりかけたが、鏑矢であったことを理解するとまた戻っていく。

「……失敗しちゃった感じかな」

 

 図書館から出て周囲を見渡すが、やはり鏑矢の姿はない。当然、大神は影も形も見えない。

「うーん、どうしようかしらね」

正直言って目的の人物との会話が終わってしまったのでやれることはもうない。

「帰ってから警察のデータベースに侵入してたくさん情報をもらいますか」

周囲に誰もいないことを確認してから犯罪予告をする。大学生(大半は男)の視線を背中に受けながら帰路につく。

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