ハートキャッチプリキュア!~大樹の守護者と青い鎧戦士~ 作:sora1996
その日の夜。誰もが眠りに落ちる深夜につぼみは突然ポプリに頬を往復ビンタ叩かれて目を覚まさせられて。
「ふぇぇ~??……ポプリぃ~?」
折角気持ちよく寝ていたのにと思って目を開けると其処にはドヤ顔を浮かべたポプリの姿があった。
つぼみは熟睡しているところを起こされたこともあって何が何だかサッパリ分からないと言わんばかりの表情であった。
「プリキュアはあの娘、いちゅきに決定でしゅぅ!!」
「ええぇ?い、いつきさん!?」
つぼみはポプリの爆弾発言にようやく目が覚めた。確かに彼女だったら武術の達人だから仲間になったら心強い・・・・ってそういう話ではない。
「ポプリはああいう娘をさがしていたでしゅ。優しくてカッコよくて~とってもとってもしゅてきでしゅぅ。ポプリはこれからいちゅきと一緒に暮らすでしゅ!!バイバイでしゅ~~~」
突然の発言でつぼみは一人置いてきぼり状態となっているのだがそれを余所にしてポプリは部屋の窓を開けるとそう言って飛び出そうとしたが……
「ストーーーープ!!」
寸前でつぼみがようやく完全に思考が覚醒して整理がついようでベットから飛び上がった。ポプリを捕まえたまではよかったがベランダの手すりの部分に身体の左側面の部分をぶつけて悶絶してバランスも崩してしまう。
「ぐぅぅ~~~~~・・・・はぁ、はぁ・・・・はぁ・・・」
「こんな夜中に何~?」
『どうしたですぅ~~~??』
危うく二階から地面へと真っ逆さまに落ちてしまうところだったとヒヤっと肝を冷やす。
つぼみは息を荒げながら呼吸を整えているとそれまでのやり取りの五月蠅さに流石に目が覚めたえりか、シプレ、コフレが彼女に駆け寄った。
「確かめるねぇ…どうするよ?」
「【プリキュアですか~?】って聞くわけにもいかないですし」
「う―ん」
そうなのだ。プリキュアに身分証明書があるわけでもないしましてや今回はポプリの完全な独断の指名であって確証を示すものが何もないのだ。
もしも違っていたらそのあとの処理面倒すぎる……果たして何かいい方法はないだろうかと3人は考えながらいつきを尾行する。
「あ、そうだ。あたし達プリキュアになる前にこころの大樹とキュアムーンライトとビーファイターの夢見たよね?」
「ああ、そうか!!」
「成程。いつきさんが同じ夢を見たかどうか聞けばいいんですね!!」
そう言えばそうではないか。つぼみとえりかがプリキュアに覚醒するきっかけとなった出来事の共通点はその夢をこころの大樹とキュアムーンライトとビーファイターの闘いの夢だ。
だったら何気ない会話を装ってその夢を見たかどうか問いただしてみればいい。3人は早速いつきにその事を聞こうとコソコソするのをやめて彼女に声をかけようとした・・・のだが。
「病院!?」
移動していたので気がつかなかったのだが気がつけば目の前の建物に病院があり彼女の目的地が此処で会った事に気がついた。そのまま躊躇なく進んでいく彼女に3人は困惑しその場で止まる。
「いつきさん、どうかしたんでしょうか?」
「さぁ?」
3人は訳がわからないまま顔を見合わせる。彼女に何かあったのだろうか?まさか病気か何かか?怪我なら移動して病院に行くなど考えられない・・・・なにかあまりよくない予感が3人の脳裏によぎる。
「とにかく行ってみよう。此処でつっ立ていてもしょうがない」
『うん』
15分ほど考え込んだがいつまでもこのままでいては何も解決しない。拓哉はつぼみとえりか率いるように二人にそう言って病院の中に入っていった。
「……(診察ではないようだな。という事は誰かのお見舞いか?)」
いつきに気がつかれないように3人はいつきの後を追う。受付をすっ飛ばしてエレベーターに乗りこんで出た先のすぐの病室に入っていった。
「誰の病室だ?」
「あ、ちょっと拓哉!!」
いつきが病室に入ったことを確認したあと拓哉は誰のお見舞いか気になって部屋の前にある名札を確かめに近づいた。流石にそれはマズイだろうとえりかが止めるもそれを無視して名前を確認するとこう書いてあった【明堂院さつき】と。
「成程な。お兄さんのお見舞いね」
以前に聞いていたため拓哉はすぐにどういう理由か理解できた。病弱である彼女の兄さつきのお見舞いに足を運んでいた。だがそれは詰まり彼の身体の体調が悪化したということか?嫌な推測が拓哉の中で成り立って行く……
「あら?」
拓哉が病室の前で考え込んでいるのをつぼみとえりかはビクビクと見ていたのだが突然二人の後ろから声がして反射的に反応してしまう。反応し目線を向けた其処にはいつきの母の姿があった
『っ!?・・・いつきさんのお母様!?・・こんにちは!!』
二人は大声で「こんにちは」と何度もリピートするのを拓哉は聞いて何してんだコイツ等はと呆れかえったように溜め息をついた。
拓哉も挨拶をすると笑顔を返されたので挨拶をリピートしていた二人は落ち着きを取り戻したように息を吐き出した。
「貴方達もさつきのお見舞いに来てくれたの?」
「え!?・・・えっと・・・偶々なんです。僕の親類が怪我をしてしまったようでそれで・・・なぁ、つぼみ?」
拓哉は必死にその場をやり過ごす様に適当な言い訳を考える。まさか自分達の目的があるの本命がいつきの方ですなんて言うわけにはいかない。
「そ、そうなんですよ。そ、それより……さつきさん、お身体の調子を悪くしたんですか?入院してるようですけど」
拓哉に続いてつぼみがはぐらかす様にそう言い逆に質問を返した。とにかく適当に話しておけば悪い印象はないだろう。別に悪いことはしていないのだが真面目さが取り柄である故の罪悪感からか無駄な事を考えてしまっているようだ。
「実は……もうすぐ手術なんですよ。さつきの」
『え?』
思わぬ展開に思わず3人は食い入るように話を聞き始めた。簡潔に説明すると今回さつきが受ける手術が成功すれば彼の身体は自由に動けるまでに回復するという事らしい。医者曰くその成功率は殆ど完璧と言うことだとか。
「(だったらなんで生徒会長の顔色が暗かったんだろう?・・・何かあったのかな?)」
話を聞きながら拓哉はそう思った。喜ばしい事であるはずなのにどうして雰囲気が暗かったのだろう?彼女に何か聞いてみたほうがいいかもしれないと一同はプリキュアの夢の事を忘れて彼女が病室から出てくるのを待った。
「はぁ~~お兄様。僕に…いつきにしてあげられる事は無いのでしょうかぁ~~!!」
病室から出て来るなりいつきは溜め息を吐いて椅子の上に横たわって何やら思いつめているようであった。椅子の上でジタバタと身体を動かしていると勢い余って床に倒れてしまった。
「……あの」
声をかけようと近づいていた3人は床に倒れるような姿になったいつきにバツが悪そうな顔になっていた。
「わぁあっ!!……や、やぁ」
やっと自分が何をしている状態になっているか気がついたように大慌てになりながら、いつきは立ち上がった。
「心配なんですか?お兄さんの手術」
「え?」
「元気に動き回れるようになる嬉しい手術なんですよね?」
「お医者様は「成功する」と言ってくださっているね。でも、一番手術を待っていたはずの兄の様子が変なんだ。とても暗い顔をして夜も眠ってないみたいで……自分の病が辛くてもいつも笑っている。昔からそう言う人なのに……」
今更この3人に隠す事など何もないと判断したのかいつきはそう語り始めた。兄の様子がおかしい事に気が付きながらも何も出来ない自分が悔しい事を。
『・・・・・』
それを聞いた3人は彼女にとってそれだけ兄が大切な存在である事を知った。今の彼女にとってどれだけ大切であるという事も分かった気がした……
「優しい人なんですね。さつきさん」
「うん。でもそんな兄が手術の前に一人悩み苦しんでいる。僕は兄の力になってあげたい。守ってあげたいんだ」
「……」
自分達の目的を忘れて3人は彼女の決意を聞き入っていた。そしてこれ以上は自分達が関与できる問題ではないと出直す事にして一同は病院を後にした。
「あ、もどってきたでしゅ!!」
『ポプリ!!』
結果を期待していたポプリは3人が戻ってくるなり大急ぎで駆け寄った。シプレとコフレは誰かに見られていないかと肝が極寒の如く冷えてヒヤヒヤしているのもお構いなしで。
「どうでしたか!?いちゅきは夢を見ていたでしゅか!?」
当の3人はいつきの話を聞いてしんなりした顔になっている事もお構いなしのハイテンションで目を輝かせながらであり温度差が激しい事にも気が付いていないようだ。
『あ、ごめん。聞くの忘れてた』
「ぷうーーーーーーっ!!!3人とも何してたんでしゅか!?」
事情を知らないポプリは3人に向かってそう言いながら八つ当たりのように癇癪を起した。3人は人が来た事に気がついて慌ててポプリを抱えながら人気の少ない所に行った。
「今度聞いてやる。だから待ってろって……な?」
「やーでしゅ!!!!」
拓哉の説得など初めから聞く気はないとポプリは人間の子供(もとい生まれたばかりだから妖精からしてもまだまだ子供であるのだが)のように駄々をこねた。
『はぁ~~~』
3人はこのワガママ妖精の反攻の声を聞きながらも一時解散としてポプリをつれて帰宅していった。いつきに対して夢を見たか否かはまた後日に聞くしかない。今はそれよりも彼女がやりたい事を頑張ってほしいから。
翌朝に拓哉達一行はお見舞いに行こういう事になりつぼみ宅で拗ねているポプリも連れて行って少しは機嫌を直させようと考えた。しかしポプリは3人より1枚上手であった。つぼみが準備を済ませてポプリに呼びかけたのだったが……
『あぁあああ~~~~!!!!やられてですぅ~~~!!!』
つぼみの目を盗んで先に病院に向かったようだ。一泡吹かされたとつぼみは急いで拓哉とえりかにこの事を伝えたが一足違いでまた病院では……
「か、かわいい・・・あ、違う。ぬ、ぬいぐるみが歩いて喋って…いや、そうじゃなくて。あ、そうだ…はじめまして、明堂院いつきです!!」
既にポプリがいつき本人とコンタクトを取っていたのだった。突然ぬいぐるみが歩いて喋って混乱して頭の整理がつかないのであったが取り合えず自己紹介といつきはポプリに名を名乗った。
「よろしくでしゅ」
「えっと・・・・」
「プリキュアの妖精でしゅ!!」
「よ、妖精!?」
突然のぶっ飛んだ話を聞かされたら誰もがこうなるだろう。いつきはポプリの説明に若干ついていけていないようであったがそれに構わずポプリは話を続けた。
「いちゅき、プリキュアになってくだしゃい!!」
「え?僕がプリキュア……」
単刀直入にそう言われていつきは真っ先にプリキュアのあの可愛いコスチュームを思い出した。あのプリティーでキュアキュアのコスチュームを自分も着れる。そう考えると思わず胸が躍った
「僕もあんな可愛い格好を?………」
「もっともーーっと可愛い格好するでしゅ!! きっと似合うでしゅ!!」
「そうかなぁ~~~?」
「そうでしゅ!! そしてこころの大樹を守ってくだしゃい!!」
ポプリがまるで通販番組で視聴者を誘惑するようなフレーズを一通り教え込んだ後に一番大事な事と共にポーズとドヤ顔を決めながらそう言った。
「こころの大樹を守る?」
「はい!!」
「【守る】・・・・」
いつきは【守る】という言葉を聞いて突然笑顔が消えた。流石のポプリもその様子の変化に気がついたようで「どうしたでしゅか?」と声をかけるといつきは重くなった口を開いた。
「僕にプリキュアになる資格なんてないよ」
「えぇえ!?・・ど、どうしてでしゅかぁ!?」
「僕には守りたいものが沢山ある。精一杯頑張ってきたつもりだったけど……僕には【何かを守る力】なんて無いのかもしれない」
ポプリには理解し難い理由であるかもしれない。自分が理想だと思っていた娘の弱い部分を見て戸惑っているのだろう。困惑した表情になってしまい何を言っていいか分からなくなってしまっているのだ。