ハートキャッチプリキュア!~大樹の守護者と青い鎧戦士~   作:sora1996

37 / 41
第36話「つぼみを救え!!’黒の挑戦ー前篇ー」

「ここは・・・・一体どこですか!?」

 

 

 冷たい空気で突然目が覚める少女【花咲つぼみ】は自分がいる場所に全く見覚えがない事に違和感を覚える。周りは果てない砂漠だらけで空も夜空のように暗く月明りだけが視界の頼りとなっているようなその場所は【地平線】という言葉が一番適切だろう。辺りを見ながらも彼女は相棒の妖精シプレもいない事に気が付き途端に【孤独】と言う恐怖が彼女の心を包み込んでいった。不安で身体が震えてしまう・・・その中でも彼女は今自分が置かれている状況を思い出すために記憶を手繰り寄せてそこから情報を整理してゆっくりと必死に考える。まるでそれは探偵にでもなったかのような気分になったが今のこの状況ではそんなことを素直に喜べるような状態ではなかった。必死に思い出す。

 今日は確かファッション部の合宿で使う資材がない事に気が付いて・・・・・・・・それからは・・・・

 

「そうでした・・・私は拓哉と一緒にファッション部での資材の買い物に出て一緒に過ごしているところをブラックビートに襲われて」

 

 ファッション部の必要資材の買い出しという名目で私は拓哉と二人で買い物へと出掛けたんでした。

 あの一時は今思い起こせば私の人生で初めの事で妙に緊張したのを覚えています。そんな中で私と拓哉はえりかに言われた生地やビーズ、縫い糸などを全て買ったあとはする事もないので解散しようかと思っていたら拓哉が折角だから一緒に遊ばないと誘ってきたんです。

 私は彼からそんな風に誘ってくるとは思ってもみませんでした。でもとても嬉しかった。初めてのデートでしたから。

 私は拓哉と二人で一緒に居る時間を過ごしていたら突然現れた黒尽くめの男が現れて・・・・

そうだ、自分は彼の足手まといになってブラックビートに・・・・

 

「拓哉ぁ!!・・・誰も居ないんですか?」

 

 

 つぼみは孤独から生まれる恐怖を少しでも間際らそうと分かりきっている事を呟いて辺りを見る。自分が今いる場所は一体どこなのだろうか?恐怖ゆえに一緒に居た少年の名前を呟く。彼女の声がその場に木霊しながらも砂漠に吹く風がその華奢(きゃしゃ)な身体を強く打ちつけて体温を奪う。

 

「寒い・・・・」

 

 

 

 此処は体力を温存するのが無難だとつぼみはその場に蹲るように身体を丸めて座り込む。夏と言う事で服装は軽装で風が身体に浴びせられると一気に体温が奪われてしまう。空を見てもただ暗いだけで月明りのみが光として照らされるだけの暗黒の世界。プリキュアにもなれないこの状態でいつまでもここに居てしまったら自分の【こころの花】が枯れ果ててしまうかもしれない・・・もしそうなったら自分はどうなるのだ?

 

「ふふふっ・・・怖いか?花咲つぼみ」

 

 

 つぼみは孤独と未知の恐怖で涙が出る。するとその彼女のみじめな姿を見て笑う声がその場から五月蠅いほど響いて来た。つぼみはその声に顔をあげて涙を手で拭って表情が険しくなる。この声は聞き覚えがある主。まさか・・・

 

 

「ブラックビート!?・・・やっぱり貴方が。此処は一体どこなんですか!?」

 

 

「此処は【デザートフィールド】。俺が支配する闇と砂漠の世界さ」

 

 

「デザートフィールド!?」

 

 

 名前の通りの空間と言うべきだろうか?この冷たく砂だけの不毛な世界はブラックビートが創り出した世界?しかしどうして自分をわざわざこのような場所へ?つぼみはブラックビートがわざわざこのような事をした動機がわからなかった。どうしてこんな回りくどい事をする必要があるのだろうか?

 

「そうだ。・・・・お前を此処閉じ込めたのは甲斐拓哉をおびき寄せるための餌になってもらうためだ。今頃奴はこの場所を血眼で捜しながらお前を探しているあろうさ。…俺の使役【デザートデーモン】を仲間に任せて・・・・タイムリミットまでにお前を助け出すために」

 

 

「タイミリミット!?」

 

 

「おっと、口が滑ったな。・・・いいだろう…教えてやる。この世界で【こころの花】が萎れた人間はこの世界の支配者である俺が手を下すまでもなくデザトリアンになるんだよ。勿論【こころの花】は取り出され我々【砂漠の使徒】に回収される。その意味がわかるか?」

 

 

「それって・・・・まさか」

 

 

「ここで絶望するという行為そのものが人間を捨てると言う事だ。更に言えば今の・・・お前を助け出す事が出来るのはお前の名前を叫びながら必死に探しているブルービートだけ。だがその前に果たしてお前の心が絶望に耐えられるかな?・・・・精々恐怖におびえるがいい花咲つぼみ。人間からデザトリアンになると言う最悪の恐怖になぁ・・・・ふふふ・・・あっはははははは!!!!」

 

 

 自分がデザトリアンになる!?その事実につぼみは恐怖でその場に膝をついてしまう。もしも拓哉が助けに来てくれなかったら………シプレが傍に居ない今プリキュアになって抗うことも許されない。ただ待つ事しか出来ないのか!?・・・・・

 

 

「拓哉……助けて」

 

 

 つぼみは風で聞き取れないほど擦れるような声でそう呟いた。こんな暗く冷たい場所で自分が自分でなくなっていくのを待つしか出来ないのか!?いや、ブルービートが……拓哉が絶対に助けに来てくれるはずだ。自分を探してくれているのなら絶対に……

 つぼみは自分にそう言い聞かせて再びその場に座って蹲った。何も考えないようにした方が絶望しないで済むかもしれない・・・・拓哉が来てくれると信じる以外出来る事がないのなら・・・何も考えず心を空っぽにするしか……それしかこの惨すぎる現実から逃げるすべなんて…………ない。

場面は数時間前にさかのぼる。本日はえりかの実家【フェアリードロップ】にてファッション部の合宿に向けての打ち合わせが行われていた。しかしながら合宿とは言っているが実際は来海家の伝手で希望ヶ花から離れたペンションへ寝泊まりしバーベキューをしたり海で泳いだり近くのお祭りや花火大会を見に行ったりと遊びが7割で残りの3割は文化祭に向けてのファッションコーディネートのデザインが作りといった内容になっている。

 

 

 

「で、これがデザインを起こして実際にサンプルとして作るために必要な材料ってことか?」

 

 

 拓哉。つぼみ、いつきの3人はえりかの面々で集まり合宿の当日でどう行動するかのタイムテーブルの作成、必要資材や持ち物の確認などのパンフレット作りの最中であった。その作業の中で突然えりかが拓哉に向けてメモを渡す。

 

 

「うん。それで悪いんだけど拓哉とつぼみで今日中にソレを買いだしてきてほしんだよね。ホントは私も行きたいんだけどちょっとこれを仕上げたくて」

 

 

「ああ、そう言う事なら・・・・・っ?」

 

 

 

 えりかはデザイン画を拓哉に見せてやるそこには書きかけのデザイン画で見る限り相当力を入れているものの様子・・・これを合宿前に仕上げたいと言うこと言う事らしい…しかし書きかけのデザインが残っているなんて彼女からすれば珍しい事であるのでは?と拓哉は思う。

 

 だがしかし、そういう理由があるならやむを得ないかと拓哉はえりかから資材費用の資金を貰い財布にそれを入れて立ち上がった。早くめんどくさい事を住めせてしまうとう思った・・・・だがその時何かがおかしい事に気が付いた。そうだ、もう一人まだ居るではないか。今自分のしかも目の前に……

 

 

「ちょっと待て。いつきは?お前が駄目ならアイツと俺とつぼみの三人で買い出しに……」

 

 

 拓哉は目の前にいつきが居る事に気が付いてそう言う。どうせ買い出しに行くならその方が効率もいいしこういう面倒事は早く終わる。それに越したことはないと思った拓哉だったがそのセリフが全部言い終える前にえりかが彼の発言を途絶えさせてしまう。

 

「いいの!!これはつぼみとアンタに頼みたいんだから!!」

 

 

「あ、ああ分かったよ。そこまで言うなら・・・・じゃ、つぼみ・・・行こうか?」

 

 

「あ、は、は、はい!!」

 

 

 拓哉はえりかの態度に違和感を覚える。あそこまで意見をゴリ押しするなんて珍しい……彼女があそこまで強く言われてしまうと逆に何かをこじつけて反論するのが面倒だ。何を考えているのか分からないのは幼馴染の自分よく知っているから気にするまでもないと拓哉は鞄に財布を入れてつぼみと共に部屋から出る。腑に落ちないままであったのだが・・・・

 

 

「いいのかい?えりか・・・本当は君が拓哉の事を」

 

 

「いいんだよ。だって、あたしは・・・つぼみと拓哉の親友だもん」

 

 

 いつきの言葉をえりかはそう言って切り返した。えりかの心中を察しが付いている……幼馴染だからこそ言えない事はある。【一番近くて一番遠い存在】・・・以前にも拓哉が言っていた事がある。本当はもどかしくて歯痒くて・・・・

一番近い存在だから自分の気持ちを・・・・言いたい事は一つだけある。でも、今の自分と拓哉との関係が壊れるぐらいなら私は近くに居る親友としてそしてもう一人の親友の為になれればいい。逃げているだけかもしれないけどそれでいい。そう決めたのだ。

 

 

「・・・じゃあ二人が帰ってくる前に全部終わらせちゃおう!!」

 

 

「おーーーー!!!」

 

 

 残されたえりかといつきの二人は残りの作業を片付けるべく分担して作業を進め始めた。その間に折角セッティングした二人の事が気がかりであったが・・・その結果は想像どおりである事を願ってただ単に作業を進めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人を残した拓哉とつぼみはショッピングモールへと足を運んでいた。えりかに頼まれた物の殆どのモノが此処で買う事ができる更に此処は遊び場としてもかなり充実しているため都合がよかったと言うのもあった。

 

 

「随分大量になっちゃったな」

 

 

 メモの通りに言われた物を買いあさった二人は荷物を持ちながらショッピングモール内にあるフードコートで一休みしていた。大型のショッピングモールと言う事で映画館やフェアリードロップの様な服屋などと遊び場としてのレパートリーは豊富であり不定期にイベントも開催されるほど何でもそろっているのがこの施設の強みである。

 

 

「そ、そうですね」

 

 

そんな場所に男女は二人と言う事は誰もが今の拓哉とつぼみを見て誰もがこう思うだろう。このカップルはデートをしていると。拓哉はそう思っていないかもしれないが彼の目の前に居るつぼみは違うだろう。現に今の彼女はどこか落ち着かない様子であるのが傍から見ても分かるほどだ。

 

 

「あ、あの拓哉・・・こ、この後どうしましょう?・・・必要なモノはもう買いましたし・・・えっと・・・」

 

 

 ここから先痛い言葉を言う勇気が中々出ない。つぼみは言葉を途切れさせながらもあと一言の言葉を口に出そうとするがその前に拓哉がつぼみの方に視線を向ける。視線がぶつかり合った事に気が付いたつぼみは思わず目線を反らしてしまい自分から言い出せるタイミングを必死に探るように間を図る。だがその彼女に目の前の相手は突然口を開いたのだった。

 

 

「つぼみ、よかったら・・・このあと時間ある?」

 

 

「え?」

 

 

「いや、折角だから時間があるなら一緒に見て回らないかと思ってさ。・・・何か予定ある?」

 

 

  拓哉からデートの誘いがくるなんてまさかの出来事。つぼみは自分から切り出そうかと思っていた所でのこの状況に思わず思考が止まりそうになるが折角の好機を逃す手はない。すぐに頭を整理して考えをまとめていって拓哉の顔を見ながら言葉を絞り出す。

 

 

「い、いいえ。特に何もないです。あの・・・えっと、何処から行きましょう?」

 

 

「そうだなぁ~映画館があるから試しに映画でも見ない?・・・その後の事は映画の後で考えよう」

 

 

「は、はい!!」

 

 

 まさかの王道すぎる展開に戸惑うウブな少女はそのまま少年に誘われるがままフードコートを移動。映画館へ行ってみると夏休みという事もあってそこには家族連れも多かったがやはりカップルグループの一番比率が高かった様子で拓哉とつぼみは自然とその中に溶け込んでいった。

 

「色々あるね」

 

 

 公開中の映画を見ると色々なタイトルがあった。【大決戦!超ウルトラ7兄弟】 【魔法少女リリカルフェイト】【BRIGHT STREAM】等などと様々なタイトルがある。さて、どれを見るか……

 

「【BRIGHT STREAM】・・・・これにしてみる?」

 

「はい」

 

 

 拓哉に言われるがままという状態になってしまっているのは緊張のせいだろう。つぼみは拓哉にゆっくりと付いていくように足を進める。二人はチケットを買いポップコーンや飲み物を片手に持ちながら映画の席に着く。暫くするとシアターが暗くなっていき映画の予告が始まり二人はしばしの時を共有しながら映画の世界へ引き込まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『・・・・・』

 

 

 それから二時間弱ぐらい経った頃になると映画からは内容に感動して泣き顔になっているつぼみとその涙を堪えている拓哉が出てきた姿があった。

 内容はと言うと二人の男女の恋物語。ある日幸せに暮らしていた二人であったのだが突然悲劇が訪れる。女性は不幸にも交通事故にあって一命は取り留めたもののその後遺症として男と過ごしていた全ての記憶を無くしてしまう。大切な人は変わらずと存在しても自分の記憶を全て無くしてしまったという現実に悲観した男は絶望心が壊れに廃人同然の生活へと追い込まれてしまう。

 絶望の谷底で這いずり回っていたその男の闇を一筋の光が照らす……それは事故にあう前に女性が残した手紙だったのだ。

 廃人同然の生活を送り死の寸前にまで片足を突っ込んでいた男だったが幼いころからの付き合いであり彼を本当の弟のように義姉から渡されたその手紙を読んで生きる気力を取り戻し自分の中に彼女との思い出がある限り本当の意味で彼女の存在は消えない。『繋がる心こそが自分の力になる』と彼は気が付きこれからまた彼女との思い出をゼロからリトライすればいいと決意し生きる気力を取り戻すものだ。

 クライマックスで女性がある出来事をきっかけに男との過去の記憶を取り戻し男の名前を呟き取り戻した記憶とそれまでの共に過ごしてきた時間が融合し固い絆を手に入れた二人は永遠に結ばれるというものだ。

 映画タイトルの「BRIGHT STREAM」の意味は【一筋の光】。人との出会いが『光』を生みだしその『光』はどんな困難や絶望と言う名の無限に広がる『闇』を照らす大切なモノになると言う意味が込められているらしい。

 その後エンディングテーマも映画タイトルと同じくBRIGHT STREAMー一筋の閃光―」という曲が流れると途端に映画を見ていた人々は涙に溢れることとなった。

 

 

「な、なんか湿っぽくなっちゃったな……下のフードコートでおやつでも食べに行こう!!」

 

 

「ぐす・・・・はい」

 

 

 あまりに内容が壮大すぎて二人は涙が止まらなくなりそうだった。いや、既につぼみは涙が止まらなくなっていると言う方がこの状況は正解だ。つぼみは特に感動のあまり映画途中で無意識に拓哉の手を握ってしまってしまうほどだ。

涙を流す事は悪い事ではないのだがいつまでもこの状態では間が持たない。拓哉は気持ちの切り替えも兼ねてフードコートへつぼみを連れて行く。その間に彼女もやっと涙が治まったようで目が少し赤くなっていたが笑顔を取り戻していた。

 

 

「おぉ『エンジェル・クレープ』じゃないか。ここのクレープは最高なんだよ。わぁ凄い行列だな」

 

 

 何を食べようかと迷う二人だったが拓哉はクレープ屋の前で足が止まった。つぼみはその彼の隣に近寄ると彼の顔は満面の笑みとなっていた。つぼみもここのクレープ屋はえりか達とよく食べに来る事が多いので美味しさは知っている。

 

 

「ああ、拓哉!!・・・もう、食べ物にガッつくなんて誰かさんみたいですね♪」

 

 

目の前のクレープ生地を焼く香ばしい香りという甘い誘惑に我慢できなくなったのか拓哉はそのまま迷わずそのクレープ屋へと足を進めるとつぼみも続けて彼と一緒にその行列に並ぶ。今の拓哉の姿は普段見せている大人しいというか少し大人びた彼とは違って年相応だ。またも見えた彼の意外な一面につぼみは心の中で彼に対する印象が少し変わっていく。

 

 

「おぉ~~いろいろあるな。ん?ブルーベリーソースとストロベリーソースのハードハンドハーフ仕立てのミックスベリーが当店人気№1だって?こんなメニューあったかな?」

 

 

 行列を並んで20分後にようやく二人の注文の番となり拓哉は何にするか迷っている。王道といえばストロベリーやチョコなのだがそれでは面白くない。折角来たのだから偶には違う味に試してみるのも悪くない。そう考えていると中々決められないようだった。しかしあるものに目がとまる。【当店人気№1の味ミックスベリー】と言うのを見てしまうと目に留まらない方が不自然だろう。拓哉は悩んだ末にようやく決まったようで店員に視線を向ける。

 

 

「決めた。俺はミックスベリーにしよう。つぼみはどうする?」

 

 

「え?ミックスベリーですか?・・・・じゃあ……私もそれに」

 

 

 店員は拓哉とつぼみがミックスベリークレープを頼んだのを見て何やら不自然な間を置いた後注文を受けてクレープを作り二人に渡す。行列を作っていた周りの人々も何やらヒソヒソと話している様子が見受けられる。

 

「なんだ?なんか皆俺達の方を見てるけど・・・・」

 

 

「もしかして分からないで注文したんですか?」

 

 

全くわけがわからないと言わん態度の拓哉。それに対してつぼみはミックスベリークレープの意味が分かっているのかそう呆れたように呟いた。

 

 

「だってブルーベリーとストロベリーは好きなんだから一つで二倍の味と美味しさを楽しめると思ったんだ。どうせなら食べたいものがいいと思ったんだけどなぁ…なぁ、つぼみはミックスベリーのクレープにはどういう意味があるか知ってるの?だったら俺にも教えてくれよ」

 

 

「それぐらい自分で考えてください!!」

 

 

「ちょっと、つぼみ!?・・・・(食べ物に美味しい以外に他に意味があるのか?)」

 

 

 

 少し拗ねたような彼女の態度を見て少しばかし疑問を感じながらもクレープのついでにミルクココアを注文し二人はそのままテーブルへと移動する。椅子に座り映画の感想を言い合いながらクレープを食べココアを飲む。ありふれた中学生の夏休みのほんのひと時という時間を噛みしめながら二人は暫く談話を楽しんだ。

 クレープを食べた後は拓哉とつぼみはそのままショッピングを楽しみ気が付けば時刻は夕刻になり夕日が火を照らす時間になってしまった。

 

「そろそろ帰らないとワガママ姫に大目玉食らっちゃうな。そろそろ出ようか?」

 

 

「・・・そうですね」

 

 

 楽しい時間というものはあっという間に流れてしまうものだ。拓哉の言葉を聞くとつぼみは名残惜しそうに彼に付いていく。もっと多くの時間を彼と過ごしたいと思っているこの気持は……心の中でときめく彼に対するこの複雑な感情が混ざった想い・・・これはもしかしたら………

 私は彼の事が………

少女は華奢な胸の中にある想いを抱きながら隣に居る少年に向けてそっと手を伸ばそうとする。昔の彼女だったらここまでの行動は絶対に出来なかっただろう。【プリキュア】になったことや今まで多くの経験がなければ。

 

「なぁ、つぼみ……」

 

 

 手を伸ばそうとしたその瞬間に拓哉が彼女に向けて視線を向けた。つぼみはその途端に手を引っ込めた。少女は心の中に溢れ出るような想いを今言葉にして彼に向けたい。でも勇気が出ない……少しの間流れた静寂の後目の前の少年が再び口を開いた。

 

 

「今日は凄く楽しかったよ。だから・・・また誘ってもいいかな?」

 

 

 拓哉も緊張のあまり言葉が途切れ途切れになりかけていたが振り絞ってそう言った。目の前の少女と同じく拓哉も彼女に対する感情が変わりつつあるのかもしれない。それは今目の前に居る少女と同じく言葉にしがたい複雑な想い……

 

 

「・・・っ!!……はい!!」

 

 

 つぼみは拓哉の言葉に驚きながらもすぐにそう返事をした。まだ夕日が出ていないのに二人の顔は少し紅く染まっていたのはお互いに気が付いていなかった。その間も歩きながら間を持たせようと言葉を交わし待たせている二人の親友の元へと向かうのであった。

 

 

 

夏の日差しが照らしてくる中で二人は感じた。お互いに気が付いていないが想いは同じなのだ。しかしながらその想いは感じているだけで『言葉』にしなければ伝わらない。その言葉にする勇気はまだ出ないのだ。でも時間がそれを解決してくれる……だからこれからはもっと関係を築いていければいい。例え二人の想いがお互いに伝わるのがゆっくりでも……

 

だが二人のその気分を悲鳴と地響き更には爆発音が粉砕してしまう。二人は唐突に起きた異常事態に嫌な予感がすると走って爆発音が聞こえてきた場所へと移動する。現場に着いた2人が見た光景は思わず声を失うほどであった。

 

 

「これは・・・・・誰がこんなマネを!?」

 

 

「ひどい」

 

 

 その一面に広がっていたのは壊されたアスファルトの地面に歩道橋や街路樹の残骸が散乱して破壊の限りを尽くされた“かつて街であった場所”の風景でありそれは見るにも耐えないほど無残な状態であった。こんな事をする輩など【砂漠の使徒】以外あり得ない。

 

「・・・・・・・」

 

 

 泣きわめく子供の声や燃え上がる炎に拓哉は拳を握りしめ怒りの感情が火山の噴火の如くわき上がり始める。しかしその怒りをぶつけるべき対象が目の前に居ない事に気がつく。普段ならば笑い声をあげながら自分達の目の前に姿を堂々と見える筈なのに。

・・・・隠れて自分たちの反応を影から見て楽しんでいるのか?だとしたら自分達を完全に舐め腐りきっていると拓哉は一歩前に出た。

 

 

「・・・・こんな大騒ぎをした癖に姿を見せないなんてふざけた真似をするな!!・・・・俺達に用があるなら隠れてないで出てこい!!!」

 

 

 砂漠の使徒の破壊活動にしては普段とのやり方の違いに不自然さを感じられたが拓哉はそれ以上に目の前の惨状に怒り心頭で感情を荒げて大声を上げた。彼の声がその場に大きく響き渡るとそれにようやく反応したかのように一つの影が二人の前に姿を現した。

 

「待っていたぞ・・・ブルービート、キュアブロッサム」

 

 

 その男の姿は真夏にも関わらず黒の長そで革コートに同じ黒い色をした革製のジーンズズボンにロングブーツという非常に暑苦しい格好に加えて黒いハットで素顔を隠し悪魔を模ったような独特の形をした黄色いペンダントは太陽光の光を浴びて鈍く輝いた。

 

「・・・・・・・・」

 

 黒いハットおかげで素顔が見えないその男のルックスは【不気味】という言葉以外は思いつかない程の何かのオーラを放っている。その不気味なオーラのせいだとでも言うばかりに悪寒を感じる。この男は一体・・・・・・

 

 

「貴様、何者だ!?」

 

 

 拓哉の問いに目の前の黒い男は一歩近づいていくとコートに手を入れる。何か武器でも出すつもりかと警戒する二人だったが二人はその予想を上回るとんでもないものが出て来るとまでは思いつかなかった。二人の予想を超えるものソレは・・・・・・・

 

 

「黒い・・・ビーコマンダー!?」

 

 

 つぼみは男が取り出したそれを見て声を漏らす。男が見せてきた者は自分の隣に居る拓哉が持つブルービートの力を宿したビーコマンダーよく似ている物だ。しかしよく見れば全くの別物だと分かる。

 その理由としては次の事が当てはまる。奴が持っているビーコマンダーは拓哉のモノと同形状ではあるが決定的な違いがあるからだ。先ずは銀色の部分はブラックメタルとも言うべき黒い色に染まっていてスイッチは黄色になっている。次にビーコマンダーの中に宿っているインセクトアーマーのパワーソースの象徴であるビーコマンダーの頭頂部にあるのは黒く長い触角があるという点だ。

 黒と言う色に拓哉はすぐに察しがついたあのビーコマンダーの中に眠るインセクトアーマーの正体を・・・・

 

「そうか・・・貴様がブラックビートのインセクトアーマーを・・・お前は誰だ?誰なんだ!?」

 

 

「【シャドー】・・・とでもしておこう」

 

 

「【シャドー】?」

 

 

 突如として自分の目の前に現れたこの男こそが自分の因縁の相手であり自分が倒すべき宿敵。その男の名前は【シャドー】。英語の直訳は【影】と言う意味があるが・・・・しかしそれ以上に気になるのは何故今頃になって自分たちの目の前に生身の姿を見せつけたと言う事。普通ならば変身者であるという事は隠しておけば戦いは優位に進める事が出来る筈なのになぜわざわざ自分の正体を明かす真似をする必要があるのだ?

 

 

「拓哉、大丈夫ですか!?」

 

 

 拓哉は頭の中で様々な推測が湯水の如く湧き出てくるがその思考を隣に居る少女の呼びかけで無意味だと悟ると考えるのをやめる。様々な疑問が残るがそんな事は今はどうでもいい。今はこれ以上は被害を拡大させないと言う事が第一優先。二人は表情を切り替え目の前の男を睨みつける。

 

 

「えりか達が来るのを待ってられない・・・・いくぞ、つぼみ!!」

 

 

「はい!!!」

 

 

 今頃あの二人もこの惨状を聞いて此方に向かって飛んできているはず。しかしそれを悠長に待っている余裕はない。これ以上被害を拡散させないために二人は目の前の相手に向けて変身アイテムを取り出した。

 

「プリキュア! オープン・マイ・ハート!!」

 

 

シプレの胸にピンクの光が集まりひとつになるように収縮凝縮すると結晶に変化する。結晶となったプリキュアの種をつぼみが受け取りパヒュームにセットする。

全身をピンク色の光に包まれつぼみはパヒュームの光を胸に浴びせて光を形成。そして上から下へとプリキュアコスチュームが形勢し身に纏われる。

最後に髪の毛が纏まりロングポニーテールになりココロパヒュームを腰に押し当てキャリーにしまいポーズを決めて大地の戦士キュアブロッサムの姿へと変身完了する

 

「大地に咲く一輪の花、キュアブロッサム!!!」

 

 

「重甲!!」

 

 

 拓哉は変身コードを叫びながら腕をクロスさせてビーコマンダーの一番下の部分にある赤いスイッチを押す。

すると電子音のような音と共に黒い虫の羽根をイメージしたウィングが開きそのままビーコマンダーを空に掲げる。

中にある蒼い鎧騎士ブルービートの甲冑が小型縮小して収納されていてその甲冑が中で蒼く輝きを放つと彼の身体全身が包まれる。

 

 

「ブルービート!!!重甲!ビーファイター!!」

 

 

 ポーズを決めて名乗るあげる二人の戦士。ピンク色の光と蒼い光が同時に煌めいて目の前の相手を眩く辺り一面を照らす。しかしその相手は全く反応すらせず静かに睨み返す事以外何もしない。それがまた不気味さを醸し出していた。

 

「・・・・・・・」

 

 

 二人の変身を見た男は分厚い革コートをその場に脱ぎ捨てると黒いビーコマンダー【ブラックコマンダー】のウィングを展開させる。その中には黒いインセクトアーマーが小型化されて収納されており邪悪なオーラをその場に放たせる。そしてそれをゆっくりと胸の前に持って行き左手を合わせてクロスさせる。

 

「邪甲!!!」

 

 

 【重甲】ではなく邪悪なる鎧の装着の文字をとって【邪甲】。まさに悪の戦士の変身コードには相応しいものであるとばかりに男は黒い光に包まれると一瞬にして全身が黒い鎧に包まれる。光が収縮し現れたのは邪悪なるカミキリムシのインセクトアーマー【ブラックビート】を纏った男がゆっくりとブルービートとブロッサムへと近づいてくる。

 

 

『・・・・・・・』

 

 

 いつにもまして邪悪なる何かを纏っているブラックビートの前にブロッサムはタダならぬ何かを感じ取った。今日のあの男はいつもの感じとは違う。直々に変身した後のオーラを見たこともあるのだろうか・・・・言い知れぬ何かをブルービートとブロッサムは感じ取りながらも逃げるわけにはいかないとファイティングポーズをとってその場で身構える。

 

「スティンガーブレード。はぁあっ!!!」

 

 

 ブルービートは十八番の武器であるスティンガーブレードを構えるとブラックビートに向けて突撃する。ブラックビートはその場に止まったまま動こうとしない。

 

 

「やぁああぁっ!!!(いつもと様子が違いますが・・・・ダメージを与えるにはチャンスですね)」

 

様子がおかしい事にブロッサムは感づいては居たが攻撃のタイミングとしては好機以外何物でもないとブルービートに続きそのままブラックビートに向けてパンチを叩きこむ。攻撃が当たれば強敵といえどもダメージは免れない。二人の全力の一撃が黒いカマキリに放たれる・・・が・・・

 

 

「ふぅん!!!」

 

 

『っ!?』

 

 

 右手でブルービートのスティンガーブレードの刃を左手でブロッサムの拳を受け止めるとブルービートは投げ飛ばされブロッサムは腕を掴まれてブラックビートに耐性を崩されてその場に押し倒されてしまう。

 

「ああぁあっ!?・・・ううぐぅ!?」

 

 

「ブロッサム!!!・・・貴様ぁ、ブロッサムを離せ!!」

 

 

そのまま倒されたブロッサムは腕をブラックビートに掴まれてしまい見事に関節技を決められて動きを封じられてしまった。痛みに悶える彼女を見てブルービートは怒りに拳を震わせてブラックビートへとジャンピングパンチを叩きこんでいった・・・怒りのブルービートの一撃は凄まじい勢いでブラックビートへと叩きこまれていった・・・・が

 

「ふぅん!!!」

 

 

「がぁああぁっ!?!?」

 

 

またしてもブルービートの攻撃が当たる前にブラックビートの左手が彼の顔面へと延びて避ける事を考えていなかった彼はその拳が直撃して殴られてしまった。勢いよく飛ばされたブルービート身体は崩されたビルの壁へと叩きこまれてしまった。

 

 

「ブルービート・・・っ!?・・ぐぅっ!??・・あぁあうっ!?]

 

 

 

 ビルへと飛ばされたブルービートの名前を叫ぶブロッサムは突然腕を引っ張られて身体を立たせられてしまうと腕を振り払われてしまいそのままボディへとパンチを受け続けてパンチラッシュの連打を受ける。

 

 

「くっ!?・・・ぐぅぅうっ!?!?」

 

 

「どうしたキュアブロッサム?俺の攻撃から逃げているだけでは勝てんぞ?・・・貴様は所詮最弱のプリキュアだ」

 

 

「っ!!!」

 

 

 紙一重で腕をクロスさせて防御するも次第にパンチの勢いに身体が耐えきれなくなっていく。更にブラックビートに自分の弱さを言葉と力で示されてしまう。特に「最弱」という言葉はブロッサムの動きがどんどん鈍くさせる最大の言葉となって彼女の精神に突き刺さっていく。

 

 

 

「その程度では張り合う相手にすらならん。消えろ・・・・はぁああぁあああぁああっ!!!!!!」

 

 

 パンチのラッシュを受け続けていたブロッサムだったが防御はもう既に追い付いていない状況。これで最後だとブラックビートは重いはずのアーマーからは想像できないほどの身軽に空へと跳び上がるとそのまま跳び蹴りをブロッサムの身体へと叩きこんでいった。

 

「きゃぁああぁあああぁああぁああああぁああっ!!!!!」

 

 

 女の身体は勢いよく後ろへと噴き飛んでいった。綺麗に決まった飛び蹴りはサッカーボールをゴールへと蹴り飛ばすかのような凄まじいほど勢いで彼女の身体をコンクリートの外壁へと飛ばす。

 

「ブロッサム!!!」

 

 

 瓦礫の残骸の中に埋もれていたブルービートは彼女の悲鳴を聞くなりすぐに跳び上がった。先回りしてブロッサムの後ろへと跳び上がり身体を大の字に広げて勢いよく跳んできた彼女の身体を抱えて受け止めにかかった。

 

「ぐっ!??・・ぐあぁああぁあああっ!?!??」

 

 

 だが勢いが強すぎたことでバランスを崩してしまったブルービートはブロッサムと共に二人仲良く飛ばされる羽目になった。アーマーの背中に走る衝撃に耐えながら右手でブロッサムの身体を抱え左手でを伸ばして何かにつかまろうとする。そしてようやく街路樹の残骸に捕まってようやく勢いを止める。

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・ブロッサム、大丈夫か!?」

 

 

 

 少し乱暴な処理であったが自分自身の身体にはそれほどダメージは残っていないとブルービートは息を荒げながらも抱きかかえていた

 

「はい。それよりも貴方こそ私を庇って。ごめんなさい」

 

 

「謝るなよ…俺は大丈夫だから。それより今日のブラックビートは何かが違う・・・気迫と執念がが・・・いや、それ以上に何かが奴から感じられる。一体何が!?」

 

 二人はお互いを庇い合う様に声を掛け合う。ブロッサムを心配させまいとブルービートは難なく立ち上がって見せる。蒼く光る彼の鎧は土埃で汚れているがそれ以外は目立った外傷は見られない。ブロッサムはそれを見て「よかったぁ・・・」と声を呟いた。

 二人はお互いの身体の無事を確認できたことに安心したのか「ふぅ」と息を吐いてすぐに視線を敵であるブラックビートへと戻した。

 

 

 

「・・・・どうした?お前達の実力はその程度か?」

 

 

 全く持って手ごたえが感じられないと言わんばかりの態度でブラックビートは二人を見下していく。いつも以上の気迫とパワーを見せつけているブラックビートを見てブルービートとブロッサムは恐怖を感じながらも普段以上に高圧的で舐め腐っているその態度を見て怒りが募る。

 

「っ・・・・・セイバーマグナム」

 

 

 ブラックビートの動きがいつもの2倍いや10倍以上も機敏であり2人の攻撃パターンが読まれてしまっている。いつも以上の強さに二人は驚愕しながらも負けてなるものかと激情したブルービート立ち上がりながらブラックビートへとセイバーマグナムを向ける。

 

「・・・・」

 

 

 聖なる銃を見せつけらえながらも全く怯まないブラックビート。そのまま二人へと近づいてくるのにブロッサムは違和感を覚える。今のブラックビートの気迫と強さは普通ではないと言う事以外に何かを感じるのだ。

 

 

「マキシムビームモード!!!」

 

 

 

 全力でのマキシムビームモードを連射で発射するがブラックビートはそれを弾いてしまう。そしてそのままゆっくりと近づいていきブラックビートはブルービートへと拳を叩きつける。

 

 

「ぐあぁあっ!?・・・」

 

 

 拳で怯ませた次の瞬間にブラックビートはブルービートの首へと腕を伸ばしてそのまま掴んで彼の身体を持ち上げてみせる。あまりの苦しさにブルビートはセイバーマグナムを地面へと落としてしまい腕を地面へと垂らす。左手でブラックビートの腕をつかんではいるが大した抵抗にはならない。

 

 

「甲斐拓哉・・・ブルービート!!。貴様の喜び、怒り、悲しみ・・・それら全てを見てやる。奪ってやる!!!」

 

 

「ぐっ!?・・・何がお前をそこまで・・・お前は一体何者なんだ?・・ああぁがぁっ!?」

 

 

 目の前の黒い鎧騎士を憎んでいるのは自分とて同じ。しかし自分とは違うベクトルの怒りの感情を感じるとブルービートは彼に向けて問いただす様に言葉を投げかける。ギリギリギリギリとブラックビートは首をしめながらブルービートを睨むように黄色い瞳を光らせた。

 

 

「俺はおまえを倒す。お前がいる限り俺は俺になれない。これは【光と影の闘い】。俺と貴様の宿命の闘いだ!!」

 

 

「【光と影】・・・俺とお前の宿命!?」

 

 

 俺を倒さなければ奴は自分自身になれない?どういう意味なんだ?ダークプリキュアもゆりネェに同じ事を言っていたが。俺とこいつに何の因縁があると言うんだ?俺の父さんをコイツが・・・・殺した以外に何があると言うんだぁ!?

 

 

 拓哉はブラックビートの【シャドウ」の言葉を聞き頭の中が混乱を極めた。コイツに自分が抱いている思念とは違う何かがあるというのか!?それは一体!?

 

 

「やめてください!!・・・ブルービートを離してください!!!」

 

 

 ブルービートの中でブラックビートへの疑惑が深まる中突然現実に引き戻すかのようにブロッサムがブラックビートの腕へとパンチを叩きこんで無理矢理ブルービートのを離れさせる。ブラックビートはそれを見てターゲットをブロッサムへと切り替えるように鬼のような形相で睨みつける。

 

 

 

「貴様ぁ、邪魔をするなぁ!!!!」

 

 

 黄色い瞳を光らせたその眼光は悪魔以上のオーラを放っている。目の前の黒いカミキリ虫の戦士のその眼光は獲物を捕らえる前に動きを止める蛇にも似たようなモノであったのだ。その瞳を見たら大概の人間は次の様になってしまうだろう・・・・

 

 

「っ!?・・・あぁ・・・ぁっ・・・っ!!!」

 

 

 

 そのブラックビートの威圧によって恐怖からか身体が全く動かせなくなったブロッサムは震えが止まらなくなってしまう。計り知れないほどの怒りと憎しみは彼女の理解を超えているとでもいわんばかりだ。

 だがブラックビートは容赦はしなかった。何の躊躇もなくスティンガービュートをブロッサムの首へと伸ばすとそれをワイヤーモードにして絡めていきブロッサムの呼吸を奪う。

 

 

「あぁあっ!?・・・ああぁああぁあああぁあああああぁああっ!?!?!?!?」

 

 

 首に絡められたスティンガービュートから眩いばかりの光と共に電撃を放たれるとブロッサムはプリキュアの変身を解除されてしまい花咲つぼみの姿に戻ってしまう。戸惑っている暇すら与えられないままブラックビートのワイヤーによってつぼみは引き寄せられてしまう。

 

「つぼみ!!・・・やめろ、つぼみを離せ!!」

 

 

 ブルービートがつぼみを助け出そうと大急ぎで走るがその前にブラックビートは彼女の首へとチョップを放って気絶させてしまう。ブラックビートは気絶した彼女をお姫様だっこをして抱きかかえるとブルービートから距離を置いた。

 

 

「丁度いい人質が出来たな。今からゲームを始めよう」

 

 

「ゲームだと!?」

 

 

 

「ルールは簡単だ。今日の午後5時までにコイツを隠している場所を見つけてみせるだけだ。・・・だがもしもそれまでに見つけられなければコイツは俺が貰う。」

 

 

「つぼみをゲームの道具にするつもりか?・・・彼女は関係ない!!!俺と戦いたいなら一対一で勝負しろ!!!」

 

 

「勘違いするな。貴様を倒すことに変わりはない。だが・・・その前に貴様がそれに値するか試させてもらうんだよ。貴様の強さが”俺がこの手で殺した”貴様の父親を超えるかどうかのな」

 

 

 

 つぼみの華奢である身体を抱えていきブラックビートはブルービートを睨みつける。彼女を助け出そうとブルービートは動きだすもその前に彼に向けてそれだけ言い残すとブラックビートは姿を消してしまう。

 

 

「ぐぅ・・・・・くっ・・・・・・」

 

 

 残されたブルービートは破壊された建物のコンクリートに拳を叩きこむ。その下にはつぼみのココロパヒュームが落ちていた。それを拾い上げて握りしめるとその数秒後にはその場に膝をついてしまったブルービートは重甲を解除して拓哉の姿に戻るとは大声で吠える。

 

 

「うぁああぁあああああああああああああああああぁあああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!!!!!」

 

 

 自分がいたにも関わらず少女一人を守れなかった事に対しても無力感と怒りが止まらなかったのだ。そして何より因縁の相手に自分の大切な人を“二度も奪われた事”が拓哉にとって一番辛く何よりも許し難い現実だったのだ。

 たった一人で獣のように叫び続ける拓哉はブラックビートへの怒りが今まで以上に豪炎の如く燃え上がった。パヒュームを握りながら拳を震わせて何度も吠える。声が彼の喉が潰れそうになるまで。

 

「・・・・・・」

 

 絶対に許せない・・・自分の大切な人を”一度ならず二度までも”奪おうとするあの黒い戦士を。叫び続けた拓哉の心の中である決意が生まれた。絶対につぼみを助け出しブラックビートへ雪辱を晴らすと。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。