ハートキャッチプリキュア!~大樹の守護者と青い鎧戦士~ 作:sora1996
「っ!?・・・・はぁ、はぁ・・・はぁ・・・・」
またあの夢を見た・・・あの嫌な夢を・・・・
長髪のストレートヘア少女【月影ゆり】は悪夢から目が覚める。土曜日で学校は休みだというのに最悪の目覚めになってしまった。せっかくの休みの朝が台無しだと思いながら彼女は額に浮き出た汗を手の甲で拭った。
最近の睡眠は殆どあの夢を見るのでどんなに寝ても寝た気がしない。心が休まらないのだ。
「・・・そろそろ朝ご飯の準備をしなきゃ」
嫌な気分になりながらもベッドから起きるとそのまま寝巻きのパジャマから部屋着に着替える。
土曜日は自分が朝食当番であるからそろそろ支度を始めないと母親が仕事の間に合わなくなってしまう。ゆりは私室から出て台所へ向かう。
「あ、お母さん・・・ごめんなさい。土曜日は私が当番なのに」
ゆりが部屋から出ると包丁で野菜を切るリズミカルな音が聞こえてくる。もしやと思っていると予想通りだった。
「おはよう、ゆりちゃん。今朝は早く目が覚めちゃったからいいのよ」
既に台所には母の春菜が朝食の支度を始めていてほとんど朝食はというと殆どできる寸前まで進んでいるところであった。母親の元気な姿を見てどことなくやりきれない気分になる
何してるんだろう私は・・・・らしくない・・・
朝食が出来上がると母とゆりの茶碗にご飯と味噌汁が注がれおかずには焼き鮭に納豆と日本人には嬉しい食事メニューが並んでいる。「いただきます」と挨拶をして二人は箸と茶碗を手に取る。
「・・・・・・」
ゆりは思わずあるものが目線に入って手が止まる。その目線の先にあったものはご飯も味噌汁も継がれていない食器。父親の席に置かれたそれを見て思わず思い出してしまった・・・3人で仲良く過ごしていた日々を。
「どうしたの?」
ゆりの様子のおかしさに気がついた春菜は彼女に問う。ゆりは言うか迷っていたがやはり自分の気持ちに嘘は付きたくないと重い口を開いた。
「もう、お父さんの食器出すのやめましょうよ」
「どうして?」
「もう3年よ?【こころの大樹】を探しに行くって家を出てから・・・あんな優しいお父さんが3年間も連絡無しなんて・・・もう・・・お父さんは・・・」
「お父さんなら大丈夫よ」
ゆりがそれ以上の言葉を詰まらせているのを察しゆりの春菜は彼女に優しくそう言った。根拠がないそれにゆりはなぜそんなに自信があるのか分からない。
「どうしてそんなことが言えるの?」
ゆりは自信満々の母に対して思わずそう聞いた。どんな根拠があってそんなことが言えるのかわからない。
「お母さんには分かるのよ」
実に根拠のない理由であるが母親の自信たっぷりの表情にはやはり勝てない。何も言い返せないと「はぁ~」とため息をつく。
「お母さんにそう言われると納得しちゃうのよね。ホント、お母さんには敵わないわ」
二人はそう言い合いながら食事を進め食べ終えると食器を片付ける。
本日は土曜日でゆりは学校が休みであるが今のこのご時世の社会人は休みが取れるわけではないので春菜は仕事のための支度を済ませるとゆりに見送られて職場へ向かうために家を出る。
「・・・・・強がっちゃって・・・・」
母はああいっているが本音を言えば自分よりも辛い思いをしているのはわかっている。この3年間で実は自分に見られないようにしようと思いながらも時々我慢できずに泣いている夜があることを知っている。
せっかくの休みの日だし自分も久々に気晴らしに出かけてみようかとゆりも思い立ち私室に戻るのだった。
砂漠の使徒のアジトの城のバルコニーでダークプリキュアは一人佇んでいた。先日自分の視界に入った少女・・・彼女は・・・・
「キュアムーンライト・・・・・」
「珍しいな。貴様がここに居るなど・・・そんなにキュアムーンライトのことが気がかりか?」
バルコニーに一人佇んでいるダークプリキュアにブラックビートが声をかける。彼も丁度スティンガービュートの刃を鍛えようと思っていたところに砂漠の使徒史上でも実に珍しい光景を見てしまったために思わず足が泊まったのだ。
「もしも奴が生きているのなら・・・・面白いことになるなダーク?」
「・・・・」
「俺は眼中にもないか・・・ふん」
自分の質問の声に対して無反応の彼女を見て鼻で笑うブラックビート。珍しい現象もここまでくると笑えるなと思いながらしばらく彼女の様子を見ていると後ろから気配を感じる。
「二人共どうした?」
珍しく考え込んでいる彼女に声をかけたのはサバーク博士だった。彼は歩み寄りながらも仮面にある赤い瞳を光らせていき仮面であるはずなのに感情が現れる本物の目のような動きをさせる。
「サバーク博士!!」
サバークに向けて一礼するブラックビート。そしてダークプリキュアから離れて副官としての義を貫く。
「キュアムーンライトが生きているはずはない。お前達もキュアムーンライトの最期を見ているではないか」
サバークの言うとおりなのだ・・・そうなのだ。あの時確かにキュアムーンライトは自分の力の前に敗れ去った。その証拠に今の自分の手にはやつが変身の時に使うプリキュアの種が残っていただけだ。
「例え生きていたとしてもプリキュアの種がこちらにある限りやつは二度とプリキュアに変身できないのだ。とにかくお前は今いるプリキュアを倒すことだけを考えろ」
「はい」
「ダークプリキュア・・・お前は今後キュアムーンライトには関わるな」
ダークプリキュアの肩に手を置いてそう諭すサバーク博士はそのまま城の中に戻り闇の中に身を投じて消えていった。
「・・・・ふぅん」
ブラックビートもその後を追うようにバルコニーから姿を消す。ひとり残されたダークプリキュアは振り返ってバルコニーからの見える暗黒世界の空を見た。外はいつもの変わらない月が照らされた闇の世界・・・無限に広がる砂漠の荒野・・その地平線を一人で長め時間を潰す。
「サバーク博士は何故そこまでキュアムーンライトのことを気にするのだ・・ダークなら理解できるが・・・・何かあるのか?ダークをムーンライトに近づけたくない何かが・・・」
ブラックビートは城の中を歩きながらひとつに疑念が生まれた。なぜダークプリキュアがキュアムーンライトを完全に倒すことを拒絶するように止めたのか。その理由は全く見当がつかない。
自分がブルービートを倒すことに対しては何も問題ないと気持ちが悪いぐらいノータッチであるのに対してのこの差・・・一体何がそうさせるというのだ?・・・・
「・・・・・」
ダークプリキュアは命令ならば従うまで。だがブラックビートが感じたこととおなじくサバークの腑に落ちないでいた。もしもやつ・・キュアムーンライトが生きているのならば完全に止めを刺したほうが限りなく自分たちには大きな利益になるはず。
なのに何故そこまで??・・・・自分とキュアムーンライトを近づけたくない理由でもあるというのか??
わからない・・・私は・・・・奴を倒すために作られたというのに・・・・・
「(私は・・・やつを倒さなければ私自身になれない。ブラックビートが甲斐拓哉を倒すことが宿命であるように!!)」
腑に落ちないままダークプリキュアはその場でしばらくそこで考え込む。だがそれでもやることはもう決まっている・・・そしてもしもやつが生きているのならば・・・・今度こそこの世から・・・どんな手を使ってでも葬り去る・・・・
それが例えサバークが望まないことであっても自分はやらなければならない・・・
「・・・・・・」
それがこの世に生を受けた造られた理由であり自分の目的でありそして自分がたどり着くべき最終的な到達点なのだから・・・絶対に引き分けにはいかないのだ・・・
「今のままじゃブラックビートを倒せない。・・・・どうすればいいんだ」
拓哉はビーコマンダーを手に取りながら自分の部屋で考え込んでいた。先日無残にも自分がブラックビートに負けたことが悔しくて堪らなかった。
「今のままのスティンガーブレードじゃ勝てない・・・・もっと力が欲しい」
戦いのあとスティンガーブレードを確認すると刃の表面部分に罅が入り刃こぼれしていて今のままの装備ではブラックビートの鎧の防御力にすら歯が立たないということなのだ・・・
どうすればいい??どうすれば奴を倒すことができるのだ??
「・・・やめよう。これじゃあ前と・・・アイツ等に出会う前と同じじゃないか」
拓哉は突然考えるのをやめた。今の自分は力を欲している。だがそれではつぼみとえりかに教えてもらったことを踏み躙る事になる。
それでは前にただブラックビートを憎みやつを倒すことしか考えていない復讐の使者に戻るのか?大樹の守護者という本当の目的を出しにして自分の私情のために動いたあの頃に・・・
「父さん・・・貴方だったらこの状況でも諦めなかったんだろうけど・・俺は・・・」
不安がよぎる。今のままの実力でブラックビートに勝てるのか・・・そして砂漠の使徒から人々の心を守り通すことができるのか・・・・
「せめて・・・ムーンライトが生きているのならなんとかなるかも・・・いや
それでは他力本願でしかない。もうキュアムーンライトはいない。彼女の意思を継いだのが自分たちなのだ。例え相手が強く強大であったとしても逃げるわけにはいかない。それが大樹の守護者なのだ。
「ブラックビート・・・お前は必ずこの俺が倒す!!!」
迷っている時間が惜しい。こうなれば一人でもいいからブラックビートを倒すための秘策を考えなければと拓哉は突然部屋を出た。じっとしていても始まらない。何か行動に起こさなければと思って・・・・