ハートキャッチプリキュア!~大樹の守護者と青い鎧戦士~ 作:sora1996
放課後になるとファッション部の部員勧誘の為にとえりかを含め拓哉とつぼみはファッション部の部室に来ていた。えりかの作戦会議という名の雑談を二人は聞いてはいるが話は耳に入っても頭に留まることはなかった。
『・・・・・』
えりかは昼休みのあとから様子がおかしい二人から発する違和感に既に気がついていた。一体この二人に何があったのだろうと思いながらも無理に聞けない。
「そういえばさ、今日も来てくれたねブルービート」
突然えりかの【ブルービート】という単語に拓哉はビクン身体を反応させる。それにえりかとつぼみは不思議そうな顔をするが拓哉はもしや秘密にしろと念押しした事をバラされたと思ったが・・・・
「あたしはやっぱりブルービートってこの学校の人なんじゃないかと思うんだよね~~だってそうじゃなきゃ学校に颯爽と出てきたりしないよ!!」
えりかの発言を聞いて拓哉はギクリと動揺したように嫌な汗をかく。しかし普通なら考えられないようなブッ飛んだ推理なのだがそのブルービートの変身者である本人が目の前にいるなど絶対に言えないと拓哉は首を横に振った。
「どしたの拓哉?」
「え、・・・あぁ・・ちょ、ちょっとトイレに」
早くこの場から逃げたいと拓哉はそう心の中で非願の声を上げる。話を聞く限りそして様子を見る限りではえりかはつぼみから何も聞いていないと思われるが自分はもう心臓が破裂しそうなほど緊張が隠せないでいた。
「・・・・・」
以前と続く拓哉とつぼみの微妙な空気・・・えりかもそれには流石にどうしたのだと二人に問おうとしたその時ファッション部の窓からシプレとコフレがものすごい勢いで飛んできた。
「つぼみ、えりか大変ですっ!!」
「デザトリアンが街で大暴れしてるですぅ!!!」
シプレとコフレの報告に3人は急いで学校からデザトリアンが出現したという場所へと向かう。現地に着くと襲われた街はデザトリアンの襲撃で歩道橋が潰されコンクリートの地面には穴が空けられていた。
「なんて事を・・・・っ!?」
逃げまとう人々を見て拓哉とつぼみは言葉を失う。混乱で人々は悲鳴を上げて場所を行ったり来たりしている。街の歩道橋にはサソリーナではない別の人物がニヤついているのが見え拓哉はそれを見つける。
「貴様、何者だ!?」
拓哉はその人物を見つけると大声でそう問いただす。すると歩道橋にいた男はそこから飛び降りてこちらを睨んだ。赤い色の髪を広げたような長髪にダンダラ模様の白色のロングコートが特徴だ。
「砂漠の使徒の一人・・・大幹部【クモジャキー】」
クモジャキーは自分の名を名乗りあげると拓哉たち3人を睨みつけた。そして後ろには既に使役として操っているデザトリアンが咆哮を上げる。
「サソリーナとは別の幹部だって?」
拓哉はサソリーナの他にも別に砂漠の使徒には侵略を実行する輩が存在したのかと驚く。つぼみとえりかも同時に驚いているが臆することなく二人は前に出る。
「拓哉は下がってて」
「ここは私たちの出番です!!」
二人は同時にパヒュームを取り出すとピンクと青の光に辺りは包まれる。つぼみからピンクのえりかから水色の光がシプレとコフレに送られる。
『プリキュアの種、いくですっ!!!』
2匹の妖精からそれぞれの光を凝縮させたプリキュアの種が呼び出されつぼみ、えりかは各々の種を手に取る。
『プリキュア・オープンマイハート!!』
同時にパヒュームに種をセットし光りを増幅し発生させると二人は上半身にパヒュームからの光を浴びる。上半身にコスチュームが纏われると次につぼみがえりかの腕を組んで背中合わせに回ると下半身にスカートが纏われ次の瞬間に足にロングブーツが形成される。
最後にそれぞれの髪の毛の色と瞳の色がメインカラーになりリボンで纏めピアスが出現して全体の変身が完了するとパヒュームをキャリーにしまう。
「大地に咲く一輪の花、キュアブロッサム!!」
「海風に揺れる一輪の花、キュアマリン!!」
二人はそれぞれ名乗り上げながらポーズを取ると次の瞬間に同時にもう一度ポーズを決め直す。
『ハートキャッチプリキュア!!!』
ブロッサムとマリンは同時に名乗り上げを決めてポーズをとる。いつの間に考えたチーム名に拓哉は「おおう」と声を上げたのと同時に二人は飛び上がりデザトリアンの攻撃を避ける。
「ふん・・・貴様らに興味はないぜよ。俺が戦いたいのはブルービートじゃき!!」
クモジャキーはデザトリアン攻撃命令をしながらも離れた場所でそう言った。そうこの男は何よりも強者との戦いを好む闘いの猛者であった。
「じゃあ、ブルービートと戦いがためにわざわざデザトリアンを?」
「そうじゃ。お前らみたいに二人でなきゃ戦えん奴等はどうでもいいぜよ。俺が戦うべき相手はブルービートじゃき。行けぇ、デザトリアン!!」
昼間のサソリーナの作戦の失敗からブルービートの強さを聞き強さを求める彼はブルービートと一戦交えるためにわざわざ出向いたということなのだ。
「そんな勝手許さない!!」
マリンは怒りを見せながら共に飛びデザトリアンに急降下からの飛び蹴りを浴びせる。マリンの勢いがついた飛び蹴りは確実にヒットし手応えを感じるもデザトリアンは腕を振り上げてマリンを吹っ飛ばした。
「マリン!!・・・・っ!?・・・あぁあああああああっ!!!!」
マリンに続きブロッサムも同じように飛ばされてしまう。拓哉は急いで人目につかないところに移動しようと思った矢先・・・・
「大丈夫か?・・・今瓦礫をどける」
一人少年が逃げ遅れているのが目に入った拓哉は急いで駆け寄りコンクリートの瓦礫を持ち上げる。常人で尚且つ中学生が持つには重たい瓦礫だがなんとか持ち上げる。
「?・・・何をしてるかと思えば目障りぜよ。デザトリアン!!」
拓哉が瓦礫を退かして少年を逃がしているのを見てなにか気に食わないとクモジャキーはデザトリアンを拓哉のいる方向へと進ませる。拓哉が目に映ったデザトリアンはそのまま巨大な腕を振り下ろす。
「ああっ!!!・・・くっ!!!」
なんとかデザトリアンの攻撃を避ける拓哉。自分が攻撃されることは想定外ではあった今のままではどうしようも無い。なんとか逃げるしかない・・・いつになく素早い動きでデザトリアンの攻撃をなんとか避ける。
「ちっ!!ちょこまかと動き回りおって」
拓哉の素早い動きによってデザトリアンは追いつかないようで攻撃が中々当たらない。距離を取った拓哉はもう少しでデザトリアンをまけると走る。逃げ回るのは気に食わないが今は無様でも仕方あるまいと自分に言い聞かせていた。
「花が!?・・・くっ!!!!」
しかしながら逃げることに夢中になっていた拓哉は道端に咲いていた花を踏みそうになってしまう。花を踏む寸前で拓哉は空中回転するように身体を飛ぶが着地に失敗して派手に転んでしまう。
「ちょ、なにやってんのよ拓哉!?」
普段の拓哉ならありえない程のそそっかしい行動に驚くマリン。そこへ振り下ろされるデザトリアンの大きな拳。生身の拓哉なら間違いなく即死レベルのその攻撃は今、まさに彼を粉砕しようとしていた。
「くっそぉ!!!うわぁああああああああああっ!!?!?」
重甲しようにもブロッサムとマリンの目の前にいるためそれも躊躇する拓哉。迷っている間にデザトリアンの拳は拓哉に向かって振り下ろされる・・・もはや自分もここまでかと拓哉は恐怖と絶望に目を瞑った。
「っ?・・・俺は生きているのか?・・・一体何が?」
絶体絶命の大ピンチに陥った甲斐拓哉は自分になんの痛みも走っていないことに気がつく。一体何が起きたのだと疑問に思いながらもソっと目を開ける。
「ブロッサム?・・・・・・俺を、助けてくれたのか?」
すると其処には自分を守るためにデザトリアンの大きな腕を受け止めている最弱のプリキュアと言われてしまったキュアブロッサムが踏ん張って耐えている光景があった。
「大丈夫ですか?甲斐くん」
デザトリアンの攻撃を受け止めてなんとか踏ん張るブロッサムは拓哉に優しく彼に声をかけた。その姿を見て拓哉は驚きと自分を助けてくれたブロッサムに対して感動が溢れ出ていた。
「ふん、弱いのう。そんなちっぽけな人間一人ごとき放っておけばいいんじゃ。強さこそが全て!!・・・小僧、お前のような弱者などは存在する価値もないぜよ!!」
「くっ!!・・・」
「強さこそ全て」クモジャキーのその言葉が拓哉の心に矢のように刺さった。自分もその意見には同感だと思っている事が悔しい・・・だがそのクモジャキーの言葉を即座に否定する声が上がる。
「そんなことありません!!」
即座に否定したのはブロッサムだったのだ。彼女はクモジャキーを圧するようにそう言いデザトリアンの攻撃から拓哉を守りながらもクモジャキーを睨む。
「甲斐くんは弱くなんかありません。誰よりも優しく強い心を持った素敵な人なんです!!」
「何っ?」
ブロッサムの言葉に驚くクモジャキー。そしてそれを間近で聞いていた拓哉も同じく驚いていた・・・・拓哉は自分が他者からどう思われているなど考えたことがなかったのだ。
「たしかに、甲斐くんはどこかよそよそしい、他人に対して冷たいところもあります。でも、なんだかんだで困ってる人や泣いてる人を放っておけない、そんな人です! 」
「ブロッサム・・・・」
拓哉はブロッサムの言葉を聞いて胸にナイフが刺されたような感覚が襲う。しかし痛みだけではない。自分を見てくれていたブロッサムへの感動と驚きが混ざった不思議な感覚。 【優しさ】・・・・長い間でいつの間に拓哉が忘れていた言葉だ。そうだ・・・本当の俺は・・・・
「今日の学校での昼休みの時フェンスを飛び越えた時に花を庇って彼は怪我をしました。今だって甲斐くんは自分の危険も顧みず逃げ遅れた男の子を助けました!!」
後ろにいる拓哉に対して言葉を続けるブロッサム。拓哉はその彼女を見て思った。彼女も本当は弱くなんてない・・・誰よりも強い。プリキュアとしての力では弱くても人を守りたいという思いは自分にも負けていないのだ。
「そしてさっきは道にあった花を庇い転んで逃げ遅れてしまいました・・・・でもそれは本当の甲斐くんが誰よりも優しい心の持ち主だという証拠です!! 力が強ければ【強い】ってことなにはなりません、それだけではただの【暴力】です!
【暴力】・・・その言葉も拓哉の心に強く突き刺さった。今の自分は父を超えることに拘るばかりに力こそが強さと勝手に考え武力という名の【力】を求めてまるで囚人のように彼の心を縛り付けていたのかもしれない。
「(父さん・・・今の俺を見たら貴方も同じことを・・・)」
拓哉は今までの行動全てを思い起こすように目を瞑った。そうだ・・・俺が本当にやらなきゃならない事は・・・本当に俺がするべき事は・・・
「たぁあああっ!!ブロッサム、いいこと言った!!!」
起き上がったマリンがデザトリアンを蹴り飛ばしてブロッサムの隣に立つ。その顔はいつもの笑顔で満ちているがクモジャキーを見るとキリっとした表情に切り替わった。
「昔からぶっきらぼうで他人に対してつんけんしてるところあってとっつきにくいけど、でも・・・あたしのこと誰よりも近くで見てくれた。だからあたしも、拓哉の前では本当の自分でいることができた。力が強いだけのアンタなんかより、拓哉の方が何倍も強いんだから!!!」
「マリン・・・・」
幼馴染のえりかが・・・いや、マリンの言葉も拓哉に強く響いた。マリンは拓哉の顔を見てグーサインを送ると拓哉の顔も笑顔が戻る。拓哉の心の中に残っていた複雑な思いが一つの確信へと変わっていく
「あの小僧が俺よりも強いじゃと?・・・男は一人、人生の荒波を超えていくんじゃ!!【優しさ】など全く下らん!!」
クモジャキーは自分が携帯している剣の鞘を抜きそれを振り回してブロッサムとマリンの言葉を断固否定した。だが二人も負けじと食ってかかる。
「下らなくありません!!」
「拓哉がなんでアンタなんかより強いか・・・・教えてあげるよ」
「甲斐君の強さ、それは・・・・」
『心の強さです!!(よ!)』
【心の強さ】
――――――そうだ、戦うだけの力だけが強くても何も守れない。だが守りたいと思う心だけでも何も守れない。【守りたいと思う心】と【戦う為の力】その二つがそろって融合するときに生まれるのが真の【強さ】なんだ。
「・・・・そうだ。そんな簡単なことだった」
拓哉は立ち上がるとブロッサムとマリンの間へと歩み寄る。かつて自分が誰よりも憧れていた存在・・・父親に教えられた言葉と意味を・・・【力の意味】を胸に秘めて。
「一番大切なことを忘れてたよ。何よりも大切なことだったのに・・・・父さん、俺はやっぱり向いてないよ。アンタみたいに戦うなんて」
拓哉は自嘲の笑いを浮かべてポケットから取り出して手に持つビーコマンダーを見つめる。角が淡く蒼い光を纏って輝いてまるで拓哉の意思に反応し同調しているかのようだ。
「おい、脳筋野郎!!・・・たしかお前ブルービートと戦いたいんだったよな?」
「そうじゃ!! お前ブルービートの居場所を知ってるのか?・・・ならばさっさと教えるぜよ!!!」
ブルービートという言葉を聞いてクモジャキーは即座に反応する。今の目的はブルービートと手合わせをすること。最弱のプリキュア二人組など眼中にないと態度で示すと拓哉は鼻で笑う。それにクモジャキーは疑問の顔になる。
「ブルービートならいるぜ?・・・今お前の目の前にな!!!」
拓哉はビーコマンダーのウィングを開かせ腕を組む。拓哉がもっているビーコマンダーに気がついた二人も驚いた。
「重甲!!!」
ビーコマンダーを頭上に上げると其処から発せられる眩いばかりの蒼い光に拓哉の身体は全身包まれる。腕から胸に重厚なるその鎧が纏われ最後には蒼いカブトムシの仮面に顔を覆われ拓哉の姿を変える。もう一人の大樹を守る心の大樹を守護する蒼き鎧騎士の姿へと。
「拓哉!?」
「甲斐くん!?」
拓哉の姿が自分たちと共に戦っていた鎧騎士ブルービートへと姿が変わったことに驚く二人。ブルービートはその二人に構わず前に出るとクモジャキーを睨みつける・・・そして彼は身体に纏われた鎧を動かしポーズを決める。
「ブルービート!!!!」
鎧が動く金属音を響かせながらもポーズを決めブルービートは自分の名を名乗り上げる。そしてもう一度ポーズを崩すとブロッサムとマリンのように再びポーズを決め直して叫んだ。
「重甲!!ビーファイター!!!」
青い閃光と共にブルービートは大樹の守護者の総称【ビーファイター】と名乗り上げを高らかに決める。それは拓哉がブロッサムとマリンを仲間として認めた瞬間でもあった。そして甲斐拓哉という一人の少年自身の戦士としての迷いと力に対する執着が消え純粋な戦士として改めて覚醒した瞬間でもあったのだ。