ハートキャッチプリキュア!~大樹の守護者と青い鎧戦士~ 作:sora1996
砂漠の使徒のアジトの大広間でブラックビートはスティンガービュートに熱加工を加えて爪の手入れをしていた。誰もいない場所で一人でそのようなことをしている光景は傍から見れば不気味な光景でしかないのだが彼にはそのような事は気にもとめていなかった。
「・・・・・・」
広間にあるテーブルに小さな機械を置きスティンガービュートに熱光線を当てて刃を鍛え直すというごく単調な作業だが武器の手入れは彼にとっては日課の一つであり暇さえ見つければ常にスティンガービュートの刃を鍛え直している。
「甲斐拓哉・・・ブルービート。お前を倒すのはこの俺だ!!」
「随分と念入りだな・・・ブラックビート。」
ブラックビートのいつになく感情をあらわにしている姿を見て声をかけたのは片翼の少女ダークプリキュアであった。彼女の姿を見るなりブラックビートは鼻で笑うとスティンガービュートに視線を戻す。
「やっとブルービートの正体が判明した。これで俺にも出撃出来る。・・・そのための準備を念入りにしているだけだ」
「ほぉ?随分と熱心じゃないか。・・・いつになく感情的にも見えるが?」
「・・・ふぅん、貴様にそのような事を言われる覚えはない」
あくまでも自分は【砂漠の使徒】の上昇部の一人。身勝手な独断先攻はするつもりはないが自分をいつまでも燻らせておくのなら話は別。まだ組織の一員として機会を待つと表向きは装っているがブラックビートは目を黄色く光らせるとどことなく感情がむき出しになっているようにも感じた。
必ずあの蒼い騎士をこの手で倒すと心に決めているかのようにダークプリキュアはいつにないブラックビートの内に燃え滾る何かを感じていた。
「二人とも仲良しだね」
その二人に話しかけたのはウェーブがかかった青色のロングヘアーと青色のダンダラ模様の白い上着を羽織るのが特徴のクールな美青年が姿を見せる
「コブラージャか・・・貴様、やっと出撃する気になったのか?」
「まさか・・・今からこの僕にふさわしい背景を探しに外に出るだけさ。ここの風景は殺風景極まりないからね」
この美少年の名前はコブラージャ。三幹部の最後に一人であるが自身の信条【美しさ】のためにしか基本的に行動せず今までも地球侵略作戦に対して消極的である為か姿を見せることはなかった。
「ふぅん・・・下らん。勝手にしろ。」
「ああ、そうさせてもらうよ。アデュー!!」
どうせまたいつもの下らない事だとブラックビートは軽蔑の言葉を送りそれを無視してコブラージャは瞬間移動で下界へと降りる。
「・・・・」
ダークプリキュアはそれを見ながらもブラックビートに目線を送る。何か言いたげであることを感じるとブラックビートは彼女にまた視線を戻した。
「何だ?・・・ブルービートの事ならクモジャキーに傷を負わせたと聞いている。その実力を持っている奴がコブラージャ如きに負けはせん。奴を倒すのは・・・この俺、ブラックビートだからな」
どこから出てくるその自信は彼の実力が根拠ということなのだろうか?一番に彼の実力を知るダークプリキュアは納得したと言わんばかりの顔になりその場から姿を消した。
「ふぅん」
その後その場に残されたブラックビートはただただ自分の武器の刃を鍛え直しきたるべき戦いに備える。自分が勝つという絶対的な自信を胸に秘めながらのその姿は不気味さと言葉にし難い威圧感がオーラとなって放たれているかのようだった。
学校が終わり放課後に拓哉、つぼみ、えりかの3人は話しながら歩いていると突然えりかが何かを見つけて目を輝かせた。一体何だとつぼみと拓哉の二人はえりかのあとに続く。
其処には新装開店の文字があり今まさに建設中と言わんばかりの建物があった。そこにあった張り紙を見て拓哉もえりかと同じく拓哉も目が輝いた
「おおお、[【三浦ラーメン】二号店が希望ヶ花にまもなくオープン!!]」
「おお、マジ?ここのラーメンめっちゃ美味いんだよね!!・・・まさかこの街に二号店を出すなんて」
まさかの朗報に興奮するえりかと拓哉。一人置いてきぼり状態のつぼみであったが察するにここのラーメン屋のラーメンは二人が特にあの拓哉もここまで絶賛してくるのを考えるとかなりの美味しいラーメン屋なのだろう。
「えへへ、これからはいつでも食べられる!!!」
「えりかはホント食い意地張ってるよな~それがお前らしいが」
えりかがそう思うのは無理もないが拓哉は彼女の食い意地ぶりに思わずそう言った。まぁ、それがコイツらしいといえばそうなるか・・・と拓哉は勝手に納得する。
ファッション以外では食べることぐらいか?コイツが興味あるのって・・・と心の中で呟いたのもほとんど同時であったが。
「ああ、三浦くん」
3人がそんなやり取りをしていると後ろから男子が通りすぎる。えりかはそれに気がつきその少年に声をかけると振り返った。顔はなぜか不機嫌そうであったのに拓哉とつぼみは不思議に思ったがえりかはと言うと気がついていない様子。
「おめでとう!!二号店が出来ることなんで教えてくれなったのよ?」
そうこの少年【三浦 あきら】はこの三浦ラーメンを経営する両親の息子である。えりかに二号店が新しく開店することを祝福されるも何故か彼は笑っていない。
「(機嫌悪そうだな・・・何かあったのかな?)」
その様子を見て拓哉は明らかな自分達との温度差に何があったのかと一番に疑問に思った。普通こう言う場合は喜ばないか?と第一に思うものを・・・。
「あたし食べに来るからね。開店日に」
「来るなよ」
拓哉の静かな凝視の視線をえりかは感じ取っていないようで彼に絡んでいるが・・・・。彼はボソボソながらも開口一番にハッキリとえりかにそっけなく言った。その言葉をはっきりと聞こえた途端に彼の様子のおかしさに流石のえりかも気がついたようだ。
「え?いま 【来るな】って言った?・・・・・・なんで?ねぇ~」
えりかの問に答えないまま無言になる三浦少年。何があったのだ?3人は理由がわからないまま彼の父親が出てくるもその途端に無言のまま歩いて行ってしまう。
翌日学校にて3人はあきらの様子を見るべくグランドに来ていた。彼は野球部所属であるようで3人が到着した時には練習が始まっていた。
「へぇ、三浦のやつレギュラーになったんだ。一年の時はたしか補欠だったよな?」
「そうだったね。ああ、そう言えば一年の時か。【三浦ラーメン】の一号店が開店したの」
「そうなんですか?」
地元人の拓哉とえりかは彼が1年の時にクラス中に宣伝したいた事を思い出した。しかし昨日の彼はその時の彼とは明らかに違う。一体何があったのか・・・2人にも流石にそこまでは彼に直接聞いてみないと分からないとますますワケが分からなくなった。
放課後になると拓哉は自宅に戻り自室で私服に着替えて休んでいた。今日は今のところ砂漠の使徒の目立った動きもない。今日は奴らも休みなのか?と思いながらもため息をついた。
「・・・眠い・・・ふぁぁ~~・・・・」
流石にこの間から連戦激務で少し疲れたと。ベッドに横になり目を閉じる。意識がだんだんと遠くなっていくのを感じ拓哉はそのまま眠りについた。
「(ここは・・何処だ?)」
ここは・・・何処だ?・・・なんで自分は泣いているんだ?・・・アレは・・・・?あの白い箱は柩?誰のだ?中で眠っているのは誰なんだ?
夢の世界に落ちた拓哉は今自分の見ている光景に懐かしさを感じた。意識とは別に乗り移り器となっているのは・・・そう昔の4年前の自分だ。
「(やめろ・・・やめてくれぇ!!!・・あ、熱い・・か、身体が焼けるぅ!?)」
拓哉の意識はこの光景に対する拒否反応で頭の中が埋め尽くされてしまう。
そうこの映像(ヴィジョン)は自分がブルービートになる宿命を背負った出来事・・・自分の父親が死んだあの日・・・その数日後に感じた身体が焼けるような苦しみ。
どうして今頃になってこんな夢を見る?・・・何故なんだ???
「うわぁああっ!?!?・・・ああぁ・・・・はぁ、はぁ・・・夢か」
最悪の夢に拓哉は飛び起きると同時に自分の右手を見た。あの忌まわしい出来事で出来た傷を・・・今はもうその傷跡も消えて綺麗に治っているが自分の中では今でも鮮明に覚えている。
「・・・どうしてこんな夢を」
嫌な汗をかいたと拓哉はフェイスタオルで体と顔を拭く。ただの夢であるのだが嫌な胸騒ぎがするのはどうしてだ?と思いながらも。数十秒ほど考え込んでいると携帯から着信音が鳴った。
「・・・なんだ?」
一体どうしたのだと思いながらも電話に出るとえりかは急に拓哉に有無を言わさず植物園に来いと言ってきた。今度は何を企んでいるのだと拓哉は思いながらも拓哉は荷物支度を済ませて植物園へ行くと・・・・
「・・・・コレを振れと?」
「うん」
「そのためだけに俺を呼び出したと?」
わざわざ呼び出しがきたから一体何事だと思ってきてみればシプレとコフレは空腹でダウンしておりその空腹を満たす唯一の手段の【キュアフルミックス】をバーテンダーがカクテルを作るようにシェイクするためだけに拓哉は呼び出されたのだ。
「・・・そのためだけにわざわざ・・・俺は便利屋か!!」
「ほら、あたし達女の子だし~~~こういうのは男の子にお願いしたいなぁ~って」
えりかの言い分はつまりこういう作業は拓哉にさせたかったらしい。拓哉からすれば大迷惑な話だがシプレとコフレが飢えに耐えしのいでいるの見るに見兼ねてため息をつきながらも拓哉はえりかに対する不満を全て発散させるかのように両手でキュアフルミックスを持つと・・・・
「うおおぉおおりゃぁああああああああああああああああっ!!!!!!!」
凄まじいばかりの動きでキュアフルミックスを振り乱してやる。超高速とでもいうような動きであったが彼が超絶ヒートでキュアフルミックスをシェイクしていく。それが1分ばかり続くと・・・・
「オッケーです!!!」
コフレがそろそろいいと拓哉に合図を出すと拓哉は息を切らしてキュアフルミックスをつぼみとえりかに渡す。またも変な汗をかいたと拓哉はその場に座る。
『幸せです~~~~~!!!』
その拓哉を尻目にシプレ、コフレは出来上がったご馳走を堪能し始める。むくれていた拓哉だったが妖精二匹を見るとその気分も失せたのか立ち上がって二匹に近づいて座り治す。
「わかる、わかる。美味しいもの食べると幸せになるのよね。三浦ラーメンなんてまさにそう!!」
「とんこつベースに鰹出汁が隠し味になっててスープは濃厚なのにしつこくなくて」
想像しただけでも腹の虫が鳴りそうだと拓哉とえりかはのほほんとした顔になった。あの味を一度覚えれば誰もが病みつきになる。癖になってまた食べたくなるのは一度食べてみないと分からないものだ。
「・・・・・」
「どうした?つぼみ・・・なんかうかない顔してるけど」
一人浮かない顔をしているつぼみの表情に拓哉は彼女に声をかけた。 拓哉に声をかけられるとつぼみははぐらかす様に返事を返す。不思議に思いながらも拓哉はえりかと三浦ラーメンの話で盛り上がる。
「はい、どうぞ~~♪・・・つぼみは今、誰かを励ましたいと思ってるんじゃないの?」
他愛もない雑談をしている3人に薫子がハーティーを差し入れで持ってきた。そして誰よりもつぼみのことは分かっているのか彼女の今の心境を問いただすようにそう言う。
「え?べ、別に私・・・」
つぼみは図星をつかれたのか即座にはぐらかそうとするもやっぱり嘘は付けない。つぼみは黙ってはいるが薫子には全てお見通しのようだ。
「これ美味しい♪なんてお茶ですか?」
「タイムのハーブティーよ。タイムの花言葉は【勇気】よ」
「【勇気】」
勇気・・・その言葉を聞いてつぼみは思った。いま自分が思っているべきことは伝えるべきなのだがその勇気が自分にない。迷っていてもしょうがない・・・ここは勇気を振り絞る時だと・・・つぼみは決意したようで目付きが変わる。