ハートキャッチプリキュア!~大樹の守護者と青い鎧戦士~   作:sora1996

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第37話「つぼみを救え!!’黒の挑戦ー後篇ー」

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

 

 

 拓哉はシプレと共に希望ヶ花の街を走り回っていた。デザトリアンもサソリーナ達も出ない事も気にならないままたった一人でシャドーに拉致されてしまった彼女を探すつもりなのだ。

 

 

「・・・・・」

 

 

 一人でただひたすら拓哉は街中を全力で走り続ける。奴(シャドー)がどこに彼女を監禁しているのか分からないまま夏の日差しが照りつける熱線を身体中に受け顔や身体中から汗を噴きでるのも気にしないまま。体力だけが削られるが休むことすら考えず手がかりも何もないまま時間だけが過ぎていく。時計を見ればタイムリミットの午後5時まで残り一時間と三十五分にまでなってしまっていた・・・時間がない。このままでは彼女が・・・・・

 

 

「つぼみ、無事でいてくれ!!!」

 

 

 つぼみの身に何かが起きてしまえば全ては自分のせいだ。あの時しっかり守る事が出来ていればこんな事には・・・拓哉は自分の力の無さを呪った。

あの時の闘いは普段と違い情に流されていたのは確かなる事実だ。普段の自分らしなく奴(シャドー)の挑発に簡単に乗って感情的になったばかりに彼女をこんな危険な目に巻きこんでしまったのだ。

やはり自分には仲間なんて持つべきではなかったのか?ただ一人で守護者(ビーファイター)として奴(ブラックビート)と戦っていれば誰も傷つけなかったんじゃないか?少なくとも今の様な事にはならなかったんじゃないのか!?

 そんな思考が拓哉の頭の中でグチャグチャとかき回されていき焦りと自分自身への怒りが自分で自分の精神をどんどん追い詰めていく。

 

 

「時間がない・・・くそぉ!!!」

 

 必死に思い当たる場所へと拓哉は向かおうと走るが一人で探すとなるとこの希望ヶ花も広すぎる。それに手がかりがゼロなこの状況も重なってしまえば雲を掴むような難題だ。それでも何か行動に起こすと言う事で身体を動かさないよりは精神的に自分を保てるためか当てもないまま一人での捜索を続ける。その中で突然地響きが響いたのを感じ立ち止った。

 

 

「っ!?・・・あれは・・・デザトリアン!?」

 

 

「グオォオオォオォォオォオオォオオオ!!!!!!!!!!」

 

 

 まるで今の拓哉の心の中に渦巻く不安を増長させるがためにデザトリアンが出現した。しかもその姿は以前に一度現れたブラックビートを思わせる黒い身体に黄色い瞳をした強化タイプのものであった。まさかこの近くにつぼみが!?拓哉は僅かなる期待を心に抱く。

 

 

「はははははは!!!!」

 

 

「サソリーナ、コブラージャ」

 

 

 走る拓哉の前に突然現れたサソリーナとコブラージャ。二人の顔は笑っておりいま彼のおかれている状況全てを把握している様子であった。まさかブラックビートとの共同作戦を最初から計画して狙っていたのか?その疑惑が拓哉の中で抱かれると後ろに控えているデザトリアンが咆哮をあげた。

 

「久しぶりだね。ブルービート」

 

 

「あらぁ?汗まみれになっちゃって・・・もしかして取り込み中だったかしらぁ?」

 

 

「ふざけるなぁっ!!!」

 

 

 今の自分の慌てふためいている姿を茶化された事に拓哉は感情を荒げながらそう言い返した。緒初という事は分かっていても今の彼の精神状態では冷静さを保つこと事は無理難題に等しい。特に目の前のコブラージャとサソリーナの一言一言はイライラを増長させるには十分なものであることも重なっているのだ。

 

「ブラックビートの作戦に付き合うつもりはなかったけどサバーク博士の命令でね。・・・それにプリキュア一人を潰すという作戦は僕らにとっても好都合。悪いけどここから先にはいかせないよ?」

 

 

「っ!?・・この先につぼみが・・・そうなんだな!!!!」

 

 

「正解よぉ~ん。しっかしアイツもわざわざアンタにヒントを与えるなんて意味がわからないわねぇ。ほっておけばあの“最弱のプリキュア”を・・・・っ!?」

 

 

 サソリーナが言葉を続けようとした瞬間に目の前から徒ならぬ殺気を感じて言葉が止まった。視線をその方向に向けてみるとそこには甲斐拓哉の形相が凄まじいものに変化している。【鬼】いや、【阿修羅】を思わせるような凄まじい形相であり憎悪や怒り憎しみと言った全ての感情がサソリーナとコブラージャに向けられていたのだ。

 

「つぼみが最弱だって?・・・その発言だけは許さない・・・絶対に許さない。・・・・重甲!!!」

 

 

 

 拓哉は激昂したままインセクトアーマーを速攻で纏ってその身を包む。速攻で纏われた身体を素早く動かして目の前の敵へと走った。ガシャ、ガシャと歩く音を響かせるその音と彼から放たれるオーラにコブラージャとサソリーナは一瞬だけ恐怖心が生まれたのか怯んで動きが止まってしまう。だがそれ以上の動揺を見せる事は幹部としてのプライドが許さなかった様子で強化型デザトリアン【デザートデーモン】をブルービートに向かわせた。

 

 

「うぉおおぉおおぉおおおおおお!!!!!!」

 

 

 喉が潰れてしまうかもしれないほどの唸り声をあげて迎え撃たんと突進してきたデザートデーモンの巨大な身体にブルービートは渾身のダブルパンチを叩きこんで吹っ飛ばす。それによって巨体は放物線を描きながら宙を舞っていくと数秒後にはアスファルトの地面へとめり込むほどの勢いでその巨大な身体は叩きつけられた。

 

「スティンガーブレード!!!」

 

 

 次の瞬間には素早くスティンガーブレードを装備してサソリーナとコブラージャへと斬りかかった。しかしその攻撃は空を斬っただけで紙一重で避けられてしまう。怒りに我を忘れてしまっている今の彼は本来の戦い方を忘れてしまっているのだ。

 怒りにまかせてスティンガーブレードを振り下ろすブルービートだがサソリーナとコブラージャの動きに翻弄される。中々思い通りに戦いが進まない事にブルービートはイライラが募る。

 

 

「何を焦っているんだい?そんなにあの娘の事が気になるのかな?」

 

 

「まぁ、無理もないわよねぇ~アンタが守れなかったから巻きこまれたんだからぁ…」

 

 

「それは・・・・っ!?・・ぐあぁあぁあああぁああぁあっ!?!?」

 

 

 サソリーナとコブラージャの言葉はブルービートの心に深く突き刺さった。ブルービートは二人の言葉に動揺し動きが一瞬止まってしまう。その瞬間にコブラージャのカードによる射撃攻撃が放たれインセクトアーマーに突き刺さると爆発してブルービートはその炎と煙に包まれる。

 

 

「っ!?」

 

 

 爆発で視界がハッキリしない中で突然ブルービートの首にサソリーナの髪が絡まり彼の呼吸を奪う。そのまま身体を持ち上げられてしまう。

 

 

「僕たちの屈辱をタップリと教えてあげよう。さぁ、地獄に堕ちるがいいブルービート!!」

 

 

 ブルービートの動きを止めた事を確認しコブラージャはカードを構える。一気に彼へトドメをさすつもりなのだ。ブルービートは何とか逃れようと暴れるがサソリーナの髪の毛はしっかりと動きを固定されてしまって逃げられない。もはやこれまでなのか?つぼみを助けられないまま・・・・ブルービートの諦めと共にコブラージャから何枚のカードが彼に向って飛んだ。

 

ブルービートに発射されたカードが彼に直撃すると凄まじい爆発音が辺りに響き渡ると辺りには視界がホワイトアウトしそうなほどの土埃に包まれる。コブラージャはしてやったりと言わんばかりの笑い声をこぼしながら口元を歪ませる。

 

 

「ふっふふふ……あっははははは!!!」

 

 

 今までの恨み辛みを発散したとばかりの態度でコブラージャは大声で笑って見せる。サソリーナもコブラージャと同じように笑みを見せてはいるが態度はどちらかと言えば物静かであった。

 

 

 「これであたし達は大手柄よぉん」

 

 

 ブルービートを倒しキュアブロッサムの変身者である花咲つぼみを手中にある今の状況はまさに砂漠の使徒にとっては願ってない大チャンス。これで【こころの大樹】の守護者はあと二人。

 その二人さえ消せば自分たちが地球を一気に占領し砂漠化するのも遠い未来ではないとサソリーナははしゃぐ。キュアムーンライト討伐以来の手柄であるという事と今までの鬱憤が一気に晴れた事で気分爽快と言わんばかりの態度だ。

 

 

「ふぅん。では引き上げるとしよう。いつまでも此処に居るとセットした折角スタイリングした僕の髪やコートが汚れてしまう。さぁ、早く帰るよサソリーナ」

 

 

 大はしゃぎのサソリーナとは対照的にコブラージャはクールにそう言う。勝負が決まった今となればもはやこの場所に長居する必要はないから当然の判断だ。爆発で発生した土埃で髪や衣装を汚されるのは彼にとっては不快以外の何物でもない。サソリーナはコブラージャの催促を聞いて途端に不機嫌になった態度で振り返る。

 

「はいはい。ったくもう・・いい気分だったのに」

 

 

もともとこの二人は反りが合わないが今回ばかりは大目に見てやるとサソリーナは渋々コブラージャの催促に応じ背を向けゆっくりと歩き出した。しかし次の瞬間二人の後ろが黄金色の光が発生した。

 

「な、君は!?」

 

 

「キュアサンシャイン!?」

 

 

 二人は光の主の正体を見て淡い期待が一気に崩れ去ったのを悟った。ブルービートの前にはサンシャインの黄金の盾【サンフラワーイージス】が出現しておりコブラージャの一撃をギリギリのところで全て受け止めて防ぎきったのだ。

 

 

「さ、サンシャイン!?・・・如何してここに!?」

 

 

「シプレのお陰だよ。【つぼみを必死に探してるブルービートが危ない】って泣きながら私達に状況を伝えてくれたんだ」

 

 

「ホントにもう。なんであたし達を呼ばないで一人で抱え込んじゃうかな?」

 

 

「マリン、お前まで……」

 

 

 膝をつき締められた首を抑えて呼吸を整えるブルービートの前にもう一つの影が彼にそう呼びかけた。その正体はキュアマリンでありブルービートに向けて呆れたような表情を浮かべていた。マリンの言い分に彼はバツが悪そうになってしまって何も言い返せない。

 確かに今思えば二人にちゃんと連絡すればもっと効率が良かったかもしれないのにそれすら頭になくただ一人で俺は……ブルービートは焦る気持ちを抑えるように首を横に振って自分で自分を奮い立たせるように立ち上がる。

 

 

「おのれぇえ!!!……はぁああっ!!!」

 

 

 コブラージャは援軍が来た事に怒りを見せてカードを乱射して3人に攻撃を放つ。しかし今度の攻撃は3人には当たらず同時にそれを跳び上がって避ける始末になってしまう・・・。折角の勝利と言う名の美酒に酔いしれようとしていたのを邪魔されてしまった事で完全にペースを崩されてしまった為に早くも形勢がブルービート達に優位になり始めてきた。

 

「よくもやってくれたな。やられた分タップリお返しさせてもらうぞ。それも10000倍返しでな!!」

 

 

 ブルービートはそう言ってサソリーナとコブラージャに向けて逆襲だとファイティングポーズをとり向かっていこうと走る。だがその彼の前にサンシャインとマリンが立ってブルービートの語気を止めた。

「何の真似だ二人とも!?」

 

 

二人の唐突な妨害に驚くブルービートだがマリンはその彼を余所に前に出て柔軟体操を始めて見せた。

 

 

「ここはあたし達が引き受けた。ブルービートは先に行って」

 

 

「お前、何言ったんだ。二人だけでなんて危険すぎるぞ!!」

 

 

 いくらなんでも無謀すぎる。幹部二人にデザートデーモンが相手となれば形勢は一気にマリン達の不利になるのは火を見るよりも明らかだ。つぼみを助けるための時間がないといえども仲間をみすみす危険な目にあわせるなんてブルービートには出来る筈がないとそう言い返すがマリンも引かずに彼の顔に自分の顔を近づけた。

 

 

「ホントにアンタって誰にでも優しいんだから。それが誰よりもいいところでもあるんだけど……偶にはあたし達に頼ってくれてもいいんじゃない?こういう時ぐらい仲間に頼ってよ!!」

 

 

「……」

 

 

 目の前の少女にそう言われてブルービートは何も言い返せなくなった。自分の事を親以外で知っていると言えば今目の前に居る彼女ぐらい。確かにブルービートの変身者である甲斐拓哉は人に頼ると言う事を極力避けてきた節があったのは事実。今だってつぼみを自分一人だけで助けようとした事もだってそうだ。しかし二人だけに敵を倒す事を任せるのは不安が消し去れないのもまた事実。

 

 

「私達なら大丈夫。ブルービートはつぼみを助けてあげて。つぼみだってその事を望んでいるはずだから」

 

 

 その彼の心中を誘ったサンシャインがマリンと同じく前に出てブルービートを諭すように声をかけた。二人の姿を見ていつになく逞しく今の自分よりもはるかに強いと思えた。今の二人なら………拓哉はブルービートの蒼く輝く仮面の下で目を閉じて精神を落ち着かせる

 

「分かった。必ず、必ずつぼみを連れて戻ってくる。だから二人とも……頼むぞ!!」

 

 

 二人の気持ちを受け止めたブルービートはコブラージャとサソリーナを飛び越えるように大きくジャンプしていくと着地点に居るデザートデーモンを足場にしてもう一度跳び上がった。振り返ることなく彼は身体を動かしこの先に待つ花咲つぼみを救出するために全速力で走った。

 

 

「随分な真似をしてくれるじゃないか。でも手間が省けたというモノだね。君達も片づけてあげるよ」

 

 

 ブルービートには逃げられてしまったがキュアマリンとキュアサンシャインという倒すべきターゲットが自分から現れるなんて無駄な手間が省けたというもの。ブルービート討伐は後回しになるがそれでも順序が変わるだけで大した問題ではないと考えついたようだ。

 風がふいたのをのを合図にマリンとサンシャインが右側からデザートデーモンが左側から突進して双方は希望ヶ花の繁華街を舞台にしてぶつかり合っていった。

 

「寒い………身体が凍りついちゃいそうです」

 

 

 その頃つぼみはデザートフィールドの闇に心が染まり始めていた。ブラックビートに拉致され閉じ込められてから既にどれぐらいの時間がたったのか分からないまま時間だけが過ぎていき次第に何も考えられなくなってきてしまった。

 暗いだけならまだいいがデザートフィールドと言うこの空間は夏だと言うのに真冬のように寒く堪らない。身体が凍えるかのようなその寒さと月明り以外に照らす物がないその空間の【無限の闇】が彼女を蝕んでいき次第に絶望が心を侵食してくる。

 

 

「このまま私はデザトリアンにされてしまうんでしょうか?……そうなったらもう皆にも・・・」

 

 

 ブラックビートの言葉がもしも真実であるのなら絶望に心が染まりきったその瞬間にデザトリアンに変化させられ一生元に戻る事がないまま【こころの花】が枯れ果てるまで砂漠の使徒に利用されてしまうのだろうか?そうなったらもう・・・・・

 つぼみの瞳から光が徐々に失われていき絶望が心を呑みこんでいく。もはや絶体絶命なのか?誰にも看取られることなく事もなく人間でなくなってしまうのか?絶望が絶望を呼び空間の闇に彼女の全てが溶けはじめていく。

 

 

「・・・・・み」

 

 

「っ!?」

 

 

 絶望に心が呑みこまれかけたその時つぼみの耳に何かがうっすらと聞こえてきた。幻聴が聞こえるほどにまで精神的に追いつめられてしまったのかと彼女は一瞬混乱するが耳を澄ませてみるとその声は徐々にはっきりとしてきた。その言葉は・・・・

 

 

 

 

 

 

 

「つぼみ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この声は・・・・・拓哉!?」

 

 

 自分の名前を呼ぶ声。そして聞き覚えのある声…拓哉の声を聞いてつぼみは途端に正気を取り戻した。拓哉が自分を助けるために必死に頑張ってくれている。だとしたら・・・まだ諦めには早い。まだ終わってはいないのだ。野球で例えるなら勝負はまだ9回表。

 だったら9回裏に逆転満塁サヨナラホームランを打てるほどの大反撃があるかもしれない。今の自分にとってその逆転の可能性を秘めているのは甲斐拓哉だけだ。

 

 「まだ諦めちゃダメ・・・ですね。私が諦めちゃったら拓哉ともう一度デートするって言う約束が果たせなくなっちゃいます。それに私はまだ彼に伝えたい事があるんです!!」

 

 

その彼が今この場所を必死に探して自分を助けようとしている………ならば諦めるにはまだ早すぎると少女は気がつくと大きく息を吸い込んで次の瞬間には自分が出せる最大限の大声を出した。

 

 

「拓哉、私は此処です。此処に居ます!!!」

 

 

 彼にこの声が聞こえるかどうかわからない。しかし叫ばずにはいられないのは人情というもの。自分を必死に探してくれている彼にこの声が届くと信じて花咲つぼみは暗闇と寒さに心と身体が蝕まれそうになりながらも拓哉にこの声が自分の想いが届くと信じて叫び続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つぼみ!?・・・っ!!」

 

 

 外の世界で必死に探していたブルービートに一瞬だけつぼみの声が聞こえた。そしてその後は彼女の気配を感じその場所へと突き進んでいくと着いた場所は暗く冷たい廃屋のようになっていて今はもう随分と長い間使われていない地下道だった。

 

 

「クモジャキー!?」

 

 

 闇が続く中でもブルービートや躊躇なく突き進んだ。その理由は此処に彼女がいる…絶対に居ると確信を持っているからだ。突き進んだ先に見えた者は巨大な黒いエネルギーで作られた壁。そしてその前には無数のスナッキー軍団とつぼみを攫った張本人のブラックビート……ではなく強さ以外には全く興味を示さない脳筋男クモジャキーが待ち構えていた。

 

 

「待っていたぜよ。ブルービート!!さぁ、俺と勝負じゃぁ!!!」

 

 

「今はお前の相手をしている暇はない。そこを退けぇ!!!!」

 

 

 クモジャキーの号令にあわせて配下であるスナッキー軍団が一斉に走り出す。それと同時に右手にスティンガーブレードを左手にパルセイバーを逆手持ちにして同時に構え自分へと向かってくるスナッキーの大軍団へと向けて蒼い鎧戦士も走り出した。

 

 

「たぁあ!! だりゃぁあぁああっ!!!!」

 

 

 どれだけの数が自分に牙を向けようともブルービートは怯むことなくブレードの刃をスナッキーに振り下ろしパルセイバーの刀身を突き立てて斬っては投げ千切っては投げといった風に何十体と倒していく。

 

 

「キーーーーっ!!!」

 

 

「ぐあぁっ!?・・・ぐぉお!?!?・・・くっ・・・でやぁあぁっ!!!」

 

 

 時には手足を封じられてアーマーに打撃を受けて火花が散るが其れにも怯まず力でなぎ倒し砂漠の先兵共を次々と切り刻む。雑魚相手にいつまでも時間がかけて居られないとスティンガーブレードのハッチを開きギアを高速回転させてブレードの刀身へとエネルギーを溜めていく。

 

 

「ビートルブレイク!!!!!」

 

 

「キキーーーーーーッ!!??」

 

 

 スナッキー軍団に向けて蒼く輝かせたスティンガーブレードをX文字に振り下ろして何十匹も消滅させる。一個小隊が消滅させたがまだまだ雑魚軍団の数は星の数ほどあり全滅には時間がかかる、しかしそれでも目の前に自分の助けを待っている彼女の為にとブルービートは怯まずビートルブレイクの第二波の発動体勢に入る。

 

 

「キキーーーーーーッ!!!!!」

 

 

「ぐっ!?・・数に頼んでゾロゾロと。うわぁあぁあっ!?!?」

 

しかしスナッキーも仲間が倒されていく事にただ黙って応じるつもりはない。ビートルブレイク第二波を続けて発射態勢で出来た隙をつくように狙いを定めると数で勝負に出たのだ。数で勝るスナッキー軍団がブルービートに向けて跳び上がって彼に覆い被さり強引に動きを封じにかかった。

 

 

「あの音はスティンガーブレード!?・・・・拓哉ぁああぁ!!!!」

 

 

 スティンガーブレードの抜刀の音と爆発音が響いた事につぼみは向こう側に彼が居る。そう判断して迷わず大声を上げた。自分のこの声が彼の力になればいいと想いを込めて彼の名前を力の限り精一杯叫んだ。

 

 

「っ!?・・つぼみ!?」

 

 

スナッキー軍団に動きを封じられたブルービートには今確かに聞こえた。あそこにつぼみは居る。それを知った次の瞬間に彼の力は限界点を一気に超えインセクトアーマーが蒼く光り輝くと大量のスナッキー達を一気に吹き飛ばし消滅させる。

 

 

 

「邪魔だお前ら、今すぐにそこを退けぇえぇえッ!!!!」

 

 

 

「っ!?」

 

 

 気が付けば一瞬の間にクモジャキーとの間合いがゼロ距離となり蒼い鎧戦士は真っ向からブレードの刃を振り下ろしていた。クモジャキーは咄嗟に剣を構えてブルービートの斬撃を防ぎきったが勢いが尋常ではなく威圧と殺気に身体が押し戻されてしまう。

 

 

「でやぁあぁっ!!!」

 

 

「ちっ!?・・しまった!!」

 

 

 怯んだその次の瞬間にはクモジャキーはブルービートのパワーに力負けして勢いよく後ろへと投げ飛ばされた。その瞬間をブルービートは身体にある全てのパワーを脚に集中させて跳び上がると巨大な壁に向けてスティンガーブレードを向ける。

 

 

「ビートルブレイク!!!うぉおぉおおおおおぉおおおおおおおおおおお!!!!!!!」

 

 

 

 スティンガーブレードに蒼い光を集め渾身のビートルブレイクを黒い壁と叩きこんでやった。代償としてスティンガーブレードが刃こぼれして真二つに折れてしまう。しかしその数秒後には壁の方にも変化が見られる。

 金属音にも似た凄まじい音が辺りに響くと壁に罅が入りそれが大きな亀裂になってピキピキピキと音を立てて割れる。次の瞬間には大きな崩壊音を響かせて黒い壁が粉々になってその破片が辺り一面へと飛び散った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!!!!」

 

 

「・・・・拓哉?」

 

 

「つぼみ………つぼみぃ!!!」

 

 

 つぼみが粉々に砕かれた壁の中から現れたのを見てブルービートは一瞬だけ動きが止まるがすぐに我に返ると大急ぎで彼女に駆け寄った。つぼみはその場にペタンと尻餅をついて動けないでいて何かあったのではないかと心配になり身体を抱き寄せた。

 

 

「よかったぁ!!無事でよかった!!!」

 

 

「拓哉のお陰です…ありがとうございます。グス・・・っ!!」

 

 

 少し力が強いため窮屈に感じるがそれだけ自分を心配してくれたのだと感じ感動して目頭が熱くなってきた。気が付けば涙の筋が頬に出来ていて感情が爆発して今度はつぼみがブルービートの身体を思いっきり抱きしめ返した。

 

 

「怖かった、怖かったです。あのまま私は私じゃなくなって消えてしまうんじゃないかって思ったらとてつもなく不安で……貴方にも二度と会えなくなってしまうと考えたらもう・・・」

 

 

「つぼみ………ゴメンな俺のせいでこんな目にあわせちゃって。もう二度こんな目にあわせたりしない」

 

 

 自分が弱かったばっかりに彼女を危険な目にあわせてしまった。もう二度と彼女を危険な目にあわせない。今日ブラックビートに彼女を奪われて迷っていた気持ちがはっきりして確たるものになった。

俺は彼女の事が好きだ。自分がブルービートの力を手に入れた理由なんて比べ物にならないほど何よりも大切な存在となった。

 今この時より俺は彼女を守るために・・・・信ずる者との愛を守るために戦う。拓哉の中で戦う決意は新しいものとなったのだ。

 

 

「(……父さん、俺やっと見つけたかもしれない。俺が本当の意味で戦う理由を。貴方の為にもそして・・・彼女の為にも俺は戦う!!)」

 

 

 今思えばその為の俺は父から力を受け継いだのかもしれない。こんなにも簡単なことだったのに……いや簡単だからこそ一番難しいのかもしれない。でももう俺は自分の為だけに戦わない。目の前のこの娘を・・・花咲つぼみを俺は守り通して見せる・・・どんな事があっても!!

 

 

 

「いつまで馴れ合っとるつもりじゃ?・・・俺と戦えブルービート!!」

 

 

 場違いである事を自覚しないままクモジャキーは二人にそう吠えて現実へと引き戻しにかかった。ブルービートとつぼみは同時に立ちあがるとクモジャキーを睨み返してやりお互いに視線がぶつかり合った。

 

 

「つぼみ、掴まれ」

 

 

「えっ!?」

 

 

 先ずは仲間達の元へと合流だとブルービートがつぼみの手を左手でしっかり握りインプットマグナムを構えて煙幕弾を乱射する。辺り一面白い霧が発生するとクモジャキーは意図に気が付いて急いで近づいていくが時はすでに遅い。ブルービートとつぼみの姿は既になく取り逃がしてしまったのだった。

 

 

「おのれぇええぇええええぇえええっ!!!!!!」

 

 

 戦わずして逃げられた事にクモジャキーは怒り吠える。戦わずして逃げられるなど彼にとっては屈辱の極み以外何物でもない。その後しばらくは地下通路では男の唸り声が響いたというのはその後の二人は知るよりもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃マリンとサンシャインはコブラージャとサソリーナと激闘を繰り広げなんとか均衡状態を保っていた。強化型デザトリアンのデザートデーモンの力は凄まじくマリンとサンシャインだけでは力不足が否めなかった。

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

 

 

「ふっふっふ・・・終わりだよ。人間共も、この地上も!!」

 

 

 息使いを荒くする二人に近寄るコブラージャとサソリーナ。作戦がうまくいっていれば今頃ブルービートとキュアブロッサムは倒せているはず。この二人を消せば世界は一気に砂漠の使徒のモノになると言う野心を胸に秘めながら海の戦士と太陽の戦士に向けてトドメの一撃を放つ体勢に入った。

 

 

『っ!!!』

 

 

 コブラージャが手にカードを持った瞬間マリンとサンシャインは避ける体勢を取りながら後ろへと下がる。そろそろタイムリミットの5時になった頃合いなのにブルービートは戻ってこない。コブラージャの自信にあふれた態度を見てしまうと二人は不安と焦りが生まれずにはいられない。

 

 

「(拓哉、何で来ないのよ?約束したじゃん……なのに、アンタが約束を破るなんてあり得ないでしょ!?」

 

 

 嫌な予感がしてならない。ムードメーカポジであるはずの自分らしくない不安を抱きながらマリンはファイティングポーズを崩さないままコブラージャとサソリーナを睨む。しかし次の一撃を食らえば変身維持も危うい状況。もう後がない………絶体絶命だ。

 

「待てぇえ!!!」

 

 

 絶体絶命のその時…・・遠くから響く声を聞いてマリンとサンシャインは勿論であるが敵側であるはずのコブラージャとサソリーナも視線を向けた。その先には此方に向けて走ってくる二つの影が見える。その二つの影の正体は・・・・・

 

 

『!?』

 

 

 此方に向かって走ってくる二つの影………その二人の姿を見えてマリンとサンシャインは目を輝かせる。理由は言うまでもない……自分達の元に花咲つぼみを連れて戻ってくると約束した甲斐拓哉の姿だったからだ。

 

 

「待たせたな二人とも」

 

 

「すみません、遅くなりました」

 

 

 まさにピンチの所にヒーロー参上と言ったところであろう。想定外の事にサソリーナとコブラージャは完全に動揺していて言葉を失い絶句しているがその二人に構わず拓哉とつぼみはマリンとサンシャインの前に立ちこれ以上は大切な仲間を傷つけさせないと目の前のサソリとコブラを睨みつけた。

 

 

「つぼみーーーーっ!!!・・・よかったですぅ!!」

 

 

「シプレ、心配掛けてゴメンなさい。でも拓哉のお陰で助かりました」

 

つぼみの無事を確認したシプレが彼女に飛んできた。シプレは歓喜溢れたのか涙を流して彼女の胸を濡らしていて如何に自分を心配したかを感じる。そして今度は自分が戦う番だと拓哉から渡されたココロパヒュームを取り出し拓哉も其れにあわせてビーコマンダーを出して見せる。

 

 

「つぼみ、行くぞ!!」

 

 

「はい!!!」

 

 

『重甲!!/プリキュア!オープン・マイハート!!』

 

 二人は同時に変身アイテムを光らせるとピンク色と蒼い光を発生させる。つぼみの腕が光れば拓哉の腕が装甲に包まれ上半身がスカートワンピースに変われば拓哉の上半身が鎧に包まれる。最後につぼみの瞳の色が変わりロングポニーテールになれば拓哉の顔が蒼きカブトムシの仮面に包まれ二人は同時に変身が完了し眩い光を辺りに放つ。

 

 

「ブルービート!!!」

 

 

 

「大地に咲く一輪の花、キュアブロッサム!!!」

 

 

 同時に変身を終えたブルービートとブロッサムは決めポーズを決めてその場で名乗り上げた。その姿は普段の倍いやそれ以上の勢いと気迫があり拓哉とつぼみの絆の強さを表すかのような程であった。

 

「マリンとサンシャインは休んで居てくれ。ここからは俺達が引き受けた……ブロッサム行くぞ!!」

 

 

「はい!!」

 

 

 マリンとサンシャインを気遣いながらブルービートはブロッサムのほうに視線を合わせると言葉で合図を送ると二人は同時のタイミングで走る。助走をつけて十分な勢いをつけたブルービートとブロッサムは同時に上へと跳んでブルービートは先制攻撃でのお得意技であるフライングダブルパンチアタックをコブラージャにブロッサムはサソリーナに向けて跳び蹴りを放ってみせた。

 

 

『ぐぉおおぉおっ!?!?』

 

 

 幹部二人を吹っ飛ばしたことでマリンとサンシャインを痛めつけた分の一部を清算した二人は次にデザートデーモンへとターゲットを変更する。視線を感じたデートデーモンは自分があの程度の相手に負ける筈がないという慢心があったのか怯むことなくブルービートとブロッサムへと向かっていった。

 

 

「ウガァアアアアアアアアアアアアアアァアッ!!!!」

 

 

「パルセイバー、パルスラッシュ!!!」

 

 

ブルービートは折れたスティンガーブレードの代わりにとパルセイバーを右手に持ち素早い動きでデザートデーモンの脚へとパルセイバーからの一閃攻撃であるパルスラッシュを放ってその場に転倒させる。

 

 

「ウゴオォオオォオオオオオ!!!!」

 

 

「ブロッサム・ダブルインパクト!!」

 

 

 すぐに立ち上がるデザートデーモンであったがそれに続きブロッサムが素早く距離を詰めた。ブロッサムインパクトの応用技であるブロッサム・ダブルインパクトをデザートデーモンの胸に向かって放った。

 小さい光の鉄拳が一つ増えて程度では痛くも痒くもない。そうデザートデーモンは思っていただろうが次の瞬間には胸の中央で大爆発を起こしてデザートデーモンへ大ダメージを与える。

 

 

「すごい」

 

 

「うん。二人の強さコンビネーションには全くの隙がない。絆の強さが二人の力を限界以上に引きだしているんだよ。」

 

 

 二人の無駄のない動きによる攻撃と絶妙なコンビネーションを見てマリンとサンシャインは今の二人にはどのような相手だろうと真っ向から粉砕してしまうと確信を抱いた。まさに今の二人には向かうところ敵なしの最強のタッグであり恐らくはブラックビートにも勝るとも劣らないと思うほどの強さであるから。

 

 

「合体、セイバーマグナム!!!」

 

 

 二人の絶妙なコンビネーションプレイによってデザートデーモンにダメージを蓄積させていき動きをどんどん鈍らせていく。動きが鈍り虫の息まで追い詰めた二人はそろそろ仕上げだとブルービートはパルセイバーとインプットマグナムを合体させてセイバーマグナムを召喚し手に取る。

 

 

「マキシムビームモード!!!」

 

 

「ブロッサム・スクリューパンチ!!!」

 

 

 ブルービートのマキシムビームモードとブロッサムの新必殺技『ブロッサム・スクリューパンチ』が合わさり融合していくと蒼とピンクの巨大なエネルギー波がデザートデーモンへと降り注いだ。二人の息が合わさった時に出せる最強のフィニッシュトリックとして名づけるならば『マキシムブロッサムバースト』とでも言うべきだろう。

 

 

「ウゴオォオォオォオオォオォオォオオオ!?!?!?」

 

 

 二人の必殺技が叩きこまれた瞬間にデザートデーモンは粒子化して跡形もなく消滅する。あのデザートデーモンをあそこまで簡単に消滅させた事にコブラージャとサソリーナは「ちっ」と舌打ちをして瞬間移動で姿を消した。

 

 

「やればできるではないかブルービート」

 

 

『っ!?』

 

 

 敵を退けたと思っていたブルービート達の前にブラックビートが姿を現した。4人は構えをとりいつでも戦える体制を維持するがブラックビートは「ふぅん」と鼻で笑ってみせると此方に向かってきた歩みを止める。

 

 

「今日のお楽しみはここまでにしておいてやる。だが、覚えておけブルービート……必ず貴様はこの俺が倒す。それが俺と貴様の『光と影の宿命』だ」

 

 

 不気味にそう言い残してブラックビートは姿を消した。【光と影】、【宿命の戦い】とはどういう意味なのかわからない。ブルービートは謎が謎を呼ぶブラックビートという存在にただの復讐の相手としての感情だけではなく徒ならぬ嫌な予感を強める。

 

 

「・・・・・」

 

 

このまま戦いはどんどん荒れ狂っていくのだろうか?今まで以上に激しくなると言う事は大切なモノを守る事が険しく厳しいモノになるかもしれない。ブルービートはその予感からかその場に立ち尽くして考えこんでしまう。・・・とそこにブロッサムがブルービートの手へとそっと自分の手を伸ばして彼の手を掴んだ。

 

 

「私も強くなります……今度は絶対に貴方の足枷になりません。だから貴方も恐れないで。」

 

 

「ブロッサム(………ありがとう。本当の意味で強いのは君なのに……俺ももっと強くなる)」

 

 

 こうして二人にとっていい意味でも悪い意味でも今日は忘れられない一日となった。何よりの転機とは讐の為だけに戦っていた拓哉にとっては大切な何かの為に戦う大切さを知る事が出来た事だろう。その想いを胸に居た気ながら夕焼け空に町が染まっていくと長い長い一日はようやく幕を閉じた。

 

 

 

 

 

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